ガッシュペアの暗殺教室   作:シキガミ

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 磯貝のお話なのですが、ガッシュサイドのあのキャラが出てきます。


LEVEL.45 イケメンの時間

 今日は土曜日、授業は午前中で終わる。昼前にガッシュペアが裏山から降りようとしていると、殺せんせーと磯貝が話しているのが見えた。

 

「殺せんせーと磯貝、何をしておるのだ?」

 

「お、2人共帰りか?実はな……」

 

磯貝が事情を説明してくれた。殺せんせーは磯貝を連れて、中間テストの社会の勉強の為に砂漠付近の貧しい村に行こうと言うのだ。磯貝は何度かその経験をしており、社会の成績は学年トップクラスである。

 

「……随分気合が入っているな」

 

「家も貧乏だからさ、貧困の問題は結構調べてたんだ。そしたら殺せんせーに現地に連れていかれたんだよな。そんでさらに興味が広がってさ」

 

「“百聞は一見に如かず”ですからねぇ、ヌルフフフ」

 

殺せんせーは相変わらず規格外だ。授業の為に生徒を現地に連れまわす教師など、恐らくは他にはいないだろう。清麿も呆れた表情をしていた。

 

「良かったら、君達も来ませんか?ガッシュ君は小さいですし、3人を運ぶのは容易です」

 

「な、俺達もか?」

 

殺せんせーはガッシュペアを現地調査に誘った。清麿はどうしようかと考えていたが、横ではガッシュが目を輝かせていた。彼は外国に興味津々である。

 

「行ってみたいのだ!しかし……」

 

ガッシュは行きたそうな顔をしていたが、この後の特訓の事が頭に浮かんでしまった。

 

「時間はそんなに取りませんよ。磯貝君のバイトもありますからね」

 

「そう言えば磯貝、バイトしてるんだったな」

 

「結構家計がピンチでさ……」

 

磯貝は父を無くしており、今は母子家庭である。家の稼ぎを補うために、校則違反を承知でアルバイトをしているのだ。その事を殺せんせーは、磯貝のバイト先のハニートースト食べたさ故に許可している。

 

「磯貝、大変なのだな……」

 

「そんなに心配しなくても大丈夫だぞ、ガッシュ。それより、お前等も暇が有ったらうちのバイト先来てくれよ。サービスするからさ」

 

心配の眼差しを向けるガッシュをフォローしつつ、バイト先でのサービスの提供。磯貝は気の利くイケメンで良いクラスメイトだ。

 

「そうだな、時間見つけて顔出すよ。それから、現地調査には俺達も同行させてもらおう!」

 

「ウヌ‼」

 

こうしてガッシュペアも彼等と共に現地に付いて行くことになった。

 

 

 

 

 流石はマッハ20、ほとんど時間がかからずに砂漠の村まで来てしまった。

 

「相変わらずの超スピードだな」

 

「ウヌゥ、あっという間だったのだ」

 

「おや、2人はこの速度に慣れているように見えますね」

 

マッハ20の速度に慣れていなければ、いかに殺せんせーがマッハの風圧から守ってくれようとも多少なりの疲労感が残るはずだが、ガッシュペアはそうでは無かった。

 

「ああ、音速を超える魔物の背中に乗せてもらった事はあるからな」

 

「殺せんせーも速かったが、アシュロンも速かったのだ」

 

「殺せんせー並みの速度って、魔物の力はとんでもないんだな……」

 

「速度なら殺せんせー以上かもしれん」

 

「何と、先生と速度で争える魔物がいるとは‼負けてられません‼」

 

ガッシュペアはアシュロンがシン級の術を使用した状態で背中に乗った事があったため、速い移動には慣れている。それを聞いた磯貝は魔物の力に感心し、殺せんせーは対抗心を燃やしていた。スピードに自信のある殺せんせーにとっては、アシュロンの話題は聞き捨てならないようだ。

 

「さて、先生は国家機密なので一旦姿を隠します。時間が来たら迎えに来ます。磯貝君が友達になった村人とは、一度話してみたいのですがね。彼も磯貝君に負けず劣らずのイケメンですので」

 

そう言い残して殺せんせーはまた何処かへ行ってしまった。

 

「磯貝、この村で友達を作っておったのか⁉」

 

「そうだな。この村の人達は皆良い人なんだが、特に話の合う人がいたんだ。主に彼が村の案内をしてくれたり、ここでの生活の事を教えてもらってる」

 

