ガッシュペアの暗殺教室   作:シキガミ

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今年もよろしくお願いいたします。新年初の投稿となります。結構長くなりましたが、ご了承ください。


LEVEL.60 友達の時間

 突如出現したダニーの魂。しかしなぜ彼が人間界に現れたのかは、ガッシュペアにも分からない。

 

『お前の事を感じたのさ。この戦いを見て、ガッシュの俺達への強い思い……俺達の為に頑張る姿が魔界にも伝わったんだ。ガッシュを助けたいと思ったら、気付けばあの金色の本にいたのさ』

 

この戦いは魔界にいる魔物達も見ていた。そして、魔界の滅亡を防ぐ為に必死で戦うガッシュの姿に感銘を受けて、ダニーは居ても立っても居られなくなったようだ。ガッシュの力になりたい。彼がそう考えるうちに本が金色に輝き、ガッシュに力を貸す事が可能となった。

 

「何があった……何故ガッシュの体が回復している?」

 

ダニーの姿はクリアには見えていない。否、金色の本を所有するガッシュペア以外にはその魂は見えない様だ。その光景を見た清麿に再び希望が宿る。

 

「俺には見える、ダニーの姿が。ガッシュの仲間に……友達になってくれた魔物の姿が‼」

 

そして清麿は再び立ち上がる。ガッシュと共に戦う為に。彼等は反撃の狼煙を上げる。

 

 そんな彼等の姿を見た殺せんせーもまた立ち上がる。先程まで彼等を包み込んでいた絶望感はそこにはない。

 

「何が起こったかは分かりませんが希望が見えてきましたねぇ。少し彼等の様子を見ましょうか、ヌルフフフ」

 

こんな時にも、殺せんせーは自分の顔に緑色の縞々模様を浮かべる。この局面はガッシュペアに任せて問題ないと、先生は判断したようだ。

 

 清麿達が再び元気を取り戻す一方で、クリアは何があったのか分からない様子だ。それでも魔界の滅亡と言う目的は変わらない。その為にクリアはガッシュ達に攻撃をする。

 

「何があったかは知らぬが、全て消し去ってくれる‼」

 

クリアの全身から消滅波が再び放たれる。その瞬間、消えゆくダニーに変わり、別の魔物がガッシュに力を貸してくれた。

 

『ガッシュには、傷一つ付けさせぬ‼』

 

「シン・ゴライオウ・ディバウレン‼」

 

呪文を唱えた瞬間、全身に刃を纏った5本の尾を持つ巨大な白虎が召喚される。その虎は凶暴な外見をしているが、そこには術者の“守る意思”が宿っている。その事はガッシュペアも理解している。そして白虎は清麿達を襲う広範囲の消滅波を完璧に防ぎ、彼等を守った。

 

「全て止められただと⁉」

 

クリアは狼狽する一方で、金色の本には新たな呪文が出現した。

 

『ガッシュ、お前の為なら何でもするぜ?』

 

「シン・ガルバドス・アボロディオ‼」

 

今度は何本もの大きく鋭い爪を持つ、青白い巨大な魔獣が出現する。術の持ち主にも似ている魔獣だが、その大きさと迫力はそれをも凌駕する。クリアは消滅の力を纏った自らの体を利用してガッシュペアを襲うが、魔獣がそれを許さない。何とそれはクリアの巨体を押し返した。そして今、ガッシュの隣には2体の魔物が立っている。

 

「ウォンレイ⁉レイン⁉」

 

『守って見せるぞ、ガッシュ』

 

ウォンレイはリィエン共に、これまで何度もガッシュ達に力を貸してくれた。それは今回の戦いとて例外では無い。そんな仲間との再会故に、ガッシュの目からは涙が溢れる。

 

『ガッシュ、泣くな。俺達は当たり前の事をしているだけだ』

 

青白い大きなクマのような姿の魔物“レイン”は穏やかな口調でそう言った。彼は魔界時代からのガッシュの親友で、ガッシュに魔界でも人間界でも助けられている。そんなレインがこの戦いに協力しない道理はない。

 

「お……のれ……何が起こっている⁉」

 

他の魔物の姿が見えていないクリアには、自分の攻撃が防がれた挙句に自らが押し返された理由が分からない。そしてクリアは怒りのままに消滅の力を宿した巨大な尾を、清麿達目掛けて薙ぎ払う。その時、

