オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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第98話 楽しい旅と愉しい会議

 

 

 皆さんこんにちは、マスコットキャラのゴン・フリークスです。思った以上の反動に改めてゴンさんという頂の高さにおののいてます。

 

 

 

 

 

「結局ついてくるのかよ、ゴンが来るとヒソカも付いてきて嫌なんだけど」

 

「当たり前じゃん。クラピカとレオリオは忙しいしギンも子供達のお守りだからね、一人で行かせられないからオレがついて行くしかないよ」

 

「ボクも余計なことはしないし気にしないでいいよ♦ゴンを護る、これもまた得難い経験♥」

 

 キルアの実家ククルーマウンテンに向かう飛行船の中、キルアにゴンとヒソカの三人は珍しくダレながら移動していた。

 ハンター試験で出会ってからこれまでとにかく鍛錬を続けてきたが、最大の難敵だったキメラアントとの死闘を終えたことでしばらくは休息期間としたのだ。

 加えてハンター協会会長のネテロやビスケも事後処理にてんやわんやのため、実りある鍛錬のための人員も場所も激減しているのも理由の一つである。

 

「しっかしこれ程ガキで良かったと思ったことはねぇや。ナックル達にゴレイヌまで死にそうな顔してたな」

 

「本当にね、いつかは必要になってくるのかもしれないけどもうしばらくはいいかな」

 

「律儀だねぇ、やりたくないならやらなければいいのに♠」

 

 キメラアントとの決戦に勝利したとはいえ、それではい終わりと言う訳にはいかない。

 NGLであったマンハントや残ったキメラアント達の監視や人々との仲介、太陽国家メンフィスへの移民希望者への対応や他国との調整役など、勝ったからこそ負うべき責任や仕事が増えに増えていた。

 そのため多くの大人やハンターが死にものぐるいで雑務に励む中、子供という理由で抜け出せたゴンとキルアはこれ幸いと先延ばしていた目的の一つを消化することにして移動している。

 

 ゾルディック家に幽閉されているキルアの妹達、アルカとナニカの救出である。

 

 当初キルアと弱体化中のゴンだけで行くと言って難色を示されたが、最凶のボディーガードとしてヒソカが立候補したことでむしろゾルディック家を憐れむ者まで出てくる始末だった。

 

「けどどうやって助けるの? ヒソカに暴れてもらってキルアが盗んでくる?」

 

「それも悪くないね♥」

 

「悪いに決まってるだろ!? 御家断絶させるほど恨んでねぇし普通に正面から連れ出すわ!!」

 

 キメラアントとの決戦で完勝したのはゴンとヒソカのみだったが、単純な成長率で言えばキルアがダントツで伸びている。

 最大値の更新はもちろんゴン、ヒソカも見てわかるレベルで成長したが、その差が縮まったことは誰の目から見ても一目瞭然の事実だった。

 

 たとえゴンとヒソカがいたとしても、見劣りすることなく足を引っ張ることもないと確信が持てる進化を遂げていた。

 

「頼むからオレがいいって言うまで大人しくしててくれ、お前等のお守りが出来るほど強くなってねぇんだよ」

 

 キルアは改めてレオリオやクラピカ、そしてビスケやネテロがいない現状に頭を痛め、世界最強の暗殺一家ゾルディック家と相対する以上の不安を何とか押し殺す。

 見るからに強くなった最凶のピエロ、弱体化したとはいえ普通にバグってる筋肉を引率する心労に苛まれながらも、飛躍した雷小僧は正攻法でゾルディック家と対峙するつもりでいた。

 

「じゃあオレは何かあったときのためにヒソカに乗ってるよ。オレの心配はいいから思いっきりやってね」

 

「ゴンに乗られる、それもまた一興♥」

 

 どこぞの妖怪兄弟のようにヒソカの肩に乗るゴンと、ゴンの乗る肩以外をくねらせ悶えるヒソカ。

 

 ゾルディック家と喧嘩しに行くにも関わらず一切緊張感のない二人を見ながら、これからの不安に一人さらされ続けるキルアは一刻も早くレオリオ(ツッコミ役)と合流できることを心から願った。

 

 

 

 

 

 優雅に空の旅を楽しむゴン達とはうってかわり、重い空気と怨嗟の呻きが響くだだっ広いオフィス。

 ハンター協会本部の事務員や書類仕事のできるハンター達が総出で事務に励み、あと何日かすれば一段落することを信じて行われているデスマーチ。

 

 彼等がまだ知らない、さらなるド級の問題をネテロから知らされた十二支んが会議室で顔を突き合わせていた。

 

「う〜ん、副会長としては頷きかねますね!」

 

「同じく反対します。まだまだ会長の力が必要です」

 

「同感だ! 隠居はまだはえーよ!」

 

「そ〜ですよ〜、若くなったんだしもっともっと働きましょ〜〜」

 

「認められませぬ、貴方以上の適役はおりません!!」

 

「あまり締め付けたくありませんが、辞められたら寂しくなってしまいます」

 

