オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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第101話 第一回選挙とこれから

 

 

 皆さんこんにちは、結局行われる選挙に修正力を感じているゴン・フリークスです。遂にこの時がやってきた…

 

 

 

 

 

 第一回会長選挙投票日。

 

 ハンター協会本部には600名以上のプロハンターが集結し、各々が自分の推すハンターの名前を記入して投票箱に投函していた。

 絶賛収監中の幻影旅団シャルナークのように参加できない、あるいはしていない者も中にはいたが、場合によってはハンター資格の取り消しすらあり得るということがありほぼ全てのハンターが参加している。

 

 そして第一回投票を立会人としてチェックする十二支ん、未のギンタ、卯のピヨン、寅のカンザイは、この日異様に濃い集団と初対面を果たす。

 

「ツボネの乗り心地いいね! 人がゴミのようだし肩も柔らかくてグッド!」

 

「あい!!」

 

「ほほほ、人を乗せることに関しては随一と自負しておりますので。ゴン様、より良い肩になるためまた今度筋肉対話(マッスルコントロール)でマッサージをお願いします」

 

 まず最初に目についたのは、群衆から飛び出る馬鹿みたいにでかいピンク髪の老婆とその両肩に乗る二人の子供。

 あまりのインパクトに間違いなくプロハンターではないとわかったが、ツボネの強さは周りにいる弱小ハンター達ですら恐れ慄く確かな圧があるせいで誰も咎められず堂々と進む。

 

「ん〜、ビックリするほど雑魚ばっかりだね♦どいつもこいつも10点以下、そこにいる十二支んすら50点以下なのは嫌な驚き♣」

 

「そうなの? 戦闘職の十二支んじゃないのかな?」

 

 次に目に入ったのは十二支んの中でも悪名高く知られるヒソカと、その肩に乗るマスコットキャラのゴン。

 戦闘力では十二支んの中でも上位に入るギンタとカンザイですら緊張を隠せない程のオーラが揺らめくヒソカと、明らかに人間でなさそうな姿なのに普通に喋るゴンを胡乱な眼差しで見つめる。

 

「オレから見たら十分すぎるほど強そうだけどな、チードルさんの例もあるしサポートタイプかもな」

 

「私や子供達の前で他の女の名を口にするとはな、今夜は強めの折檻が必要か?」

 

「何でそこでキレんだよ、ちゃんと手綱握れよレオリオ」

 

「無理!!」

 

「ぐんま…」

 

 最後にレオクラ夫妻に子供達を背に乗せるギン、そしてもっとも影の薄くなってしまったある意味暗殺者らしいキルア。

 度重なる修羅達の治療でもはや貫禄すら漂わせる歴戦の戦医レオリオ(20)とダボついたクルタの民族衣装ですら隠せないグラマラス美女へと進化したクラピカは人目を集め、赤子を器用に乗せて歩くキツネグマのギンも異様な光景である。

 

 まるでモーゼのように群衆を割いて歩いてくる頭のおかしい集団だが、ハンター協会最高幹部の十二支んも伊達ではなく傍目にはこれまでと変わらず対応する。

 

「やあ、噂のジン・フリークスはいないのかい? ちょっと楽しみにしてたんだけど♦」

 

「あの馬鹿は投票するだけして消えたよ〜、マジで一回死なないかなぁ〜〜」

 

「残念♠」

 

「来たのはそれが理由か、こういうことに興味ないだろお前」

 

「実はそうでもない♥」

 

 カンザイの予想に反し誰かの名前が記入された用紙を投函するヒソカに続き、ゴン達もそれぞれが用紙を箱に入れていく。

 そして投票箱と大体同じ大きさのゴンが机に乗り、その謎の存在にピヨンが興味津々で手を伸ばす。

 

「普通に動くけど何これ〜? 誰かの念獣〜〜?」

 

「今まで見たことのない生き物だ」

 

 指でつつくピヨンとマジマジと観察するギンタにもまるで怯まず、ゴンはにかりと笑って口を開いた。

 

「初めまして、287期ハンターのゴン・フリークスです」

 

「ハンターなのかよ!? つかフリークスってお前ジンのガキか!!」

 

 カンザイの上げた驚きの声に周囲は大きくざわつき、ジンと違って礼儀正しいゴンの姿に見た目も相まってピヨンとギンタは微笑ましい目を向けた。

 

「結果発表の時は親父も来るよね? 出来れば逃げないように言っといてもらえると嬉しいんだけど」

 

「そのくらいお安い御用だど」

 

「煽り散らかしておくわ〜〜」

 