 

『パルパルモーン!』

 

「シン・ギドルク‼」

 

呪文を唱えた瞬間、ガッシュの背中からは複数の大きな棘が生え、彼の足には巨大なブースターが装備される。その後、ガッシュは超スピードで清麿及びブラゴペアを抱え、クリアの一撃をかわして見せた。この術はシン・シュドルク同様に強力な肉体強化の術だ。ちなみに殺せんせーはある程度ダメージが回復してきており、自力でそれをかわす事が出来た。

 

「カルディオ!」

 

次に出現した魔物はウマゴンと同様に馬の姿で、紺色の体をしている“カルディオ”だ。彼はウマゴンをライバル視しており、ガッシュペアとの直接的な絡みは多くないが、アースと共にファウードの帰還装置を死守してくれた大切な仲間である。

 

『パルパルモーーーン!』

 

カルディオは得意げな表情をする。そんな彼をガッシュペアは嬉しそうに見ながら、クリアの方に向かう。その後、清麿は殺せんせー目掛けて大声を上げた。

 

「殺せんせー‼俺達は大丈夫だから、先生はブラゴとシェリーに付いていてくれ‼」

 

「にゅやッ!分かりました‼」

 

清麿の指示を受けた殺せんせーはブラゴペアの方に駆け寄る。その時のシェリーはブラゴを抱えながら、次々と強力な呪文を使用するガッシュペアを不思議そうな顔で見ていた。

 

「どうなっているのかしら?それに、あの金色に輝く本は……」

 

「詳しい事は私にも分かりません。しかし、確かな事が1つ……今の彼等ならこの状況をひっくり返してくれる。あの2人には恐れ入りますねぇ、ヌルフフフ」

 

殺せんせーはガッシュペアの勝利を確信する。今の彼等にとってはどのような敵すらも、恐れるに足りないのだと。彼等は絶望的な状況でも最後まで諦めようとせず、遂には絶体絶命の状況を乗り越えようとしている。そんな2人を見て、殺せんせーは心底感心している。

 

 その一方で、クリアはガッシュペア目掛けて尾を振りかざして2人を消そうとした。しかし、それは阻まれる。

 

『全く、邪魔な尻尾でござるな』

 

「シン・ヴァルセレ・オズ・マール・ソルドン‼」

 

『スラアアアアッシュ‼』

 

巨大な尾がガッシュペアを襲う前に大きな無数の剛剣が空から降り注ぐ。その中の一太刀だけでも、並の魔物なら容易く両断されてしまうだろう。それらの剣達はクリアの尾をいとも簡単に、細かく切り刻んだ。これにより尻尾による厄介な攻撃が繰り出される事は無くなる。

 

「アース‼」

 

ガッシュがその名を呼ぶ。大剣を持つ侍口調の魔物の名を。アースはゴームとの戦いに敗れてしまったが、彼の“魔界の平和を守る法律を作りたい”という思いは、パートナーのエリーを通してガッシュに伝わっている。

 

『ガッシュ。貴方が王になった暁には法の知識を徹底的に叩き込む故、覚悟して下され!』

 

アースはガッシュを次期王になると決め打っている。その事前提で彼が話を進めていると、更に別の魔物が出現した。

 

『そんなに細かくしちゃうと、そいつのシッポを全部消しにくくなるじゃないかー!』

 

「お前は相変わらずだな……ミコルオ・シン・ゼガルガ‼」

 

体中に歯車を持つ巨大な機械神の様な形をした術が出現する。その神々しい外見は、シン・クリア・セウノウスにも引けを取らない程に見る者を圧倒する。勿論術の威力も強力で、大きく長い両腕で切り刻まれたクリアの尾を包み込み、全て消し飛ばした。対象を包む姿は慈愛に満ちた女神そのものだ。

 

「キッド‼」

 

キッドはナゾナゾ博士と共に、千年前の魔物との戦いに挑んだ仲間だ。その戦闘で彼は魔界に帰ってしまったが、そこでキッドは大きく成長する事になった。

 

『ガッシュ!また会えたのは嬉しいけど、今は戦いの最中だ。気を抜くなよ、アイツはまだまだやる気だからな‼』

 

