ここは空前絶後の盛り上がりを続ける天空闘技場。
あまりに挑戦者と観客が増え続けたことでまさかのリングが足りない事態に陥り、塔をもう一本建設しツインタワー化する工事が開始されたばかりである。
そんな天空闘技場でも一等熱い戦いが繰り広げられる200階、フロアマスターとそれを目指す者達の激戦が今日も始まろうとしていた。
『皆さんこんにちは!! 今日はいつもと違った変則マッチ、3VS3のチームバトルだぁー!!』
様々な取り組みを行う天空闘技場が新たに追加する予定のチームバトル、勝ったチームのポイントが増える代わりに負けた時のポイント減少も増えるというルールを採用していた。
『今回初となるチームバトルは参加者全員がフロアマスターという超豪華仕様! ランキングが大きく動くこと間違い無しのとんでもバトルです!!』
天空闘技場は今までの10勝でフロアマスター、4敗で追放というルールを撤廃し、勝敗でポイントを付け上位の闘士から序列を付けるルールに変更されている。
戦えば戦うほどポイントを得るチャンスがあり、座して待てば自動的に降格していく新たなルール。
現在フロアマスター序列一位と二位はカストロとゴードンが飛び抜けており、少し前の試合でゴードンが2ヶ月ぶりに一位を奪還したばかりだった。
『今回の実況解説は私ともう一人、いつの間にか正式雇用されていたいつものロン毛でお送りします!!』
『フフ、今年のベストバウト候補にノミネートされるような素晴らしい試合を期待する。しかし同僚となったのだからいい加減名前を…』
『さあさあ早速進めてまいりましょう! 残虐ピエロヒソカがいなくなって血を見る日の減った天空闘技場に突如現れた男達! 血を求める無頼共の新たなダークヒーロー、三人一組でおなじみボマーズの入場だ!!』
実況に合わせて大音量のメタルが鳴り響き、ライトアップされた入場口から男達が歩み出てくる。
『まずはこの男、3人の中でフィジカルNo.1! 相手の攻撃をあえて受けテンションを上げるその姿はまさにプロレス、力のボマーバラ選手の入場だ!!』
『ポイントで不利になることは多いがその分KO率が非常に高い。大味に見えてコンパクトな打撃も放てる良い闘士だ』
やや長い髪を縛って顔にペイントを塗ったバラは上半身裸で入場し、観客を煽るようにしてリングへと向かっていく。
グリードアイランドにいた頃より一回り大きくなった筋肉を誇示しながら、野太い歓声に答えて雄叫びをあげる。
『続きましてテクニックNo.1! 華麗な連撃で相手に付け入る隙を与えない戦闘巧者、技のボマーサブ選手の入場だ!!』
『トータルバランスが非常にいい、技と技の繋ぎが上手くバラと違ってポイントによるTKOの多い闘士だ』
糸目のサブはバラと違ってグリードアイランドから特に見た目の変化はないが、天空闘技場で多くの戦闘を行ったことで技術がかなり洗練されていた。
すでにリング上にいるバラのもとにたどり着くと、互いに拳をぶつけ合って不敵な笑みを浮かべる。
『さあ! 最後にやってくるのはこの人! 掴んだ相手を爆発させる残虐非道な爆弾魔!! 3人の中で最も序列が高く今なお急上昇中の序列7位、爆破のボマーゲンスルー選手の入場だ!!』
『強い。力ではバラ、技術ではサブに劣るが欠点がない。そして掴まれたらそのまま終わりかねないあの爆発、十分に序列トップを狙えるだろう』
最後に出てきたゲンスルーは戦闘スタイルとかけ離れた爽やかな笑みを浮かべ、歓声と悲鳴の大合唱を気持ちよさそうに抜けていく。
ヒソカにふん縛られた時は人生最悪の終わりを予感したが、今ゲンスルーはもちろんサブもバラも人生最高の時を過ごしていた。
『出たー! 3人でグーサインをくっつけ合うおなじみのポーズ! 今日も彼等がリングを血で赤く染めるのか!?』
リングにボマー達が集結したタイミングで、BGMが別の音楽へ切り替わる。
ややポップな曲調になった音楽に合わせて、ボマー達の反対に位置する入場口が明るく照らされた。
『非道なボマーズに立ち向かうヒーローはコイツラだ!!』
入場してきたのは驚くほど小さな人影、早々に天空闘技場を去っていったゴンとキルアに代わり最年少フロアマスターに上り詰めた少年。
『一人目はこの子、最年少フロアマスターにしてお姉さんとお兄さんの癒やし枠! 世に名高い心源流を駆使して戦う小さなマッチョ、ズシ選手だ―!!』
『まだまだ序列は低いが日々の成長が著しい若さに溢れる闘士だ。きっとこの試合でも成長を見せてくれるだろう』
ズシはやや緊張気味ながら元気に押忍と挨拶をしてリングに上り、ボマー達を睨み付けると決して負けてなるものかと気合を入れた。
『二人目はこの人! 先日ゴードン選手にポイントを追い抜かれ序列2位に転落した怒れる虎!! 今日も二頭の虎が相手を食い破るのか、双虎のカストロ選手です!!』
『ヒソカ選手に負けてからの彼は本当に素晴らしい。技のキレ、そして身体能力も目に見えて向上している。カストロとゴードンが頑張りすぎるせいで、ポイントを一年ごとにリセットする案も出ているくらいだからな』
入場してきたカストロは今までの大きなマントを脱ぎ捨て、普通のカンフー服にカンフーシューズという簡素な服装になっている。
長い髪もポニーテールのようにまとめて縛ってあり、
