2日間の期末テストは終了した。そして3日後、学年内順位と答案が一緒に届けられた。ついにA組との勝負、触手を壊せるかの勝負の結果が明らかになる。普段は外にいるガッシュも含めてE組一同、緊張感が漂う。
「さて皆さん、全教科の採点が届きました。では発表します。まずは英語から……E組の1位、そして学年でも1位‼中村莉桜‼」
英語では中村が100点満点で学年トップを取った。クラスは歓声が沸き上がり、彼女は自信満々な顔で下敷きを仰ぐ。しかしまだ1勝で触手の破壊も1本のみ、これからの結果に期待だ。また渚も英語で上位を取っていたが、スペルミスが目立っていた。
「続いて国語、E組1位は神崎有希子と高嶺清麿の同率1位‼……がしかし、学年1位はA組浅野学秀‼神崎さんと高嶺君も、よく頑張りましたね」
E組での1位は神崎と清麿の98点だったが、学年で見ると2位だ。そして1位の浅野は100点満点だった。
「清麿、残念だったのう……」
「そうだな。だが、まだ他の教科の結果も残っている」
清麿と神崎は残念そうにする。これで現状1勝1敗、クラス一同緊張の表情がハッキリ出ている。勉強に関してE組に立ちはだかる最大の壁、浅野学秀。彼を倒さない限りは学年トップを取ることは出来ない。
「……では続けて返します。社会‼E組1位は磯貝悠馬97点‼そして学年では……おめでとう‼浅野君を抑えて学年1位‼」
「よっし‼」
磯貝が社会で学年1位を取り、勝負は2勝1敗。この結果に磯貝も声をあげてガッツポーズをする。そして次は理科。ここで奥田が学年1位を取れば、5教科の勝ち越しが決定である。
「理科の1位は奥田愛美‼そして……素晴らしい‼学年1位も奥田愛美‼」
A組との勝負の勝ち越しが決まった瞬間である。また、ここまでで3本の触手の破壊の権利を生徒達は得られた。クラス一同喜びの表情を見せる。
「さてこれでA組との勝負の勝ちは決まった訳ですが、まだ先生の触手をかけての結果発表は続きます。次は数学、E組1位は高嶺清麿100点満点‼浅野君と同率ですねぇ」
数学の1位は清麿だったが浅野も100点を取っていた。しかし100点満点での同率1位であるため、無事に清麿も触手を破壊する権利が得られた。
「清麿、やったのう!」
「ああ、触手は多く破壊出来るに越したことは無いからな!」
ガッシュペアは喜ぶが、残念ながら清麿は総合1位は得られなかった。総合点の学年1位は浅野の491点で、清麿は490点で学年2位だった。椚ヶ丘中学校の試験は難易度が高く、高得点を取るのは容易ではない。実際にトップの浅野も500点満点は取れていない。
浅野と清麿も僅か1点差で、彼等の学力には差はない。ただ3年間椚ヶ丘中学校に属している浅野の方が自分の中学のテスト問題に慣れており、清麿はアウェイな環境でテストを受けていた。それだけの差である。こうしてテストの返却は終了した。
「さて私は少し外に出ます。待っててください」
殺せんせーが超スピードで教室を出た。一瞬あっけに取られたE組一同だったが、すぐに自分達の勝利と成長に対して喜びの感情が沸き上がる。
そして多くの生徒が、席を立って他の生徒と話したりした。特に社会1位の磯貝の周りには多くの生徒が集まる。エンドのE組はA組との勝負に勝つことが出来たのだ。
「私やりましたよ‼高嶺君、ガッシュ君‼」
「ウヌ!愛美、すごいのだ‼」
「ああ、よく頑張った奥田‼」
清麿の前の席の奥田が喜びのあまり席を立つ。そんな彼女はガッシュと手を握り、はしゃいでいた。多くの生徒が喜んでいた中、そうではない生徒を清麿は見かけた。
「よっ、神崎」
「あ、高嶺君」
多くの生徒が喜んでいる中、神崎は国語で学年1位を逃した為に悔しそうな表情を見せる。そんな彼女に清麿が近付いて話しかけた。
「私、触手破壊する権利を手に入れられなかったなぁ。やっぱり悔しいよ」
「ならば、次頑張ろう!今度こそ浅野に一泡吹かせてやろうぜ!」
