ガッシュペアの暗殺教室   作:シキガミ

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 潮田親子のひと悶着の描写はほぼカットです。ご了承ください。


LEVEL.63 進路の時間

 クリア・ノートとの戦いに勝利したガッシュペアは帰宅後、早速登校の準備に取り掛かる。それが終わった後に学校に向かおうとするが、同時にデュフォーが家を出て来た。

 

「もう、行ってしまうのか?」

 

「ウヌゥ、今日一日くらいゆっくりしていっても良いと思うが……」

 

「魔界の存続をかけた戦いは終わったからな。もうここに居座る理由は無い」

 

デュフォーは新たに旅立とうとしている。もう少しいても良いのではと考えるガッシュペアだったが、彼の意志は固い。

 

「さて、残るはブラゴ達との戦いだけだな」

 

デュフォーがそれを口にした瞬間、場の緊張感が高まる。クリアとの戦いが終わっても、2人の魔界の王を決める戦いは続く。しかも戦うべき相手は2人にとってライバルとも言える存在。絶対に負けられない。

 

「お前達なら大丈夫だとは思うが、絶対に気を抜くなよ。最後の戦いがつまらない幕引きになるのは、皆避けたいだろうだからな」

 

「当然だ。まだ俺はガッシュを王にさせてやれてない」

 

「あの者達は、とてつもなく強いからの」

 

彼等はブラゴペアの強さをよく理解している。確かにクリアとの戦いの時、クリアを最終的に倒したのはガッシュペアだ。その時はブラゴペアよりも総合的な実力は上だったかもしれない。しかし彼等はこの時も鍛錬を重ねている。油断するなど決して許されない。

 

「清麿、【答えを出す者】(アンサートーカー)を鍛える特訓は継続しておけ。あれはいつ失われてもおかしくないからな」

 

「分かっている。この力はブラゴ達との戦い、そして殺せんせー暗殺の為にも必要な物だ」

 

デュフォーは清麿が【答えを出す者】(アンサートーカー)を失う事を危惧する。これからガッシュペアが成すべき事を果たす為には、この力は重要になってくる。

 

「あの超生物の暗殺に取り組むなら、魔界の王を決める最後の戦いまで力が鈍る事は無さそうだな。どちらもぬかるなよ」

 

デュフォーはそう言って2人の方を振り返る。その時に彼は笑顔を見せてくれた。それを見た清麿は、今のデュフォーならこれからの人生を楽しむ事が出来ると確信した。

 

「ああ。今までありがとうな、デュフォー」

 

「お主がいなければ、この戦いに勝つ事は出来なかったのだ」

 

ガッシュペアはお礼の言葉を述べる。クリアとの戦いに参加こそしていないが、デュフォーの考え出した特訓が無ければ彼等に勝ち目は無かった。デュフォーもまた、魔界の存続に大きく貢献した。そして彼は再び旅立つ。ちなみに何処に向かうのかまでは分からい。

 

「俺達も学校に行こう。そろそろ向かわないと遅刻しかねん」

 

「そうだの、久し振りの学校に遅刻は嫌なのだ」

 

デュフォーを見送った2人は、少し速足で登校を始める。

 

 

 

 

 ガッシュペアは学校の裏山まで辿り着く。今回の戦いを経て魔界の滅亡を防ぐ事が出来たが、2人にはもう1つ不安に思う事があった。それは、渚の母親の事。渚がE組を出てしまうのではないのかと心配していたのだ。しかし、そうはならなかった。

 

「2人とも、おはよう!」

 

「「おはよう(なのだ)!」」

 

渚が後ろからガッシュペアに声を挨拶してくれた。彼は今日も普通にE組に登校している。

 

「2人共、本当にお疲れ様。僕の方は心配しなくても大丈夫だったよ」

 

渚が事情を説明する。3者面談の時の広海は凄い剣幕で渚をE組から出させる事を主張したが、渚自身がE組に残りたい気持ちをしっかりと伝えた。これまで渚に強く反発された事の無かった彼女は動揺しながらも彼に暴言を吐くが、渚は一歩も引かなかった。それを見た広海は渚が自分自身とは違う事にようやく気付き、渋々E組に残る事を承諾したのだ。

 

「これ以上E組から出る事を強要するなら家を出ていくって言ったら、やっと折れてくれてさ。でも今まで母さんが育ててくれたのは事実だから、これからは毎朝の家事は僕がやる事にしたんだよね」

 

