ガッシュペアの暗殺教室   作:シキガミ

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 今回は殺せんせー救出計画の第一歩となります。


LEVEL.79 準備の時間

 殺せんせーを助ける方針で決めたE組一同はそれぞれの家を目指す。救出作戦の第一歩は清麿の【答えを出す者】(アンサートーカー)と律による政府の動向探り。周りに感付かれない様、今は安易に大人数で動くべきでは無い。山道では殺せんせー救出についての話題で持ち切りだ。

 

 しかし山を降りた辺りからは受験の話が出始めた。冬休みから1月にかけては色々あり、生徒一同は一見それどころでは無かった。ところがこんな時期なのに、彼等は不自然に受験の事が頭に浮かぶ時があったという。

 

「……殺せんせーのマッハ囁きによるサブリミナル効果のせいだな」

 

清麿は【答えを出す者】(アンサートーカー)でその原因を探る。殺せんせーは生徒達の受験の準備がおざなりになる可能性を危惧した。そこで彼等に分からない様、背後に迫り彼等に受験の事を吹き込んでいた。しかも先生の場合はそれを本人の台詞の様に語れる。

 

「清麿の背後にも殺せんせーがいた時があったという事かの?」

 

「そういう事になるな。言われてみれば心当たりがある(水野達と受験の話をした時、思った以上に話題が弾んだのはそのせいか?)」

 

「全然気付かなかったのだ」

 

清麿は冬休みに自宅で水野達と受験勉強をした時、いつも以上に勉強が捗る事や受験の話が盛り上がる事があった様な気がしていた。それは殺せんせーのおかげだったのだろう。しかし勝手に後ろに立つ殺せんせーの存在をガッシュペアはおろか、把握出来た者は誰もいなかった。生徒達が殺せんせーのお節介に呆れていると、カルマが清麿の肩に手を置く。

 

「清麿。行きたい高校が決まってないならさぁ、俺と一緒に椚ヶ丘に残るってのはどう?」

 

「ふむ……それは盲点だったな。しかしカルマ、お前ならもっと上の高校を目指しても良いんじゃないのか?」

 

カルマは外部受験で椚ヶ丘を受け直すつもりだ。さらに清麿への勧誘。しかし彼なら最高峰の高校に行く事も出来るのではないか。だがカルマ曰く、“本校舎の生徒達が元E組に上に立たれる時の屈辱的な顔を3年も見れるのは最高”との事だ。

 

「カルマ、そういう所は変わらないね」

 

渚が苦笑いする。彼のひねくれ具合は健在だ。しかしカルマが椚ヶ丘を目指す理由はそれだけでは無い。

 

「平均的な学力なら上の高校もあるけどさ、タイマンの学力で勝負して面白そうなのって……多分椚ヶ丘にしかいないと思うんだ」

 

カルマは浅野の顔を思い浮かべる。これまで何度もE組の前に立ちはだかった強敵。2学期末ではカルマと清麿に破れこそしたが、それまでは常に椚ヶ丘のトップに、E組の乗り越えるべき壁としてあり続けた生徒。カルマは彼を好敵手として認めている。

 

「それに清麿にも勝ててないしさ……目指す職業なら普通になれる自信があるから、今は単純にバトルを楽しむのもありでしょ。浅野君や清麿が相手なら申し分ない」

 

「なるほど、そういう考えか……検討しよう。確か最終決定は今週末だったか」

 

純粋な学力勝負。清麿・カルマ・浅野の対決であれば、他を寄せ付けないだろう。清麿も内心、最後の期末テストは心が躍っていた。それをあと3年間続けられるなら悪い気はしない。彼は外部受験について真剣に考える事にした。すると隣の渚が悲し気な顔を見せる。

 

「卒業したら、それぞれ別の道に向かってくんだよね」

 

別れ。卒業後はE組全員が揃う機会はそれ程多くないだろう。皆が将来の夢に向けて歩き続ける。その事を渚は切なく感じている。すると彼の話を聞いたガッシュが下をうつむく。

 

「ウヌ……私も魔界に帰らなくてはならないからの」

 

椚ヶ丘の卒業後は魔界の王を決める最後の戦いが始まる。ガッシュペアVSブラゴペア。どちらが勝っても魔物は人間界からいなくなる。そうなれば再会出来るのはいつになるか分からない。

 

「ガッシュ君、寂しくなるね」

 

「そうだの」

 

茅野がガッシュの頭に手を置く。2人共少しだけ泣きそうな顔をしていた。清麿も考えるような素振りを見せる。理解していた事とはいえ、実際に別れがすぐそこまで来ていると考えると心苦しい物である。

 

 

 

 

 帰宅後、清麿は部屋のパソコンを起動させる。するとPC画面に律が出現した。

 

「高嶺さん、良いのですか?私に個人情報を覗かれたくないからパソコンには入らない様おっしゃっていたのに」

 

彼女はPC画面上で首を傾げる。パソコンは個人情報の塊だ。律のスペックがあれば、それらの情報はすぐに暴かれてしまう。しかし清麿は躊躇しない。どうしても律に探って欲しい情報があるからだ。

