オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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第100話 空旅と賭け

 

 

 皆さんこんにちは、無事ククルーマウンテンから出発したゴン・フリークスです。アルカとナニカは独特の感性を持ってますが、キルアの言う通りとても優しくていい子みたいです。

 

 

 

 

 

 アルカを連れ出したゴン一行はククルーマウンテンのあるパドキア共和国から出発し、とりあえずクラピカとレオリオに合流するべく移動を開始していた。

 もっとも小さな赤子連れで旅をするほど無謀なことは考えておらず、アルカとナニカを紹介したらひとまず別行動をすることに決めている。

 ちなみにレオリオはキメラアントの問題解決にあたり多くの功績を残したことを評価され、チードル先導のもと医療免許の獲得における実技を全面的に免除される運びとなった。

 筆記に関しても好きなタイミングで受験しそれに合格できれば晴れて医療免許獲得ということで、クラピカと子育てをしながらも鋭意勉強中である。

 ついでにギンもカリンとクレアが可愛くて仕方がないのか、小さくなって一緒に昼寝したり大きくなってお腹の上で昼寝させたりとよく面倒を見て初産で双子だったクラピカの大きな助けとなっている。

 

 合流を目指しているゴン一行だったが、いつものごとく平穏とは程遠い旅路となっていた。

 

「はぁーーっ!!?」

 

「お兄ちゃん!! ゴン兄に言われた通りにしたらできた!!」

 

「あい!!」

 

「まさかこんなに早くできるとは思わなかったよ、練度が上がれば完全に分離できるのかな?」

 

「暗黒大陸の生物ねぇ、あんまりそそられないな♣」

 

 初めての飛行船で大はしゃぎだったアルカがその速度に早々に飽きてしまい、暇だ暇だと駄々をこねているのを見かねたゴンが行った念の短期レッスン。

 

 アルカとナニカは直接会ってみたくない?

 

 その何気ない一言から実現してしまった、カストロの自分自身(マイセルフ)と非常に似通った能力。

 元々二重人格ではなく別個の存在であったこと、ナニカを受け入れられるだけの器を持つアルカだからこそ可能となった分裂。

 直接か誰かを間に挟んで触れていることを条件に、アルカとナニカは現実世界で邂逅を果たした。

 

「あー、まぁこうやって2人に会えたのはいいとして、あんまり無茶なことすんなよゴン。“おねだり”と“おねがい”については説明したろ?」

 

 片方ずつではなく両方等しく可愛がることができて喜ぶキルアだったが、自分以外の他人と長く一緒に過ごすことが初めてのアルカとナニカは正直予測がつかない。

 今のところ問題らしい問題は起きていないが、シルバに啖呵を切った以上何かあってからでは遅いのだ。

 

「昨日キルアが寝た後いくつかおねだりされたけど、特に何ともなかったし大丈夫だと思うよ。ヒソカにはおねだりしたがらないし、ちゃんと言い聞かせたらヒソカのおねがいはきかないって約束もしてくれたしね」

 

ね〜(あい)!」

 

 呑気に笑い合う3人にキルアは目を剥き、雷化の疲れで早々に寝入った後に行われていたとんでもないことに頭を抱えた。

 

「おまっ、そういう重要なことはちゃんと言えよ!? えっ、おねだりされて大丈夫だったのか?」

 

「うん。てかアルカとナニカの両方からおねだりされてさ、ルールと違うし大丈夫かなって思ったら大丈夫だった」

 

「マジか、おねがいきくなとかオレの知らないルールもまだあったんだな。そういや今みたいに分裂してるとそこら辺どうなってんだ?」

 

「ん〜? どうなってるのナニカ?」

 

「あいあい、あ〜い」

 

「へ〜、そうなんだぁ。別れてると発動しないみたい、一つになって段階を踏まないと駄目なんだって」

 

「おっ、それならできるだけ別れてたほうが安全だな」

 

 戦闘能力のないアルカとナニカを守る上で二人になられるのは負担も増えるが、それ以上に不測のおねだり等が無くなる方が精神的負担が少ない。

 何よりおねだりとおねがいが発動しないのなら、なんだかんだで付いてきたお目付け役も大手を振って合流できる。

 

「キルアちゃん、これからはあたしもお側につかせていただきますよ」

 

「あっ、ツボネだ。やっほー」

 

「あ〜い」

 

「はいはい、ツボネでございますよ〜」

 

 キルアがアルカを連れ出す上でゾルディックから課せられた唯一の条件、執事の中でも最上位に位置するツボネの同行だった。

 シルバ直々にツボネを連れてさえいればゴン達に関係する依頼も受けないと宣言され、強さはもちろん執事としてとんでもなく優秀なツボネは役に立ちこそすれ邪魔になることはない。

 今までは不意のおねだりを警戒し隠れて監視していたが、問題が解決したとあってとにかく世話を焼きたいツボネの母性が爆発してしまった。

 

