オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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第99話 決別とシン愛

 

 

 皆さんこんにちは、ククルーマウンテンに帰ってきたゴン・フリークスです。メンバーは減ってますが、総戦力的にはダンチです。

 

 

 

 

 

 律儀にククルーマウンテンの観光バスに揺られて試しの門へと辿り着いたゴン達3人。

 何故かまたしても命知らずな賞金稼ぎがミケの餌になるイベントを消化してから、帰りのバスに乗らず門番ゼブロとの再会を果たしていた。

 

「キルア様! お帰りになられたんですね!? それにヒソカ君にゴンく…、ゴン君なのそれ!?」

 

「普通その反応になるよな」

 

「あははは、久しぶりゼブロさん。こんなになっちゃった」

 

「誰だっけ?」

 

 若干一名まったく記憶に残っていなかったが、短いながらもしっかりと再会を喜ぶ。

 

「え? 本当に重い!? 何これ宿舎にあるどんな物より見た目との違和感が凄い!!」

 

「そのなりで100キロ超えてるからな、まじで頭おかしくて笑えてくるわ」

 

「あんまりボクのゴンに触らないでくれる?」

 

「あっ、すいません」

 

 そして呼び鈴感覚で門番から執事に連絡を入れてもらった後、試しの門の前にマスコットキャラとなったゴンが仁王立つ。

 フンスと気炎を上げてオーラを練ったゴンが試しの門に手をかけ力むと、本来鳴るはずの重苦しい軋む音が一切鳴ることなく自動ドアのようにすべての門が開いた。

 

「えぇ〜…」

 

「この姿でも余裕だね、さあ! キルアもヒソカも今のうちに通って!!」

 

「そんな狭い隙間通れるかアホ、脳味噌もちっちゃくなってんのか。変態も無理に通ろうとすんな門削ろうとすんなマジでやめろ!?」

 

 ギャアギャアとキルアの悲鳴を響かせながら若干削れた試しの門が閉まり、キルア達の目的を聞いたゼブロは職を失う覚悟を決めながら門番の仕事に戻った。

 

 

 

 キルアを確認しに来たミケがゴンとヒソカを見てそそくさと退散するのを尻目に、ゴン達は屋敷があるエリア前の開けた所でゾルディック家及び執事達と対峙していた。

 キルアを先頭にヒソカとその肩に乗ったゴンというぱっと見2人に対して、キルアとアルカを除くゾルディック家8人勢ぞろいに執事のほぼ全員という多勢に無勢を極めた構図。

 

 気を張っているのはゾルディック側だけで、ゴン達からはむしろ余裕すら漂っていた。

 

「まずはよく帰ったと言っておこうか。しかしキルア、門番の報告は間違いないか?」

 

「当たり前だろ、オレはアルカを迎えに来た。邪魔しなければ何もしないで出ていくぜ」

 

 ゾルディック家当主シルバとキルアの睨み合い、執事の大半は真っ青になって震えているが本人達からしたらまだ猫のじゃれ合いレベルである。

 そしてキルアに一切引く気がないことを確認したシルバはため息をつき、手を挙げると執事達全員が臨戦態勢を取った。

 

「認められん。ここが最後通告だ、大人しく出ていくかやり合うか選…」

 

 キルアの背後にいるヒソカとゴンから、シルバですら口を噤む程のオーラが噴出した。

 

「家族の問題には口出ししないよ、けどそこに他人をかませるならオレもいいよね?」

 

「世に名高いゾルディック家の執事、何人かは結構そそられるし悪くない♠」

 

「一応オレにとっちゃゴトー達も家族だけどさ、そっちがその気ならこっちもジョーカー切るぜ? 大人しく家族同士でケリつけようや」

 

 この時点で執事達の半数以上が腰砕けになって戦線離脱し、それどころかまともに戦える者すら数えられる程度まで絞られてしまった。

 ゾルディック家としても次男ミルキと五男カルトが戦力外となり、総力戦となれば無事では済まないことがヒシヒシと感じられた。

 

「家族同士でか、その場合こちらは8人の訳だが、俺達も随分舐められたものだな」

 

 そして立ち上るゾルディック家の殺意。

 

 シルバ、ゼノ、マハ、そしてイルミの冷ややかで鋭い、しかしどことなく静かな殺気がキルアに叩き付けられる。

 

「ゾルディックを舐めてなんていねえよ。親父達のおかげで、オレはここまでこれたんだ!」

 

