ガッシュペアはデュフォーと共にテレビを見ながら朝食を取っている時、テレビのニュースではとんでもないニュースが取り上げられていた。
「随分頭の悪い事をする奴がいるな」
「……あ、ああ。世も末だ……」
「ウヌ?」
椚ヶ丘で下着泥棒が出現したのだ。モチノキ町では被害が出ていないようだったが、犯人は“ヌルフフフ”と笑いながらFカップ以上の女性をターゲットにしていた。
「どうしたのだ、清麿?」
「いや、何でもないぞ(……まさか、そんなはずは無いと思いたい)」
ニュースで取り上げられていた犯人の特徴が殺せんせーと一致している。ガッシュは気付いていなかった為、清麿は適当にはぐらかしておいた。
ガッシュペアが登校すると、殺せんせーが生徒達から汚物を見る目で見られていた。
「皆、どうしたと言うのだ?」
「ガッシュ、ニュース見てないの?」
何も分かっていないガッシュに対して、速水が下着泥棒の記事を見せながら解説した。生徒の大半が殺せんせーが犯人だと決め打っている。
「この犯人、殺せんせーみたいなのだ!」
「いや、殺せんせーしかいないでしょ」
「殺せんせー、悪い事をしておったのか?」
速水に断言されて、ガッシュは泣きそうな顔を見せる。一方殺せんせーは、冷や汗を掻きながら無実を訴えていた。
「待てよ皆、決めつけるなんてひどいだろ⁉」
その中でも、磯貝は殺せんせーの無実を信じていた。彼は今までの殺せんせーの言動を振り返るが、その脳内には先生のこれまでのエロい行為ばかりが浮かんでしまった。そして、
「自首して下さい‼」
「そんな、磯貝君‼」
磯貝も先生が犯人だと決め打った。さらに殺せんせーの机から女性下着が入っていたり、クラスの出席簿に女子のカップ数の記入が見られたり、次々と証拠が出ていた。
「私の“永遠の0”って何なのよー‼」
「カエデ、落ち着くのだ!」
「茅野さん、今はそれどころじゃ……」
自分のカップ数を見た茅野が荒ぶっていたが、ガッシュと奥田に取り押さえられていた。ただでさえ胸の事をコンプレックスに感じている彼女に対して、Aカップ扱いすらされない事の屈辱は計り知れない。
「知りません‼先生は……」
殺せんせーはなおも無実を主張するが、大半の生徒達はそれを聞き入れようとしなかった。ここまで証拠が出てきているのだから、無理もない。
「こんな、こんなのは……」
「殺せんせーは無実だ」
殺せんせーが狼狽している中、清麿が口を開いた。侮蔑の目を向けられる先生を見かねた清麿が、
「いや、高嶺。殺せんせーを信じたいんだろーけどさ、それは無理じゃ……」
「そうだね。殺せんせーが
清麿の発言を岡野が否定しようとしたが、渚がその発言を遮った。どんなにエロい殺せんせーでも、渚は信じ続けている。
「ま、こんな事して先生として死ぬのは殺せんせーは避けたいでしょ。そうでなくても、マッハ20の下着ドロがこんなに証拠を残すとは思えないんだよね」
「私もそれは考えてた。何か、話が上手く出来すぎてる感じがするんだ」
カルマと不破もまた現状を疑っている様子である。自分を信じてくれている生徒がいる真実に、殺せんせーが感銘を受けて涙を流した。
「高嶺君、渚君!カルマ君に不破さんまで!先生は嬉しくて、ううっ‼」
「ウヌ、殺せんせーは悪くないのだな‼」
「でも、殺せんせーじゃないなら、一体誰が?」
号泣する殺せんせーの隣でガッシュが喜んでいた。信用する先生が無実であるのだから。しかしこれは誰の仕業なのか、茅野はそれが気になっていた。
「……にせ殺せんせーよ‼ヒーロー物のお約束だよね‼」
不破は目を燃やす。やはり彼女は物事を漫画で例えるきらいがある。それを聞いた殺せんせーが顔を真っ赤にした。偽物の存在は殺せんせーの逆鱗に触れたのだ。
「何て卑劣な‼先生の偽物だなんて‼放課後、とっ捕まえに行きましょう‼」
