ガッシュペアの暗殺教室   作:シキガミ

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 イトナがようやく仲間入りを果たします。ほぼ原作通りの流れです。


LEVEL.43 仲間入りの時間

 多くの生徒が哀れみの目をイトナに向けるが、寺坂はそうはしていない。それどころか、呆れ返るような表情を彼は見せている。そんな寺坂は吉田と村松の肩を叩いたのち、狭間と目を合わせた。

 

「ケッ、それでグレただけかよ。悩みなんて誰にもあるだろうが……けどな、そんなのはバカやってりゃ割とどうでも良くなったりするもんだ。オイ、コイツは俺等んとこで面倒見させろや」

 

寺坂グループで何かをやろうとしているようだ。そして彼はイトナの首根っこを掴み、ガッシュペアの方を見た。

 

「ガッシュと高嶺も付き合え。ガッシュはイトナとダチになりたがってたからな」

 

「ウヌ、分かったのだ‼」

 

「お、俺も行くのか?まあ、構わんが」

 

「アンタはガッシュの保護者なんだから付き合いなさい」

 

寺坂はガッシュペアにも声をかけた。彼はガッシュが始めにイトナに話しかけ、友達になろうとした事を覚えている様である。そしてガッシュの保護者枠で、狭間に清麿も同行するよう言われた。

 

 

 

 

 こうしてイトナの触手への執着を無くすために、寺坂グループの4人とガッシュペアが連れまわすことになった。触手の暴走を防ぐ為にイトナには対先生繊維のバンダナを付けさせた。当の彼は意識が朦朧としており、清麿に負ぶさっている。

 

「さて……おめー等これからどうするべ?」

 

「寺坂、お前……」

 

なお、どうすれば良いかを寺坂は何も考えていなかった。それを聞いた清麿は呆れた表情で涙を流していた。

 

「何も考えてねーのかよ‼」

 

「無計画にも程があるだろ‼」

 

寺坂の言葉に吉田と村松がたまらずツッコミを入れた。堂々と何かしようと見せた矢先に何も考えていない発言である為、無理もない。そんな時、ガッシュの腹の音が聞こえた。

 

「お腹が空いたのだ」

 

「それは同感……そう言えば村松んちってラーメン屋でしょ?取り敢えず腹ごしらえで良いんじゃないの?」

 

狭間の提案により、まずは村松宅のラーメン屋に行くことになった。しかしガッシュは少し嫌そうな顔を見せる。ガッシュペアは村松宅のラーメンを前に食べたが、残念ながら口に合わなかったのだ。

 

「こらガッシュ、そんな顔をするんじゃない。何か食って、イトナには少しでも元気になってもらわないといけないんだからな(……まあ、気持ちは分からんでもないが仕方ない)」

 

そんなガッシュの表情を見かねた清麿が注意をしたが、清麿もあまり気は進んでいない様子だった。そんな彼等の様子を、殺せんせーと他のE組の生徒達も見守っていた。

 

 

 

 

 一行は腹を満たす為に村松家のラーメン屋に訪れた。イトナはフラフラになりながらも、どうにか麺をすすっている。

 

「どうだ、不味いだろ?親父にはレシピ改良するよう何度も言ってるんだがな……」

 

「ああ、不味い。手抜きの鶏ガラを化学調味料で誤魔化しているな(……こんな店、チェーン店が来たらすぐに潰れるぞ。家の工場のように)」

 

イトナは意外とラーメンについて詳しかった。そんな彼は無愛想ながらも、村松宅のラーメン屋を心配する。そして食事を取ったイトナの顔色が、先程よりは生気を取り戻しており、それを見てガッシュが口を開いた。

 

「さっきよりイトナが元気になった気がするのだ!次はバルカンで遊ぼうぞ。清麿、イトナの分のバルカンを作るのだ!」

 

「ああ、言うと思ったよ」

 

ガッシュが始めにイトナに話しかけた時、イトナにバルカン300を紹介した。その時はイトナに無視されてしまったが、今ならどうか。

 