「なるほど。空港で渚だけがいなかったのはそういう事だったのか」

 

「渚が残ってくれて良かったのだ」

 

渚が空港に来ていなかったのは、家事に励んでいた為だ。そんな彼の残留を聞いた2人は心底安心する。自分達の責務を果たす事が出来ても、その間に大事なクラスメイトが1人欠けてしまっては素直に達成感に浸れない。

 

「とは言え、俺達は結局渚には何もする事が出来なかったな」

 

「ウヌゥ……」

 

ガッシュペアが罪悪感に苛まれる。渚に対して相談に乗ると言いながらも、クリアの事でそれどころでは無くなり、渚にとって役立てなかったのだと2人は考えている。しかし、それを聞いた渚は首を横に振る。

 

「そんな事ないよ。僕がここまで母さんに反発出来たのは2人のお陰でもあるんだから」

 

それを聞いたガッシュペアは怪訝な顔をするが、渚はそのまま話を続ける。

 

「昨日の戦いで、2人と殺せんせーは最後まで諦めなかった。そんな強い意志で敵に抗い続けた結果、君達は勝つ事が出来たんだ。それを見て凄く勇気が湧いてきたんだよね。だから強気に言いたい事を伝えられた。殺せんせーにも2人にも感謝してる」

 

今回の戦いを見たE組の生徒達は様々な感情を抱いた。素直に勝利を喜ぶ者、殺せんせーとガッシュペアが凄いと思った者、自分も負けてられないと思った者、魔物の戦いが非常に過酷である事を実感した者など様々だ。その中でも渚は自分も彼等のように強い心を持ちたいと思い、3者面談に臨む事が出来た様だ。

 

「渚の為にもなれたなのなら、良かったのだ!」

 

「まさか戦いが見られてたと知った時はビックリしたがな。けど皆が応援してくれてたのは素直に嬉しい。ありがとう」

 

3人はそんな話をしながら校舎を目指して山を登り続ける。そして校舎が見えるまであと少しという所で、渚が立ち止まった。

 

「2人共、ちょっと良いかな?」

 

渚がガッシュペアに尋ねる。2人は何事かと考えるが、渚は一息ついた後に再び口を開く。

 

「僕に勇気をくれて本当にありがとう。その……これからは2人の事、“清麿”と“ガッシュ”って呼んでも良いかな?」

 

渚のお願いは、彼等を下の名で、かつ君付けは無しで呼ぶ事だった。かつて渚は清麿に自分を下の名で呼んで欲しいと頼んだ事がある。そして今度は自らが、彼等をファーストネームの呼び捨てにしたいとの事だった。

 

「ウヌ‼私は大丈夫なのだ‼」

 

「俺も構わないぞ。これからもよろしくな!」

 

ガッシュペアは快く承諾する。彼等の距離がさらに近付いた瞬間だ。

 

 

 

 

 その日の放課後、クリアとの戦いを終えたガッシュペア及び渚の進路相談が職員室にて行われる。まずは渚の進路相談が先に始まり、ガッシュペアは裏山で対ブラゴペアに向けての特訓を行いながら待機する。渚は当初殺し屋の才能がある事で苦悩していたが、別の道を目指す事に決めたのだ。それは、教師としての道。ちなみにわかばパークのさくらに勉強を教えに行った時も、彼女から先生が向いていると言われたようだ。彼の進路相談は無事終了し、ガッシュペアの番が回ってきた。

 

「さて、お待たせしました。君達で最後ですねぇ」

 

「まさかガッシュの進路相談までしてくれるとはな……」

 

ガッシュと共に殺せんせーによって職員室に連れてこられた清麿は、呆れたような表情を見せる。魔物の進路相談など今まで聞いた事も無いし、それを実際に行おうなどとは殺せんせーくらいしか考えないだろう。

 

「ガッシュ君も大事な生徒ですからねぇ、最も、彼の道はほぼ決まっているのでしょうが」

 

「ウヌ!私は優しい王様になるのだ‼」

 

ガッシュは自信満々にそう答える。今回の戦いを経て、彼はその夢まであと一歩の所まで来ている。ブラゴとの戦いを終えて勝つ事が出来れば、彼は晴れて魔界の王となる。

 

「ガッシュ君の目指す王様の姿は素晴らしいです。しかし、それは同時にとても大変な事でもあります」

 

