ガッシュペアの暗殺教室   作:シキガミ

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 死神編は今回で完結となります。少し長くなりましたが、よろしくお願いします。


LEVEL.53 死神の時間

 ガッシュペアと死神が戦い、他の生徒達と殺せんせーが細工を仕掛けている中、烏間先生とビッチ先生はお互いに銃を向け合って対峙していた。

 

「大人しく銃を降ろせ、イリーナ。さっきお前が俺に当てられなかった時点で勝負は付いている、死ぬぞ」

 

「そんなの覚悟の上よ、死神は私を理解してくれた。ここで私とアンタが一緒に死んで、死神が高嶺達を殺せばあのタコの暗殺計画は成功したも同然」

 

死神はビッチ先生に共感するような言葉をかけて、彼女を操っている。死神はビッチ先生に自分もまたまたテロが絶えない命なんてすぐに消える貧困地に生まれ、金と己の技術のみが信用できる事を思い知らされたと吹き込んだのだ。

 

「そもそも、アンタに私が撃てるのかしら?」

 

ビッチ先生の言葉を聞いてもなお、烏間先生は眉1つ動かさなかった。プロとしての責務を果たす為であれば、例え同僚相手でも引き金を引くべきだ。烏間先生はそう考えているが、内心迷いが生じていた。それをビッチ先生は見逃さない。

 

「隙が出来たわね、カラスマ」

 

ビッチ先生は銃を持つ手とは反対の手に隠し持っていたスイッチを押した。その時、大きな音と共に天井が崩れる。彼女の持つスイッチは天井に仕掛けられた爆弾を起爆させるものであり、死神の命令によってそれで烏間先生の足止めをするよう言われていたのだ。勿論ビッチ先生の安全の保障は無い。

 

「イリーナ、お前‼」

 

天井が崩れ落ちる中、烏間先生はどうにか瓦礫に潰されずに済んだが、死神とガッシュペアがいる場所への通路は塞がれた。また、ビッチ先生は瓦礫の下敷きになってしまった。

 

 

 

 

 時は少し遡り、ガッシュペアと死神が睨み合う。お互いにお互いの隙を伺っており、両者微動だにもしない。

 

「へぇ、闇雲には突っ込んだり呪文を唱えたりはしないんだね」

 

「自分から隙を作ってお前の技を喰らう訳にはいかないからな。万を超える死神の技術と言うのも、ハッタリではない様だ」

 

清麿は【答えを出す者】(アンサートーカー)で、死神の体や衣類に多くの武器が仕込まれている事を見破る。迂闊な行動に出れば、死神の攻撃をまともに受ける事になってしまう。しかも今の死神にはクリアの強さが宿っている。魔物の身体能力と死神の技術の組み合わせは脅威だ。

 

「清麿には近づかせぬぞ‼」

 

「行くぞガッシュ、ザケルガ‼」

 

一直線の電撃が放たれたが、死神は難なくかわす。そして死神は清麿に接近しようとするが、ガッシュがそれを阻む。

 

「簡単には本を奪わせてくれないみたいだね!」

 

「当然なのだ‼」

 

「ラウザルク‼」

 

肉体強化の術が唱えられたが、クリアの力を得た死神はダメージをゼロには出来ないものの、ガッシュの攻撃を上手く捌いて見せる。ガッシュの打撃は受け流され、決定打を放てないでいた。

 

(クリアの力を得た死神、とてつもなく強いのだ‼だが、どうにか隙を作らねば……)

 

(魔物には仕込んだ凶器は効かないと考えた方が良いね、どうしたものか……)

 

ガッシュと死神は思考を巡らせながら戦うが、ラウザルクの継続時間が終了した。

 

(術が切れたから少しスピードが落ちてるね、ここを狙う‼)

 

ラウザルクが切れるタイミングを狙って、死神はガッシュではなく清麿の方に右腕を伸ばす。そして右腕の裾の奥からは鉤のついたワイヤーが清麿の持つ本を目掛けて放たれた。

 

「な!お主、そんな物を!」

 

「ふふ、これも死神の技術の1つだよ」

 

超スピードで放たれたワイヤーだが、清麿はこの一撃を【答えを出す者】(アンサートーカー)を用いて見切り、紙一重でかわす。死神が清麿自身を狙う展開も予測していたのだ。

 

「へぇ、見切るんだ」

 