キッドの言う通り、クリアは攻撃の手を緩めない。そしてクリアが両腕を広げると、その両手の平にはそれぞれ槍の形をした消滅波が出現する。

 

「次から次へと……ならば、我が神速の槍を喰らうがよい‼」

 

クリアの両手から放たれた槍は、超スピードでガッシュペアを襲う。それと同時に、金色の本には新たな呪文が出て来た。

 

『あんな速いだけの攻撃、大した事ないよ!』

 

「ああ、その通りだ……シン・ノロジオ‼」

 

ガッシュの口からは広範囲のオレンジ色の光線が吐き出され、2本の槍に直撃する。その瞬間、超スピードで迫ってきたそれの速度はまるで止まっているかの様に遅くなった。この術は触れたものの速度を極端に落とす術だが、通常の“オラ・ノロジオ”よりも技の範囲も継続時間も強化されている。

 

「モモン‼」

 

次に来てくれたのは、ウサギとサルを足して2で割ったような姿をした魔物“モモン”である。彼は当初は臆病な挙句にスケベだったが、ファウードにてそれらを克服し、ガッシュと共に戦ってくれた。

 

『君達のお陰で僕は変われたんだ。本当にありがとう!』

 

モモンはお礼を言う。ガッシュペアとの出会いのお陰で、臆病な自分と決別出来たのだと。そんな彼の言葉を聞いた2人が頷くと、次の魔物が現れた。

 

『あの攻撃を投げ返してやるぞ!』

 

「シン・シャオウ・ニオドルク‼」

 

ガッシュの体は、頭部の左右それぞれの側面に大きな角を生やした、銀の鎧をまとう小麦色の巨大な獣の姿と変貌する。そして獣の腕は消滅の力を纏う2本の槍を難なく両腕で掴み取り、それをクリアに投げ返した。消滅の力を持つ攻撃を手で触れられたのは、シン級の肉体強化のお陰である。そしてそれは投げ飛ばされたと同時にシン・ノロジオの効力が切れて、超スピードの槍がクリアを襲う。

 

「リーヤ‼」

 

『ガッシュ!やっぱりお前は、やる時はやる奴だな‼』

 

ガッシュの姿が元に戻ると、彼はリーヤの姿を認識する。ガッシュが名前を呼ぶと、リーヤは魂の状態にもかかわらず、自分の角でガッシュをつつこうとしていた。彼の友好の証だ。モモン・リーヤの連携で、見事にクリアの超スピードの攻撃を防ぎ切ったのだ。

 

「だが、今の攻撃は効いていないぞ」

 

クリアの言葉はハッタリではない。やはり弱点を狙わなくては有効打にはなり得ない。そしてクリアは自分の両肩の角を分離させ、それは無数の弾へと変貌した。それらはクリアの周囲に浮遊し、今にもガッシュ達を攻撃しようとする。その時、

 

『行くわよ、ガッシュ』

 

「ミベルナ・シン・ミグロン‼」

 

無数の小さな月が出現し、クリアの攻撃を牽制する。一つ一つはそれ程脅威には見えないが、特筆すべきは数の多さだ。突然現れたそれを見て、クリアも迂闊な攻撃をする訳にはいかないと判断した。

 

「レイラ‼」

 

『あなた達との約束を、あんな奴に邪魔なんかさせないわ』

 

紫色の髪と服を身にまとう魔物の少女“レイラ”は千年前の魔物でありながら、初めからガッシュ達の味方をしてくれた。そして共に戦いを勝ち抜いた後、ガッシュとその仲間の誰かが王となり、成長した彼等と魔界で再会する約束をしてくれたのだ。その約束の為に、何よりも自分を救ってくれたガッシュの為に、彼女はここに来てくれた。

 

『分・散‼』

 

「ファルゼーレ・ヴァーロン‼」

 

小さな月に続いて、それと同じ程度の大きさの星が無数に出現し、クリアの周りを覆う。正体不明の物質には、クリアとて安易な接触は許されない。

 

「パムーン‼」

 

星のような髪型をした魔物“パムーン”もまた千年前の強力な魔物だ。当初はガッシュと敵対していたが、彼の本当の強さを感じ取り、ゾフィスと決別して味方になってくれたのだ。

 

『今度こそお前の為に戦える!』

 