 チードルがいたら何も言わずに黙祷を捧げる微笑ましいやり取りを終え、周囲のざわつきなど一切気にせずゴン達は会場を出ていく。

 良い意味でも悪い意味でも超有名人ジンの息子、そして悪い意味で有名人ヒソカが投票した人物。

 多くの話題を提供した一団が去った会場は誰もが興奮したように語り合い、今回の会長選挙は何かが起こるという期待と予感に酔いしれる。

 

「…てか全く関係ない部外者が何人かいたのはいいのか?」

 

 不正の許されない現場にしれっと侵入していたツボネ達を、普段頭が足りないと馬鹿にされるカンザイのみが疑問視していた。

 

 

 

 

 

「やっほーキル、元気そうだね」

 

「イルミ!?」

 

「ん〜? なんか変わったね♣」

 

 会場を後にしたゴン達は落ち着いて食事でもしようと移動していたところ、つい最近一悶着あったばかりのイルミと道でばったり遭遇してしまっていた。

 殺気立つキルアだったがイルミはのほほんといつもの読めない無表情で佇み、ヒソカは割と親しい仕事仲間の異変を敏感に察知していた。

 

「俺はこれから投票しに行くけどキル達はもう終わったんだ? 探す手間が省けてよかったよ」

 

 ククルーマウンテンでのことがなかったかのように話しかけてくるイルミに混乱するキルアは、ポケットから取り出された手紙を見てより一層首を傾げる。

 

「親父からキル宛に手紙預かってたんだ、確かに渡したからね。それじゃバイバイ」

 

 手紙を渡したイルミは顔に針を刺してハンターライセンスに登録してあるギタラクルの姿へと変わり、そのまま普通に歩いてその場から立ち去って行った。

 

「…イルミ様にしては何かがおかしかったですね」

 

「あいつキラーイ」

 

「あい」

 

 イルミの行動に疑問しか浮かばないメンバーはとりあえず個室のしっかりした店に入り、各々料理や飲物を頼んで落ち着いた所でキルアは手紙の内容を確かめ始めた。

 

「………、あー、なるほどな」

 

「何が書いてあったの?」

 

「アルカとナニカのおねがいとおねだりがほぼほぼ無力化しただろ、それで親父が気を利かせてくれたみたいだ。イルミは自分の針で都合の悪いこと全部忘れてるってさ」

 

「それは信用できるのか? 今までの様子からして、そうそう大人しくなる人物には見えなかったが」

 

「ちなみに針は間違いなく刺さってたな、キルアの時はまだ見えなかったが今回はちゃんと見えたぜ」

 

 おかしい様子だったイルミの原因は判明したが、同じ記憶に作用する能力を持つクラピカは警戒し、レオリオが針の存在だけは実際に観て確約する。

 ゾルディック側のツボネですらイルミの演技を疑うも、針を実際に受けその歪んだ愛を受け止め続けたキルアだけは手紙の内容を全面的に信じた。

 

「こうやって正式に親父が連絡してきた以上間違いねえ、イルミもなんだかんだ演技なんて小器用なことは出来ねえしな。これでもし針が作用してないとしたら、そん時はゾルディック家全てがイルミに操作されてるってことになる」

 

 そう断言したキルアは火花を散らして手紙を燃やし尽くすと、アルカとナニカの頭を撫でながら笑った。

 

「親父達が外を楽しんでこい、ツボネの監視もしばらく様子見したら止めるってさ」

 

「キルアちゃん、アルカちゃんにナニカちゃんのお世話があるので監視がなくとも付いていきますからね」

 

「はいはい、ツボネがいるとオレも助かるぜ」

 

「キ、キルアちゃん!」

 

「キャーキルアちゃん!!」

 

「そらぁ!!」

 

「ひでぶっ!!」

 

 感激するツボネと共に茶化したレオリオは神速の報復に沈み、アルカとナニカが横たわるレオリオを足蹴にして笑っていた。

 

「そういえば、ヒソカもイルミが変わったって言ってなかった?」

 

「ククルーマウンテンで見た時よりさらに弱くなってたんだ♣ちょっと前までは95点位だったはずなのに今じゃいいとこ65点、残念無念♠」

 

 ヒソカの言う通りイルミは多くの想いを封印したため少しばかり弱体化したが、それも正直誤差の範囲と言ってしまえるレベルに収まっていた。

 ただヒソカ自身が強くなりすぎ、そしてゴンやキルアを筆頭に強くなり続ける環境に慣れてしまったことで、相対的にイルミが弱くなったと勘違いをしているだけでしかない。

 

 上を目指す意識の差、こればかりは修羅達が気狂いと言わざるを得ない。

 

「ふむ、ヒソカがそう言うならば問題ないか。一応私達はしばらく心源流の世話になる、選挙が終わったらこちらのことは気にせず楽しんでくるといい」

 

