オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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小話4 ヨークシンシティのその後

 

 

「ズバリ!! あんた等死ぬわよ! 知らんけど!!」

 

 ヨークシンシティに本社を置く世界的TV局のスタジオに、新進気鋭占い師ネオンの元気な宣言が響き渡る。

 ノストラードファミリーが多額のギャラで引き受けた若き預言者の占い番組は、毎度高視聴率を叩き出す超人気バラエティとして多くのお茶の間を楽しませていた。

 

「じゃああたしは楽屋に戻るから結果の考察はよろしく!」

 

 念の制約から占い結果を見ることのできないネオンはさっさとスタジオを出ていき、代わりに世界的な詩の専門家であるおばちゃんがやや口悪く結果を解説していく。

 

「はい、こことここ、死にはしないけど結構面倒くさそうね。商業施設系の仕事は控えるほうが無難よ、もしすでに入ってるならそれもネタにするくらいはギリギリ大丈夫そうね」

 

「マジかよ~、仕事キャンセルできないかな兄ちゃん」

 

「相変わらずイモリはビビりだな。どうする兄貴?」

 

「俺等になんかある程度ならいいが周りに被害が出たら困るしな、マネージャーと相談するか」

 

 多くの大物ゲストの中にいたブレイク中のトリオ芸人“モリ三中”は、この占いを馬鹿にせずウケ狙いで使用もせずしっかりと対策することで被害を抑え、お茶の間人気を更に高めることとなった。

 

 ちなみに同じく番組に出演した環境保護活動家のゲレタは、2週間後にまじで死ぬ占い結果となり大量の冷や汗を流しながら解説を必死にメモしていた。

 

 

 

 

 無事撮影も終わりホテルへと帰ってきたネオンは画面越しながらも、最近音沙汰のなかったゴン達との久しぶりの再会を楽しんでいた。

 

「ゴンちゃんなにそれ!? 人形みたいなのにちゃんと人間じゃんすごい!!」

 

『ちょっと無理しちゃってさ、こんなんでも元気だから心配ないよ。ネオンさん達も元気そうでよかった』

 

 映像越しとはいえマスコットキャラと化しながらも人間と分かるゴンに収集欲を掻き立てられるネオンと、無茶をしたというゴンが何をしでかしたのか冷や汗をかくダルツォルネ率いる護衛達。

 途中レオクラ夫妻と子供達も登場し、そこそこ長話をした後にゴンが本題を切り出す。

 

『実は内密な依頼で1人占って欲しい人がいるんだ。暗黒大陸探険隊がどうなるか予測したい』

 

 それはゴンというより、ハンター協会として知っておきたい暗黒大陸へ挑戦するハンター達の安否。

 遠征自体は何度も行われていることだが、何分いまだかつてない規模である以上どんなことになるか予測しきれない所がある。

 

『このビヨンド・ネテロって人を占って欲しいんだ』

 

 だからこそ総責任者であるビヨンド・ネテロを占うことで、今回の大規模遠征の未来をごく一部の人間で共有しようというのだ。

 

「それくらいお安いゴヨーよ! ゴンちゃんとクラピカが会いに来てくれるならお金もいらないよ〜」

 

「ボス、占いの安売りはちょっと」

 

「本当に安売りだと思う?」

 

「……、ゴンさん達相手ならとんでもなく高いですな!」

 

「でっしょ〜!!」

 

 無邪気に喜ぶネオンとは対象的に、部下のセンリツ達が見聞きした会長選挙の様子を知るダルツォルネは汗だくになりながらやけくそ気味に叫ぶ。

 幻影旅団との戦いの後に心源流から教えを受け確かにパワーアップした護衛一同だったが、その中でも特に成長したセンリツとバショウですら見ただけで失神したという怪物“ゴンさん”。

 そんなゴン本人とクラピカを呼び付けられる権利など、そこらの富豪から受け取る報酬をゴミと呼べるレベルでとんでもない価値がある。

 

『う〜ん、オレは多分あと数日したら自由になるし、実家に帰る前に寄らせてもらおうかな。元に戻ってたらごめんね?』

 

「全然いーよー。むしろ実家についていこうかな、とりあえずこのおっさん占うね」

 

 天使の自動書記(ラブリーゴーストライター)の結果を受け取った後もしばらく雑談を続け、ゴン達がネオンを訪ねる日程を決めて通話はお開きとなる。

 早くもテンションを上げるネオンを落ち着かせるメイド達を尻目に、早くも胃が悲鳴をあげだしたダルツォルネは青い顔でスケジュール調整を開始した。

 

 なお選挙でゴンさんを直視したセンリツとバショウの報告により、ダルツォルネを除く護衛達も全員恐怖から白目をむいた。

 

 

 

 

 

 ヨークシンシティの裏通り、クラピカとレオリオが降りた地下への階段を歩く二人の男がいた。

 

「この先が仕事の受付兼、戦闘員達の待機所になってる。所属が違っても争いはご法度、陰獣の方々もよくいるから下手なことはするなよ」

 

「この距離で気配も音も漏れない厳重さ、知らなけりゃ俺でも見逃しちゃうね」

 

 先導するマフィアの下っ端に続く彫が深く帽子を被る男は、大量に欠員の出た陰獣のメンバー候補として最後の顔合わせに現役陰獣と会うためこの場を訪れていた。

 

「ここのスタッフに引き継いだら俺の仕事は終わりだ。次会うときは二人共陰獣だろうからな、その時はしっかり敬語を使わせてもらう」

 

「律儀だねぇ、お前さん本当にマフィアかい?」

 

「俺等にも色々あったのさ。ようこそ、新たなマフィアの世界へ」

 

「っ!?」

 

 階段を降りきり下っ端が薄汚い扉を開けると、驚くほど大きな喧騒と光が溢れ出し二人を包み込む。

 

