ガッシュペアの暗殺教室   作:シキガミ

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 夏休み編は今回で最後になります。


LEVEL.38 夏祭りの時間

 ウマゴンペアがアフリカに旅立った数日後には恵も戻ってきて、ティオは再び彼女に引き取られた。その日の夜、清麿はナゾナゾ博士と通話する。

 

「ナゾナゾ博士、何か分かったのか?」

 

『それが困った事に、死神に関する情報が全く入って来なくなったんだよ』

 

「な、何だって……」

 

ナゾナゾ博士はアポロと共に引き続き死神についての調査を行うが、情報網が遮断されていた。

 

「なあ。これ以上嗅ぎまわるのは、博士やアポロにとってもヤバいんじゃないのか?」

 

清麿は彼等の身を案ずる。自分が調査されている事を死神が知れば、何をしでかして来るか分からない。

 

『何を言う、君達の命も危ないかもしれないんだ。我々が何もしない訳にはいくまい』

 

「……分かった、無理するなよ」

 

『了解した、ではお互いに気を付けよう。君達の健闘を祈る』

 

清麿と博士の通話は終了した。清麿は電話の内容をガッシュに伝えた後、そのまま眠りについた。

 

 

 

 

 夏休み最終日の夕方。特訓を終えたガッシュペアが家で一息ついていると、玄関のチャイムが鳴った。

 

「清麿とガッシュちゃん、今手を離せないから出てくれる?」

 

「「分かった」のだ!」

 

ガッシュペアが扉を開けると、水野・山中・岩島の3人がそこに立っていた。そして水野は空色の浴衣を着ている。

 

「高嶺君とガッシュ君、椚ヶ丘のお祭り行こ~よ~」

 

祭りの誘いだ。水野達にとっても夏休みは最終日で、皆で遊ぼうとの事である。モチノキ町からは少し離れてはいるが、彼等にとってはそんな事は関係ない。

 

「もちろん行くよな、お前等⁉」

 

「中学最後の夏休み最終日だからね、遊ばない手はない!」

 

山中と岩島も乗り気だ。水野に至っては浴衣を準備するほど楽しみにしている様子だった。

 

「ウヌ、行きたいのだ‼」

 

「それは構わんがお前等、課題は全部終わってるのか?」

 

「「「もちろん!」」」

 

中学3年生の夏休みは受験に大切な時期だが、時には遊ぶことも大事だ。水野達の勉強事情を心配しつつも、清麿も誘いを了承した。

 

「高嶺君が教えてくれたから、課題はバッチリだよー」

 

水野が自信ありげにそう言う。しかし清麿は、そんな水野達の後ろに変装しているとは言え、堂々と殺せんせーが立っている事が気がかりだった。ちなみにガッシュは山中・岩島と話していた為気付いていない。

 

「高嶺君、どうしたの?」

 

「いや、なんでもないぞ……(おい、国家機密がどういうつもりなんだ!)」

 

(是非、お祭りに来て下さいね~!ヌルフフフ)

 

心の中でツッコミを入れた清麿をよそに、殺せんせーは夏祭りの誘いについて書いてある木の板を持っていた。殺せんせーはE組の生徒を片っ端から祭りに誘っている。そしてガッシュペアが祭りに来てくれる事を察した殺せんせーは、超スピードでその場を去る。

 

「よし、そうと決まれば早く行こーぜ‼」

 

「分かったのだ‼」

 

山中の言葉を皮切りに、彼等は椚ヶ丘の夏祭りを目指す。夏休み最終日の夜くらいは、暗殺も特訓も勉強も忘れて遊んでも罰は当たるまい。

 

 

 

 

 時は少し遡る。殺せんせーは生徒達以外にも、ロヴロをも夏祭りに誘っていた。

 

「……標的からの誘いは有難いが、あいにく今は別の仕事で日本国外だ」

 

『にゅやッ⁉』

 

しかしロヴロは日本を離れており、祭りに参加する事が出来ない。そんな彼が歩いていると、突如目の前に男が立っていた。

 

(いつの間に‼俺に気配を気付かせずこの距離まで……この殺気で‼)

 

ロヴロは直ぐに男から離れたが、男はロヴロを指差す。

 

「生まれた時から、私はいつも君の隣に。畏れるなかれ、“死神”の名を」

 

その男、死神がそう言うと、ロヴロは血まみれになりながら地に伏した。

 