「偽物なんて、許せないのだ‼」
一先ず殺せんせーの疑いは晴れた。しかし授業の時間が迫ってきており、話の続きは放課後に行われる事となる。
そして放課後、にせ殺せんせーを捕まえる為の作戦会議が始まった。
「考えられるのは、犯人は殺せんせーの情報を得ている何者かって事ね。律と協力しながら、手掛かりを探してみるよ」
「どういうつもりか知らないけど、俺等の手で真犯人をボコってやろうじゃん?」
不破とカルマがやる気を見せていた。そして他の生徒達も意見を出していく中、渚が清麿に問いただした。
「ごめん。今聞く事じゃないかもしれないんだけど、何で高嶺君は殺せんせーがやってないって分かったの?」
「渚、それはだな……(殺せんせーの無実を主張したかったが、迂闊だったか)」
清麿は彼等に
「僕は口では言ったけど、殺せんせーが無実だって確証は無かった。カルマ君や不破さんにしたって、不自然な状況から殺せんせーの無実を証明した。でも高嶺君の場合は、まるで初めから殺せんせーがやってないって分かりきってたような感じだったんだ」
渚の話に清麿は言い返せなくなる。彼は清麿が何か能力を持っている事を確信していた。そんな時、殺せんせーが口を挟んでくる。
「まさか高嶺君。君の持つ力は、
「⁉」
殺せんせーがその名を口にした時、清麿は顔色を変えた。まさか殺せんせーがそれを知っていたとは、思いもよらなかった。
「清麿……」
「はぁ~(誤魔化すのは無理そうか……)」
ガッシュが清麿に心配の眼差しを向けるが、清麿はため息をついた後にこの力の事をE組一同に話した。これ以上は隠せないと彼は判断した。
「本格的に扱えるようになったのは最近だったから、皆には黙ってたんだが……」
清麿は申し訳なさそうな表情を見せた。
「オイ何だよ、そのチート能力‼」
「高嶺、呪文だけでなくそんな力が……」
前原と磯貝を始めとして、多くの生徒がそれを聞いて驚愕した。あらゆる答えを瞬時に出せる能力など、規格外も良い所である。
「何その漫画みたいな能力は⁉私と律の活躍が……」
不破は自分達の活躍が奪われる事を心配していた。その力があれば、彼女自身の役割も無くなりかねないのだから。そして、
「そんな能力があるんなら、学校のテストも満点取り放題なんじゃねーのか?」
岡島がそう言った。実際にそれは可能であり、清麿の頭脳なら答えだけでなく、それが出るまでの過程までしっかり説明する事も出来る。
「コラーーー‼岡島君、何を言い出すんですか⁉高嶺君、絶対ダメですよ‼そんなのはカンニングと同じです‼」
殺せんせーが顔を真っ赤にして清麿に絡みついた。教育者としては、生徒が謎の能力を使用して楽々テストで満点を取る行為など見逃せない。岡島の発言は殺せんせーを怒らせてしまった。
「分かってるよ、殺せんせー‼この力は暗殺と魔物絡み以外では使う気は無い‼これでいいだろ⁉」
「⁉……満点回答です、高嶺君!」
うっとおしいと思いながら、清麿が殺せんせーを突き放して答えた。この回答に殺せんせーは満足したようで、顔をオレンジ色にして〇マークを浮かべながら清麿から離れた。
「そろそろ話を戻さないか?最もその能力があれば、にせ殺せんせーの正体や居場所も分かりそうだが……」
気付けばにせ殺せんせーの捕獲から、清麿の
「いや、俺自身偽物の正体を直接は見てないから完璧には把握で出来ない。だが現れそうな場所の候補はある」
「良し!そういう事なら私と律の努力は無駄にならなそう!」
「そうだな。俺一人だけの力では限界がある」
場所の見当は付いたがクラス全員でそこを見張る訳にはいかず、ガッシュペア・渚・カルマ・茅野・不破・寺坂がその施設に侵入する事になった。殺せんせーは別行動でそこを見張る。そして残りの生徒はその施設の近くでいくつかの班に分かれて待機する手はずである。
