ガッシュペアの暗殺教室   作:シキガミ

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 寺坂グループの話です。基本は原作通りとなります。


LEVEL.23 寺坂達の時間

(このクラスは大したクラスだ。あのタコが来てからだな、色々変わったのは。どいつもこいつもやる気に満ち溢れた目しやがって。だからこのクラスは、居心地が悪い)

 

 底辺だったはずのE組が変わりつつある状況を面白くないと思うのは、本校舎サイドの人間だけでは無い。寺坂竜馬もまた今のE組を快く思っていない。実際に彼は暗殺において乗り気ではない。寺坂は今日も自分の席でふんぞり返りながら、クラスメイト達を不満げに見渡す。そんな時、

 

「おい皆来てくれ‼プールが大変だぞ‼」

 

岡島が大慌てで教室に駆け込む。それを見た生徒達は何事かと思いながらプールへ向かった。3人の生徒を除いて。

 

 

 

 

 プールには大量のゴミが捨てられ、休憩スペースにあった木のイスも壊されていた。実行犯はE組に対して恨みでもあるとしか思えない。

 

「これでは泳げないのだ……」

 

プールの惨状を見たガッシュが泣きそうな顔をする。彼にとっては遊び場の1つを壊された様な物だ。皆と遊べる場所が無くなるのは悲しい。そんなガッシュを見かねて、茅野が彼の頭に優しく手を置いた。

 

「ガッシュ君。プールが壊されたのは大変だけど、そんな泣きそうな顔しないの」

 

ガッシュを茅野が慰めてくれたが、彼は泣き止むどころかさらに目から大粒の涙を流し始めた。

 

「ヌオオオ、カエデ~!誰がこんな酷い事を……」

 

「もう、泣かないでって言ってるのに……」

 

泣き出したガッシュは茅野に抱き着く。それはまるで、泣きじゃくる弟が姉に甘える様子そのものだ。

 

「よしよし(しょうがないなぁ、ガッシュ君てば……でも弟や妹がいるお姉ちゃんて、こんな感じなのかな?エヘヘ)」

 

茅野はそんな事を考えながらガッシュの頭を撫でる。そんな光景を他の生徒達は暖かい目で見守る。気付けばクラス内ではプールを荒らされた事に対する負の感情が消えている。

 

「また茅野っちがガッシュのお姉ちゃんみたいになってる。高嶺、ガッシュを取られちゃったね!」

 

「ドンマイだな!嫉妬すんなよ!」

 

「そう言うんじゃないぞ、お前等……」

 

清麿自身は嫉妬の感情を抱いた訳では無いが、彼は岡野と前原にからかわれてしまった。それ以外の生徒達の何人かも2人と同じ事を思ってた様子だ。清麿は誤解を解く方法を考えながら頭を抱える。

 

 ガッシュは少しして泣き止んだ様子だが、寺坂・村松・吉田の3人が遅れてプールへやってきた。

 

「あーあー、こりゃ大変だ」

 

「ま、いいんじゃね?プールとかめんどいし」

 

吉田と村松が話しており、寺坂はそれを見て嫌味な笑みを浮かべる。まるでこの事について、彼等は何か知っている様子だ。清麿が彼等を睨み付ける。

 

「おい、お前等がやったのか?」

 

「はあ、違げーよ。つーかそんな事言うなら、証拠持ってこいや。犯人捜しはそれからだろーが!」

 

寺坂は強く反発したが、後ろの吉田と村松のバツの悪そうな顔をする。それを見た清麿が彼等が犯人だと確信した。そして、主犯は寺坂であることも。しかし、証拠がまだない。何か探せば見つかるかもしれないが、現時点では明確な証拠は見当たらないのだ。そんな中、殺せんせーが清麿と寺坂の間に入る。

 

「犯人捜しなんてしなくていいですよ」

 

殺せんせーがそう言うと、プールは一瞬で元通りになった。その工具達はどこから持ってきたのやら。しかし状況が状況であったため、誰もツッコミは入れ無い。

 

「おおっ、これでまた遊べるのだ‼」

 

「良かったね、ガッシュ君!」

 

「ウヌ!」

 

修繕されたプールを見て、ガッシュが茅野と共に嬉しそうにした。

 

 

 

 

 その日の放課後。ガッシュペアが帰ろうと校舎から出た時、村松がしゃがみ込んでいるのが見えた。

 

「村松、どうしたんだ?」

 