「代わりがいない、せめて育つまで待ってはくれませんか」

 

「おぉ~ん! 会長辞めねぇでくれ!」

 

「そもそも無理っしょ、どんだけ人望あると思ってんすか」

 

「駄目!」

 

「まだまだ教わるべきことが多すぎます、それ相応の理由がなくては」

 

「いいんじゃねえの?」

 

『『よくねーよ!!!』』

 

「ま、そうなるわな」

 

 十二支んの若干一名以外から大反対を受けたネテロの指令、ハンター協会の新たな会長を選挙で決めろというミッション。

 まだまだキメラアントの事後処理が続くタイミングで落とされた爆弾は、ジンとパリストン以外からすれば到底受け入れられるものではなかった。

 

「んだようるせぇな、チードルや副会長様だってわかってんだろ? これは提案じゃなくて決定事項だってよ」

 

「相応の理由がないと他のハンターが納得しないじゃない。それに辞めてほしくないのは本心よ」

 

「そうですよ、それに意味のない選挙をして何になるんです? 費用と時間の無駄遣いと言えませんかね」

 

 十二支んの中でも特に頭脳戦に優れる三人はそのまま舌戦を始め、そこから色々理解したメンバーとまるで理解していないメンバーが生まれる。

 

「意味ないってどういうことだ? 結局ネテロ会長が当選するってことか?」

 

「はずれ〜〜、早い話が会長になった瞬間にまたネテロ会長を指名すればいいってこと〜〜〜」

 

「あれ? そんなんできるのか?」

 

「段階は踏む。副会長以下の指名は会長に権限があり、その上でネテロ会長を副会長に指名して自分が会長職を辞せば繰り上げで権限が副会長に移る。そのまま過半数の信任があれば問題ない」

 

「めんどくせ、やっぱネテロ会長続投でいいじゃん」

 

「そこら辺の権限も会長が持ってるから決定事項なんだよ。猫のくせに鳥頭かお前は」

 

「んだとこらサイユウ!!」

 

「あたしも馬鹿にした!? ざけんな! 死ね!!」

 

「がいぢょお〜〜」

 

 もはや収拾不可能なレベルで喧々囂々とする会議室。

 いつしか混ざりたくないと黙っていたメンバーすら巻き込んで悪口暴言のオンパレードとなった時、静かに腕を組んでいたネテロが神速の柏手を打ち鳴らして強制的に静かにさせた。

 

「既に言われとるがこれは決定事項じゃ。キメラアントの件も含め、もうじき責任を取らんといかん事態になるからの」

 

「キメラアント以外でですか?」

 

「うむ。結論から言うと暗黒大陸がらみで世界をひっくり返す者がおる」

 

『『暗黒大陸!?』』

 

 十二支んのほぼ全てが驚愕に包まれる中、端末を操作したネテロの背後に非常によく似た男性が映し出された。

 

「此奴の名はビヨンド・ネテロ。ワシの実子にして暗黒大陸に野望を持つ生粋のハンターじゃよ」

 

『『実子!!?』』

 

 子供がいたのか暗黒大陸に野望とは何だとにわかに騒がしくなったのをなだめ、何故生粋のハンターにも関わらずハンター協会に属していないのか、そして暗黒大陸がどう関わるのかを説明する。

 

「まぁワシが若い頃暗黒大陸はアカンと判断してな、無理にでも行こうとするビヨンドと喧嘩したんじゃよ。そんで少なくともワシが死ぬまでは我慢させることに成功しての、じゃがこの通り若返っちまったもんじゃから間違いなく動くじゃろうな」

 

「それは、V5が黙っていないのでは?」

 

「関係ないの、奴を始末する以外で止める手段なぞないわい。仮に始末したとしても、他が実行できるだけの準備もしとるじゃろうしの」

 

 ネテロは本人しか気付かないレベルでパリストンとサイユウに目配せし、その反応から自分の予想が間違っていないことを確信した。

 そして十二支ん全体でキメラアントだけでなく暗黒大陸に関した暴露が行われたなら、アイザック・ネテロが責任を取って会長職を辞すくらいの問題であることを認識する。

 

「仕方ありませんね、では一応選挙のルール決めだけしてしまいましょうか。再びネテロ会長、紛らわしいですね、アイザック会長にするために皆さんでよく考えましょう!」

 

「本人の前で宣言することじゃないのぅ」

 

 その後の会議はそれほど揉めることもなく進み、歴史の修正力と言うべきか原作をなぞるようにしてジンの案が選択される。

 ハンター全員が候補者であり投票者、票を過半数集めなければ再選挙などそこそこ多いルールの上で選挙が行われることとなった。

 

「ではビヨンド氏が動いた場合速やかに選挙を開催しましょう。各ハンターへの伝達役はクルックさんに一任、投開票などは適時決めていくということで!」

 

「会議はこれで終わりか? そんならやりかけの仕事あるから俺は帰るぜ」

 

「私も失礼するわ。会長になったら辞める前に絶対事務職増やしてやる」

 