 

 

 

 時は戻って、清麿達は夏祭りに来ていた。彼等は射撃の屋台の前で、2人組の男女が景品を大量に抱えている光景を見かける。

 

「見てー、射撃だよ……ってあの人達凄ーい!」

 

水野がその2人組を見て感心するが、彼等はガッシュペアとも馴染みのあるクラスメイトだった。

 

「清麿、あの者達は……」

 

「千葉と速水じゃないか!」

 

「……高嶺とガッシュか」

 

「アンタ達も射撃やりに来たの?」

 

千葉と速水も彼等に気付いたようで、2人はガッシュペアの方に駆け寄る。彼等は大量に景品を手に入れたのだが、どこか浮かない顔を見せる。

 

「お前等、相変わらずの射撃スキルだな……」

 

「そのおかげで出禁くらっちまったがな」

 

「同じく、イージーすぎて調子に乗った……」

 

「ウヌ、そうであったか」

 

彼等の射撃の技術を持ってすれば、止まっている景品に弾を当てるなど朝飯前だ。それ故に多くの景品は2人によってかっさらわれてしまった。それを見かねた店員が千葉と速水を出禁にした様だ。

 

「お前等もやり過ぎない様気をつけろよ……」

 

「じゃあ、私達は行くから……」

 

「お、おう」

 

「またなのだ」

 

2人共バツの悪そうな顔をしたままその場を去って行く。そんな2人に対してガッシュペアは哀れみの視線を向けた。

 

「何だ、お前等の知り合いだったのか?」

 

「今のクラスメイトだ。あいつ等、射撃が得意だからな」

 

千葉と速水がその気になれば、彼等だけで店じまいまで追い込む事すら可能であろう。清麿が呆れ混じりの表情で山中の質問に答えていると、水野とガッシュが射撃の景品に興味を示した。

 

「あ、“洋ナシちゃん”のぬいぐるみがある!」

 

「私はカマキリジョーの人形が欲しいのだ!」

 

“洋ナシちゃん”はナシの姿をした魔法使いで、大人気らしい。彼等は自分の好きなキャラクターのグッズを見つけた。その時、山中が清麿の肩を組む。

 

「おい高嶺、水野に良い所見せるチャンスじゃないのか?」

 

「ガンバレ~」

 

「え、これ俺がやる流れなのか?」

 

岩島も便乗して清麿を応援する。そして水野とガッシュもまた清麿に期待の眼差しを向けて来た。

 

「は~、しゃあない。1回分だけだぞ」

 

「お、いらっしゃい……景品の取り過ぎは勘弁な」

 

仕方なく清麿は射撃を行う事になる。そして店員は、景品を大量に取られる事がトラウマになっている様子だ。

 

(ライフル型か。暗殺の訓練ではハンドガンばかり使っていたからな、どうしたものか……【答えを出す者】(アンサートーカー)を使う訳にはいかんよなぁ)

 

清麿にとっては扱いに慣れていないライフル型だが、そんな事を水野達は知る由もない。

 

(取り敢えず1発撃ってみるか)

 

清麿は洋ナシちゃんのぬいぐるみ目掛けて弾を撃つ。命中こそしたが、標的を落とす事は出来なかった。

 

「惜しいのだ、清麿‼」

 

「行けるよ~、高嶺くーん‼」

 

「お前等、声がでかいぞ!」

 

大声で応援する水野とガッシュを清麿は黙らせる。そして彼は次の発砲の準備に入った。

 

(なるほど、ライフル型の使い勝手はこんなもんか。千葉や速水のようにはいかんだろうが、あいつ等が欲しがってた景品を落とすことくらいは出来そうだ。暗殺の訓練がこんな所で活かされようとは)

 

清麿は洋ナシちゃん目掛けて発砲し、景品を落とすことに成功した。

 

「よくやった、高嶺!」

 

「流石だよ~」

 

洋ナシちゃんのぬいぐるみをゲットした事に関して、山中と岩島が感心する。

 

「凄いよ、高嶺君!」

 

「ウヌ、次はカマキリジョーなのだ!」

 

水野はとても喜ぶ。その隣では、ガッシュは自分の欲しい景品が手に入るのを心待ちにする。

 

(さて、次はあれか……)

 

清麿はカマキリジョーの人形に狙いを定める。そして難なく景品を撃ち落とす事に成功した。

 