「大丈夫かの?」

 

「ああお前等か、ちょっと寺坂とな……」

 

村松は事の顛末をガッシュペアに話した。寺坂グループで殺せんせーの課外授業をバックレようとしたが、村松はそれをこっそり受けていた。その結果模試の成績がかなり上がったが、それが寺坂にバレて突き飛ばされてしまったのだ。

 

「寺坂、何という事を……」

 

「そういや最近アイツ、かなりイラついてるよな。何かトラブル起こさなけりゃいいんだが」

 

清麿は胸騒ぎがしていた。寺坂グループは元から暗殺にも勉強にも積極的ではなかったが、特に最近の寺坂の態度があからさまだ。吉田と村松とも、一緒にいる時間が減ってきているようにも思えた。そして清麿の嫌な予感は当たってしまう。

 

「……まあそんな事言ってても仕方ねーだろ。そういや高嶺、この前勉強教えてもらった礼をしてなかったな。おかげで前の小テスト、助かったぜ。なあお前等、家のラーメン食ってけよ。金はいいからよ!」

 

清麿は村松に、小テストに備えて勉強を教えたことがある。その時の礼をしたいとの事だ。

 

「良いのか?村松よ!」

 

「そんな、礼なんていいのに……」

 

「そういうなよ!食ってけって!」

 

喜ぶガッシュの隣で遠慮している清麿に対して、村松はラーメンを勧めてきた。そしてガッシュペアは村松の言葉に甘えて、村松家のラーメンをご馳走になる事にした。

 

 

 

 

「おい親父、ダチ連れてきたぞ!世話になった連中だから、タダでラーメン作ってくれや」

 

「あー?ったくしょうがね~な」

 

 村松家のラーメン屋に着いたとき、村松が自分の父親にラーメンを作るよう催促する。そして数分後、ラーメンがガッシュペアの前に出された。

 

「へいお待ち。ゆっくり食ってくれ!拓哉が世話になってるらしーしな!」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「いただきますなのだ!」

 

村松の父親はラーメンを出すと、彼は厨房の奥に戻る。そしてガッシュペアはラーメンを口に入れたが、箸が止まってしまった。村松自身の料理の腕は凄いのだが、実際にラーメンを作る彼の父親がイマイチなレシピを変えようとしない為、ラーメンの味は微妙だった。

 

「家のラーメン、不味いだろ?」

 

「いや、そんな事は……」

 

清麿は村松の言葉を否定しようとする。タダ飯を頂く身として彼は気を遣おうとする。しかし、

 

「ウヌ、母上殿の料理の方が美味しいのだ……」

 

「おいガッシュ。ご馳走してもらったのに失礼な事を言うんじゃない」

 

「いやいいって、高嶺。ったく親父の奴、俺の話をちっとも聞きやがらねーからな」

 

ガッシュは思っている事をそのまま口にしてしまった。しかし村松自身にも自覚はあり、特に気にしていない様子だ。

 

「……あと、プールの事なんだが……」

 

「やったのは、やっぱりお前等だったか」

 

「まあ、分かるよな……」

 

村松が申し訳なさそうな顔をして、プールを自分達が壊した事を白状した。内心かなり反省している様だ。

 

「プールの件は殺せんせーがすぐに直してくれたし、お前等が懲りてるんなら、それでいいんじゃないのか?」

 

「また皆で泳ごうぞ!」

 

プールは壊されたが、殺せんせーが簡単に直してくれたこともあり、ガッシュペアは気にしていない素振りだ。殺せんせーの規格外さが改めて露呈した。

 

「というかお前等、あんまり箸進んでねーな……まあ、ここのラーメン屋は俺が継いだ時に一新してやるよ」

 

「村松、店を継ぐ気なんだな!」

 

「頑張ってほしいのだ!」

 

村松は将来店を継ぐつもりだ。そんな彼の目には熱意が宿っている。

 

「けどラーメン屋継ぐのにも、料理の腕だけ磨いててもダメだからな。これからはあのタコに店の経営の事を聞こうと思ってる。クラスに来た当初は俺のバカさ加減じゃ無理だと思ってたが、最近イケそーな気がしてな!あのタコはスゲーよ。そーいや、吉田も店を継ぎたいって言ってたな」

 

村松の当初の学力は芳しくなかったが、殺せんせーの授業や補習のおかげで成績が伸びている。その事は村松の自信にも繋がっている。

 

「そうか。村松、頑張れよ!」

 

