オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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再び前書きで失礼します。作者です。
引き続き日間1位本当にありがとうございます。
嬉しい悩みなのですが、最近多くの感想を頂いております。
全てに目を通してニヤついているのですが、個別に返信していると時間がかかるようになってきてしまいました。
ですのでこれからは返信をしたりしなかったりしますが何卒ご了承ください。
代わりに返信の時間も本編作成に当てて早めに更新できるようにがんばりますのでよろしくおねがいします。


第8話 ゴンのパーフェクト念教室と過去の恨み

 

 皆さんこんにちは、念の伝道師ゴン・フリークスです。

 

 

 無事多数決の道をスタートできたゴン一行、最初のチュートリアルとも言えるいくつかの多数決を終えたところでゴンが念についての基礎知識を説明し始める。

 

「まずオレやヒソカが使ってるこの力の名前は念じると書いて念、ざっくり説明すると生き物が持ってる生命エネルギー(オーラ)を使って超常現象を起こす技術だよ」

 

 始まった説明を聞き逃さないよう集中するキルア達と、どんな説明をするのか楽しみなヒソカ。

 

「基本的に念を使える念能力者は使えない人より強い。オーラを扱えるだけでそうなんだけど、そこに念能力が加わるからなおさらだね」

 

 オーラに念能力と今まで聞いたことのない単語に戸惑う3人に、わかりやすいように身近な例えをあげる。

 

「水道の蛇口とホースがイメージしやすいかな、蛇口とホースが体で、水がオーラだよ。今3人は少しだけ蛇口を開けて、そのまま垂れ流しにしてる状態。オレとヒソカはホースの先に念能力ってアタッチメントを付けてる上で、好きに水の量を調整できるって言えば分かりやすいかな。」

 

「すまない、オーラを扱うのと念能力は別という説明だったがそのあたりを聞いてもいいか?」

 

 説明が一段落したと判断したクラピカが気になったところを質問し、レオリオやキルアも話についてきていることを確認したゴンが答える。

 

「オーラを扱うっていうのは、さっきの例えだと水の量を調整したりホースの先を掴んで止めたり勢いを良くしたりすることだね。ここまで出来たら一応念能力者を名乗れるよ。念能力っていうのは能力者の集大成、その人それぞれの願った力を発現させる能力のことだよ」

 

 その説明でまた少し考えるクラピカに代わり、次にレオリオが気になる点を上げる。

 

「屋上と今の説明だとよ、まるでどんなことでもできる夢みたいな力に感じるんだが流石に無理だよな?」

 

「半分正解かな、基本的にはどんな能力でも一応作れるよ。けど作った能力を使えるかどうかはその人次第なんだ。ホースの先に消防車のノズルを付けたとしても、水道が普通じゃあ結局意味ないでしょ?」

 

「じゃあ仮に無限のオーラを生み出せればどんな能力でも実現可能だってことか」

 

「絶対に壊れない体も必要だよ。水圧に負けてホースが破裂しちゃうからね。生み出せるオーラと鍛えた体、その2つに合わせた念能力を作るのが大事な事だね」

 

 なるほどねぇと納得するレオリオを見て、まだ何も聞いてこないキルアに目を向けると何かを思い出していたのか丁度良く質問がとんでくる。

 

「昨日会長のジジィがやたらと硬かったのはそういう能力ってことか?ゴンもありえねぇ怪力だしよ、昨日のやり取りの中でどれが念能力なのか教えてくれ」

 

「キルアが見てた中に念能力は無いよ。水圧が強くなることで力が強く、圧がかかればホースが硬くなるってイメージ。あと念能力を他人に聞くのはよっぽど親しくないとやめた方がいいよ、中には初見殺しとか知られないことで強い能力もあるから」

 

「ふーん、ゴンは聞いたら教えてくれるのか?」

 

 キルアは昨日の不甲斐なさも合わさり、少し意地が悪いと自覚しながらも思わずゴンに念能力を聞いてしまう。クラピカにレオリオも興味があるのか、控え目にゴンへ目を向けた。

 

「もちろん教えるよ!けど今はまだ駄目、自分の能力がある程度イメージできてからじゃないと悪影響になっちゃうかもしれないからね」

 

 キルアだけでなく3人に向かって即答するゴン、親しいと断言された3人はこそばゆそうにしながらも満更ではない様子で顔を見合わせる。

 

「ならば私も能力が決まったら必ず伝えよう。できればアドバイスも貰えたら助かる」

 

「オレにももっと色々教えてくれ、どんなことなら可能なのかとか治療に応用する方法とか気になるからよ」

 

「ま、追いつくイメージは出来てきたし首洗って待ってな」

 

 3人からの返答に満面の笑みを浮かべるゴンと、そんな4人を見て悦に浸るヒソカ。 

 

「ボクには教えてくれないのかい♥」

 

「戦闘中とかならまだしもプライベートで教えるのはヤダ。ヒソカもネタバレは嫌じゃない?」

 

「残念♣楽しみにしてるよ♥」

 

 さらに細かい説明や質問が繰り返される中、5人は順調に多数決の道を進んで行く。これといって苦戦も仲違いもないため、レオリオやキルアにいたっては緊張感も集中力も途切れてだらけ始めていた。

 そんなゴン一行の前に、底の見えない大穴と中央にリングのある空間が現れる。リングを挟んだ先の通路にはフードを被った6人がおり、初めてトラップ以外の試験が来たことでゴン達にも緊張感がはしる。