殺せんせーの顔が険しくなる。“優しい王様”、それは魔界の誰もが平和に暮らせる世界の王の事を言うのだろう。それを目指すのは容易では無い。どのような事があっても誰も傷付かず、誰も犠牲にならない世界を作るのは至難の業だ。ガッシュもそれは理解している。

 

「分かっておるぞ、殺せんせー。それでも私にはそれ以外の道は無いのだ」

 

ガッシュの意志は固い。それを捻じ曲げる事など、何人たりとも出来はしないだろう。彼の言葉を殺せんせーと清麿は感心したような顔で聞く。

 

「そう言うと思っていました……では一言だけアドバイスを。ガッシュ君、王様になってからは積極的に周りを頼ってあげて下さい」

 

王だからといって全てを1人で背負う必要は無い。ましてガッシュの様に民を思う優しい王になるのなら、なおさら1人で突っ走るべきでは無い。独裁政治の先には未来など無いのだから。

 

「ウヌ……私には分からない事がたくさんあるからの。多くの者達の力を借りる事になると思うのだ」

 

「フム、よろしい」

 

ガッシュの言葉を聞いた殺せんせーは満足気な笑みを浮かべる。先生の言いたい事は彼にも伝わっている。そして殺せんせーは清麿の方を向く。

 

「続いては高嶺君の番です。将来やりたい事、ざっくりで構いません。何かありますか?」

 

その問いを聞いた清麿が目を細める。そして彼はこれまで身に起こった出来事を振り返る。ガッシュとの邂逅、前の学校でのクラスメイト達との和解及び交流、多くの魔物との戦い、共に戦う仲間達との出会いと別れ、E組での殺せんせー暗殺、そしてクリア・ノートとの魔界の存続をかけた決戦。そのいずれもが清麿に大きな影響を及ぼしている。

 

「将来に向けてのハッキリとしたビジョンは見えていない。いつかビッチ先生に言われたように、魔界と人間界の行き来を可能にする為の研究者になる事も考えた」

 

清麿はまだ悩んでいる、自身のこれからの事を。仮に魔界と人間界を繋げる道を選んだとしても、それは容易では無い。そして彼は話し続ける。

 

「……だが、クリアとの戦いを経て思ったんだ。ガッシュは魔界の危機を救った。ならばこの戦いが終わってからガッシュと再び会うのは、俺はもっと大きな男になってからの方が良いのではないかと。ガッシュが魔界の危機を救って王になるってのに、俺がこのままってのは釣り合わない。だから、俺は大きく……地球を救えるような大きな男になりたい!」

 

清麿は自分の夢を語る。それはお世辞にも具体的とは言えない。だが、彼の目にはそれを必ずやり遂げて見せるという明確な意思が宿っている。殺せんせーもそれを察したのか、清麿の言葉に納得したような顔で話を聞いてくれている。

 

「とは言え、殺せんせーの暗殺に成功すれば一度は地球を救った事にはなるんだがな。だがそれだけじゃ足りない。この地球がどんな危機に陥ろうとも、何度でも救えるような男に俺はなりたい!」

 

「清麿。ならば私も立派な大人に成長してから、清麿との再会を果たしたいのだ!」

 

清麿の言葉を聞いたガッシュが彼の方を向く。魔界の王を決める戦いが終わっても、お互いに再会出来る事を確信している。

 

「おやおや。2人共大変な道を目指そうとしているのに、不安の2文字が今の君達には見当たりませんねぇ。不思議な物です、2人ならどんな困難でも乗り越えてしまうのではと思えてしまう」

 

殺せんせーが少し呆れ気味な表情を見せる。今のガッシュペアには迷いが無い。どのような壁にぶつかろうとも、彼等は必ず乗り越えていくのだろうと殺せんせーは確信している。

 

「高嶺君……一先ず君の将来の夢は、研究者にしておきましょうか。魔界と人間界を繋げる方法を探りつつ、地球の為になるような物を発明する研究者と言う事で。しかし、私の暗殺だけでは不十分とは大きく出ましたねぇ。ヌルフフフ」

 

殺せんせーは緑色の縞々模様を浮かべる。それを見た清麿は負けじと不敵な笑みを見せる。

 

「それを成す為には、先生の暗殺とブラゴ達への勝利は絶対条件。まずはその2つのミッションを成功させない事には前に進めん。だからクリアとの戦いを終えた後も、俺とガッシュが気を抜く事は有り得ない。覚悟しておいてくれ」

 

「何としても、やり遂げて見せるのだ‼」

 