「お前はまだまだ武器を仕込んでいるからな、気を抜いたりはしないさ‼」

 

「厄介な力だね……」

 

ワイヤーをかわした清麿を死神は、感心と不快の両方の感情を持ち合わせた上で見ていた。死神が不意打ちで清麿に攻撃しようとしても【答えを出す者】(アンサートーカー)でそれを見切る事が可能だ。よってガッシュは清麿を気にせず死神との戦いに専念させる事が出来る。

 

「清麿‼」

 

「ガッシュ、俺は心配いらないから死神から目を離すな‼」

 

「ウヌ‼」

 

死神の接近を許してはいけないと言う答えを清麿は出していた。死神の持つ技術の1つ“クラップスタナー”、対象の意識の波長に合わせて衝撃を与え、神経を麻痺させて動きを封じる。渚が使う“猫だまし”の完成形であり、それを喰らえば勝負は終わる。清麿はガッシュにもその技を発動させないように立ち回れる為の指示を出す。そして死神とガッシュが再び対峙した時、何かが爆発するような音が聞こえてきた。

 

「ついにイリーナが起爆させたみたいだ、これで烏間諸共瓦礫の下敷きだね……」

 

「な……テメェ、初めからそのつもりで⁉」

 

「言ったろ?イリーナには烏間を足止めしてもらうって」

 

「貴様がビッチ先生にやらせたのか⁉許せないのだ‼」

 

ビッチ先生が死神の指示で自らも巻き添えに起爆させた事を知ったガッシュペアは、怒りの感情を死神に向ける。それとは対照的に、死神は笑みを浮かべる。清麿は【答えを出す者】(アンサートーカー)で2人の安否を確かめたかったが、死神と対峙している以上その余裕は無い。

 

「イリーナ、僕を心酔してくれているみたいだからね。悲惨な境遇で育ったって嘘を付いてあの女を引き入れたのさ。これも僕の技術の……」

 

「テオザケル‼」

 

死神はビッチ先生を利用する事しか考えていない。噓八百を並べて相手の同情を誘い、味方につける一種の洗脳。そして目的の達成の為に容赦なく切り捨てる。殺しの世界では普通の事であるが、それを知る由の無いガッシュペアには死神の行動を容認出来ない。死神の言葉を遮って彼等は強力な電撃を放つ。

 

「はは、酷いなァ。その電撃、人に向ける威力じゃないだろう?」

 

「な、その顔……」

 

「お主、一体何が……」

 

クリアの力を得た死神は、テオザケルを真正面から受けても倒れる事は無い。そして余裕の態度を崩さない死神の顔を見て、ガッシュペアの顔は驚愕する。その理由はテオザケルで死神を倒し切れなかった事では無い。何とその顔の皮は剥がれ、骸骨のようになっているのだ。

 

「驚いたかい?変装の技術を極める為に顔の皮は捨てたのさ。君達の電撃のせいじゃないから安心していいよ」

 

穏やかな口調で死神は話すが、その言動は狂気に包まれている。自分の顔の皮を剥がすなんておよそ正気の沙汰ではない。青ざめた顔をしたガッシュペアを見て、死神は優越感に浸る。

 

「じゃあ、終わりにしようか」

 

死神は手を銃の形にして人差し指を清麿の方に向けようとした。その前にガッシュペアはお互いに目で合図を送り、ガッシュが清麿と死神の間に入った。

 

「オルダ・ラシルド‼」

 

清麿は【答えを出す者】(アンサートーカー)で死神の攻撃を見切り、電撃の盾の呪文を発動させた。死神の指には極小サイズの銃が仕込まれており、死神の射撃技術によって相手の大動脈に弾丸を放ち、大量出血で相手を死に至らしめる。

 

「そんな盾で防げるのかな?」

 

死神は優越感に浸りながらこの技“死神の見えない鎌”を発動させる。その弾丸は何と電撃の盾を貫通しようとしていた。この技はクリアの力で威力が増しているのだ。

 

「ザグルゼム!」

 

清麿はつかさず呪文を唱えて、電撃の球はオルダ・ラシルドを強化した。すると貫通されかけていた盾が修復され、弾丸をはね返した。そして電撃を纏った弾丸を清麿が操作して死神を目掛けて攻撃したが、彼はもう一発同じ技を使用して攻撃を防いで見せた。

 