「ッたりめーよ!」

 

殺せんせーがE組に来た事で多くの生徒達が手入れされ、将来に希望を見出している。村松もまた、そんな生徒達の一人だった。

 

 

 

 

 次の日、ガッシュペアが登校してくるとクラスは大盛り上がりだ。その理由は殺せんせーがバイクの模型を作っており、吉田がとてもはしゃいでいた為だった。

 

「よお、高嶺とガッシュ‼見ろよこれ、殺せんせーがこの写真に写ってるバイクの模型を作ってくれたんだよ!しかも等身大で、まるで本物みてーだろ⁉」

 

「ヌルフフフ、大人な上に漢の中の漢の先生の手にかかればこの通り!」

 

吉田の実家はバイク屋だ。そんな吉田がバイクに興味を持つのは自然なのだが、同じクラスにバイク趣味を持つ生徒はいない。しかし、殺せんせーとはバイクの話が出来、先生がバイクの模型を作ってくれる事になった。

 

 そんな吉田がガッシュペアに携帯に保存してあるバイクの写真を見せたが、その写真には吉田と一緒にナイスミドルな白髪の男が写っていた。

 

「清麿、この者は⁉」

 

「ジードさんじゃないか!また日本に来てたのか。しかし、何で吉田と一緒に?」

 

吉田と一緒に写っていたバイクの持ち主は、かつてリーゼントヘアの魔物のテッドと共に魔界の王を決める戦いに参加していたジードだった。このペアは清麿の家にも泊まった事もあり、共にファウードでの激闘を乗り越えた。バイクよりも、ジードと吉田のツーショットに驚きを隠せないガッシュペアである。

 

「ああ、それはな……」

 

吉田はジードとの出会いを話し始めた。

 

 

 

 

 回想

 

 吉田が学校から一人で帰宅している途中、彼は一台のバイクを見かけた。

 

「あれ、このバイク日本製じゃねーな。外国人観光客がいるのか?にしても、かっけーバイクだな!」

 

吉田はそのバイクに見とれていたが、バイクの持ち主であるジードが駆け寄る。

 

「おいガキ!何人のバイクをジロジロ見てやがんだ⁉」

 

「いや、そんなつもりじゃねーっすよ!このバイク、カッコいいと思って……」

 

「ああ?」

 

ジードは怒りの表情を見せる。吉田がバイクにちょっかいをかける可能性を危惧しているのだ。そして吉田は慌てふためきながらも、自分のバイクの知識を生かしてジードのバイクを褒めちぎる。

 

「……何だお前、わかっているじゃないか!」

 

「ウッス、どうも」

 

それを聞いたジードは上機嫌になり、そのまま吉田と仲良くなった。そして彼のバイクをバックに、ツーショットを取ることになった。

 

「そうだお前、清麿とガッシュって奴を知ってたらよろしく伝えといてくれ。俺はもう行かなきゃいけねーから、直接会う時間はねーんだ!」

 

「あいつ等の事なら知ってるっすよ。伝えとくぜ!」

 

そしてジードはバイクを走らせ、また新たに旅立つのだった。

 

 回想終わり

 

 

 

 

「……てな訳だったんだよ。いやー最初怒鳴られた時はどうなるかと思ったんだけど、良い人だったな!」

 

「ウヌ、ジード殿も私達と共に戦ってくれたからの!」

 

「ああ、ジードさんが元気そうで良かった!」

 

「というか、この人も魔物の戦いに参加してたんだな!どんな魔物とペアだったんだ?」

 

吉田はジードが魔物の戦いに参加していたことを知る。そして彼の魔物の事を聞くと、ガッシュペアは吉田達にテッドの事を話した。

 

「……なんだよそれ。自分の大切な女の為に体張るなんて、かっこよすぎるだろ‼」

 

「彼もまた、漢の中の漢なのですねぇ‼」

 

テッドは自分の家族同然のチェリッシュをゼオンの電撃から救うために自ら体を張って敵を倒し、自分も魔界へ帰っていった。そんな話を聞いて、吉田と殺せんせーはもちろん、多くの生徒達は感動する。そんな中、寺坂が登校してきた。

 

「……何してんだよ、吉田」

 

「あ、寺坂……」

 

殺せんせーと仲良さそうにしている吉田の事が気に入らない様子だ。

 

「まあまあ寺坂君。このバイク、良くできているでしょう?先生、一度本物に乗ってみたいんですよね~」

 