 一般人ではわけも分からずショック死する圧を弾き飛ばし、キルアから殺気とは違う闘気が噴出する。

 ゾルディックを圧倒し押し返すその圧は鋭くありながらも輝くようで、以前家を出るときに見せた冷たく燃えるような殺気とはまるで違う雷光の如きオーラ。

 

 暗殺者とはかけ離れた、まさに修羅と言うべき姿だった。

 

「……こりゃいかんな、ここまでじゃシルバ。ここから先はゾルディックにとって損失がでかすぎる」

 

 先ず年長者のマハが殺気を収めて早々に立ち去り、ゼノもオーラを止めて腰や肩を叩く。

 

「御義祖父様に御義父様!? それではキルアをどうするのです!?」

 

「そんな大声出さんでも聞こえとる。しょうがなかろう、鳶が鷹を生んじまった、それだけのことじゃ」

 

 ゾルディックの暗殺一家としての短くない歴史は、すなわち最高の暗殺者を作るための歴史。

 訓練は当たり前のこと、適性ある相手との婚姻や邪法とも言える業の数々は時を重ねるごとに純度を増し、ついに最高傑作として生まれたのがキルアのはずだった。

 

 キルアの才覚にはゾルディック(暗殺者)という器は小さすぎ、もはや突然変異を起こした上位種(修羅)はさらなる高みを目指していた。

 

「ふざけないでください! あなた、まさか認めないわよね!?」

 

 ヒステリックに叫ぶキキョウ、そして不安そうなカルトの視線を無視してキルアを見つめていたシルバは、その煌めく眼光で目が眩んだかのように首を振った。

 

「キルアは俺の子だ、しかしゾルディックの子に収まらなかった。キルアをゾルディック家次期当主の座から外す」

 

「なっ、あなた本気!?」

 

「お父様!?」

 

 悲鳴を上げて詰め寄ろうとした2人を制すように、ドス黒いオーラのイルミがキルアに歩み寄る。

 

「じゃあキルのことは好きにして構わないね? “あれ”のこともあるし、しょうがないから傀儡にするよ」

 

「次にアルカのことをあれとかそれとか言ってみろ、お前のことは二度と兄貴と思わないしその口利けなくするぜ」

 

「やってみなよ、キルも人形にしてあれと一緒に保管する」

 

 まさに一触即発、おどろおどろしいオーラを纏うイルミに対し、弾ける憤怒のオーラを纏うキルア。

 止められないと見たか止める気もなかったのか、シルバ達は2人から距離を取り、しかしいざとなれば介入できる位置で様子を窺う。

 

「家族喧嘩なら後ろのは手出ししないんだよね? お灸には太くてデカい針だけど我慢しな」

 

 イルミは幻影旅団との戦いでゴンに刺したのと同じ針を取り出し、その圧倒的オーラを隠れ蓑に以前キルアに刺していた針以上の操作用針を隠し持つ。

 キルアのことなど一切考慮しない神字の刻まれた小さな針は、打ち込まれたが最後相手の脳を破壊して癒着し完全な操り人形としてしまう悪魔の針。

 イルミはゾルディック最高傑作のキルアを愛していた、しかしゾルディックを超えてしまったキルアはむしろ邪魔者でしかない。

 

 ゾルディックを最優先に考えるイルミは可愛さ余って憎さ百倍の言葉通り、親の敵以上の憎悪を以てキルアを始末しようと構える。

 

「馬鹿だなお前、暗殺者がオレの土俵に上がってくるなよ」

 

 周囲に雷轟が鳴り響き、雷皇(オレミカヅチ)による一瞬の雷化で背後を取ったキルアの貫手がイルミの心臓を貫いた。

 

「一応兄弟喧嘩だからな、殺しはしねえよ。そのかわり次来たら覚悟するんだな。心音殺・雷」

 

 イルミを貫く腕にのみ雷化を継続させ、心臓に直接電流を流すことでその動きを強制的に止める。

 崩れ落ちたその身体を執事達が集まる位置に投げ込んだキルアは、シルバやゼノを警戒しながら指示を出した。

 

「すぐ処置すりゃ問題ねえ、さっさと持って行きな」

 

 イルミを受け止めた執事達がシルバに目配せし、頷いたのを確認して数名が治療のためにその場を離れる。

 

「なるほど、イルミを歯牙にもかけないか」

 

「今のはあいつが悪いだろ。暗殺者のくせに真っ正面から来るなっての」

 