 

「殺せんせーを助ける為にはそうも言ってられんからな。先生が地球を爆破させる確率が0%である事を知ってるのはE組の生徒だけだ。【答えを出す者】(アンサートーカー)で国の動向を探った結果、大掛かりな暗殺計画があと少しの所まで進められているのが分かった。律、それについて調べられるか?」

 

国の方針はあくまで殺せんせー暗殺の道。ならば政府が何も策を考えない訳が無い。清麿は大規模な計画が暗殺期限までに実行される答えを得たが、具体的な内容までは把握出来なかった。そこで彼は律に調査を依頼する。

 

「やれる限りやってみます。任せて下さい!」

 

律が電脳世界を飛び回る。清麿も【答えを出す者】(アンサートーカー)を発動させながらキーボード操作を行い、律を援護する。調べるのは国の最高機関の情報。容易な訳が無い。清麿は眉をひそめる。

 

「律、大丈夫そうかの?」

 

ガッシュは心配する。彼は電脳世界でのやり取りを理解していないが、清麿と律が必死に戦っている事だけは分かる。大事な仲間が頑張る中、彼も真剣な顔でPC画面を見つめる。律のスペックと【答えを出す者】(アンサートーカー)。国のセキュリティ相手にどこまで太刀打ち出来るか。

 

 

 

 

 清麿と律がPC内で奮闘する間、ガッシュがふと窓を見つめるとすでに陽が沈んでいた。彼等は帰宅後、数時間にわたり国から情報を得ようと奮闘していた。勿論証拠を残さない方法で。ハッキングを咎められれば面倒だ。少しした後、画面に律が表示される。

 

「2人共、ひとまず得られた全ての情報を開示します」

 

律が説明する。国が行う暗殺計画“天の矛・地の盾”。天の矛は宇宙空間から触手生物のみを溶かす広範囲の光線を放つ。しかしそれだけでは殺せんせーに感付かれて逃げられる可能性もある。そこで地の盾により触手生物を溶かす光のドームで殺せんせーを包囲する手はずだ。

 

「何と……このままでは……」

 

「こんなものが発動されれば、殺せんせーでもお手上げだろうな」

 

ガッシュペアはうつむく。まさかこれ程の規模の暗殺計画を政府が企んでいたとは。しかも日本のみならず、他の国との合同でのプロジェクトだ。この計画から考えるに、世界には殺せんせーを助ける選択肢は無い。

 

「すみません。3月のいつに行われるのか、機材の詳しい配置場所などまでは分からなかったです」

 

律が申し訳なさそうな顔をする。彼女のスペックをもってしても、国のセキュリティを完全に突破する事は出来なかった。

 

「とんでもない。律、よくここまで調べてくれた」

 

「ウヌ、これが分かっただけでも十分なのだ!」

 

ガッシュペアは律を労う。これ程の情報を仕入れる事が出来たのは律が日々刃を磨き続け、自らを高めていたお陰だ。生半可な努力では成し得ない。2人はその事が分かっている。

 

「ありがとうございます。もっと情報を探れるよう、私も頑張ります!」

 

律は微笑む。彼女はE組に来て、感情を持ち合わせるようになった。だから毎日E組の為に成長を遂げ続けてきたのだ。2人が律に感心していると、1階から彼等を呼ぶ声が聞こえて来た。

 

「清麿、ガッシュちゃん!ご飯出来たわよ!」

 

華が夕食を作り終えた。それを聞いた2人は空腹を感じる。パソコンに向き合っていた間は気付かなかったが、時間は夕食時だ。

 

「行ってきて下さい。情報は私がまとめておきます」

 

「律、サンキューな」

 

「ありがとうなのだ」

 

律が情報の管理を引き受けてくれた。これで万が一にも情報が漏れる心配は無い。2人が律にお礼を述べると、そのままリビングに向かった。

 

 

 

 

 翌日の放課後、E組の生徒達はモチノキ町のホテルの会議室にて集まる。そこは清麿がアポロを通じて貸し切ってもらった部屋であり、何度か彼やナゾナゾ博士と顔を合わせた場所だ。今度は生徒達と共に、誰にも見つからない様に殺せんせー救出について話し合う。

 

「……これが今、各国が協力して行おうとしている暗殺計画だ。これを何とか防げば殺せんせーを助ける事が出来る」

 

清麿がプロジェクターの前で、律に映像を流してもらいながら解説を行う。それを聞いた生徒一同に緊張感が走る。このままでは殺せんせーは死ぬ。それを防ぐには早い段階から動き出さなくてはならない。しかし相手の出方が分かればE組も先手を取りやすい。政府も現状E組の作戦に気付いた様子は無い。

 

「凄い!これ、全部律と高嶺君が調べたの?」

 

「はい、全ての情報を完璧にという訳にはいきませんでしたが」

 

「そっか」

 

不破の問いに律が答える。それを聞いた彼女は誇らしげな顔をする。律の名付け親は不破だ。だから律が次々と成長する様は彼女にとっても嬉しい。何より殺せんせー救出への道のりを示してくれた。そして不破は話を続ける。

 