デボロ遺跡での戦いでは、ガッシュ達と戦おうとした矢先にゾフィスに本を燃やされてしまい、共に敵に挑む事は叶わなかった。しかし今、ようやく彼は力を貸す事が出来る。自らを石化と孤独の恐怖から解放してくれた友達の為に。

 

荘厳回転(グロリアスレボリューション)、3・6・0‼Vの体勢を取れ、ガッシュ‼』

 

次に出現した魔物がそう言うと、ガッシュは無意識に両手を斜め上に広げ、Vの体勢になっていた。

 

「シン・チャーグル・イミスドン‼」

 

呪文を唱えると同時に、無数の月と星からはV字の光線が発射された。それはクリアの生み出した弾を消し去るだけでなく、本体にも防御の姿勢を取らせた。その光景はV字の光線の威力の強さを物語っている。しかも月と星の数は数え切れない程で、それら全てからの攻撃は脅威だ。今この時、クリアは攻撃手段を奪われている。

 

「お主、ビクトリーム⁉」

 

現れたのは頭も体もVのような姿の、レイラ達と同じく千年前の魔物“ビクトリーム”だ。彼は強敵の1人であり、ガッシュ達と和解した訳では無かったのだが、この戦いに協力してくれている。しかし、友達になった覚えのない魔物の出現に、ガッシュは明らかに動揺している。

 

『良いVだったぞ、ガッシュ。それから……魔界に帰る時には、メロンの種を持って帰ってきてくれ。待ってるからな』

 

彼はメロンが大好物だ。参戦してくれた理由は、戦いを終えたガッシュにメロンの種を要求する為だった。曰く、“一粒の種は、100万のメロンを生む”との事だ。緊張感漂う戦いに変な雰囲気が出て来てしまったのは別の話。

 

「小賢しい真似を‼……これならどうだ⁉」

 

先程まで防御の体勢を取っていたクリアは、再び両腕を広げる。すると、彼の背後には大量の消滅波の弾幕が出現した。クリアが両腕を前に出した瞬間、それらはガッシュ達目掛けて発射された。

 

『かう、かうかう!』

 

「シン・リグノオン‼」

 

ガッシュの両手の平から巨大な錨のついた鎖が数多く出現する。それらは清麿の意志で操作され、地面に突き刺さる。その後、その鎖は地面から大きな岩を持ち上げ、無数の消滅弾を相殺しようとする。

 

「バカめ、そんな岩で防げると……⁉」

 

しかしクリアの予想に反して、持ち上げられた岩は消滅弾を通さない。清麿は鎖を的確に操作して、クリアの攻撃を防いで見せる。

 

「ロップス‼」

 

『かう~!』

 

この術の使用中はガッシュの意識は失われず、出現した彼をすぐに認識する事が出来た。ロップスはガッシュと戦い、引き分けた魔物だ。彼等の再戦が果たされる事は無かったが、今度は共闘する事が出来ている。そしてガッシュと目が合ったロップスは、嬉しそうに手を振ってくれた。

 

「バカな……そうか……これは、鎖で持ち上げられた物質は強化されるのか⁉」

 

クリアの予想は正しい。ロップスのシンの術は、“ディノ・リグノオン”よりもさらに強力な鎖を呼び出すだけでなく、持ち上げる物質までもがより頑丈になるのだ。その鎖で持ち上げられた岩は、クリアの攻撃にも対抗出来る程に硬い。

 

「おのれ……これが本気だと思うなよ‼」

 

クリアがそう言うと弾幕の数が更に増し、攻撃範囲が大きく広がった。持ち上げられた岩だけでは全てを防ぐのは困難かと思われたが、更に別の魔物が出現した。

 

『ピッポッパッ。これは私の新たな変形合体の出番だ!ピヨ麿、呪文を唱えるピヨ‼』

 

「ピヨ麿って呼ぶな……シン・ガンジルド・ロブロン‼」

 

呪文を唱えるとガッシュの下半身はUFOのような物を纏い、その周りには銀色の盾が大量に出現した。それらの盾も術者の操作が可能であり、その数も強度もより増している。無数の頑丈な盾による変幻自在な攻防を全て見切るのは困難だ。そして銀色の盾は、岩と共に見事にクリアの攻撃を防ぎ切った。