「とは言え、お菓子の箱が無いなら……」

 

「今持ってきてやるよ。割り箸は店にあるのを使えばいーだろ」

 

清麿の言葉を聞くまでもなく、村松は奥からお菓子の箱を持って来た。

 

「オイ、これで良いかよ?」

 

「ああ、構わんぞ。村松、やけに準備が良いな」

 

「偶々だよ」

 

村松が持って来てくれたお菓子の箱と割り箸を使って、清麿は5分でバルカン300を作り上げた。その手慣れた作業を寺坂グループはラーメンをすすりながら見ていた。

 

「ホレ、これでどーだ?」

 

「……貰っておく」

 

前回はまるで感心を示さなかったイトナだが、今回はそれを素直に受け取ってくれた。イトナは貰ったバルカンをしばらく眺めていた、彼は興味を持ってくれた様である。

 

「ウヌ‼これで遊べるのだ、イトナ‼」

 

「……どうやって遊ぶんだ?」

 

「それはだの……」

 

ガッシュはイトナにバルカンでの遊び方を説明した。お互いのバルカンを使って空き缶を転がし合うと言う遊び方である。ティオも“バルンルン”と言うバルカンの亜種を清麿に作ってもらっていた為、2人はその様に遊ぶ時があった。それを聞いた村松が奥から空き缶を持って来てくれた、準備の良いラーメン屋である。

 

「さあ、行くのだ‼イトナ‼」

 

「……ああ」

 

2人はバルカンでの遊びを始めたが、何とも言えない雰囲気が漂っている。しばらく彼等が遊んでいた後、その雰囲気を断ち切るように吉田が口を挟んできた。

 

「次は家に来いよ!現代の技術を見せてやる!」

 

そして吉田は口角を上げながらガッシュからバルカンを取り上げたが、ガッシュは悲壮感に溢れた顔を見せた。

 

「もっと楽しい遊びを教えてやるぜ‼」

 

「ヌオオオオォ、バルカンを返すのだー‼」

 

吉田にバルカンを取り上げられたガッシュは泣き叫んだ。友達が取り上げられたのだから無理もない。そんな光景を清麿と狭間は呆れ混じりの表情で見ていた。

 

「……まあ。バイクのスピードでイトナの気が晴れるなら、それに越した事はないからな」

 

「次は吉田の家で決まりかしらね」

 

「清麿!綺羅々!バルカンを取り返して欲しいのだー‼」

 

ガッシュは懇願するがそれは無視され、そのまま一行は吉田の家に向かう事になった。

 

 

 

 

 吉田は実家の敷地内でイトナを後ろに乗せてバイクを走らせているが、彼はバイクの免許は持っていない。

 

「無免なのに大丈夫かしら?」

 

「家の敷地内だし、大丈夫じゃね?吉田の奴、サーキットにも行ってるみたいだし」

 

「まあ。あれだけバイクに詳しいんだから、問題ねーだろ」

 

無免の事を狭間が心配するが、村松と寺坂は特に気にも留めていなかった。乗せてもらっているイトナも満更でもない顔つきである。吉田のバイクがこのような場面で活かされようとは、誰も思いも寄らなかった。

 

「おおっ!ジード殿の時も思ったが、バイクはカッコいいのう‼」

 

「ああ。吉田の奴、見事に乗りこなしている。流石だ」

 

吉田の運転技術にガッシュペアも感心していた。

 

「どーよイトナ、テンション上がってきたか⁉」

 

「……悪くない」

 

「よっしゃー、もっと上げていくぜ‼必殺高速ターンブレーキだ‼」

 

バイクに乗る事で、イトナ以上に吉田のテンションの方が上がっていた。そんな彼が勢いづいてバイクでターンをしたが、何とイトナは茂みに投げ飛ばされてしまった。

 

「ヌオオオオォ!イトナ、大丈夫か⁉」

 

「おい、何やってんだ⁉」

 