「皆で協力して偽物を捕まえましょう‼そんな奴は許せません‼」
作戦会議が終了した後、殺せんせーが退室した。
教室には生徒だけが残り、それぞれが帰り支度を始めていたが、寺坂が口を開いた。
「なあ高嶺。そんなチート能力があるんなら、あのタコの弱点や正体も分かるんじゃねぇのか?」
他の生徒達もそれを聞いて頷いていた。確かに
「この力で殺せんせーの正体を探る事はしない。その答えには、皆で協力して辿り着きたいんだ。そうでなくては意味が無い」
清麿はデュフォーの言葉を思い出す。この力を使って殺せんせーの事が分かっても意味をなさない。クラスで力を合わせて答えを出すべきだと。清麿は寺坂の提案を否定した。
「ま、そーだよね。いきなりこんな能力引っ提げられて殺せんせーの正体が分かっても、俺は納得出来ない。今までの暗殺の為の努力を否定された気にすらなるよ」
カルマが清麿の肩に手を置いた。清麿とカルマの言葉には寺坂を始め、誰も言い返せなかった。
「ウヌ、クラスの皆で力を合わせて答えを出して見せようぞ‼」
ガッシュの言葉に皆は賛同し、この力の話題は終了した。そして生徒一同は帰り支度を済ませて、作戦の準備に入るのだった。
その日の夜に全身黒の服に着替えた清麿達が、フリーランニングを使用して施設の近くに侵入した。そして少し離れた場所で殺せんせーが黒い忍者の恰好で待機していたが、その様子が余りにも怪し過ぎる。
「あれでは、殺せんせーが泥棒みたいなのだ」
「そうだね、ガッシュ君……」
「もうアイツが犯人で良いんじゃねーか?」
ガッシュの言葉に茅野が賛同しており、寺坂からはほぼ犯人扱いされていた。しかも殺せんせーは偽物を捕まえようと意気込んでおり、それが下着を見て興奮しているようにも見える。そんな時、壁から黄色いヘルメットを着けた大男の出現に清麿達が気付いた。その男を殺せんせーが捕えようとしたが、清麿は何かに気付いた。
「殺せんせー、そこから動いてはいかん‼これは罠だ‼」
「にゅやっ、高嶺君!それってどういう……」
「ガッシュ、奴を捕まえろ‼」
「ウヌ、分かったのだ‼」
「ラウザルク!」
肉体強化されたガッシュは一瞬の内にその男を捕えた。男が取り押さえられた拍子にヘルメットが外れたが、偽物の正体は意外な人物だった。何と彼は烏間先生の部下の1人、鶴田博和だったのだ。
「お、お主は……」
「鶴田さん、何で⁉」
ガッシュや渚を始め、その正体に生徒一同と殺せんせーは驚いた。鶴田さんは非常に申し訳なさそうな顔を見せる。そして清麿はこの出来事の黒幕が近くにいる事にも気付いた。
「隠れている黒幕、お前の企みは見破った‼大人しく出てこい、シロ‼」
「へえ~、よく気付いたねぇ。どうして分かったんだい?」
これはシロが殺せんせーを殺す為の罠だったが、清麿の
「お前の質問に答えるつもりは無い」
「またアンタか。殺せんせーは俺等の標的なんだけど」
「テメーは直ぐに人を操ろうとするよな」
特に清麿・カルマ・寺坂はシロに強い敵意を見せる。寺坂はその中でもシロに利用されかけた事もあり、より一層不快な表情をしていた。
「やれやれ、これは地球を滅ぼす超生物を殺す為の暗殺計画なんだけどな。
シロはため息をついた。顔の表情は分からないが、シロが明らかに不快な気持ちになっている事を生徒達は感じ取れた。他人を利用し、殺せんせーを貶めるような方法は褒められたものでは無いが、シロの言う事にも一理ある。そんなシロの言葉を聞いた殺せんせーが口を開いた。
「ふむ、イトナ君もいるのですか。ならばシロさん、
先程の罠を、私に仕掛けて下さい」
「‼……何を企んでいる?」
殺せんせーの驚きの発言に対して、生徒達はおろかシロまで怪訝な顔を見せた。
「ちょ、殺せんせー何言ってんの⁉」
