ガッシュペアの暗殺教室   作:シキガミ

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 GW中、あんまり小説を書く事が出来なかったです……。


LEVEL.74 冬休みの時間

「高嶺清麿、ガッシュ……」

 

 柳沢は自らの本拠地の薄暗い一室でガッシュペアの名を呟く。他のE組はおろか、触手生物とも異なる力を持つ2人組。そして彼はガッシュの電撃を偽殺せんせー騒動の時、触手細胞を破壊されたどさくさに紛れて回収していた。

 

「まあ良い、あの怪物を殺しさえ出来れば他の事など。だが……」

 

柳沢の目的は殺せんせーの命を奪う事。だから柳沢にとってガッシュペアの事は、それを邪魔する警戒するべき敵と言った認識だ。しかし、何故か政府は彼等の力について野放しにしている。柳沢はこの事が甚だ疑問である。

 

「奴等の事に関して、政府は圧力でも受けているのか?」

 

柳沢の予想は正解だ。電撃を放つ2人組の存在を、政府が野放しにする訳が無い。しかし政府側からは彼等に関する言及は一切無い。防衛省に圧力をかける者達が存在するからだ。

 

 1人目は理事長。暗殺の為にE組の校舎を使わしてもらっている防衛省は彼には逆らえない。また理事長はガッシュペアの力に不用意に干渉するようならば、今すぐE組から殺せんせーを追い出した上で、触手に関する非人道的な人体実験を世論に暴露する事も辞さない。また彼以外にもガッシュペアの事を、つまりは魔物の事を口止めする者が存在する。

 

 

 

 

「そうか、ついに超生物の正体が分かったんだね」

 

 アメリカ某州のビルの一室。そこで1人の青年が通話を終える。電話相手は殺せんせーの正体を突き止めた様だ。彼が受話器を置くと同時に1人の老人がその部屋に入ってきた。

 

「アポロ君。彼女達は奴の事を知ったみたいだね」

 

「そうですね、ナゾナゾ博士。恐らく清麿とガッシュもこの情報を得た事かと思われます」

 

「なるほど」

 

アポロもまた日本の防衛省に圧力をかけている。彼の財閥は大きくてそこともコネクションがある為、お互いの為にガッシュペアの事は目を瞑るようにして貰っている状況だ。ナゾナゾ博士が殺せんせー絡みで比較的自由に動けているのも彼のお陰である。

 

「こっちもヴィノー君の両親を見つけられたからね。あの超生物の事に専念出来るよ」

 

ヴィノーはすでに両親に引き取られた。その後も彼はアポロの情報網や協力者達と共に、殺せんせーの正体を探る事に尽力している。先程のアポロの電話相手こそがその協力者だ。

 

「後は清麿君達がどう動くかだね。我々も最大限協力したいが、彼等の意志も尊重しなくてはならない」

 

殺せんせーの正体を知ったガッシュペア含むE組が何を成そうとするのか。それによっても博士とアポロの動きも変わってくるだろう。

 

 

 

 

 場所は変わってフランスの豪邸。アポロとの通話を終えた女性はため息をつく。

 

「あの超生物の問題……思ってた以上に業が深いみたいね」

 

「その様だな、これを知ったガッシュ達が何を思うか」

 

殺せんせーの正体を掴んだブラゴペアは顔をしかめる。2人もナゾナゾ博士とアポロの協力を経て殺せんせーの正体を知るに至った。しかしそれを知った2人は、あまり良い気分では無い。

 

「あの超生物は殺し屋として多くの命を奪ってきた。確かにその事は許されないでしょう。それでも1人の人間を好き勝手弄んで良い理由にはならないわ」

 

シェリーは人体実験の事を知って両手を握りしめる。人を人とも思わない非人道的な行為。殺せんせーは彼女達と共にクリアに立ち向かってくれた。その事に感謝しているシェリーは憤慨する。

 

「褒められた事では無いのは確かだな。だが今はガッシュ達の決断を待つべきだろう」

 

「ええ、分かっているわ」

 

ブラゴにたしなめられたシェリーは怒りの感情をこらえる。最終的に判断するのは自分達では無くガッシュペア、そして2人の属するE組なのだから。もし彼等から助けを求められればブラゴペアもすぐに動くだろう。しかし自分達から手を出す問題では無い事を、2人は理解している。