元気のない表情をしていた神崎に清麿が活を入れる。彼もまた今回のテストの結果に思うところがあり、神崎の気持ちを察する事が出来た。
「そっか……高嶺君、総合で1位取れなかったのが悔しいんだね」
「その通りだ、中間でも負けてるからな。次こそは勝ってみせる」
神崎が国語で学年トップを取れなかった事と同様に、清麿もまた総合で1位を取れなかった事を悔しがる。そんな清麿が自分を励ましてくれて、先程まで浮かない表情をしていた神崎は元気を取り戻すことが出来た。そして彼女は1人の生徒が教室にいない事に気付く。
「……そういえば、さっきからカルマ君がいないね」
「アイツなら外にいるぞ。殺せんせーと何か話しているな」
清麿が窓を指差すと、カルマと殺せんせーが一緒にいた。赤羽業、数学85点、総合469点で、中間よりも大きく順位も点数も落としていた。彼が期末テスト勉強に真面目に取り組んでいなかったが故の結果である。そんなカルマを殺せんせーが煽りながらも手入れを施すが、彼は先生の触手を振り払い、校舎に近付いてきた。
そして殺せんせーは、今度は烏間先生と話しを始める。そんな様子を2人はしばらく見ていたが、清麿が口を開いた。
「それから、神崎に謝らなくてはいけないことがあるんだが……」
「え、何?」
「それはだな……」
清麿が申し訳なさそうにする。神崎は何事かと思ったが、清麿が話している途中でカルマと殺せんせーが同時に教室に戻ってきた。
「さて皆さん、嬉しい気持ちはわかりますが席について下さい」
殺せんせーの言葉を聞いて、生徒達は自分の席に戻った。そんな様子の中、清麿は話の続きが出来なくなってしまった。
「話の途中で悪いが、俺は席に戻るぞ」
「うん。ありがとうね、声かけてくれて」
清麿もまた自分の席に着く。また彼が神崎に話しかけたことにより、彼女の表情は大分柔らかくなっていた。
「さて皆さん、素晴らしい成績でした。早速暗殺の方を始めましょうか。トップの4人はご自由に」
殺せんせーは緑の縞々模様を浮かべる。例え先生の触手が4本破壊されたところで、生徒達の暗殺から逃れるのは難しくないと高を括っていた。しかし、
「おい待てよタコ、5教科のトップは4人じゃねーぞ」
寺坂グループの4人が殺せんせーの前に出てきた。彼等は何か企んでいる様子だった。
「?4人ですよ、寺坂君。数・英・社・理・国合わせて……」
「はァ、アホ抜かせ。5教科っつったら数・英・社・理……あと家だろ‼」
(か……家庭科ァ~~~⁉)
寺坂グループの悪だくみの正体がこれだ。グループ全員で家庭科100点を取り、触手を破壊する権利をより多く得る。確かに殺せんせーは5教科と言ったが、どの5教科とは言わなかった。その盲点をついて、寺坂グループ4人は見事に触手を破壊する権利を得た。ちなみに同じく計画に参加した清麿は、予想外の範囲からの出題及び自身の料理スキルの無さ故に100点は取れなかった。
「おい高嶺、家庭科100点逃してんじゃねーよ!」
「すまんお前等!」
「ったく、まあオメーは数学で触手破壊できるからいいけどよ」
家庭科で満点を取れなかった清麿だが、数学で1位を取っており、寺坂グループからのお咎めは無かった。
(そう、これは詭弁ギリギリの作戦。学年1位を逃した科目と家庭科を入れ替えて5教科と主張すること。これがあいつ等の作戦だったわけだが……)
しかしこの方法では、入れ替えられた教科において例え学年で1位を取れなくても、必死でその科目で1位を目指して勉強してきた生徒の努力を蔑ろにする事にも繋がりかねない。清麿はそれを危惧していた。そして今回の場合は、入れ替えられた科目は国語。つまり神崎の努力を無にしてしまうと清麿は考えたが、神崎は清麿の方を向いて微笑む。
(高嶺君が気にしてたのは、この事だったんだ。でも、私が1位を取れなかったのは事実だから仕方ない。次は負けない!)