「感情を理解した高スペックなAIの存在。ドラ○もんの登場も遠くないかな!そして高嶺君の手で魔界と人間界の接続が叶えば、魔物と○○型ロボットとの共演まで見れるも!」

 

「優月、楽しそうだの!」

 

不破の妄想の連鎖。彼女は名付け親として律の成長を見て浮かれているのだろう。ガッシュはその妄想に興味を示すが、思考が飛躍する彼女に対して多くの生徒が呆れ混じりの視線を向ける。

 

「不破さん、何の話?」

 

「おい、そろそろ戻ってこい」

 

渚と清麿がツッコミを入れる。これ以上話が逸れる訳にはいかない。

 

 クラス内で話し合い、各々が意見を述べる。生徒全員が殺せんせーを助けたい一心だ。自分達の恩師が、全く手の届かない場所で殺される展開は避けたい。

 

「そもそも、こんな大規模な計画を一般人にも知られずに実行するって不可能じゃないのか?」

 

千葉が口を開く。現状殺せんせーは国家機密だ。だから各国は無数の暗殺者を雇って秘密裏に先生を殺そうとしてきた。しかし、ここに来ての大規模なプロジェクト。殺せんせー暗殺の為の最終兵器であるが、当然世論に隠すのは難しい。今度は三村が考えるような素振りを見せる。

 

「こんな事が表に知られれば、当然メディアは黙っていない。一瞬で大ニュースだ。政府が殺せんせーの存在を露呈させようとしている?」

 

彼は1つの結論に辿り着いた。この暗殺計画が実行されるなら、周りの目を誤魔化すのはほぼ不可能と考えて良い。それ程に多くの人員の協力が必要になるのだから。秘密裏の暗殺では殺せないが故の判断。しかし殺せんせーの事が表沙汰になるのは政府も都合が悪いのでは無いか。すると不破が政府の狙いに気付く。

 

「分かった!政府は地球を爆発させる超生物として殺せんせーの話題を全世界に取り上げて、合法的に先生を殺そうとしてるんだ。政府がメディアに圧力をかければ、先生を悪役に仕立て上げる事は容易だからね!」

 

彼女は先程の妄想が嘘のようなシリアスな雰囲気を漂わせる。秘密裏に先生を殺すのは無理だと判断した政府は、今度は殺せんせーを悪役として表舞台に立たせた上で殺す選択肢を取った。そこには各国の保身や思惑も混ざっているのだろう。

 

「優月、名探偵みたいなのだ!」

 

「律や高嶺君、それに他の皆が意見を出してくれたお陰だよ。何よりもこんな無理矢理な方法で、先生を死なせたくないからね」

 

ガッシュが不破に感心の目を向ける。彼女はここでも推理力を発揮した。それも殺せんせーを助ける為だ。

 

「そんな!殺せんせーばっかり悪者にするなんてひどいよ!」

 

倉橋を始め、多くの生徒が悔し気な顔をする。今まで自分達を育ててくれた恩師が悪として葬られようとしているのだから無理もない。

 

「大丈夫なのだ、陽菜乃。そんな事はさせないからの!」

 

「ガッシュちゃん……」

 

清麿の隣に立つガッシュが倉橋をなだめる。その様な展開にしない為にも話し合いが行われている。そして清麿が話をまとめた。

 

「その通りだ。このまま先生を見殺しにする選択肢は無い。しかし政府のやり口が分かった今、多少なりとも手は打てるはずだ。今は情報が足りていないから何とも言えないが、皆で良い方法を考えて行こう!」

 

彼の一声で今日の話し合いは終わる。世界規模で行われている殺せんせー暗殺計画の情報共有。これこそが今回の議題だ。それが分かった上でまずは各々が対策を考える。そして詳しい情報が得られたり有効な方法が思いつき次第、積極的にクラス内で共有していく。E組の方針が決まった。

 

「……勿論受験勉強にも力を入れながら、だ。こっちも結果を出せなくては殺せんせーを裏切る事になるからな」

 

清麿が言葉を付け足すと何人かの生徒が顔を青くする。先生に恩を返す為に、何より自身の将来の為の受験。大事なのは分かるが、先生救出計画との並行は容易では無い。そして今日は解散となった。

 

 

 

 

 帰り道。ガッシュペアは家を目指しながら殺せんせーの救出について話し合う。天の矛と地の盾を誰にも知られずに撤去し、殺せんせーを逃がす事。口にするだけなら難しい事では無いが、実際は政府への反逆行為だ。果たしてE組だけでそれが叶うのだろうか。

 

「清麿、中々大変な問題だの……」

 

「何だガッシュ、随分弱気だな」

 

「ウヌ、それは……」

 

「まあ、殺せんせーを助けるのは容易じゃあないさ」

 

彼等も自分が行おうとしている事が極めて難儀である事を理解している。しかし、

 

「だが、俺達には頼れる仲間が多くいるじゃないか」

 

清麿は口角を上げる。彼等が諦める事は無い。そして帰宅後、清麿は仲間達に助太刀を依頼した。

 




 読んでいただき、ありがとうございました。本小説も終盤に差し掛かってきました。
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