磯貝の人徳の高さはE組の外でも活かされていた。彼は調査に来た村でも、友達を作っていたのだから。そして3人が村に入ろうとした時、1人の銀髪で色黒の青年が彼等に近付いてきた。

 

「悠馬、また来てくれたんだね……って、清麿とガッシュじゃないか‼」

 

「おおっ、お主は⁉」

 

「なっ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリシエ⁉」

 

磯貝が村で友達になった青年は、角を持つ小柄な魔物のリーヤと共に魔界の王を決める戦いに参加していたアリシエだった。まさかのイケメンコンビの誕生である。

 

 

 

 

 回想

 

 期末テスト前、磯貝は殺せんせーと共に砂漠の村に来た。そして殺せんせーと別行動となり、磯貝が村を歩いていると、重たい食料を運んでいる子供達が見えた。

 

「あの子達、あんな年で働いてるのか……」

 

子供達は10歳にも満たないくらいなのに、村の為に働いている。そんな彼等を見た磯貝は、複雑な心境だった。彼も家の為に働いているが、子供達の苦労は自分以上では無いかと感じていた。

 

「この時間まで働くって事は、あんまり勉強も出来てないんじゃ……って、危ない‼」

 

食料を運んでいた子供の1人がバランスを崩してしまい、転びかけた。しかしそれに気付いた磯貝がその子供と食料を支える事で、その場は事なきを得た。

 

(ふー、危なかった……)

 

「大丈夫か⁉」

 

磯貝が何事も無く安心していると、1人の青年、アリシエが声を上げて走ってきた。これが磯貝とアリシエの初対面である。

 

 村の子供を助けてくれたと言う事で、アリシエは磯貝を自分の家に招き入れた。

 

「さっきはありがとう、この子達が怪我しなくて済んだのは君のお陰だ……えっと」

 

「磯貝悠馬です。でもあの子達、あんなに大きな荷物を……」

 

「ああ、悠馬。荷物に関しては彼等が無理をしてただけだ。もっと少ない量で少しづつ運ぶように、何度も言ってるんだけどね……」

 

彼等は先程の子供達の話をしていたが、その子供達がアリシエの家に入ってきた。彼等も磯貝に興味がある様子だ。

 

「だってアリシエ兄ちゃんは、もっと大きい荷物を運んでるじゃんか!」

 

「俺達も、もっと頑張って村の役に立たないと……」

 

「だからって無理したら、さっきみたいな事になるだろ?偶然彼が来てくれたから良かったものを……」

 

アリシエは子供達を注意していたが、村の為に頑張る彼等に対して強く言う事が出来ていなかった。ここの村人達は協力して日々の生活を送っている。

 

「随分子供達に好かれていますね、アリシエさん」

 

「“アリシエ”で構わないよ。そんなに固くならなくても良いのに……そうだね、この村は皆で力を合わせて生活しているんだ。だから貧しくても、皆で楽しく生活が出来る」

 

アリシエの話を聞いて、磯貝は難しい顔を見せる。この話を聞いて、彼等の生活の大変さが分かった為である。磯貝もまた貧しい生活をしており、思うところがあった。

 

「悠馬、難しい顔をしているね。どうしたと言うんだい?」

 

「それは……」

 

磯貝は自分がテスト勉強も兼ねて村に貧困についての調査をしに来た事を話した。そして、自分の生活の事も。それを聞いたアリシエは立ち上がった。磯貝もまた家族の為に苦労をしており、その事を彼は共感した様だ。

 

「……そうか、日本でも皆が裕福な生活を送れている訳では無いんだね。君も苦労している様だ。良し、僕が教えられる事があれば教えてあげるよ!村を案内しよう!」

 

「ありがとう、アリシエ!」

 

「礼には及ばないよ、悠馬!」

 

磯貝の苦労を察したアリシエは、彼の為になろうとしてくれた。こうして磯貝はアリシエに村の案内をしてもらう内に、仲良くなれたのだ。

 

 回想終わり

 

 

 

 

「何と、そんな事があったとは……」

 

 アリシエは清麿達を自分の家に招き、自分と磯貝の出会いを話してくれた。ガッシュペアにとっても予想外の出来事である。

 

「驚いたよ、悠馬が清麿達とも友達だったなんて。しかも、魔物の事も知ってるんだね」

 

「俺もビックリだ。高嶺とガッシュの人間関係ってどうなってんだ?」

 

「魔物の戦いで、多くの仲間と出会えたからな。アリシエもその1人だよ」

 

「ウヌ、またアリシエに会えて嬉しいぞ‼」

 