「何でそんな事を⁉」
渚と茅野は驚きのあまり大声を上げたが、殺せんせーはいつも通りの不敵な笑みを浮かべていた。
「イトナ君もE組の生徒ですからねぇ。彼が仕掛ける暗殺なら、私は受けなくてはならないのです」
E組の生徒が自分を暗殺しようとしている。よってその暗殺を自分には受ける義務がある。それが殺せんせーの考えだった。
「大丈夫なのか、殺せんせー?」
「心配いりません。さあ、イトナ君も出てきて下さい。先生を殺したいのでしょう?」
清麿が心配の言葉をかけても、何ともないと言った様子で殺せんせーはイトナを煽った。ここまで言ったからには後には引けない。
「どういうつもりかは知らないが、それなら好都合だ。君達はそこを離れたまえ」
「そういう事なら、止むを得んか」
殺せんせーがそこまで言うのなら、生徒達にも止める事は出来ない。彼等はシロの指示に従った。
「オイ、少しでもヒキョーだと思ったら直ぐに止めに入るからな!」
「巻き添えを喰らいたければ好きにしたまえ」
寺坂はシロを睨み付けたが、彼はそれを何とも思わなかった。そしてシロが持つスイッチを押すと、殺せんせーの周りを白い布が覆った。布は金属が骨組みに使われ、四角の縦に長いテントのようだった。
「これは対先生繊維で出来た布。これで殺せんせーを動揺させる作戦だったが、まあいい。殺れ、イトナ!」
シロがイトナを呼ぶと、何処からかイトナが出現し、先生のいる布で出来たテントに入っていった。
「今度こそお前を殺す、兄さん」
イトナは触手を出現させていたが、触手に何かを装備させていた。
「驚いたかい?イトナの触手に装着させているのは対先生グローブ。これで触手同士がぶつかる度に奴にダメージを与えられる。そしてイトナは常に標的の上から攻撃する。計画通りには行かなかったが、それでもイトナの優位は揺るがない」
シロは得意げに清麿達に自分の暗殺計画を話した。もう勝った気でいるようだった。顔は隠れているが、優越感に浸っている様子は想像出来る。
「ぐ、上からの命令とは言え私がこんな事をしたばかりに……」
鶴田さんは申し訳なさそうにしていた。そんな彼の方をシロは向いた。
「まあ、彼を責めないでやってくれ。彼は職務を全うしただけだ」
口ではそう言うが、シロは鶴田さんを労っているようには思えなかった。しかしシロは、殺せんせーの暗殺が成功しかけているので機嫌は良さそうである。そんな彼を清麿は鼻で笑った。
「フン、少し安心しすぎじゃないのか?まだ決着はついてないだろーに」
清麿の言葉を聞いたシロは首を横に振った。
「いやいや、この状況でどうやって奴が勝てるのかを知りたいのだが」
シロは自分の優位を疑っていない。綿密に立てた計画、多少のズレはあったがイトナに有利になるよう状況を持っていけた。だから殺せないはずが無いと思っている。そんな矢先に何かがはじけるような音がし、それと同時に布で出来たテントが吹っ飛んだ。
「ヌルフフフ。エネルギー砲の力をコントロールすれば、イトナ君を傷付ける事無く障害物を吹っ飛ばせます。それに、イトナ君の触手での攻撃は全て見切った」
殺せんせーは余裕の表情で立っていた。殺せんせーは何度もイトナの触手を見ており、その動きに目が慣れた様子だ。一方のイトナは座り込んでおり、触手の装備もコントロールされたエネルギー砲で消し飛んでいた。殺せんせーは不利な状況にも関わらず、イトナに勝利した。
「イトナ君、そろそろE組に来ませんか?それからシロさんは私が下着ドロじゃないと言う情報を広めておくように!」
殺せんせーはイトナを改めてE組に勧誘したが、イトナの様子がおかしい。彼は頭を抱えていた、まるで激しい痛みに耐えるかの様に。
読んでいただき、ありがとうございました。遂にアンサートーカーの事がE組にバレましたね。