 子供を産んだことで母性が溢れるクラピカにアルカとナニカもよく懐き、レオリオもおもちゃにされているがそのやり取りはキルアのものとよく似ていた。

 更にはあまり構えなかったカルトより小さいクレアとカリンもよく可愛がり、ヒソカは別にして賑やかで楽しい空間が形成されている。

 

(あぁ、やはりゾルディック家が小さすぎただけですね。キルアちゃんはもちろん、アルカちゃんとナニカちゃんの輝きも今までと比較にならない)

 

 長くゾルディックに仕えてきたツボネとしては、キルアが当主になる姿を見たくないといえば嘘になる。

 しかしそれ以上に光り輝くキルアの姿は、年老いて汚れることに疲れたその心を洗い流すようだった。

 

(この光景を壊さぬよう、この老骨も働きましょうかね)

 

 ツボネはめっきり緩くなってしまった涙腺が決壊するのを自覚しながら、霞んだ視界で愛に溢れる光景がこれからも続くのを心の底から願った。

 

 

 

 

 

「よし、集計終わりです。皆さんお疲れ様でした!」

 

 ハンター協会のとある会議室、ビーンズと数名の事務員が第一回選挙結果を囲んでいた。

 

「これはまた、わかっていたことですけど露骨ですね」

 

「まあ本人の性格はともかく我々事務員と協専ハンターがお世話になってるのは事実ですしね」

 

 第一位 パリストン・ヒル 249票 得票率37%

 

 副会長としてハンター協会を裏から牛耳るその手腕は伊達ではなく、第二位のチードル40票に6倍以上の差をつける圧勝である。

 もっとも得票率が過半数を超えなかったため、上位16名で再度選挙になることが決定したのだが。

 

「流石に上位はそうそうたるメンバーですね、そんな中にシングルとはいえ2年目のルーキーがランクインするなんて」

 

 11票を獲得して同率9位にランクインしたシングルハンター、ギリギリ16位にランクインしたジンの息子にして親超えを果たしたゴン・フリークス。

 

「しかもこれ投票者の質でいったらTOP3とかに入りますよね」

 

 ジンが面白いからという理由で明記した、投票者自身も記名するという匿名性皆無のルール。

 ゴンに投票した者はビスケにモラウにノヴといったベテランハンター、更にはツェズゲラやカイト等の実力派が揃いもはや一大勢力となっていた。

 

 そして推しをトップに立たせたいピエロもちゃっかりゴンに投票していた。

 

「では明日からは上位16名による所信表明、そして第二回投票に向けた準備をしていきましょう」

 

 ガヤガヤと盛り上がる事務員を帰らせたビーンズが一息ついていると、お茶と茶菓子のセットを持ってネテロが会議室へと入ってきた。

 

「おつかれじゃのビーンズ、ワシに言えたことでもないがもうちっとは休憩せい」

 

「忙しいのはもう少しで終わりますからね、そうしたらちょっと休暇をいただきますよ」

 

 普段の2人では珍しくネテロが茶を淹れ、ビーンズは茶菓子の豆大福の甘味に舌鼓をうちながら茶を啜る。

 

「……私にも少しだけ見えてきた気がします、これからの新しいハンター協会が」

 

「ほほぅ、普段そういう予想を口にしないビーンズらしくないのぅ、この結果に何か思うことがあったか?」

 

「色々と若くなってしまった人が近くにいるせいですかね、自分も新しいことに挑戦したくなったのかもしれません。ちょっと遠目に見かけただけなんですけど、いやはや、とんでもない輝きになっていますね。直視したせいで干からびるかと思いましたよ」

 

「かっかっか! 流石じゃなビーンズ、あの見た目に惑わされなかったか」

 

 身体に引っ張られ日に日に思考も若返っているネテロの変化は、良くも悪くも多くの者達に大きな影響を与えている。

 新たな会長が立つハンター協会も例に漏れず、きっと新たな姿を見せてくれるとビーンズは確信していた。

 

「で? ビーンズはどういう結末を予想しとるんじゃ」

 

「さあ? 私に見えるのは選挙結果ではなくこれから先のハンター協会ですから」

 

「かっかっか!!」

 

 しれっと誤魔化したビーンズは笑うネテロの姿を眩しそうに見た後、紙に記されたゴンの名前に指を指して宣言する。

 

「これからのハンター協会は、間違いなくゴン君を中心に動いていくでしょう。今まで中心だった貴方を超える、この大き過ぎる強者の庇護下で」

 

「今だけだ!! 誰が守られてやるかよ! ゴンもヒソカも、全員ぶちのめすのはこのオレだ!!」

 

 テンションの上がったネテロが持っていた湯呑を砕き、お茶まみれになった机の上をビーンズが説教しながら片付ける。

 

 もう戻らない2人の関係(会長と秘書)、それでも2人の関係(友情)はこれからもずっと続いていく。

 

 

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