神崎は清麿の考えを察してなお、清麿達を責めようとは思わなかった。それどころか今回の事で、より勉強に対してやる気を見せる。おしとやかに見られがちな神崎だが、彼女はとても強かだ。そんな神崎と目が合った清麿は申し訳なさそうに両手を合わせるが、彼女は気にしていない様子だった。
「竹林もだ!俺等の誘い断っときながら総合1位逃してんじゃねーよ!」
「ああ。面目ない、寺坂。僕が甘かった」
寺坂の誘いを断って総合1位を狙っていた竹林だが、成績は片岡と同率で学年8位のクラスでは2位だった。そんな竹林の目にも、神崎同様に闘志が宿っている。
「クラス全員でやればよかったかしら、この作戦」
狭間達は笑みを浮かべるが、殺せんせーは家庭科での触手破壊を認めようとしない。そんな殺せんせーを見かねた千葉は、後ろの席のカルマの方を見て殺せんせーを指差した。そんな千葉の意図をカルマはすぐに察した。
「……それ、家庭科さんに失礼じゃね、殺せんせー?5教科の中じゃ最強と言われる家庭科さんにさ」
カルマは先ほど殺せんせーに煽られたことを根に持っており、ここぞとばかりに殺せんせーを咎めた。そんな彼の発言に便乗して、他の生徒達も寺坂グループの主張を殺せんせーが受け入れるよう口を出した。
「こういう時はさすがだな、赤羽」
「そりゃどうも、高嶺君」
殺せんせーに痛い所を付かれたカルマだったが、落ち込んでいる表情は見られなかった。すでに彼は吹っ切れているのだろう。清麿は安心する。
「ところで高嶺君」
「どうした赤羽?」
カルマの口元から突如笑みが消えた。清麿もそれを見て何事かと思い、身構る。
「次は絶対負けないよ。浅野君にも、高嶺君にも!」
「……ああ、上等だ!それに俺も、浅野には勝ててないしな」
テストにおいて、カルマからの宣戦布告だ。清麿も堂々とそれを受けとった。今回で悔しい思いをしたカルマはもちろん、浅野相手にテストで一度も勝てていない清麿もまた、気合を入れ直す。カルマから慢心が消えた瞬間である。
そして彼等が決意を新たにしていると、殺せんせーが怯えながらも寺坂グループの主張を飲んでいた。
「ウヌ、これで殺せんせーの触手を沢山破壊できるのだ!」
「これで暗殺がかなり有利になるぞ」
喜んでいるガッシュの頭に清麿が手を乗せて、彼を撫でる。かくしてE組は今回の期末テストで8本もの触手を破壊出来る権利を得られたが、暗殺はすぐには開始されなかった。
「それと殺せんせー。これは皆で相談したんですが、この暗殺に……今回のかけの“戦利品”も使わせてもらいます」
触手を8本も破壊されることになり、怯え切っている殺せんせーに磯貝が提案する。
そして期末テストも無事終わり、終業式の日となった。E組一同はA組に約束を守ってもらうべく、浅野率いる5英傑と対面する。
「浅野、かけてたよな。要求はさっきメールで送信したけど、あれで構わないな?」
「……良いだろう」
磯貝の要求を浅野は、顔を強張らせながら了承した。
「……それから高嶺清麿はいるか?」
「ん、俺がどうかしたのか?」
浅野の突然の指名に、清麿は何事かと考える。
「話がある。終業式が終わったらここで待っててくれ」
「……分かった」
浅野はただならぬ表情をして清麿を睨み付ける。それを察した清麿は返事と共に浅野を睨み返した。
今回の終業式にはカルマが来た。彼も期末テストで思うところがあり、珍しく式に顔を出したのだ。また偽律も式に参加していた。彼女の隣でテストを受けた菅谷は、試験に集中できずにクラスで最下位となっていた。しかし学年で見れば中位の成績で、烏間先生は感心する。そしてE組が期末テストでトップ争いをした事で、いつものE組いじりはウケが悪かった。
終業式終了後、清麿は浅野と体育館の裏の誰もいないところで対面した。
「まずは自己紹介からかな?浅野学秀だ、よろしく」
「ただ自己紹介しに来た訳じゃないんだろ?どういうつもりだ?」
清麿は浅野を警戒する。理事長の息子が直接E組である自分を呼び出したのだから。彼が何かを企んでいるとしか思えなかった。
「そうだな……まずは君、A組に来る気はないかい?」
「は?」
浅野の意外過ぎる提案に、清麿の頭には疑問符が浮かぶ。なぜか理事長の息子が直々に自分をA組に入れようとしているのだから、無理もない。
「君がA組にいる方が、色々と都合が良いんだよ。本校舎の生徒の中には君を恐れている者が多い。しかし、E組を本校舎の生徒が恐れる構図は良くない。そこで君がA組に来てくれれば問題は解決するし、君も不遇なE組から抜け出せる。お互いwin-winじゃないか。どうだろうか?」