「吉田テメー‼ショックで触手が暴走したらどーすんだよ‼早く助け出せ‼」

 

「いや、流石に大丈夫じゃね?」

 

ガッシュペアと寺坂が直ぐにイトナに駆け寄ったが、彼は気を失っていた。口では平気だと言う吉田も冷や汗を掻いており、村松と共にイトナに水をかけて、意識を取り戻そうとさせていた。

 

「イトナー、目を覚ますのだー‼」

 

ガッシュがイトナを呼ぶ声が木霊する。ガッシュ・寺坂・吉田・村松がイトナの目を覚まさせようとする光景は他のE組も見ていた。

 

「遊んでるようにしか見えないんだけど……」

 

「あいつ等基本バカだから仕方がない」

 

矢田とカルマを始め、生徒達の多くは呆れた表情をしていた。こんな事で本当にイトナの執着を無くせるのかと、気が気でない様子だ。

 

 

 

 

 場面は清麿達に戻る。何とか目を覚ましたイトナを見て、狭間が大量の本を取り出した。

 

「……狭間、まさかその本達は?」

 

「これ以上バカ共には任せておけないからね」

 

狭間は邪悪な笑みを浮かべてイトナに本を薦めていた。しかし本の中身が分かっている清麿は、嫌な予感が頭をよぎる。

 

「今のイトナには刺激が強すぎないか?」

 

「だから良いんでしょうが……さあイトナ、シロに復讐しましょう。この本を読んで暗い感情を増幅しなさい」

 

狭間は復讐を題材とした小説をイトナに読ませようとしていた。狭間は読書家ではあるが、読んでいる本の内容はえげつない物が多い。

 

「綺羅々は何の本を持っておるのだ?」

 

「ああ、それはな……」

 

清麿はガッシュに本の内容を教えた。暗い復讐劇はガッシュには耐えられなかった様子で、彼は体を震わせていた。そんな時、

 

「「「難しいわ‼」」」

 

寺坂・吉田・村松がツッコミを入れた。確かに中学生が読むにしては、この本は難易度が高いかもしれない。

 

「狭間、小難しい上に暗いんだよ‼何かねーのか、簡単にテンション上がるやつ‼コイツ頭悪そうだから……」

 

寺坂が言いかけると、イトナが体を震わせ始めた。触手の発作が始まり、頭の触手はバンダナを簡単に破いた。

 

「イトナ、どうしたと言うのだ⁉」

 

「おい、何か震えてんぞ……」

 

「寺坂が頭悪いとか言うから、切れたんだろ」

 

ガッシュ・吉田・村松がイトナの豹変を見て動揺していた。そうしている間にもイトナの触手は伸びてきており、真っ黒に染まっていた。

 

「ぐうぅ……」

 

「違う、触手の発作じゃないの」

 

「いかん、暴れ出すぞ‼皆下がれ‼ガッシュ、俺達でイトナを抑え込む‼」

 

「ウヌ‼」

 

狭間と清麿は触手の発作に気付いた。そして清麿はガッシュ以外を下がらせ、自分達でイトナを抑えようとして赤い本を取り出した。しかし、

 

「下がるのはおめー等だ、高嶺、ガッシュ。俺に任せろや」

 

「寺坂、何を言っておるのだ⁉」

 

「今のイトナは弱っているが、タダでは済まないぞ‼」

 

「うるせー‼大丈夫だって言ってんだろ‼」

 

敵意をむき出しにするイトナに対して、寺坂がガッシュペアよりも更に前に出た。そして彼は2人の制止も聞く耳を持たない様子だ。

 

「寺坂、本当に大丈夫なんだな?」

 

「そんなに心配なら、テメーのチート能力で俺が大丈夫かどうか見てみろよ。最もどんな答えが出たとしても、下がる気はねーがな」

 

「……分かったよ」

 

寺坂の意志は固かった、彼は引く気は一切ない。それを察した清麿はため息をついて、寺坂に任せる事にした。

 