アリシエはかつてファウードを巡る戦いで、リーヤと共に清麿達に力を貸してくれた。彼の戦闘能力は魔物を怯ませる程に凄まじいが、ザルチム達と交戦して本は燃えてしまった。

 

「悠馬、またここに来たってことは、テストが近いのかい?」

 

「そうなんだ。また色々と教えてくれると嬉しい」

 

「そうだね、それなら……」

 

アリシエは自分達の生活の事を話してくれた後に、再び村を回る事になった。今度はガッシュペアと共に。

 

 

 

 

 彼等が村を回っていると、磯貝が殺せんせーとの約束の時間が近付いている事に気付いた。

 

「もうこんな時間か……」

 

「お、今日は帰ってしまうのかい?残念だ」

 

「ごめん、アリシエ」

 

「仕方ないよ、君は家族の為に働いているのだから」

 

アリシエは磯貝の事情を知っており、それに関しては思うところがある様だ。そして彼は、今度はガッシュペアの方を向いた。

 

「君達ともまた会えて嬉しかった。魔物の戦い、頑張ってくれよ!そしてリーヤが喜ぶ魔界を作って欲しい!」

 

「ウヌ!もちろんなのだ!」

 

「ああ、絶対にガッシュと共に勝ち残るさ‼」

 

アリシエはパートナーのリーヤの身を案じており、共に戦った仲間が魔界の王になる事を願っている。そんな彼は磯貝・ガッシュペアとそれぞれ別れの挨拶を済ませた後に、自分の家に帰って行った。

 

 その後、殺せんせーが間もなく迎えに来てくれて、彼等を各々の目的地まで運んでくれた。今日の磯貝のバイト先でひと悶着が起こる事を、ガッシュペアは知らない。

 

 

 

 

 そして月曜日、ガッシュペアが登校するとクラスでは重苦しい雰囲気が流れている。磯貝は昨日バイトをしていた所を浅野達に見られたのだ。バイトは校則違反だが体育祭の棒倒しにE組がA組に勝つ事が出来れば、彼等は目を瞑ってくれるとの事だ。

 

「ならば、棒倒しで勝つしかないのだな。私は参加出来ぬが……」

 

球技大会と同様、正式に生徒として登録されていないガッシュは体育祭にも参加出来ない。彼は悲しそうな顔を見せる。

 

「とは言え、そんな簡単な話じゃないだろう。浅野の奴、何か企んでそうなんだよな」

 

棒倒しは男子のみの参加で、E組男子はガッシュを除いて16人に対してA組男子は28人だ。しかし勝負に挑まなくては、磯貝が退学になる可能性まである。そして清麿は、終業式の日の浅野のE組に対する敵意を思い出していた。

 

「皆、やる必要は無いよ。これは俺の問題だからさ、退学になっても学校外から暗殺を仕掛ければいい」

 

クラスの皆がA組に傷つけられる可能性を危惧して、磯貝は自らが犠牲になろうとしていた。しかし彼の言動は、他の生徒達から反感を買う。そんな中で、前原が対先生ナイフを持った手を磯貝の机に置いた。

 

「難しく考えすぎだぜ!要は棒倒しでA組のガリ勉共に勝てば良いんだろ?やってやろうぜ!」

 

磯貝の親友である前原は、特に殺る気に満ち溢れている。そんな彼の言葉に便乗して、他の男子生徒も前原の持つナイフを握った。ここまでクラスが殺す気を見せているのは、磯貝の人徳の高さ故である。

 

「皆ありがとう!やってやるか!」

 

「「「「「おう‼」」」」」

 

こうしてクラスの男子達は気合を入れていたが、渚は浮かない顔をしていた。

 

「どうしたのだ、渚?」

 

ガッシュが渚に声をかけると、男子達が彼の方を向いた。ガッシュ以外にも、渚の表情に気付いている生徒も何人かいる様だ。

 

「高嶺君も言ってた事だけど、浅野君の狙いが棒倒しで勝つだけとは思えないんだよね。何か裏がある気がするんだ」

 

「その事か。何かA組の連中を探れる手段があれば良いんだがな……」

 

浅野はE組に対して強い敵対心を持っている。清麿と違って渚は直接彼と対峙した訳では無いが、薄々その事を感づいていた。それを聞いて清麿が策を考えるが、イトナが小型のラジコンを取り出した。

 

「コイツには録音機とカメラが搭載されている。気になるんだったら、今日の放課後にでもコイツをA組の教室の近くに配置すれば良い」

 