「ツボネ高い高いしてー!」

 

「あい!」

 

「はいはい、お任せください。そ~れ死にかねない程高い高い」

 

きゃー(あーい)!!』

 

 その性質上決して甘やかすことの許されなかったアルカとナニカを、何も気にすることなくただただ甘やかす永劫ありえないと諦めていた一時。

 モノクル型カメラによって自分の行動は全てシルバ達に筒抜けと知りながらも、ツボネは目尻に涙を浮かべながら笑顔で2人を構い倒した。

 

 

 

 

 

 ゴン達が和気あいあいと空の旅を楽しんでいた頃、ついに準備を終えたカキン帝国とビヨンド・ネテロによる世界への宣誓が行われていた。

 

『暗黒大陸は我等と共にあるホイ! 最後にこの開拓団の総責任者、ハンター協会会長の御子息でもあるビヨンド・ネテロの挨拶ホイ!!』

 

 豪華な衣装でふくよかな身体を彩ったカキン帝国国王ホイコーロの示した先、一段低い壇上に若返ったアイザック・ネテロより一回り以上大柄なビヨンド・ネテロが獰猛に笑って腕を広げる。

 

『まず最初に言っとくぜ、暗黒大陸に行ったら生きて帰れる保証はねぇ!』

 

 いきなりのネガティブ発言に現場に集まった者達は目を白黒させるが、ビヨンドは笑みをさらに深めるとオーラを噴出させて言葉を続ける。

 

『そのかわり暗黒大陸には何でもある!! 不老の飯、万能の金属、願いを叶えるモノ、人々が夢見た妄想の産物が実際にゴロゴロと転がってやがる!!』

 

 つい最近メルエムが行った建国宣言の放送と同じく、ビヨンドを観た者達は心が震えるのを止められなかった。

 

『立ち塞がる数々の障害はオレが取り除いてみせよう!! どんな奴でも拒まない、各々の個性にあった役割が必ずある!! 必要なのは一歩踏み出す勇気のみだ!!』

 

 リアルタイムで視聴する十二支んのメンバーも鼓動が高鳴るのを止められず、間違いなくアイザック・ネテロの息子とわかるカリスマは抗いがたい魅力の塊だった。

 

『この世の全てを獲りに行く! 集えカキンへ!! 行こうぜ新世界!!!』

 

 ビヨンドの演説に万雷の歓声が響き渡り、この瞬間からカキン帝国の広報部には鳴り止むことのないコールが響き続けることになる。

 太陽国家メンフィスの興奮も冷めやらぬうちに、多くの国から有能無能問わず人材の放出が始まった。

 

 

 

「しもしも~、そろそろかけてくる頃だと思ったぞい」

 

『その声聞くと昔を思い出して顔の傷が疼くぜ、わかっちゃいたが行動早すぎんだろ』

 

「ほっほ、早いとこ重いもん下ろしたくての」

 

 カキン帝国の放送が終わったのと同時にハンター協会から発表された、ビヨンド・ネテロの行動に対するアイザック・ネテロの引責辞任。

 そのまま続けて発表された次期会長選挙と、暗黒大陸遠征への対応は次期会長に委ねるという宣言。

 息子のしでかしたことにどう責任を取るつもりだとつつこうとしたV5は盛大に肩透かしをくらい、ハンター協会への問い合わせは全て会長職不在を理由に突っぱねられている。

 

 そして狙い通り重石を投げ捨てたネテロは、意気揚々と雑事を十二支んに押し付けて楽隠居を決め込んでいた。

 

『まあいい、こっちも希望者の選定に時間がかかるからな。本題だ、ハンター協会はどう動くのかを教えちゃくれねえか? ここまで待ったんだ、今更無駄な時間を使いたくねえ』

 

「ふむ、方針は次期会長が決めるといったはずじゃが?」

 

『呆けてんじゃねえよ、ハンター十ヶ条が変わってねえんじゃ意味がねえ。次期会長が決まった瞬間親父が再任だろうが』

 

 ビヨンドの予想は十二支んと変わらず、不動のカリスマ ネテロの返り咲きである。

 最高幹部の十二支んが心酔してる時点でほぼ決まりな上、トップハンターやベテランハンター程ネテロが会長にふさわしいと考える傾向が強い。

 常識知らずの若手ハンターや逆張りハンターは選挙で票を集めることは不可能で、とりあえず当選したとしてもネテロが健在のうちはすぐに信任が過半数を割ると予想できる。

 

 ネテロの強さと支配力は、ビヨンドをして絶対の信頼を寄せられる確かなものなのだ。

 

「ふっははは!!」

 

 逆にネテロにとって、息子や十二支んの考えは的外れすぎて滑稽だった。

 

「どいつもこいつも本当にウケるのぅ、馬鹿の一つ覚えのように一番人気狙い。ハンターとはこんなに守りに入った人種じゃったか?」

 