 

「あの2人、どうしているのかしらね」

 

シェリーはガッシュペアの身を案ずる。殺せんせーの過去を知った2人が何を思うのか。

 

 

 

 

 場面は清麿宅。冬休み1日目の夜、ガッシュペアは改めて殺せんせーの事について話し合う。彼等は理事長から殺せんせー暗殺の依頼を受けてE組へと編入した。しかし、その暗殺対象が人工的な超生物では無く人間であるのならば事情は変わる。

 

「殺せんせーはE組の事を本当によく見てくれた。その恩に報いる為にも、そして地球の爆発を防ぐ為にも先生暗殺を成功させるしかないと思っていたが……」

 

「ウヌゥ、殺せんせーは地球爆発の為だけに作られた訳では無かったのだ」

 

2人は考える。殺せんせーの正体が判明した今、これまで通り先生の命を狙い続ける生活を送り続けても良いのかと。

 

「地球を爆発させたくないなら殺せんせー暗殺を続けなくてはならぬ。しかし、その方法では元々人間だった殺せんせーは死んでしまうのだ」

 

ガッシュは苦虫を嚙み潰したような顔をする。彼には迷いが生じている。E組での最大の目標、殺せんせー暗殺。しかし彼等は先生の正体を知ってしまった。悩む素振りをするガッシュを見た清麿が口を開く。

 

「これまでは殺せんせー暗殺に向けてクラスで力を合わせて来た。だが俺達が一番に成すべき事は何だ?そもそも俺達は何の為にE組に来たのか?」

 

清麿は原点に振り返る。彼等は理事長の依頼を受けてE組へ編入した。その内容は“地球を滅ぼす超生物の暗殺”。その目的は言うまでも無く地球の爆破を防ぐ為だ。殺せんせー暗殺はその為の手段の1つ。そしてガッシュペアは決意を固める。

 

「清麿、私は……」

 

ガッシュが先に気持ちを打ち明けた。それを聞いた清麿の口角が上がる。ガッシュペアは同じ結論に辿り着いたのだ。清麿も口を開く。

 

「ふぅ、大分スッキリした。怒涛の展開のせいで、視野が狭くなっていた様だ」

 

ここ数日で新たに判明した事が多すぎる。その事はガッシュペアを焦らせるのには十分だった。しかし彼等はそれを克服し、自分達のやりたい事を決めた。

 

「最も、一筋縄ではいかないだろうがな。俺達だけでは成し遂げられない事だ」

 

「そうだの……他のE組の者達とも話し合わなくてはなるまい」

 

彼等は答えを出した。後はE組全員が協力してくれるかどうか。この話は3学期に持ち越しとなる。そんな時、清麿のスマホに電話がかかる。

 

「もしもし、サンビームさん?」

 

『学園祭以来か、清麿。やっぱりあの超生物の事が気になってな』

 

相手はサンビームだ。クリアとの決戦で彼は殺せんせーの存在を知った。その事について気にしており、ガッシュペアの近況を知りたくて電話をかけたのだ。

 

「殺せんせーの事か。そうだな、サンビームさんにもこの事を伝えようと思ってたんだ……」

 

清麿は事情を話す。そして殺せんせーの正体を知ったサンビームは電話越しで驚くが、すぐに平常心を取り戻して話を続ける。

 

『ふむ、それがお前達の判断なら全力で応援するさ。ただ……』

 

サンビームはガッシュペアの判断を尊重してくれた。2人が半端な気持ちで決断を下した訳では無い事を彼は理解している。共に厳しい戦いを乗り越えた仲間なのだから。しかし彼の声のトーンが途端に低くなる。何か気がかりな事があったのだろうか。清麿は身構える。

 

『あの超生物が人間時代に殺し屋をやっていたならば、その時に彼は多くの人々を殺した事になるんだよな。それについてはどう考える?』

 