「良いのか?寺坂……」

 

「ガッシュ、今はアイツに任せよう。だがあんまりヤバそうなら援護する。2人から目を離すな!」

 

「分かったのだ!」

 

「だから助太刀は要らねーよ、俺だけで十分だ」

 

ガッシュペアの助けも不要だと言い張る寺坂は、あくまで1人でイトナを止める気だった。そしてイトナと寺坂、それぞれシロに利用されていた者同士が対峙する。

 

「俺は、適当にやってるお前等とは違う。今すぐ、アイツを殺して……勝利を……」

 

「俺だって考えてたよ、イトナ。あんなタコ、すぐにでも殺してやりたいってな。けど今奴を殺すのは無理だ」

 

寺坂はかつて殺せんせーのよるクラスの変化が気に食わず、楽して暗殺を成功させる為にシロ達に協力した事があった。しかしその結果、クラスメイトの命を危険に晒す事となった。早まった結果として失敗した寺坂は、先生暗殺の為に焦るイトナに対して思う所があった。

 

「イトナ、無理のあるビジョンは捨てちまいな。楽になるぜ」

 

「うるさい‼」

 

寺坂目掛けて触手が放たれたが、彼はそれを受け止めていた。そして前回と同じく寺坂には吐きそうになる程の痛みが襲っていた。

 

「おい寺坂‼」

 

「大丈夫かの⁉」

 

「スゲー痛てーけど、問題ねぇ。2回目だしイトナの奴が弱ってるから、捕まえやすいぜ」

 

ガッシュペアは寺坂を心配するが、彼は無事な様だ。触手を捕まえながら寺坂が話を続けた。

 

「村松も吉田もよ、家の仕事継ぐ為に、あのタコに経営の勉強教わってんだわ。そん時に言われたんだと、“今は儲かって無くても、()()()繁盛させりゃ良い”ってな」

 

今すぐは駄目でも、いつか成功させれば良い。殺せんせーの村松と吉田への教えを、寺坂は焦るイトナに伝えた。そして彼は触手を受けた痛みに耐えながらもイトナに近付き、げんこつを喰らわせた。

 

「だからイトナ、一度や二度負けたぐらいでグレてんじゃねー!()()()勝てばいいじゃねーか!タコの暗殺だって何度失敗しようが、3月までに一回成功させれば俺等の勝ちだ!その賞金で工場を買い戻せば、親も帰って来るだろ‼」

 

寺坂はぶっきらぼうながらも、彼なりにイトナを諭す。それを聞いたイトナは再び口を開いた。

 

「だったら、次のビジョンが見えるまではどうすれば……」

 

「そんなの今日みたいにバカみたいに過ごせばいいだろ!その為のE組だろうが‼」

 

寺坂の一言を聞いてイトナは目を見開いた。そんな過ごし方は、かつての自分には考えられない事である。そして寺坂の後ろには、ガッシュペア・村松・吉田・狭間が口角を上げながら集まっていた。

 

 一方でそんな彼等のやり取りを見たカルマは、満足気な笑みを浮かべて口を開いた。

 

「あのバカって、ホント適当な事言うよね。けどバカの一言ってのは、こーいう時に力抜いてくれるのよ」

 

カルマの言う通り、寺坂の一言でイトナの触手から力が抜けた。

 

「俺は、焦ってたのか……」

 

「だと思うぜ」

 

イトナから執着の色が消えた事を見た殺せんせーがイトナの触手を引き抜き、イトナの命の危機は去った。

 

「イトナ君、明日から殺してくれますね?」

 

「……良いだろう」

 

「これでイトナと友達になれるのだ‼」

 

「そうだな!」

 

こうしてイトナはようやくE組の仲間に加わった。そんな光景をガッシュペアを始め、E組一同は嬉しそうに見ていた。

 

 そして次の日から早速イトナが登校してきたが、彼は寺坂グループに属する事となる。

 




 読んでいただき、ありがとうございました。今回は少し短くなりました。
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