 会議が終わったと見てサイユウとチードルが退室したのを皮切りに、各々ネテロに挨拶をして部屋を出ていく。

 そして部屋に残ったのはジンにパリストン、そしてネテロとビーンズの4人だけとなった。

 

「さて、ジンとパリストンは何の用じゃ? ただ残ったわけでもあるまい?」

 

「オレはジジイじゃなくてパリストンに聞きたくてな、何でわかってて何もしなかった?」

 

「ん〜? 何のことかわかりませんが、ルールがジンさんので安心しましたよ。貴方ならきっと公正なルールにすると思ってましたから」

 

「けっ、相変わらず余裕なこって」

 

 ジンは十二支ん全員の選挙ルールが書かれた紙の入っている箱をひっくり返し、その中の一つを広げると鼻で笑って放り投げる。

 

 開かれた紙には何も書かれておらず、それを見るパリストンは胡散臭い笑みを浮かべ続ける。

 

「どこまでお前の思い通りになるか見ものだな。じゃあなジジイ、若くなったとはいえジジイなんだからハッスルしすぎんなよ」

 

 ばら撒いた紙を片付けることなく出ていったジンに代わり紙を集めたビーンズは、間違いなく白紙の一枚以外はルールが記入されているのを確認する。

 会議が始まるもっと前から万全に準備したジンに感じた驚嘆を、ビーンズは笑みを浮かべ続けるパリストンに対しても同様に感じた。

 

「で? お前さんは何のようじゃ?」

 

「確認しておきたいことがありまして、ビヨンド氏の行動に対するハンター協会の立ち位置はどうするおつもりですか? 副会長として知っておくべきだと思いまして」

 

 パリストンは自分とビヨンドの関わりがバレていると知った上でハンター協会の方針を聞き、ネテロもまた全て把握した上で偽りなく答える。

 

「とりあえず次の会長に任せる。ちなみにワシとしても手伝わんが邪魔もしないぞい。今回の件で良くも悪くも備えが必要で、場合によっては打開もできると分かったからの」

 

 ネテロは暗黒大陸への執着心がなくなったことにより、危険は危険だが変に隠そうとするV5よりあえて知らせて危機感を煽ったほうがいいと考えるようになっている。

 そもそも案内人という門番がいなければ人類など早々に滅んでいた可能性が高いのだから、今更矮小な人間がわちゃわちゃしたところで現状が激変するとも思えなかった。

 

 何よりこんな小さな箱庭で、あんなでかいモノ(ゴンさん)が誕生できると知ったのだ。

 

 小難しいことは全て若いハンター達に任せ、ネテロは武人としてもっとシンプルで雑に生きることを決めていた。

 

「これからはお主達の時代じゃよ。ただお前もジンも、ちぃとばかし策を弄しすぎなのが玉に瑕じゃな」

 

「……肝に銘じておきます」

 

 部屋を出たパリストンは廊下を歩きながら、彼にしては珍しく寂しそうな表情を浮かべて物思いに耽る。

 ネテロが若返ったことを愉しみが延びたと喜んでいたはずが、以前よりも面白くなさそうなことに気付いてしまったのだ。

 

(血気盛んと言えば聞こえはいいですが、これからはあまりかまってもらえなそうですね…)

 

 しかもそれを見越していたのか、ジンがいつも以上に自分をかまっていたことにも思い至ってしまった。

 

(嫌になりますね、いっそのこと全てぶち壊してしまいますか?)

 

 ハンター協会、ビヨンド陣営、そしてこの箱庭すらどうでも良くなりかけたパリストンだったが、かつてのネテロやジンのニヤけ面を思い浮かべて踏み止まる。

 

 ネテロが若返って面白くなくなったのならまた老いるのを待てばいいし、全てを放り投げた際にジンが浮かべるであろう勝ち誇った顔がとてつもなく不愉快だった。

 

「とりあえず選挙ですね。別に当選してもしなくてもどっちでもいいですが、負け惜しむ顔を見るのもそれはそれで一興ですか」

 

 浮かない顔に何時もの胡散臭い笑みを貼り付けながら、パリストンはこれまた珍しく勝つためにやる気を出して思考を回す。

 

 変わってしまったお気に入り、変わらず気に入らないが唯一認める敵に当てられ、パリストンもまた否応なく変化していく。

 

 

 

 

「ぐふふふっ」

 

「変な笑い方してどうしたんですか?」

 

「なに、ジンもパリストンも思った通りの反応で楽しくての♪ 獲物の動きを予測して愉しむワシもなんだかんだハンターじゃわい」

 

 

 インテリは浮動のバカに頭脳戦で不覚を取るとは考えていない、浮動のバカはインテリを出し抜けないとはいえ負けるつもりもない。

 

 互いに互いを最大の障害と認識する二人は、最後のチャンスを棒に振ってしまった。

 

 盤面全部ぶち壊す頭のおかしい筋肉が、遂に二人の背後に忍び寄る。

 

 

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