 

「コーラルQ、お主まで来ておったとは……」

 

『ピポパピポッ。私の変形は無敵にして無限だピヨ‼』

 

ロボットの様な姿をした魔物“コーラルQ”はガッシュ達の情報を事前に入手した上で戦いを挑んだが、成長を続ける彼等相手に敗れてしまった。そんな彼は、自分の新たな術を見せびらかして自慢しに来たようだ。ビクトリームに続いて、自分の欲の為に金色の本に出現した魔物である。

 

「おのれ……ならば、力だ。適当な小技では逃げ切れんぞ‼」

 

クリアがそう言うと、自らの下半身にある黒い巨大な球体を切り離した。クリアは全身に消滅の力を宿しており、その球体で彼等を押し潰そうとしている。

 

「ハアアアァ‼」

 

クリアが念じると、何と黒いそれがもう一つ具現化した。1つでも強力すぎる攻撃になり得るのに、それが2つに増えたのだ。クリアは自分の勝利を疑わない。そして球体はガッシュ達に襲い掛かる。

 

『ゴーーー‼』

 

「ディオボロス・シン・ランダミート‼」

 

灰色の四角形の立方体が2つ出現する。そこからは無数の闇の力が放出される。その物量は敵の攻撃を容赦なく破壊し、渾身の一撃を防がれた相手に絶望感を与える事すら可能だ。様々な形をする黒いエネルギー波はクリアの巨大な球体を崩壊させ、打ち砕いていく。そして強大な力を誇る球体の1つが完全に崩れ去った。

 

「ゴーム、来てくれたのだな‼」

 

『ゴーーーー‼』

 

ゴームはかつてクリアと協力関係だったが、キャンチョメと友達になる事で1人の寂しさを知りクリアに反旗を翻した。その戦いには敗れたが、ゴームの意志はガッシュにも伝えられている。そんな彼がガッシュ、そしてキャンチョメの為にも尽力してくれている。

 

「この術は……だが、まだ攻撃は残っている‼」

 

クリアの言う通りもう1つの球体は健在だ。ゴームのシン級の術をもってしても、球体の1つの相殺が精一杯だった。しかし、

 

『クリア……お前に真なる竜の吐息(ドラゴンブレス)を味合わせる時が来たようだ……』

 

「シン・ドラゴノス・ブロア‼」

 

清麿が呪文を唱えると共に、ガッシュの意識が途絶える。その瞬間、彼の頭上からは巨大なエネルギー波が放出された。単純なエネルギー砲の放出、だが威力は計り知れない。その一撃は小細工無しに敵を襲う。回避も防御も至難の業だ。クリアの球体は跡形も無く消し飛んでいた。

 

「これは……アシュロンがそこにいるのか……」

 

『力に支配されたバカめ、俺の事を覚えているようだな』

 

“竜族の神童”の一体、アシュロン。非常に高い戦闘能力を誇る彼はいち早くクリアの存在に気付いて戦いを挑んだが、打倒する事は叶わなかった。しかし彼のお陰でガッシュ達はクリアの目的を知り、それを止める為の力を付ける事が出来たのだ。そんな彼の存在感は、力に支配されて自我を失ったクリアが認識出来る程である。

 

『気合を入れ直せ、ガッシュ。ここからの奴は、死に物狂いでかかって来るぞ』

 

「ウヌ‼」

 

アシュロンに気付いたクリアは身の危険を感じるようになった。それ故に、クリアの攻撃はさらに苛烈となる。

 

『清麿、俺の声が聞こえているな?力任せでは奴を倒せん。皆の力で、クリアを倒す答えを導き出すんだ』

 

「ああ、分かっている」

 

アシュロンに言われるまでも無く、清麿は次の一手を考える。確実にクリアにダメージを与え、打倒する為の一手を。その一方でクリアは、明らかな苛立ちを見せていた。

 

「ガッシュが他の魔物の術を使うだと?……ふざけるなァァァ‼」

 

クリアは上半身及び下半身に2本ずつある腕を振り回す。そしてそれらの拳は、ガッシュペアに狙いを定める。しかし彼等は動じない。次に何をすべきかを分かっているから。

 

「ガッシュ、狙いはクリアの抜け殻の頭部に見える力の球体‼肉体強化で近付き、至近距離ダメージを与える‼」

 