 確かにキルアの言う通り逸ったイルミの勇み足とも取れる結果だが、それを踏まえてもシルバとゼノの心中は穏やかでなかった。

 たとえ一瞬とはいえ雷化は想像を絶する程の難易度を誇るにも関わらず、キルアのオーラからその前兆を察知することができなかったからだ。

 イルミの針やクラピカの鎖など既に能力が備わっている物を使うならまだしも、能力そのものの行使にはそれ相応の前兆がなければおかしいのだ。

 

 シャウアプフとの戦闘で進化したキルアのオーラコントロールは、気配を読むことに心血を注ぐ暗殺者達ですら欺くレベルに到達していた。

 

「…これだけは聞かせろ、アルカの、あの“何か”のおねだりはゾルディックを滅ぼすか?」

 

 シルバは今のキルアにプラスしてゴンとヒソカを相手にするのは無謀と判断し、最優先事項としてゾルディック家の安否を問う。

 アルカが最も懐くキルアならば、その辺りを何とかコントロール出来ないかと期待していた。

 

「ははっ、やっぱ親子だな、オレも黒い方はナニカって呼んでんだ。安心しなよ、アルカもナニカも滅茶苦茶優しい子さ」

 

 笑って杞憂だと告げたキルアはゴトーを引きずって無理矢理案内を頼み、ゴンとヒソカを連れ立って屋敷の方へ悠々と歩いていった。

 

 

 

 残されたシルバ達は各々持ち場に戻り、泣き喚くキキョウをカルトとミルキが連れて帰っていった。

 残るのはゾルディック家当主シルバ、前当主ゼノ、そして執事の中で最古参にして最強の女傑ツボネの3人。

 

「親父、ゾルディックの総力を結集しても負けかねんと見た俺の判断は間違っていたか?」

 

「いや、まず間違いなくこっちも甚大な被害を受けたはずじゃ。アルカに関して言えばここにいようといまいと予測不可能な所もある、あの場はあれが最善じゃろ」

 

「そうか、…いかんな、キルアの成長を喜ぶ自分がいる」

 

 キルアの成長はゾルディックにとって想定外の結果となったが、それでも父として自分を超えていく姿に喜びを見出していた。

 ゼノもまた可愛い孫の成長は喜ばしく、既に当主の座を退いていることもあってシルバ以上に内心心躍っていた。

 

「次期当主の座は強さで言えばイルミしかいないが、裏方に徹するならばミルキも悪くない。まだ幼いカルトもいる、気長に選ぶとするか」

 

「それが良いの。それで? 残ってまで何の用じゃツボネ」

 

 何処か清々しい空気を出すシルバとゼノに対し、シルバを超える体格を誇る古強者ツボネは眉をひそめて口を開く。

 

「キルア坊っちゃんの後ろにいた2人、あれ等がいる限り依頼があっても手出しするのは控えるべきと具申いたします」

 

 シルバとゼノはどうしてもキルアに注目していたため、代わりにゴンとヒソカを注視していたツボネだからこそ見えてしまったモノ。

 

「おそらくは、ハンター協会会長アイザック・ネテロですら喰らう化生の類です」

 

 ゼノはおろかマハの代から執事としてゾルディック家に仕えてきたツボネは、本人の強さはもちろん自分自身を元に様々な乗り物を具現化させる能力の大和撫子七変化(ライダーズハイ)もあって多くの現場に同伴してきた。

 そして過去全盛期に近いネテロを直接見たことのあるツボネは、その深い実力の底にとてもではないが潜れないと痛感させられていた。

 

 キルアの底は間違いなくネテロより深く、ゴンとヒソカにいたってはその底を覗くことすら出来なかった。

 

 シルバは自分直属で特に信頼するツボネからの警告にため息を吐き、珍しく不安を顕にして小さくぼやく。

 

「やってられんな、どうやってイルミを止めたものか」

 

 誰よりもゾルディック家を愛するが故に融通の利かない長子を思い、シルバは予想以上に長くなりそうな当主の立場を憂いてその長髪を掻き回した。

 

 

 

 

 

 ゴトーの案内で屋敷の地下深くにやってきたゴン達は、金庫以上に堅固な分厚い鉄の扉の前にいた。

 光も届かない地の底で明らかに人とのつながりを断たれているであろう光景は、どう考えても家族にする仕打ちではない。

 

「こんな扱いのアルカとナニカを忘れてたなんて、オレは兄貴失格だ」

 

「イルミ様の針から自力で脱するなど本来不可能、成し得たのは間違いなくアルカ様への愛があったでしょう。あまりご自分を責めないでください」

 