清麿だけでなく、ガッシュもまた決意を固める。1つの戦いが終わっても、彼等のやるべき事はまだまだ終わらない。

 

「君達の覚悟は受け取りました。卒業するまでに殺せると良いですねぇ!それから大丈夫だとは思っていますが、高嶺君は第2の刃(学業)の方もおろそかにしない様に。さて、進路相談はここまでですかね」

 

こうしてガッシュペアの進路相談は終了した。しかし殺せんせーが席を立とうとした時、再び2人は口を開く。

 

「殺せんせー。言いそびれていたが……クリアとの戦いに力を貸してくれてありがとう!」

 

「ウヌ!とても助かったのだ!」

 

彼等は殺せんせーにお礼を述べる。クリアとの戦いが終わってから先生にそれを述べる機会に恵まれなかったが、進路相談の時にようやく伝える事が出来た。

 

「とんでも無い。困った生徒を助けるのは、教師として当然ですから」

 

生徒の為に命を懸ける事すら殺せんせーは当たり前だと言い切る。ここまで生徒思いの先生は中々いないだろう。ガッシュペアは改めて殺せんせーに感謝する。先生だけでは無い、今まで多くの人々に彼等は助けられて来た。彼等はこの思いを忘れる事なく、自分達の夢に向かって行く。

 

 進路相談が終わってガッシュペアが帰り支度を始めると、殺せんせーがそれを阻むかのように口を開いた。

 

「……それでは私は一旦ここを出ます。君達は少し待っていて下さい」

 

殺せんせーがそう言うと、そのまま超スピードで職員室を出て行ってしまった。

 

「ここにいてくれって……何かあったのか?」

 

「ウヌゥ、さっぱり分からぬのだ」

 

殺せんせーに待機している様言われた2人だが、その理由は不明だ。2人がどうしたものかと悩んでいると、職員室に2人の生徒が入ってきた。

 

「清麿、ガッシュ!進路相談は終わったみたいだね」

 

「2人共ごめんね、もうちょっとだけ待ってて欲しいんだ」

 

渚と茅野だ。殺せんせーだけでなく、彼等までもがガッシュペアに待機するよう言ってきた。何がどうなっているのか、2人にとって謎が深まる一方だ。

 

「渚、カエデ。一体どうしたのだ?」

 

ガッシュが理由を聞くが、2人共それに答える素振りは無い。そんな時、茅野がガッシュの座る椅子の後ろに来て、彼の両肩に手を乗せた。

 

「エヘヘ。それは秘密だよ、ガッシュ君」

 

「ウ、ウヌゥ」

 

彼女は優しく微笑みかけるが、ガッシュは訝し気な顔をする。

 

「まあ、悪い事じゃないんだろう。もう少し待ってみるか」

 

「清麿、あの能力は使っちゃダメだよ」

 

清麿は諦めた様な表情でそう言う。これから起こる出来事について気にはなるが、彼等の言動から見るにそれを教えてくれる事は無さそうだ。実際に渚は【答えを出す者】(アンサートーカー)の使用を禁じて来る。

 

 そして4人がしばらく談笑していると、今度はカルマが職員室に入ってきた。

 

「皆お待たせ~、もう入ってきて良いよ」

 

カルマが口角を上げる。どうやら教室にてクラス総出で何かの準備をしていた様子だ。そして待ちわびていたかのように渚は清麿の、茅野はガッシュの手を引っ張る。

 

「お、おい渚。何なんだ?」

 

「カエデ、そんなに引っ張らずとも……」

 

「「良いから良いから!」」

 

いきなりの出来事でガッシュペアが困惑する。しかし渚と茅野はその手を放そうとしない。

 

 

 

 

「じゃあ2人共、先入ってよ」

 

 一同が教室の前まで来ると、カルマがE組の扉を指差す。ガッシュペアが何事かと思いながらも教室に入ると、その瞬間に何かが破裂したような音が聞こえた。

 

「「「「「高嶺‼ガッシュ‼お疲れ様‼」」」」」

 

室内で待機していたE組の生徒達がクラッカーを鳴らすと共に、ガッシュペアに労いの言葉をかけてくれた。

 

「な、何だ⁉」

 

「び、びっくりしたのだ……」

 

2人はまだ、何が起こったのかが良く理解出来ていない。そんな彼等が教室を見渡してみると、教室の至る所に色紙による飾り付けがなされている。まるで何かのパーティ会場の様だ。また並べられている机には、多くの料理が置いてある。そしてガッシュペアの視線はE組の黒板に向かう。