「良かったね、ガッシュ君!」

 

「ウヌ!」

 

ガッシュが目を輝かせる。清麿は無事に2人が欲する景品をゲットした。

 

(よし、狙いの物は全部取ったな。後は特に欲しい物も無いし、出禁も嫌だから適当に流すとしよう……)

 

そして清麿は、残りの弾は全て外すか景品が落ちないように当たるようにした。その後、彼は水野とガッシュが欲しがっていた景品を持ち帰る。

 

「ほれ、水野。これで良いか?」

 

「うん!ありがとう、高嶺君!」

 

清麿からぬいぐるみを貰えるという喜びのあまり、水野は涙を流す。そんな光景を、山中と岩島はニヤニヤしながら見ていた。

 

「清麿、私にもカマキリジョーを……」

 

「お前にはあげない」

 

カマキリジョーの人形を受け取ろうとしたガッシュだが、意地の悪そうな顔をした清麿に拒否される。

 

「ヌオオオオォ‼」

 

ガッシュは絶望感に溢れた顔を見せた後、泣きながら水野に抱き着いた。そんなガッシュに水野達は哀れみの視線を送る。

 

「高嶺君、そんな事言ったらガッシュ君が可哀そうだよ」

 

「ったく、冗談だよ。ほれ、ガッシュ」

 

清麿は本気でガッシュにあげないつもりではない。そしてカマキリジョーの人形をガッシュに渡した。

 

「ウヌ、ありがとうなのだ!」

 

ガッシュは完全には泣き止んでいなかったが、人形を貰えたことはとても喜ぶ。

 

 

 

 

 そして一行は屋台を見て回っていたが、ガッシュが立ち止まった。

 

「ウヌ、お腹が空いたのだ」

 

「そーいやここに来てから何も食ってなかったな!」

 

「何か食べようよ」

 

「何が良いかの……」

 

ガッシュが空腹を訴えたが、山中と岩島も同じく腹を空かせる。屋台にはたくさんの食べ物があり、彼等は何を食べようかと悩む。そんな時、

 

「清麿、あれは……」

 

「ああ、あのあたりの屋台は全部殺せんせーの分身が店を回しているな」

 

焼きそば・フランクフルト・タコ焼き・かき氷等のお店を殺せんせーが1人で経営していた。そんな先生を見て、ガッシュペアは殺せんせーの方に駆け寄る。

 

「凄いのだ、全部先生がやっておるのか……」

 

「来てくれましたか!良い小遣い稼ぎですよ、ヌルフフフ!さあ、何にしますか?」

 

「やれやれ……」

 

こうしてガッシュペアは殺せんせーの店から色々な品を購入して、水野達と共にそれらを食べた。その後、ガッシュが何かに気付く。

 

「カレーの匂いがするのだ……美味しそうな匂いだの!」

 

近くにカレーを出す店は見当たらなかったが、鼻の利くガッシュはカレーを嗅ぎ付けた。

 

「ガッシュ君の話を聞いてたら、また食べたくなってきちゃった」

 

「まだ食うのか……まあ良い、そこにも行ってみるか」

 

水野もカレーを食べたがっており、清麿達はカレーを食べる事に決めた。

 

 

 

 

 そしてガッシュの嗅覚を頼りに、カレーの屋台を見つけた。しかし屋台の中には、意外な人物がいた。

 

「あ、高嶺君とガッシュ君も来てたんだ。いらっしゃい」

 

「ウヌ、寿美鈴ではないか!」

 

「原、お前店出してたのか?」

 

「このお店、親戚がやっているからね。私も手伝いをしてたんだよ」

 

何とそのカレーの屋台では、原が接客をしていたのだ。これにはガッシュペアも驚きである。

 

「そうであったか!寿美鈴がカレーを作ったのか?」

 

「まあね。全部1人でやった訳じゃないけど」

 

「随分いい匂いのするカレーだな。見事に食欲をそそってくる……」

 

原が作ったカレーを前に、食事を取ったはずの彼等は再び空腹に見舞われた。そして清麿達はここのカレーを食べる事に決める。

 

「どうも、まいどあり!」

 

「それじゃあ原、明日学校でな」

 

「またなのだ!」

 

ガッシュペアが原に挨拶を済ませると、彼等は屋台の近くの休憩スペースに座る。そして彼等はそこでカレーを美味しそうに食べる。

 