『そして最後はこの人! 第二期アニメも大成功を収め観客の平均年齢を激減させた男!! 玩具会社やアニメ会社からのスポンサー料でとんでもないことになっていると噂の時の人、リアル○イブレードギド選手の入場だぁー!!』
『実におもしろい進化を『ギドがんばえー!!!』…がんばえー』
無駄に熱いアニソンと共に回転しながら入場したのは、ビビットカラーで肩や肘などがやたらゴツゴツと尖った小柄な男。
高笑いしながら回転を止めたその顔は厳つい変身ヒーローのようで、両手を広げると観客席から小さい子供達の歓声が響いた。
「フハハハ! 星の回転を我が手に!!」
『ほしのかいてんをわがてにーー!』
一部野太い歓声も混ざる中、全選手が入場したことで細かなルールが説明される。
1.勝敗によるポイント増減が大きくなる。
2.今回は途中交代なしのタイマンを三回。
3.勝者の多いチームが勝利となり、負けた選手もポイントを得る。
『さあさあ早速始めていきましょう! 最初に戦うのはどの選手だ!?』
チーム戦と考えると非常に重要な初戦、リングの上にバラとズシが登った。
『なんと!? 最も体格差が出る組み合わせとなりました! 早くもお姉さん方から悲痛な悲鳴が上がるぅー!!』
『いや、悪くないな。ズシ選手は成長途中というのもあってどちらかといえばテクニックタイプ、サブ選手やゲンスルー選手を相手にするより勝率は高いはずだ』
大柄なバラと年相応のズシがリング中央で向き合えば、その絶望的な体格差がよりわかりやすく見るものの目に映る。
ニヤニヤと笑うバラと口を引き絞るズシの対象的な表情は、そのまま両者の実力差を表しているようだった。
『賭けの倍率も決まりました! なんと十倍の差をつけてバラ選手有利です!! そしていよいよ試合開始のゴングが鳴る!』
「試合開始ぃー!!」
開始の宣言と同時に飛び出したのはズシ。
その小柄な身体を目一杯使い、飛び跳ねるように怒涛の連撃を繰り出す。
その猛攻にバラは防御する素振りすら見せず、しかし下がることもなく全ての打撃を正面から受け切る。
「くくく…」
無呼吸連打を終え一息吐くために下がったズシに追い打ちもかけず、鼻や口から出血するバラは嗤いながら声を上げた。
「軽いねぇ、攻撃が! そんなんじゃ何発もらっても効かねえよ!!」
「…流石っす、やっぱり強いっすね」
ポイントでズシがリードしたものの、どちらが追い詰められているのかは一目瞭然だった。
呼吸を整えたズシが再び連打を叩き込むも、バラのただ力だけのフルスイングでガードごと吹き飛ばされる。
「遊びはここまでだ、せいぜい惨めに鳴いてくれよ?」
リョナリオの再来かと一部の物好きがテンションを上げるも、大多数の観客から悲痛な悲鳴が上がる。
そして当のズシ自身は、オーラを練り上げ構えを変えた。
「自分じゃまだあなたに勝てない、けどあの人達には到底及ばないっす!」
「あぁ?」
「いくっすよ、これが自分の発、“
大量のオーラを纏ったズシの構えが心源流ではなくなり、むしろ洗練さのない荒々しくも力強い構えとなる。
「セレクト“ゴン”! いくっすよ!!」
今まで以上の踏み込みで突撃し、大きく振りかぶった拳がバラに迫る。
長年の勘か偶然か、無意識の内に防御を固めたバラにズシの攻撃が命中した。
「あがぁ!?」
まともに受けてなお耐えられた先程と違い、ガードの上から体の芯に響く衝撃がバラを襲った。
(なんだこりゃあ!? 明らかに威力が上がってやがる!)
ズシが習得した発“
自分の発を説明して真似たい相手に発を教えてもらうこと、何よりズシが心の底から憧れていてその強さを目指していることが条件となる。
制約として真似ていられる時間は1分間、再現度はズシの心源流の練度に依存してスケールダウンしてしまい、超えたと判断したら使えなくなってしまう。
急に強くなるわけではない、しかし戦闘スタイルが激変する上に発も変化する対応しにくい能力だった。
「このっ、調子に乗ってんじゃねえぞ!」
「時間切れっす、セレクト“キルア”!」
力でそこそこ良い勝負をしてからの突然のギアチェンジ、スピードと急所への一撃必殺がバラを襲う。
ポイントで先行し着実にダメージを蓄積させていく、奇抜さはないが基礎に忠実なズシらしい攻めだった。
「…わかった、認めてやるよ」
「ぜぇ、ぜぇっ、セレクト、“ウイング”!!」
同じ心源流、最も近くで見続けて憧れ続けた師匠。
「お前は強い、遊んでられない程な」
ズシ本来の実力を超える模倣は間違いなくバラに届いたが、元々あった地力の差を埋めることはできない。
実力を超えた戦闘、湯水のように使ったオーラが枯渇するのは至極当然の結果だった。
「ズシ選手KO! 勝者、バラ選手!!」
動きの鈍ったズシを沈めたバラはリング上で雄叫びを上げ、これから加速的に伸びるであろう小さな闘士を心の中で讃えた。
なおレオリオのファンからリョナを継ぐものとしてリョナバラと呼ばれかけたが、語呂の悪さから定着することはなかった。
「いい勝負だった、それに恥じぬ良き勝利を」
「お前が相手か、さっさと勝ちを確定させてもらうぜ」
チームバトル2戦目、ギドVSサブが幕を開ける。
たくさんの完結祝儀評価してくださりありがとうございました。改めて多くの人に読んでもらえてたんだなと嬉しかったです。
ロスタイムも早めに更新できるようにしますのでもう少しお付き合いください。