『……ほぅ、親父は自分が再任しないと思ってんのか。オレからしたら情勢が見えてない、それこそハンター失格だとおもうがな』

 

「そんならいっちょ賭けるか? 選挙の後、ワシが再任するか否かを」

 

『断るぜ。さっきも言ったがここまで待ったんだ、これ以上足踏みして、』

 

「ワシが勝っても遠征の邪魔などせんし、負けたら全面的に協力するぞい」

 

 ネテロからの提案を即断したビヨンドだったが、あまりにも自分に都合が良すぎる賭け内容に思わず押し黙った。

 

『…一体何考えてやがる、若返ってまた暗黒大陸に挑戦したくなったのか?』

 

 ビヨンドの見解としてはネテロが裏から選挙を操作できる程十二支んは甘くなく、それならばと思い浮かぶのは天邪鬼な暗黒大陸遠征への参加表明としか考えられなかった。

 そんな予想を聞いてまた笑い転げたネテロは滲んだ涙を拭い、外れない大穴を逃すほど耄碌はしていないと断言した。

 

『…いいぜ、暗黒大陸に行けるなら賭けぐらい受けてやるよ。親父が勝ったらオレは何すりゃいいんだ?』

 

「お前が持っとる中で一番高い酒と一番好きな酒を持って会いに来い。久しぶりに一緒に飲もうや」

 

 ビヨンドはその予想外すぎる言葉にいよいよボケたかあるいはやはり方便なのかと疑うも、結局のところ自分にとって大した痛手ではない以上どっちでもいいと頭を振って雑念を払う。

 

『つまみもいくつか持ってくがそっちでも準備しとけよ。それで、そこまで自信満々な親父の予想ってのは聞かせてくれんのか?』

 

「正直言って最後の着地地点はワシも読み切れんが、少なくとも再任することだけはないと確信しとる」

 

『おいおい、外れない大穴ってのは随分あやふやだな』

 

「大穴の時点で鉄板とはかけ離れとるじゃろ、細かいことを気にするでない。禿げるぞ?」

 

『ちっと前だったら抜群の脅し文句だったな。……勝っても負けても一度会いに行く、賭けに負けたらそっちが酒を準備しとけ』

 

「ほっほ、待っとるぞ」

 

 

 

 通話を切ったビヨンドは疼く顔の傷を撫でながら、何十年も前の親子喧嘩を思い出す。

 武人として最盛期を迎えていたアイザック・ネテロが逃げ帰った暗黒大陸に挑戦し、偉大な父を超える最も手っ取り早い手段として利用するつもりだった。

 

 何より武人ではないハンターの自分が暗黒大陸を舐ることで、アイザック・ネテロの武人としての強さを証明したかった。

 

 もっとも当の本人に渡航を禁止されてしまい、狭すぎる箱庭を随分長い間彷徨うことになってしまったのだが。

 

「箱庭はほとんど舐っちまったからな、まだまだ全盛期の内に遠征できるのは助かるぜ」

 

 しかもどこで歯車が狂ったのか、自分が父を超える勇姿を直接本人に見せることができるというオマケ付きだった。

 

「さて、高い酒はあれでいいとして一番好きな酒ってのがな、どうせならいくつか準備して持っていくか」

 

 賭けに勝っても負けても持っていくつもりの酒を用意しながら、勝敗に大して興味のない選挙結果について考える。

 相変わらずネテロが再任する以外の未来が見えないが、断片的に得ている情報から可能性のあるものを捻り出す。

 

「親父でも無理だったキメラアントを倒したガキか? だが情報が出回ってねえのにそれは無理だろ」

 

 キメラアント決戦の勝敗はしっかりと周知されたものの、決着してからまだ間もないことと事後処理が終わってないことを理由に詳細な情報はまだ出回っていない。

 一部のトップはそこそこ情報を得ているのだが、最高幹部の十二支んですら興味のない半数以上がゴンのことを存在自体知らない。

 それこそネテロではなくゴンがメルエムに勝ったことを知るのは作戦に参加したハンターと、隠れて見ていた十二支んのサイユウにその報告を受けたビヨンドのみである。

 

「他に見落としてることがあるのか? …まぁいい、親父の力が手に入る可能性は捨てられん」

 

 賭けに負けても暗黒大陸遠征に影響のないことが、ビヨンドから選挙結果についての考察を止めた。

 そもそもネテロが若返って以降の戦闘をサイユウがほとんど視認できなかったことにより、ビヨンドにも正しい内容が伝わっていなかったことも大きい。

 

 アイザック・ネテロより僅かに強い程度のガキにハンター協会会長の座は重いが、観音を捨てた修羅より圧倒的に強い筋肉なら会長の座など軽いものなのだ。

 

 ゴンはもちろん全ハンターに会長選挙の通知が行き渡り、続々と協会本部に集合していく。

 

 ネテロ親子の賭け、そしてフリークス親子の運命の邂逅が近づいていた。

 

 

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