「僕の動体視力なら、放たれた弾丸に弾丸を当てる事だって出来るのさ」

 

「くっ、技が人間離れしてやがる!」

 

「それはお互い様だろ?」

 

超スピードの弾丸を操作する事は容易では無いが、清麿は【答えを出す者】(アンサートーカー)を使用してどうにか死神に狙いを定める事が出来ていた。しかし死神は、そんな攻撃を完璧に見切った上で新たな弾丸を放って相殺して見せたのだ。それと同時にオルダ・ラシルドは消えた。

 

「さて、次は何を試すか……⁉」

 

不敵な笑みを浮かべていた死神の表情が一変する。そして死神の体からは、クリアの意志が前に出て来た。

 

「お主、クリアだな⁉」

 

「そうだよ……ここまで君達の実力を見させてもらったが、そろそろ潮時かな。僕は自分の体に戻るよ」

 

「おい、待て‼」

 

清麿の制止も空しく、クリアの意志は死神の体から離れた。その直後、死神は意識を戻す。

 

「残念、クリアの力は失われたか。これは分が悪いかな?」

 

クリアの意志が離れてもなお、死神は動揺する事なく次の一手を考える。魔物の力が失われても、死神の技術は健在である。

 

「ガッシュ‼ここからは死神の持つ本来の力との戦いだ‼奴は借り物の力を無くしたに過ぎない‼絶対に気を抜くな‼」

 

「ウヌ‼」

 

「油断してくれないんだね。まあ、それでこそ殺り甲斐があるけど」

 

死神からクリアの力が失われても、ガッシュペアの緊張感が無くなりはしない。戦いは仕切り直しとなり、両者は勝ち筋を探しながら戦いに挑もうとしたが、もう1人がそこに来て銃弾を撃つ。

 

「あれ、イリーナは失敗しちゃったのか……」

 

「そこまでだ、死神‼」

 

「「!……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

烏間先生‼」」

 

そこに来たのは上半身が裸になった烏間先生だ。しかし撃たれた銃弾は死神にかわされる。

 

 

 

 

 時は再び遡り、場面は烏間先生に戻る。瓦礫で下敷きになったビッチ先生を烏間先生が救出して傷の手当てを行う。烏間先生は自分の服を包帯代わりにしていた。

 

「カラスマ、どうして助けたのよ?」

 

「お前に嵌められてもなお、生徒達はお前の身を案じていたからな。それを聞いてプロの枠にこだわっていた俺自身が小さく思えたんだ」

 

烏間先生は事前に生徒達にビッチ先生を助けるようお願いされていた。間違いを犯したビッチ先生を許すように烏間先生は頼まれていたのだ。

 

「その割には、私に銃口を向けてたじゃない」

 

「それはお前を止める為だ。だが、おれは隙を作ってしまった。まさかお前が自爆を選ぶとは思わなかった」

 

「……そう」

 

例えビッチ先生を殺さないつもりでも、烏間先生は彼女を止める為に銃を使わざるを得なかった。それを聞いたビッチ先生は素っ気ない返事をする。

 

「イリーナ……済まなかった、思いやりが欠けていた。だから今回のような事態を招いてしまった」

 

「……アンタのせいじゃないわよ、バカ」

 

烏間先生からの素直な謝罪。彼はお互いにプロだからと言って、必要以上にビッチ先生に踏み込もうとしなかった。その事ですれ違いを起こしてしまい、彼女を傷付けてしまった事を申し訳なく思っていた。そんな謝罪を受けたビッチ先生は顔を赤くする。

 

「お前がどんな世界で育っていようとも、俺と生徒がいる教室にはお前が必要だ」

 

烏間先生はビッチ先生の事を必要としてくれている。それを聞いたビッチ先生は嬉しいと思う反面、後ろめたい気持ちもある。そして烏間先生は立ち上がって塞がれている道に目を向けた。

 

「応急処置は済ませた、俺は高嶺君とガッシュ君の方に向かう。お前はそこで大人しくしていろ」

 

「そこの瓦礫はどうするつもりなのよ?」

 

「竹林君が作った指向性爆薬がある。それを使えば、道を作る事が可能だ」

 

烏間先生は爆薬を瓦礫に仕掛けた後、起爆させる。すると道が開けたので、烏間先生はそのまま進んでいく。ビッチ先生は烏間先生を死神の下へ送り出した。死神に命じられた役割を放棄して、再びE組の味方をしてくれたのだ。