『肉体強化が必要なら、俺の出番だぜ‼』

 

清麿が指示を終えた瞬間、新たな魔物が出現する。これから行う攻撃において、彼の持つ術は最適だ。

 

「そうだな、テッド‼シン・ドラグナー・ナグル‼」

 

テッドの肉体強化の術を使用する。シンプルな身体能力の強化だが、それ故に速さと力は強大だ。さらにシン級の術となればクリアの攻撃ですら、今のガッシュを捕えるのは容易では無い。そして迫りくるクリアの一撃に合わせて、ガッシュは己の拳でそれを弾き返す。しかしクリアも手を緩めない。次の攻撃はすぐに飛んでくる。

 

右側に構え直し(ライトサイド・ターン)‼』

 

テッドの指示と動きにガッシュが合わせる。彼等は同じ釜の飯を食った事もあり、お互いに認め合った友だ。そんな2人が息を合わせるのは難しい事では無い。確実にクリアの攻撃を捌いて見せる。

 

『奴の額まで一気に駆け上がる。俺の肉体強化とお前のマントならやれる。行くぜ、ガッシュ!』

 

「ウヌ‼」

 

ガッシュがマントに清麿を乗せた後、彼等はクリアの弱点目掛けて飛び出す。それを見たクリアは全身から消滅波を放つ。しかし、ガッシュ達は足を止めない。

 

『そのまま行きなさい……ガッシュの坊や、テッド』

 

「任せるぞ、チェリッシュ!」

 

次に現れたのは、テッドが何よりも大切に思う金髪の魔物の少女“チェリッシュ”である。ファウードでテッドに救われた後、彼女はガッシュ達に協力してくれた。そして今回も、テッドと共に力を貸してくれる。

 

「シン・グラード・ガンズ・コファル‼」

 

魂の状態のチェリッシュが、大きなスナイパーライフルを支える。そして彼女の周りには、無数の小型の砲台が出現した。それらからは頑丈な宝石が発射される。宝石1つ1つが一撃必殺級の強度を誇り、クリアの攻撃を全て相殺する。

 

『ナイス援護だぜ、チェリッシュ‼』

 

テッドの言う通り、チェリッシュの攻撃は正確無比だ。そして彼等はクリアの額に接近する。2人の魔物のコンビネーションにより、ガッシュペアは無事にクリアの弱点の間近に迫る事が出来た。

 

「おのれ‼だが……いくら近付いたところで、お前達ごときではこの抜け殻を壊せぬ‼」

 

自らの眼前まで来たガッシュ達を煩わしく思いながらも、クリアは弱点を突破されるとは考えない。その殻の硬度は未知数だ。その時、体にいくつもの傷を持つ屈強な姿の魔物が出現した。

 

『てめぇ、俺の力をなめてくれるじゃねーか』

 

「バリー‼」

 

かつて一度ガッシュペアを打ち負かした魔物“バリー”。彼はその戦いで、どのような力にも屈しない“強き王”を目指すようになる。そしてバリーは成長を遂げ、ガッシュ達と共に戦い、自らが犠牲になる道を選んだ。王になる事は叶わなかったが、そんな彼をパートナーのグスタフは“王をも殴れる男”と評した。

 

『ガッシュ。奴の弱所は、クリアの抜け殻という強いバリアで守られている。だが殻のつなぎ目を正確に裂ければ、弱所を露出させる事が出来る』

 

バリーは敵の弱所を見抜く事が出来る。そして彼は即座にクリアの弱点を見つけ出した。

 

「シン・ドルゾニス‼」

 

ガッシュの両腕に竜巻状のドリルが纏われる。そしてガッシュは半分バリーに意識を預ける形で、着実にクリアの抜け殻を無駄なく破壊していく。一見地味にも見える攻撃だが、バリーの戦闘技術の高さ無くして抜け殻の破壊は成し得ない。当然クリアはそれを妨害しようとするが、両腕のドリルでクリアの拳をもはじき返す。

 

「貴様らァァァ‼」

 

それを見かねたクリアは、さらに攻撃の頻度を増す。4本の腕がガッシュを襲う。彼は攻撃に対して身構える。しかしこのままでは弱所の突破に手間取り、それを破壊する前にクリアの一撃を受けてしまう。清麿がそれを危惧した時、金色の本に新たな呪文が出現した。