殺せんせーの“死神”としての罪。今でこそE組の事を思ってくれる良き教師であるが、彼がこれまで両手を血に染めて来た事実は変わらない。サンビームは直接殺せんせー暗殺に関わって来なかった。だからこそ、客観的に殺せんせーの過去について言及する事が出来た。自分の仲間の恩師が元殺し屋だと分かった今、サンビームは複雑な心境だ。

 

「もちろん殺せんせーの過去を全て水に流す事は出来ない。それは先生自身分かっているハズだ。その為に俺はこの選択をしたってのもある」

 

清麿は殺せんせーの事情を全て加味した上で決断を下した。彼の選択には一切の甘えは無い。清麿には殺せんせーにやって欲しい事がある様子だ。そして彼の覚悟は電話越しのサンビームにも伝わる。

 

『グルービー、ならば言う事は無い。私にもやれる事がありそうならいつでも相談してくれ』

 

「済まない、サンビームさん」

 

こうして通話は終了した。清麿はサンビームとの話をガッシュに伝える。それを聞いたガッシュは一瞬だけ悲しげな顔を見せて下を向いた。

 

「ウヌ。殺せんせーは昔、悪い事をしておったからの」

 

ガッシュは呟く。殺せんせーの過去。まさか恩師が殺し屋だったとは思いもよらなかった。しかしガッシュはすぐに清麿に視線を合わせる。

 

「それでも私の答えを変わらないのだ!」

 

「ああ、3学期は荒れるだろうな」

 

ガッシュペアは答えを出した。それがE組にどのような影響を及ぼすのかは定かでない。

 

 

 

 

 年明け。モチノキ町は雪がちらつく。ガッシュペアは恵と共に神社に初詣に来ている。クリスマスから年末にかけて忙しかった彼女だが、この時だけは休みを取れた。参拝を終わらせた3人は出店をまわる。

 

「すごい人混みだな。ガッシュ、はぐれるなよ」

 

「ウヌぅ」

 

「どこの店も並んでいるわね」

 

神社は大混雑だ。彼等は参拝の帰りに出店で食事を済ませる計画を立てていたが、人が並び過ぎている為そのまま神社を出る事にした。彼等は出口を目指していると、恵が口を開く。

 

「そう言えば2人共、私に相談があるって言ってたわよね」

 

「そうだな。殺せんせーについてだが、流石にここは人が多すぎる。どこか個室がある場所があれば良いんだが」

 

彼女もまたこれまで戦いを乗り越えて来た仲間だ。よってこれからガッシュペアが成そうとしている事を話しておきたかった。

 

「この近くに、客席が個室の定食屋があるわ。そこで話しましょう」

 

「ウヌ……丁度お腹もすいてきたからの」

 

一同の次の行き先が決まった。彼等はそこを目指して人混みを歩き続ける。

 

 

 

 

 彼等は定食屋に着いた。そこで個室に入り、各々が料理を注文した後に清麿が恵に真実を話す。殺せんせーの正体、茅野の事情。これらを聞いた恵は目を細める。

 

「そっか……あの超生物が元人間だった事には驚きね。それだけじゃない……カエデちゃんが誰かに似てると思ったら、磨瀬榛名ちゃんだったのね」

 

「恵、その名前を聞いた事があったのかの?」

 

恵は雪村あかりの芸名を口にする。以前彼女は茅野を見た事があると言っていたが、それは磨瀬榛名を知っていた為だった。

 

「榛名ちゃんの事、私も大ファンだったからね。休業を聞いた時は寂しく思ったなぁ」

 

茅野の正体を知った恵は複雑な心境になる。磨瀬榛名の事はファンではあったが、まさか心にそこまで大きな闇を抱えていた事など知る由も無かった。

 

 そして彼等は話題を殺せんせーについてに切り替える。ガッシュペアは自らの決断を恵に話した。それを聞いた彼女は笑みを浮かべる。

 

「これが俺達の答えだよ、恵さん」

 

「良いと思う。私は直接殺せんせーと関わった訳じゃないけど、2人のしようとする事なら応援したいな。それに、そのやり方のが清麿君やガッシュ君らしいし。私にも出来そうな事があったら何時でも言ってね」

 

「ありがとうなのだ!」

 

恵は2人の答えに同意してくれた。だが、それを成し遂げるのは容易でない。それでも彼等には諦める選択肢は無い。ガッシュペアが腹をくくると、清麿のスマホに一通のメッセージが届く。