「凄く美味しい!高嶺君のクラスメイトの人、料理が上手なんだね!」

 

「ああ、原は家庭科に関する技術に長けてるからな」

 

原は料理などの家事全般が得意だ。そんな彼女のスキルが屋台でも活かされている。

 

「カレーと言えば、林間学校を思い出すよね」

 

「あん時のカレーは酷かったよな、ハハハ!」

 

「おおっ、懐かしいのだ!」

 

岩島・山中・ガッシュが林間学校の話をする。奇しくも今いるメンバーはそこでカレー係になった面子だが、カレーの味は悲惨だった。

 

 

 

 

 カレーを食べ終えた一行は、屋台巡りを再開する。そこでは磯貝が数多くの金魚をすくっていたり、渚と茅野が水風船を大量にゲットしたりしていた。暗殺技術の繊細な部分が活かされている。

 

「高嶺君のクラスメイト、凄いね……」

 

「ああ、中々キャラの濃い連中が揃ってるじゃねーか!」

 

「面白そうな人達が多いね~」

 

それらの光景を見ていた水野達が、清麿のクラスメイトに感心する。E組は個性豊かなメンバーが集まっている。

 

「E組の皆は色んな事が出来るのだ!」

 

「キャラの濃さなら、お前等も負けてないと思うがな」

 

確かにド天然の水野・超熱血野球少年の山中・UFOマニアの岩島と、前の清麿のクラスメイトもキャラが立っている。そんな時、ガタイの良い男が近付いてきた。

 

「ちくしょー、ここら辺にもツチノコいなかったかー!」

 

何と金山がツチノコを探して、夏祭りの会場近くをうろついていたのだ。

 

「あ、オメー等も来てたのかよ!」

 

「金山、相変わらずだな」

 

不良にしてツチノコマニアの金山も、かなり個性豊かと言える。ガッシュペアの周りには、愉快な人材が集まりやすいのかもしれない。

 

 

 

 

 そして一行には金山も加わり、彼等は花火を見ていた。

 

「わー、綺麗だよ!高嶺君」

 

「ああ、そうだな。水野」

 

水野と清麿は花火を見ていたが、それ以外のメンバーは少し離れている。彼等は清麿と水野を2人にさせたがっていたが、ガッシュはその目的に気付かない。

 

「ウヌ、何故清麿とスズメから離れるのだ?」

 

「ま、いいからいいから」

 

それを不思議に思ったガッシュだが、山中達にはぐらかされてしまう。一方水野は、清麿がくれたぬいぐるみを取り出した。

 

「高嶺君、洋ナシちゃんありがとうね!あと、今日はとても楽しかった」

 

「ああ、俺もだよ!」

 

「またこうやって、遊びに来ようね!」

 

「そうだな。俺もこういう時間は大切にしたい」

 

清麿と水野は花火を見ながら話す。水野は少し顔を赤くしていたが、清麿がそれに気付いていたかは定かではない。

 

 

 

 

 2人が共に花火を見ている光景を、ガッシュ達以外にも見ている者がいた。

 

「高嶺君、恵さんとは違う女子と仲良さそうにしてるね~」

 

「あのカチューシャの子、もしかして高嶺君の事が……」

 

「あんまり覗き見ない方が良いんじゃない?」

 

今回も清麿が女子と仲良さそうにしている様子をカルマ・茅野・渚が見ていたが、それは彼等だけでは無い。

 

「高嶺の奴、女の子を引っ掛けてやがる……」

 

「前原、言い方……」

 

そこには前原と、袋に入った大量の金魚を抱えた磯貝も一緒にいた。そして彼等は水野の事は何も知らないにも関わらず、彼女の清麿に対する好意を察する事が出来た。

 

「高嶺も結構モテるのな」

 

「これはイジり甲斐がありそうだね~」

 

前原とカルマの言葉を、他の3人は苦笑いをしながら聞いていた。

 

 

 

 

「高嶺君と彼女、良い雰囲気ですねぇ。そうは思いませんか?」

 

 変装している殺せんせーもまた、1人の生徒と共に彼等を見ていた。しかしその生徒からはとんでもない言葉が発せられる。

 

「え……E組を抜ける?」

 

その生徒からの驚愕の一言。2学期の暗殺教室は大波乱から幕を開ける。

 




 読んでいただき、ありがとうございました。次回からは2学期編に入ります。
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