 

『邪魔をするなーー‼』

 

「お前……シン・アミレイド‼」

 

清麿は一斉に殴り掛かるクリアの拳目掛けて、指差しながら呪文を唱えた。するとガッシュの口からは巨大な網が吐き出され、クリアの腕を拘束した。ただ拘束するのみならず、その網はクリアの腕の動きを完全に止めた。この術は通常の“アミレイド”と異なり、範囲や網の強度が増しているだけでは無く、網に触れた者の動きを封じる能力を持つ。

 

「お主……パンブリ‼」

 

パンブリと呼ばれたが、パピプリオの間違いだ。彼は何度かガッシュ達と対立したが、協力してくれる場面もあった。そしてパートナーとの絆は本物であり、ルーパーはパピプリオを実の息子のように愛している。

 

『パピプリオだ‼次期王だったら、他の魔物の名前を間違えるなよ‼』

 

「ウヌ……済まぬのだ」

 

口調はキツイが、彼もまたガッシュを次の王として認めてくれている。それを察したガッシュはすぐに謝罪した。

 

『続けるぞ、ガッシュ』

 

バリーの言葉を皮切りに、再び抜け殻の破壊を続ける。パピプリオのお陰で妨害を受けずに攻撃に専念出来る。そして抜け殻は完全に壊され、クリアの弱点である力の球がむき出しになった。

 

「そこからは逃がさんぞぉ‼」

 

クリアは力技でパピプリオの拘束を解いていた。そして巨大な手で彼等を握りつぶそうとするが、次の魔物が出現する。

 

「シン……」

 

『ヨポイ!』

 

「ヨポポ‼」

 

緑のタイツを身に付けた小柄な少年の魔物“ヨポポ”は、ガッシュがイギリスで出会った魔物だ。彼はパートナーのジェムを大切に思い、彼女を守る為にガッシュと共に、自らの本が燃える事も顧みずに敵に立ち向かった。

 

「ヨポポイ・トポポイ・スポポポーイ‼」

 

清麿が呪文を唱えると共に、ヨポポの動きに合わせてガッシュが踊る。そしてクリアもまた、その動きに合わせて踊る、否、踊らされている。この呪文は、敵を術者の動きに合わせてしまうのだ。それはクリアのような強力な魔物ですら抗う事は叶わない。

 

「か……体が勝手に……」

 

これにはクリアも動揺を隠せない。クリアはガッシュ達に一撃を喰らわせる事が出来なかった。そして踊りのせいで隙が生じる。

 

『今のうちよ、ガッシュちゃん‼』

 

『ヤバい反撃が来る前に、そこを離れるゲロ‼』

 

「パティ‼ビョンコ‼」

 

パティと、カエルのような姿をした魔物“ビョンコ”が来てくれた。ビョンコもパティと同じくガッシュ達と敵対していた。しかし彼等の姿を見て改心し、自らリスクを冒しながらもガッシュ達を守ってくれた。

 

「シン・スオウ・ギアクル‼」

 

パティの呪文により、巨大な水の龍が召喚される。それは通常の“スオウ・ギアクル”よりもさらに大きくて強力だ。長い体を持つ水龍の外見は美しく神秘的ですらあるが、保持する力と水量はシン級の名に恥じない。

 

『アンド……』

 

「シン・ニュシルド‼」

 

水の龍に粘性の液体がまとわりつく。元はビョンコの盾の呪文で、粘液で敵の攻撃を包む術だが、今回はパティの術に対して使用した。そして粘液を纏う水の龍は長い体を活かしてはクリアに絡みつき、その動きを封じる。

 

『ガッシュちゃん、後は頑張って!魔界で待ってるわ‼』

 

『絶対に生き残って、皆で一緒に遊ぶゲロよ‼』

 

「ウヌ‼」

 

2人はそう言い残して魔界へ帰って行く。彼等はガッシュの勝利を確信している。クリアが動けない間にガッシュペアは地上に戻る。そして2人はクリアに対して、最後の一撃を放とうとした。

 




 読んでいただき、ありがとうございました。ガッシュの友達になってくれた魔物を金色の本に詰め込みました。コーラルQは私の趣味です。
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