 

「渚からじゃないか」

 

「なんて書いてあるのだ?」

 

相手は渚だ。メッセージの内容は茅野のお見舞いの誘いである。入院してから彼女の容体が良くなり、面会の許可が降りたそうだ。ガッシュペアは当然これを了承する。清麿は渚に返信すると再び恵に視線を合わせる。

 

「これから渚達と茅野のお見舞いに行きたい。良かったら恵さんもどうかな?」

 

「カエデちゃんの……一緒に行きたいけど、私までいて大丈夫?」

 

恵は躊躇う。本心では彼女が心配だが、E組での問題に対して、部外者の自分が安易に首を突っ込んでよいのかと内心疑問に思う。しかし清麿は首を横に振る。

 

「それは問題ないよ。渚にも恵さんと一緒にいる事は伝えたから。ぜひ来てくれって言ってた、茅野も喜ぶだろうってさ」

 

クリア戦以降、その戦いに関わっていた者達は殺せんせーの事を知った。その事はE組の生徒達も知っている。よって恵がそれについて気を使わなくても良い。しかも彼女は茅野を含めてE組の何人かとは面識がある。断る理由が無い。

 

「ありがとう、ご一緒させてね」

 

「分かった。それから渚は他にも数人誘ってから来るって言ってたな」

 

「カエデと会えるのは楽しみなのだ!」

 

こうして彼等は、茅野のお見舞いの為に椚ヶ丘の病院を目指す。

 

 

 

 

 そして病院の一室。ガッシュペアと恵は茅野がいるベッドまで訪れる。既に渚・杉野・奥田・神崎が先に来ていた。

 

「清麿達、来てくれたんだね」

 

「ガッシュ君、高嶺君。それに恵さんまで」

 

「カエデ、もう体調は大丈夫かの?」

 

「うん、3学期からは学校に行けるよ」

 

茅野は冬休みを丸ごと病院で過ごす事になってしまったが、3学期からは退院出来る。それを聞いた清麿達はホッと胸を撫でおろす。

 

「見た感じ元気そうだけど……カエデちゃん、あんまり無理はしないでね」

 

「ありがとうございます、恵さん」

 

今の茅野は特に体調が悪い訳では無いが、油断は禁物だ。恵は彼女に改めて心配の声をかける。そして彼女は目線を茅野から渚に移す。

 

「渚君、私の事まで誘ってくれてありがとうね。カエデちゃんの元気そうな顔が見れて安心したわ」

 

「そんな、とんでもないです。恵さんこそ来てくれてありがとうございます」

 

彼女は礼を述べた。清麿から話を聞いた時は気が気で無かったが、茅野の体調が良さそうで心底安心している。礼を聞いた渚もまた恵に感謝する。

 

「元気そうで良かった、茅野……いや、雪村?」

 

一方で清麿は茅野を呼ぼうとする。しかし呼び名をどうすれば良いかで、彼は悩む事となる。

 

「ああ、高嶺君もそこで引っ掛かるんだね……呼び方は今まで通りで大丈夫だよ。そっちの方がしっくりくるし」

 

「分かったよ、茅野」

 

「清麿、このやり取りは2回目なんだよ」

 

「やっぱり、気になっちゃいますよね」

 

茅野カエデは本名では無い。それを知った清麿は彼女の呼び方をどうすれば良いか悩んでいた。渚や奥田も同じことを考えていた様だが、その心配は無用だった。暗殺を通して出来た彼等の絆を以てすれば、名前の真偽は些細な問題なのかもしれない。そして茅野は恵の方を向く。

 

「それから恵さん、どこまで話を聞いてますか?」

 

「ゴメンね、清麿君とガッシュ君から全部聞いちゃった。カエデちゃんの事も」

 

「謝らなくても大丈夫ですよ、私達も魔物の戦いの事を聞いてますので。恵さんがどこまでE組の事を知ってるか、分かっておきたかったんです」

 

恵は申し訳なさそうにするが、茅野は気にしていない。他のE組のメンバーも頷いてくれる。それを見た恵は安心する。

 