 

「「こ、これは……」」

 

黒板には大きく“お帰り”と書かれていた。それを見た2人は察する。彼等は自分達が無事に帰ってきた事を祝ってくれるのだと。しかも教室には生徒達だけでなく、殺せんせーとビッチ先生も一緒にいる。

 

「カラスマはもう少ししたら出張から帰って来るわよ」

 

「烏間先生も君達が心配で、気が気でない様子でしたからねぇ。ヌルフフフ」

 

目の前の光景を見て、ガッシュペアの心は喜びで満たされる。こんなにも自分達を思ってくれる人達が目の前にいるのだと。そんな2人の目には涙が溜まり始める。

 

「昨日は僕が皆に祝ってもらった。今日は2人の番だよ」

 

渚が口を開く。彼がE組に残る事が決まった時も、クラスの皆が祝ってくれたそうだ。その時に厳しい戦いから帰って来るガッシュペアの為にも何かをしようという流れになった様だ。

 

「迷惑だったかな?……お祝いをするかどうか、悩んだんだよね。この戦いは2人にとっても辛い物だったと思うからさ」

 

茅野が申し訳なさそうな顔を見せる。クリアとの激闘を制して無事に生還したガッシュペアだが、この戦いによってティオとウマゴンは魔界に帰ってしまった。その事による彼等の精神的ダメージが大きいのなら、この祝い自体が不謹慎な物になる可能性がある。だが、

 

「迷惑なんてとんでもない、ここまで準備してくれて嬉しいよ‼」

 

「ウヌ!皆、ありがとうなのだ‼」

 

ガッシュペアは嬉し涙を流しながら、ここにいる全員にお礼の言葉を述べる。E組一同は魔物の戦いには直接関係している訳では無いが、ここまで自分達の事を思ってくれる。それだけでも2人が喜ぶのには十分だった。そんな彼等の前に、何やら箱の様な物を持ったイトナが近付く。

 

「お前等、何を泣いているんだ……全く。コイツでも受け取れ、開けてみろ」

 

ガッシュペアにプレゼントを渡してくれる様だが、無愛想な口調は相変わらずだ。そしてプレゼントを受け取ったガッシュがそれを開封すると、何とバルカン300のラジコンが入っていた。

 

「イトナ‼ありがとうなのだ‼」

 

「ようやく改良が終わった。丁度良いタイミングで渡す事が出来た」

 

この前のバルカンの試作品が完成したのだ。それを見たガッシュは目を輝かせるが、イトナは対照的に落ち着いている。しかし彼の口元が若干緩んでいるのを清麿は見逃さなかった。

 

「完成させてくれたんだな、イトナ。大切にするよ」

 

「好きにしろ」

 

清麿の言葉に対しても彼は素っ気なく返す。しかし、イトナは何処か嬉しそうだ。

 

 そして一同はパーティのごとくそれぞれ向かい合う様に並べられた席に着く。先生達の席も用意してある。中心に座るのは当然ガッシュペアだ。そして2人の目の前には村松と原がたった今調理していた料理が置かれた。

 

「特製ラーメンだ、家の店で出してる親父のとは訳が違うぜ!食ってくれお前等!」

 

「ブリの照り焼きだよ、ガッシュ君てブリ好きだったよね。おかわりもいっぱいあるからね!」

 

村松と原の料理スキルはE組の中でもトップクラスだ。机の上に置いてある料理の多くはこの2人が協力して作ったもので、それ以外のオードブル等は事前に買ってきた物もある。ラーメンの方は魚介と醤油のスープに味付け卵、焼豚、ナルト、メンマ等具材も盛りだくさんで豪勢だ。ブリの照り焼きは原特製のたれを使用してあり、見た目も匂いも一級品である。

 

「凄く旨そうだ‼」

 

「ウヌゥ、とても良い匂いだの‼」

 

ガッシュペアも食欲がそそられる。そして村松と原が自分の席に着くと、殺せんせーが口を開く。

 

「さて。烏間先生はまだ戻ってきていないですが、先に始めちゃいましょうかねぇ!」

 

殺せんせーの言葉と共に宴は開始された。各々が目の前の食材を口にしながら談笑する。そんな光景を見たガッシュペアは、自分達がここに帰ってきたのだと改めて実感した。

 




 読んでいただき、ありがとうございました。次はE組全員で盛り上がる祝勝会について描写していきます。
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