 

「私、いまさらどの面下げてあいつ等に会えばいいのよ……」

 

ビッチ先生は罪悪感に苛まれていた、自分は生徒達の命を奪おうとしたのだから。彼女はこれから自分がどうすれば良いのかを考えながら、リィエンから貰った首飾りを眺めていた。

 

 

 

 

 場面はガッシュペアの方に戻る。彼等と死神の交戦中に、烏間先生が合流した。さらに死神はクリアの力を失っている為に形成は彼等が有利に思われるが、ガッシュペアと烏間先生が気を抜く事は無い。

 

「3対1は流石に分が悪いかな。けれど、僕には人質がいる事を忘れてないかい?」

 

自らが不利な状況にも関わらず、死神は余裕の表情を崩す事は無い。死神は捕えている生徒達の首輪を爆破させようとし、タブレット端末を取り出した。

 

「一歩でも動くと人質に取り付けている爆弾を起爆させる。脅しじゃないってことを知ってもらうために、2~3人殺してあげよう」

 

「「何だと⁉」」

 

死神は端末を操作すると同時に口角を上げた。首輪によって何人かの生徒を殺せたと思い、檻の中の動画をタブレット越しに確認したが、死神の顔色が変わる。

 

「バカな‼誰もいないだと⁉」

 

そこには死神が起爆させた首輪の残骸が転がるだけで、生徒と殺せんせーの姿が無かった。明らかに動揺する死神とは対照的に、清麿は得意気な表情をしていた。

 

「どうした、まさかあいつ等に逃げられたのか?」

 

「ッ……そんな、どうやって⁉」

 

清麿は【答えを出す者】(アンサートーカー)で生徒達の作戦が分かっており、あえて死神を煽る為に質問をした。死神は冷や汗を掻く。

 

「ウヌ、皆は無事なのだな‼」

 

「その通りみたいだ、ガッシュ君!(そうか。彼等は考えがあると言っていたが、上手くいったみたいだな)」

 

ガッシュと烏間先生が安堵の表情を浮かべた。烏間先生は事前に生徒と殺せんせーには作戦があると聞いており、それが成功した事を察した。その一方で死神は焦る。

 

「やってくれるね!だが、人質は遠くには行けてないハズ。ここで僕が君等を皆殺しにした後にもう一度捕えればいい」

 

どんなイレギュラーが起きようとも、死神には諦める選択肢は無かった。自らの技術があれば、3人を殺せると考えている。

 

「いくらアンタでも、3対1はキツイんじゃ……」

 

「ここからは俺1人に任せてくれ、2人はイリーナを頼む。君達はよくここまで戦ってくれた。これ以上生徒を危機に晒したくない」

 

ガッシュペアは再び臨戦態勢に入ろうとしたが、烏間先生は自分だけで死神と戦おうとする。彼は教師として、生徒である2人を死神の魔の手から守ろうとしている。それを聞いた死神は烏間先生を睨み付ける。

 

「あくまで邪魔をするんだね。しかも1人で僕と戦うだって?……コケにしてくれるじゃないか。それに僕以外で、誰があの超生物を殺せると思っているんだ?」

 

「教師として俺は、彼等の命を犠牲にした暗殺を認める訳にはいかない。死神、俺の生徒と同僚に手を出した罪は重いぞ!そもそも奴を殺す技術ならE組に揃っている‼」

 

死神の言動の全てを烏間先生は否定する。それだけではなく、烏間先生は明確に死神に対して怒りの感情を向ける。それを見たガッシュペアは、死神は烏間先生に任せて問題ないと判断出来た。そして清麿は死神の技術について烏間先生に話そうとしたが、彼はそれを断った。

 

「教えてくれるのはありがたいが、奴の技の対策はしているから問題ない」

 

「わかりました、ここはお願いします!ガッシュ、ビッチ先生の所に向かおう!」

 

「ウヌ‼」

 

ガッシュペアは烏間先生にこの場を任せて、ビッチ先生の方に向かった。

 

 

 

 

 怪我で座り込んでいるビッチ先生を清麿が肩を貸してガッシュと共に檻の前に辿りつた少し後のタイミングで、烏間先生が気絶している死神を担いでここまで来た。死神にはガッシュの電撃でのダメージが残っており、かつその手の内のいくつかを烏間先生が生徒達から聞いていた為に対策出来た事で、それ程苦戦する事なく倒す事に成功したのだ。