「でもカエデちゃんが磨瀬榛名ちゃんだと知った時は驚いたな」

 

「アハハ、ずっと隠してましたからね」

 

恵と茅野の語り合い。学生の身で芸能界に携わった者同士、お互いの苦労を分かり合える様だ。彼女達の仲がさらに親密になる。

 

「現役女子高生アイドルと天才子役の対談……三村あたりがテンションを上げそうな組み合わせだな」

 

「確かに。最初に茅野の事に気付いたの、アイツだもんな」

 

芸能人同士の対面を見た清麿はそう呟くと、杉野が同意してくれた。彼女達の対談は続く。

 

「でもカエデちゃん、大変だったよね。色々な物背負ってE組に入って……」

 

恵の顔が暗くなる。亡くなった姉の為の復讐心を抱えての暗殺教室への加入。中学生の身には重すぎるのではないか。恵はそう思えて仕方が無かった。しかし茅野は首を横に振る。

 

「気にしないで下さい恵さん。それはお互い様です、ティオちゃんの事だって……」

 

茅野がフォローを入れてくれた。恵もまたティオが魔界へ帰った事で、大切な人と会えなくなる苦しみを知っている。ティオは魔界で生きてはいるが、次に会えるのはいつになるか分からない。ティオの名前が出た時、ガッシュペアは目線を下に向ける。自分達も最終的に、別々の世界で生きていかなくてはならなくなるのだから。

 

「あの子は相変わらずみたいだけどね。ガッシュ君が落ち込んでた時にまた来てくれたとか」

 

ティオからの救いの手。それが無ければガッシュは立ち上がれたかどうか分からない。ガッシュはその事をとても感謝している。しかし、その話を聞いた茅野は目線を逸らす。

 

「ガッシュ君……その時は本当にごめんね」

 

「ウヌゥ、カエデ。落ち込むでない」

 

気まずそうな顔をする彼女の前までガッシュが来た上で声をかける。彼は茅野を責める所か元気づけてくれた。そんなガッシュを見た茅野は彼を抱き上げ、ベッドに腰をかける自らの膝の上にガッシュを座らせた。

 

「ガッシュ君は優しいね」

 

茅野は嬉しそうな表情でガッシュの頭を撫でる。この休みの間に再び彼の顔を見れた事が余程嬉しかった様だ。そんな2人の様子を一同は温かい目で見守る。少しした後に茅野は渚に声をかけた。

 

「そういや渚。ガッシュ君達が来る前に何か言いかけてたよね」

 

「ああ、そうだ。茅野には謝らないと!」

 

渚は茅野を止める為に、勝手にキスしてしまった事を気にしていた。彼は謝罪の言葉を述べるが、茅野は笑って許してくれた。

 

「何言ってるの、私を助けてくれたんでしょ?むしろ感謝してる」

 

「そっか……嫌われたらどうしようと思ってた」

 

「渚君、良かったですね」

 

茅野の言葉を聞いた渚は安心する。彼等はこれからも親交を深めていくだろう。しかし茅野が僅かに渚から目線を逸らした事を、神崎と恵は見逃さなかった。

 

「そろそろ帰ろっか。茅野さんもまだ完全には良くなってなさそうだし」

 

「!……そうね、カエデちゃんには万全の状態で学校に行って欲しいもの」

 

 

 

 

 2人の言葉を皮切りに一行は病室を出た。しかし恵と神崎以外の面々はきょとんとした顔を見せる。なぜ彼女達が皆を帰らせるような事を言ったのかが理解出来ていない。そして神崎と恵は清麿達の後ろを歩く。

 

「恵さんも気付きましたか?茅野さんの本当の気持ち」

 

「うーん、何となくだけどね。でも有希子ちゃんが皆に帰る様に言った事で確信に変わったかな」

 

一同はそのまま帰路に着く。神崎と恵が察したのは茅野の想い。また神崎は、この時初めて茅野がE組と同じ目線に立った様に感じた。そして彼等が帰った後、茅野が渚の事を考えてベッドの中で悶える。しばらく彼女はその気持ちを押し殺して、演技をしながら過ごす事になるだろう。

 




 読んでいただき、ありがとうございました。次回から3学期編へと入ります。
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