 

『受験者の諸君はリングで一対一の対決をしてもらう。一人一回の勝負でもし負け越した場合は全員失格、勝ち越したとしても負けた分の時間を消費すること。対決の詳しい説明は対戦相手の囚人が行う、以上』

 

 試験官のアナウンスが終わると同時に、一人の囚人がフードを取りながら前に出てそのままこの試験のルールを説明する。

 対決内容と決着内容は各囚人が決めること、ゴン達が先に対決する者を決めることなど囚人有利なルールにレオリオが抗議するが認められない。最初の挑戦者を決めなければ不合格と言われては従う他なく、話し合いの結果ヒソカが様子見を兼ねてリングへと上がった。

 

 

 

 ついにトリックタワー多数決の道も山場、時間をかけた5連戦が始まろうとしてます。

 正直、トンパさんの代わりにヒソカが同行者になるだけでここまで楽な道になるとは思いませんでした。お陰様でキルア達への念の説明はあらかた終わりましたし、足止めを食らうのも少ない時間になりそうですからこれが正規ルートだったんでしょう。

 ヒソカがリングに上がったことでフードたちからも一人がリングへと上がりますが、例の説明してくれた人がトップバッターじゃないんですね。そもそも向こうに6人いる時点で人数が合いませんし、一体何が起こっているのかわかりませんがヒソカが負けることはないでしょうから気楽に観戦しましょう。

 

 

 

 フードを脱ぎ捨て現れたのは、囚人ではなく顔のキズが目立つ精悍な男だった。男は眦を上げてヒソカを睨み付けると、声を荒げヒソカに殺気をぶつける。

 

「この時を待っていたぞヒソカ!貴様に復讐するために、私は修羅となったのだ!」

 

「…ん〜♣ごめん思い出せないや♦君誰?」

 

 激高する男に対して全く興味もないヒソカ、対象的な二人だがヒソカも油断はしていなかった。何故なら相手の男もまた念能力者であり、最低限自分に傷を負わせる実力はあるとオーラから判断したからだ。

 

「忘れたと言うなら教えてやる。去年の試験で貴様に敗れて以降、私は一時も忘れることはなかった!今日ここで貴様を抹殺し、過去を精算するためだけに生きてきたのだ!」

 

 男の悲痛ともいえる叫びを聞き、ようやく男の顔を思い出したヒソカは最初と打って変わって友好的な態度となる。

 

「思い出した、あの時の試験官じゃないか♦君にはお礼を言わなきゃいけないと思っていたんだ♥」

 

 突然の馴れ馴れしさに戸惑う男に対してヒソカは矢継ぎ早に言葉を重ねていく。

 

「君が去年ボクを失格にしてくれたおかげで今年夢の様な出会いがあったんだ♥試験が始まるまではマイナスイメージだった気がするけど今じゃ大きくプラスだよ♦お礼にボクが叶えられることなら一つだけ叶えてあげるよ♠」

 

 あまりに上機嫌な自分を敵とも思っていないその姿に怒りが頂点を越え、暗く冷たい殺意をまといながらルールを告げる。

 

「ふざけたことを抜かすな!勝負内容はデスマッチ、どちらかの息の根が止まるまでの殺し合いだ!」

 

「…わかった♣先手は譲ってあげるからいつでも来なよ♠」

 

 終始こちらを侮る態度に限界を迎えた男は、開始の合図も待たずに抜き放った二本の曲刀を全力で投げつける。凄まじい速度の曲刀を軽く避けたヒソカの前に、再び二本の曲刀を振りかぶった男が肉薄する。更に先程投げた曲刀がブーメランの様に方向転換し背後の死角からヒソカを狙う。戻ってきた曲刀と全く同じタイミングで斬りかかる男は、未だに構えてすらいないほとんど棒立ちのヒソカに自分の勝利を確信する。

 

「死ねヒソカ!我が奥義、無限四刀流に散るがいい!!」

 

 その先を見ることができたのはゴンと、かろうじて何をしたか察することができたキルアだけであった。

 四本の曲刀が当たる直前、ヒソカは両手の指に挟んだトランプをそれぞれ一閃させた。ただそれだけで後ろから迫る曲刀二本、男の持っていた曲刀二本に加え男の首が一刀両断に切り払われていた。

 リングには切られた曲刀と男の首が虚しく転がり、首を失った体も更に数歩駆けたあと同じくリングへと沈んだ。男の首はヒソカを殺ったという暗い悦びの表情で固まっており、自分が死んだことには欠片も気づいた様子が無い。

 

「これでも本当に感謝してたんだ♦だからお礼として一思いに殺してあげたよ♠二度と覚めない都合の良い夢の中でおやすみ♣」

 

 男の表情を一目見た後、踵を返すヒソカの記憶から男の記憶がきれいに消えていく。

 ヒソカは壊れたおもちゃに興味はない、興味があるのは将来有望な青い果実と遊び甲斐のあるおもちゃだけだ。

 ヒソカの予想以上の強さに絶句する3人とは別に、今の攻防のレベルの高さに気付いているゴンが拍手でヒソカを迎える。

 絆されてるなあと自覚しながらも、これはこれで悪くないとヒソカにしては珍しい自然な笑顔でゴンとハイタッチするのだった。

 

 

 


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