 

「クラス皆でこの危機を乗り越えられましたねぇ」

 

殺せんせーは満足気な表情を見せる。死神を撃退した烏間先生、ゴームペア及びクリアの力を退けたガッシュペア、死神を欺く事に成功した生徒達と殺せんせー、そして最終的に烏間先生を送り出してくれたビッチ先生。クラスが一丸となって死神の企みに打ち勝った。しかし烏間先生は何故か檻を開けようとはしない。

 

「手は無いのか……タコだけを閉じ込めたまま殺す方法が⁉」

 

殺せんせーをこのまま暗殺する方法を烏間先生が考えていたのだが、諦めて檻を開ける。そして生徒達と殺せんせーは無事に檻から出る事が出来、死神は拘束された状態で防衛省の職員達に連れていかれた。その後、ビッチ先生が口を開いた。

 

「アンタ達ともここまでね。私はガキ共を殺そうとした、これは許される事じゃないわ。さよなら」

 

ビッチ先生がそう言ってその場から離れようとしたが、生徒達がそれを許さない。彼女はあっけなく捕まってしまった。

 

「そうよね。アンタ達を殺そうとしたんだから、私は報復を受けても文句は言えないわ」

 

ビッチ先生は遠い目をするが、生徒達にはその気は無い。

 

「んな事しねーよ、怪我が治ったら学校に来いや」

 

「皆先生の事を心配してるぞ」

 

寺坂や清麿を始め、生徒全員がビッチ先生の復帰を望んでいる。しかし彼女は、どうして生徒達を殺しかけた自分が必要とされているのかが分からない。生徒達の言動に、ビッチ先生は戸惑うばかりだ。

 

「裏切ったりヤバい事したり、それでこそのビッチじゃないのかい?」

 

「そうだよ、そんなビッチと学園生活は結構楽しいからさ」

 

竹林と中村がそう言うが、それこそが生徒一同の総意だ。生徒全員が彼女に微笑みかけてくれるが、ビッチ先生は苦虫を嚙み潰したような顔をする。

 

「けど、私は……」

 

「ビッチ先生はこれまで1人ぼっちだったが、今は違うのだ。これからは皆で楽しく過ごそうぞ‼」

 

ガッシュの言葉を聞いて、ビッチ先生は目を逸らす。これまで孤独に戦ってきた彼女だが、そんな自分ですら受け入れてくれる居場所がある。散々命を奪ってきた自分がそこに手を伸ばしても良いのかと考えていた時、烏間先生が前に出た。

 

「イリーナ。その首飾りはリィエンさんが誕生日にお前に送った物だな?」

 

「カラスマ、どうしてそれを?」

 

「そんな事は別に良い。お前は死神に組してからもずっと悩んでいたんだろう。自分が生徒達を嵌める事について。もし本当に非常に徹するならば、彼女の贈り物を大切にはしないハズだ」

 

烏間先生はビッチ先生の身に付けている首飾りを見て、彼女がE組を完全には見限れていない事を察したのだ。それが図星なようで、ビッチ先生はバツの悪そうな顔をする。そして烏間先生は、死神から勝ち取ったバラの花をビッチ先生に差し出した。

 

「この花は俺の意志でお前に渡そう。誕生日は、それで良いか?」

 

しかしビッチ先生はその花に対して不満を抱く。花も一本しかなく、渡すタイミングも唐突。何か文句を言おうと思っていたが、そうはならなかった。

 

「……はい」

 

ビッチ先生はとても嬉しそうにそれを受け取る。そして彼女は怪我が治り次第、E組に復帰する事になる。

 

「烏間先生がビッチ先生と……」

 

「よしよし」

 

一方で倉橋の目からは涙が流れており、矢田になだめられていた。先生達の距離が近付いた喜びもあるが、倉橋自身の恋が報われない可能性が高まった瞬間でもある。

 

 

 

 

 今回の事件を経て、殺せんせーおよびE組の生徒の要望により、暗殺によって彼等が巻き添えになった場合には賞金が支払われない事となった。防衛省はそれをすぐに了承したが、彼等は大規模な暗殺プロジェクトを進めている様子だ。

 




 読んでいただき、ありがとうございました。暗殺の時間で描写したオリジナル呪文を久し振りに出せて良かったです。
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