「何言ってんだ。アンタならバイクに乗るよりも、抱きかかえて飛んだ方が速いだろ!」

 

「確かに!」

 

「「「「「ハハハハハ」」」」」

 

機嫌の悪い寺坂を殺せんせーがなだめようとして、吉田と一緒にギャグを言った。それに釣られて、他の生徒達も笑い出す。しかし寺坂の機嫌は直るどころか、さらに悪化した。そして寺坂は我慢できなくなり、殺せんせーの作ったバイクの模型を蹴とばして壊した。それを見た殺せんせーはそのまま泣き出してしまった。

 

「何てことすんだよ、寺坂‼」

 

「謝ってやんなよ‼大人な上に漢の中の漢の殺せんせーが泣いてるじゃんか‼」

 

吉田や中村を始めとして、周りの生徒達も寺坂を攻め立てた。初めは苛立ってた寺坂だったが、すぐに落ち着いた表情を見せて、自分の机に向かう。

 

「……てめーらプンプンうるせーな、虫みたいに。俺が駆除してやるぜ!」

 

「待て寺坂、何をするつもりだ⁉」

 

寺坂は殺虫剤のスプレー缶を取り出す。そして清麿の制止を無視して、それをそのまま床に叩きつけた。そこからは白い煙が出てきたが、体調を悪くする生徒はいなかった。どうやら中身は殺虫剤ではないようだ。

 

「寺坂君、ヤンチャするにも限度ってものが……」

 

「触んじゃねーよ、モンスター!」

 

寺坂の度を過ぎた行動に対して、殺せんせーも怒りの表情を見せて触手で寺坂の肩に触れる。しかし寺坂は冷たくそれを振り払った。

 

「気持ちわりーんだよ、どいつもこいつも!」

 

寺坂の言動に対して、E組一同は沈黙する。寺坂がそこまで不機嫌になる理由が分からなくて困惑する者、寺坂に対して冷たい視線を送る者も多い。

 

「寺坂、お主何故このようなことを……」

 

「待った、ガッシュ君」

 

寺坂に対してガッシュが物申そうとしたが、カルマがそれを止めた。

 

「寺坂の言ってることも全部が間違ってる訳じゃない。このタコが地球を滅ぼそうとしているモンスターなのは事実だし」

 

多くの生徒が寺坂に対して反発の視線を向ける中、カルマだけは寺坂の言う事を受け入れていた。

 

「要は殺せんせーが気に食わないんでしょ?……だったら殺せばいいじゃん。せっかくそれが許可されている教室なのに」

 

カルマは寺坂に対して挑発の視線を向けた。暗殺に参加しようともせず、ただ文句ばかり言う寺坂を明確に煽る。

 

「何だカルマ、テメー俺にケンカ売ってんのか?上等だよ、だいたいテメーは最初から……」

 

カルマの挑発に乗ってしまった寺坂はカルマに反論しながら近付くが、カルマの手が寺坂の口をふさいだ。

 

「ダメだよ、寺坂。ケンカするなら口より先に手を出さなくちゃ」

 

「……放せ‼くだらねー‼」

 

寺坂はカルマの手を振りほどいて、そのまま教室を出てしまった。多くの生徒が今の寺坂とどう接すれば分からない様子だ。殺せんせーも、何か考えているような素振りを見せる。

 

 

 

 

 夜の裏山に、寺坂は1人で来ていた。そして彼はプールに昼間にばらまいた薬物と同じ物を垂れ流す。

 

(俺はただ、その日その日を楽して適当に生きたいだけだ。だから俺は)

 

そんな寺坂に対して、1人の男が10万円を渡していた。

 

「ご苦労様。プールの破壊、薬剤散布、薬剤混入、君のおかげで効率良く準備が出来た。また次も頼むよ」

 

(……こっちの方が、居心地が良いな)

 

寺坂に報酬を渡していた男の正体はシロだ。もちろんイトナも隣にいる。そしてイトナは急に寺坂に近付いた。

 

「お前の目にはビジョンが無い。勝利への意志も手段も情報もない。だからお前は弱いんだ」

 

「んだと、テメー⁉」

 

「イトナ、やめなさい」

 

言いたいことだけ言って離れて行ったイトナに対して、寺坂は憤慨する。そんな寺坂をシロはなだめていた。

 




 読んでいただき、ありがとうございました。バイク繋がりで、回想と写真だけですがジードに登場してもらいました。
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