「断る」
浅野の提案を、清麿は速攻で断った。そもそも清麿はガッシュと共に理事長の推薦で地球を滅ぼす超生物を殺すためにE組に来ているのだから、E組を抜けるという選択肢は初めから無い。しかし浅野は、その事を知る由も無かった。
「まさか即答とはな、残念だ。確か君は理事長の推薦で編入してきたのだろう?しかもわざわざE組に入るとは」
「それがどうしたと言うんだ?」
「でははっきり聞こう。
今のE組では、何が起こっているんだ?」
浅野の直接的な質問。数少ない手掛かりを元に、浅野はE組では普通ではない何かが起こっていることを確信した。理事長には否定されたが、その理事長が推薦してきた清麿なら何か聞き出せるのではと思い、彼を呼び出したのだ。
「……何もないぞ。何でそんな事聞くんだ?」
清麿は一瞬の沈黙の後、浅野の言葉を否定した。また清麿は浅野の手強さも思い知った。E組の成績向上、自分達の編入、理事長の必要以上の介入というヒントからE組で何かが起こっているという答えにたどり着いたのだから。
「それは本当かい。それなら良いが……」
(コイツ、内心ではまだ疑っているな。気を抜いたら殺せんせーの事がバレる可能性が高い。要注意だな)
清麿の考え通り、浅野はまだE組に何かあると言う疑問を捨てていなかった。清麿は浅野に対しては特に警戒する必要性を感じた。
「(僕を勘ぐっている目、隙を付くのは容易ではなさそうだ)まあいい。そうだ、これはE組全員への伝言だが、良いかな?」
「何だ?」
「
「!……伝えておこう(理事長の息子だけあって、油断すると呑まれかねんな)」
今回のテストでE組とのかけに破れた浅野も辛酸を嘗めていた。そんな彼の気迫とE組に対する明確な敵意を清麿は感じ取って、場の緊張感が一気に高まる。さすが理事長の息子と言うべきか、浅野もただならぬ雰囲気を醸し出していた。
「(僕の気迫に少しも怯えていないな。警戒心も申し分ない。ふむ、コイツは手強い)話は以上だ。E組を抜けたくなったら何時でも連絡してくれ」
「俺がE組を抜けることは無いぞ!」
浅野は清麿の最後の言葉を聞かずにそのまま去ってしまった。清麿と浅野の初対面だが、お互いを手強い相手だと認識する結果となった。
(高嶺清麿、やつを支配するのは容易ではなさそうだ。理事長の推薦だけあって厄介だ。だが僕は全てを支配する。今回のような失態は許されない!)
浅野はE組に対して、強い敵対心を持ち始めていた。
そして清麿がE組の校舎に戻ると、他の生徒は全員席についており、ガッシュと先生達も全員教室にいた。
「やっと清麿が帰ってきたのだ!」
「お、高嶺君も戻りましたか。それではこちらを」
「……これはアコーディオンか何かか?」
殺せんせーが清麿に夏休みのしおりを渡したが、清麿はあからさまに困惑の表情を見せる。修学旅行よりも更に厚く、全てに目を通すのは容易では無い。清麿がそれを持って席に着いたのを見て、殺せんせーが話を続けた。
「皆さんがかけでもらった沖縄離島リゾート2泊3日!これは夏休みのメインイベントになりますねぇ」
A組からもらった物は、成績優秀クラスに与えられる離島への合宿の特典だった。そしてE組は見事にA組に打ち勝ち、これに行ける権利を勝ち取ったのだ。
「……君達の希望だと、触手を破壊する権利はこの合宿中に使うという事でしたね。ただ触手を破壊するだけでなく、四方を先生の苦手な水で囲まれたこの島も使い、万全に貪欲に命を狙う。正直に認めましょう、君達は侮れない生徒になった」
殺せんせーは成長した生徒達に感銘を受ける。そして殺せんせーは大量の紙に二重丸を書いて、それを通知表だと言って教室にばらまいた。この二重丸は、殺せんせーから生徒達への嬉しい評価に他ならない。
「暗殺教室、基礎の一学期……これにて終業‼」
殺せんせーの言葉と共に、生徒達は教室を出た。
「清磨、旅行楽しみだのう!」
「ガッシュ、気持ちは分かるが暗殺の為の合宿でもあるんだ。気を抜くなよ!」
「ウヌ‼」
2泊3日の合宿で彼等は大規模な暗殺計画を行うのだが、その結果や如何に。ちなみに、アコーディオンの如く厚い夏休みのしおりは全生徒が教室に置いていったため、殺せんせーが直接生徒の家に配りに行った。
読んでいただき、ありがとうございました。神崎さんの国語の点数は、原作よりも高得点です。次回から夏休み編入ります。