「お!イトナ、やるじゃねーか‼」

 

「確かにこのサイズなら、本校舎の奴等に気付かれる事もなさそうだね」

 

イトナのラジコンを見て、寺坂とカルマが感心する。戦いを制する為の情報戦は、既に始まっているのだ。

 

 

 

 

 そして放課後、イトナのラジコンは無事にA組の教室まで辿り着き、彼等の作戦を盗み聞きする事に成功する。そんな事に気付かないA組の生徒達は、棒倒しについての話し合いを始めていた。

 

「皆、体育祭の棒倒しでE組と戦う事になった。僕等は期末テストで彼等に負けているからね、今回は負けられない。そこで強力な助っ人達に協力をお願いしたんだ」

 

浅野は確実にE組を倒す為に策を考えた結果、外部から力を借りる事にした。そして彼が召集した助っ人達が教室に入ってきたが、彼等を見た他のA組の生徒達は顔色を変える。この助っ人達は年齢こそ15歳であるが、4人共外国人で体格が異様に大きいのだ。

 

「彼等は世界クラスのスポーツマン達さ。今回は留学と言う形で椚ヶ丘に来てもらってる。彼等の力を借りて、調子に乗っているE組に反省してもらおうじゃないか」

 

浅野は今回の棒倒しでE組を潰そうとしている、次の中間テストにも影響が出るくらいに。そして浅野達A組は場所を体育館に移してしまった為、これ以上は作戦の盗み聞きは出来なかった。

 

 

 

 

「……こんな事になってたなんて」

 

 場面はE組に戻り、磯貝は不安気な表情を浮かべる。このままでは自分のせいでクラスメイトが傷つくのではないかと、心配になっていた。

 

「あいつ等、好き放題やりやがって!」

 

A組の作戦会議を聞いた前原も憤りを見せるが、寺坂が何かを思いついたように口を開いた。

 

「向こうが助っ人外国人を呼んでも、高嶺の【答えを出す者】(アンサートーカー)って奴で一網打尽にしてやれば良くね?」

 

寺坂は清麿の能力に期待していた。そんな彼の言葉に多くの生徒が賛同する。それは磯貝も例外では無かった。

 

「そうだな。確かに高嶺の能力があれば、戦力差があっても有利に……」

 

「いや、この力は使わないつもりでいる」

 

「「「「「え⁉」」」」」

 

清麿は能力の使用を拒否した。【答えを出す者】(アンサートーカー)に期待していた生徒達は、たまらずツッコミを入れてしまった。

 

「何言ってんだ高嶺、こんな時じゃなきゃいつ使うんだよ?」

 

「そうだぜ!相手は助っ人外国人呼んでるんだからさ!」

 

菅谷と岡島を始め、多くの生徒達が清麿に問いただしたが、清麿は意見を変える気は無かった。

 

「あのなあ、この能力は暗殺と魔物絡み以外で使う気は無いと言っただろう。それに俺1人が【答えを出す者】(アンサートーカー)を使ってA組に勝てたとして、皆はそれで満足なのか?」

 

清麿の言葉を他の生徒達は黙って聞く。彼の言葉が、【答えを出す者】(アンサートーカー)頼りに勝負を挑もうとする男子達に突き刺さる。

 

「それから、これは磯貝が浅野に売られた喧嘩でもある。だったら磯貝がクラスのリーダーとして浅野に勝ってこそ、意味があるんじゃないのか?クラス全員で協力するが、あくまで磯貝が中心として勝負するんだ!」

 

「……そうだな、その通りだ。高嶺の能力の事は今は忘れよう。よし、今から作戦会議だ!」

 

「「「「「オー‼」」」」」

 

磯貝が高嶺の意見に賛同した。そして彼の掛け声でE組の作戦会議が始まる中、カルマが小声で清麿に話しかけた。

 

「本当に良かったの?使わなくて」

 

「使う時は、誰かが怪我をしそうになってどうにもならなくなった時だけだ。それにE組がこの力に頼りすぎる流れは、良い傾向とは言えない」

 

「まあ、そうだよね」

 

【答えを出す者】(アンサートーカー)とて万能ではない。その能力は不安定な物であり、安易に頼りすぎるのは良くないと言える。カルマもそれが分かっており、それ以上の言及はしなかった。そして彼等も作戦会議で意見を出していく。

 




 読んでいただき、ありがとうございました。貧しい生活を送るイケメン繋がりで、アリシエに登場してもらいました。
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