「そうだよ。そんな顔してるとこの扉ぶち破るよ」

 

「ゴン様、私が開けますので大丈夫です。その構えた拳をお下げください、止めてください扉が死んでしまいます!」

 

「強引なゴンも素敵だね♥」

 

「締まらねえなオイ」

 

 キルアは慰めようとしてるのか脳味噌筋肉になってるのか不明なゴンと平常運転のヒソカに苦笑し、突然始まったカウントダウンに必死でセキュリティを解除するゴトーを落ち着かせる。

 幾重にもかけられたロックが全て解除されると、その無骨な扉からは想像の付かないファンシーな部屋が広がった。

 

 ゆったりとした民族衣装風の衣服に身を包み、何処か無機質な表情を浮かべる少女が人形に囲まれ座っていた。

 

「…アルカ、ただいま」

 

 扉が開いても無反応だったアルカはキルアの声を聞いた瞬間ビクリと跳ね、今までの無機質さが嘘のように生き生きとした満面の笑みでキルアに突撃した。

 

「お兄ちゃん!! うわぁー本物だ! キルアの匂いだ!!」

 

 猫のように頭を擦り付けるアルカを軽く抱きしめ、目線を合わせたキルアはやや申し訳無さそうながら笑顔を浮かべた。

 

「遅くなったけどただいま、そんで急だけどこのまま一緒に家出しようぜ。オレも見てる途中なんだけどよ、お前にも世界を見せてやりたい」

 

「いいの!? 行く行く! お兄ちゃんと一緒ならどこでも行くよ!!」

 

「サンキュ、そんで悪いけど二人っきりってわけにもいかなくてさ、こいつ等もいるんだわ」

 

 キルアはゾルディック家に正面から喧嘩を売ったことに加え、ゴンの強さに並ぶという目標もある以上二人旅をするわけにもいかないためゴンとヒソカを紹介する。

 

「でかいのはヒソカって変態だけど、アルカには無害だから気にしなくていい。そんでちっこいのがゴンっていってな、その、オレの親友だ」

 

「初めましてアルカ! こんなだけどキルアと同い年だよ、よろしく!!」

 

 キルアに夢中で今の今まで気付いていなかったアルカは、キルアのゴンに対する親友という言葉に眉をひそめた。

 久しぶりに会えた最愛の兄が取られたような感覚にオーラが曇り、ヒソカの肩から降りたせいで踏み潰せそうなゴンに嫌がらせ目的で近付く。

 

「んっ、ナニカ?」

 

 至近距離でゴンを見下ろしたアルカが呟くと、急にしゃがんで息が触れるほどの至近距離で顔を突き合わせる。

 

 その目は闇をたたえているかのような不気味な深さがあり、への字に曲がった口はまるで人間ではないかのようなナニかを感じさせた。

 

「ナニカ!?」

 

「ふぅ〜ん♦」

 

 突然“切り替わった”ナニカに驚き声を上げるキルアと、その得体のしれないオーラを興味深そうに眺めるヒソカ。

 

 そしてまるで観察されていると感じたゴンは軽く首を傾げると、感情の読めないナニカを真っ直ぐに見つめ返して口を開いた。

 

「えっと、初めましてナニカ。キルアの友達のゴンだよ、よろしく」

 

「……あい」

 

 戸惑いながらも手を差し出したゴンを数秒見つめ続けたナニカは、ナニかに納得したかのように頷いてその手を取る。

 への字に曲がっていた口が上向いて薄い笑みを浮かべたナニカは目を閉じ、開いたときには不気味さも何もないアルカの表情に戻っていた。

 

「しょうがないからゴンにもいいコいいコする権利をあげます! これから励むように! あたしを甘やかすように!!」

 

「?? 了解? キルアを待ってて偉かったね、我慢強いいい子だよ〜」

 

「むふーっ、それほどでもある!」

 

 屈むアルカの頭を背伸びして何とか撫でるゴンと、その光景に愕然とした表情を浮かべながらもホッとしたように息をつくキルア。

 

「お兄ちゃん、ゴン兄、ちゃんとあたしとナニカを守ってね!」

 

 仲のいい兄弟と無二の親友の遣り取りを眺めるゴトーは、やっとキルアの願いが叶ったと目尻を抑えながら静かに微笑んだ。

 

 

 

 そして誰からも注目されていない愛が溢れている変態は、ゴンに撫でてもらおうと静かに這い寄っていた。

 

 

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