「キレてるっ! キレてるよっ!! 肩にダンプカー乗せてんのかい!」

 

「ちょっとこの大胸筋見て、どこまで俺を魅了するんだ〜い?」

 

「きてるよぉ〜、ハムストリングに負荷がきてるよぉ〜」

 

「ワンモアセッ! いけるいける絶対できる!! あとちょっとなんだからネバーギブアップ!!」

 

「ちょっとスタッフ〜っ、ドリンクバーのプロテインココア味切れてんだけど〜」

 

 地下とは思えないほど煌々と照らされたフロアには最新のトレーニング器具が所狭しと並べられ、壁一面鏡張りの影響もあってか驚くほど広く感じさせる。

 

 その広いフロアを狭く暑苦しく感じさせるマッチョな漢達がとんでもない熱量でトレーニングに励んでいた。

 

「受付は済んだ。ここからはスタッフが案内する」

 

 目と口を開けてフリーズしていた男が案内役に目をやると、やたらダボダボのランニングシャツとスパッツ姿になってしまっていた。

 スーツ姿からは見えなかったその見事な筋肉に言葉をなくす男に会釈をしたマフィアは、知り合いらしいグループへとナチュラルに混ざると己もトレーニングしながら他人に対しても大きな声で叱咤激励する。

 

「お待たせしました。これから陰獣筆頭の下へ案内させていただきます」

 

「あ、あぁ、頼む」

 

 マフィアの代わりにやってきたジャージ姿のどこにでもいそうな優男に続き、明るさに目を細め喧騒に辟易しながらも目的の陰獣筆頭について質問する。

 

「あの幻影旅団とやり合って生き残った猛者なんだってねぇ、どんな奴か聞いてもいいかい?」

 

「そうですね、僕に強さとかはよくわかりませんのでわかることだけなら言えますが」

 

「聞かせてもらいたいねぇ」

 

「鍛えていても細すぎますね。最近は全身を鍛えてらっしゃいますが、いささか偏りすぎです」

 

「……、ん?」

 

「噛合筋に傾倒しすぎですので、首や顎だけでなくバランスよく鍛えてこそいい身体になれるのですが。ハイッッッ!! ダブルバイセップス!!」

 

 掛け声とポージングをした瞬間、青年の着ていたジャージが内側からの圧力により弾け飛ぶ。

 

「おぉっ、なんと美しい!!」

 

「流石トレーナーだぜ、今日もありえないほどキレてやがる! そこにしびれる、あこがれるぅ!!」

 

 ジャージに収まっていたのがあり得ない筋肉ダルマになり、何故か身長も伸びた青年は白い歯を輝かせながら満面の笑みを浮かべた。

 

「あなたも鍛える際は是非力にならせてください! シルバーマンジムからのアドバイザーとして、全力で努めさせていただきます!!」

 

「………、おねがいします」

 

 どれだけ凝をしてもオーラは垂れ流しな青年に首を傾げつつも、広いフロアの最奥にいた人物に目を見開いた。

 タンクトップにスパッツという薄着は鋼のように絞り込まれた筋肉を全面に押し出し、特に後ろ姿にも関わらず首と顎の筋肉が常軌を逸した隆起を見せている。

 

 それ以前に何故か鎖で首を吊っていた。

 

噛犬(かみいぬ)さん、面談予定の方がいっしゃいましたよ」

 

「ん? お、ふぁんきゅー(お、サンキュー)

 

 気にせず話しかけた青年に応え、病犬(やまいぬ)改め噛犬が鎖を噛み締めながら振り向き口を開いた。

 

「よっと、お前が新しい陰獣か。見た所強さは問題ないな、後はコードネームを十老頭に申請しな。ようこそ陰獣へ、歓迎するぜ」

 

 トレーナー以上に白く輝くギザ歯を噛み鳴らし、威嚇にすら思える笑みで両手を広げる噛犬。

 胴周りと首周りが殆ど変わらないという歪な姿の陰獣筆頭に対し、下剋上も考えていた男は無謀だったその考えをスパッと諦めて苦笑した。

 

「これから世話になるよ。さしあたりなにか任務でもないか? 俺がどれだけできるか見せたいんだがねぇ」

 

「カハハッ、殊勝な心がけだな。だが新入りが一番最初に見るものは決まってんのさ。おいお前ら! 上映会始めっぞ!!」

 

「キターーーッ!」

 

「神を、筋肉の神を見せて下さい!」

 

「キルアきゅんを中心にお願いします!」

 

 一心不乱に鍛えていた漢達が一斉に群がり、温度と湿度を爆上げしながら一つの群となってフロアの更に奥へとなだれ込んでいく。

 肉に流された男も薄暗い部屋に押し込められると、プロジェクターが壁一面にあの世紀の一戦を映し出し始める。

 

「最強ハンター達と陰獣の共同戦線、心して観戦しな!!」

 

 こうして無事に濁った目が子どものような輝く瞳に戻った男も任務そっちのけでジムにこもるようになり、しかし身体能力と実力を大きく向上させ陰獣に恥じない漢として認知されていった。

 

 

 

 

 

 ヨークシンシティから電車一本のそこそこ大きな都市。

 ヨークシンシティで働く者達が多く住む住宅街として発展したこの街は、観光客相手ではなく地元民に寄り添った治安も良い住みやすい街として評判が高い。

 そんな町中の一等地から少し離れた位置にある喫茶店、その上の階に“スクワラと犬達の探偵事務所”と書かれたダックスフントを模した看板が掲げられている。

 約半年ほど前に開業したこの探偵事務所は、数多くの犬を使った失せ物探しから浮気調査といったものはもちろん、アニマルセラピーや休日は喫茶店が犬カフェになるなどすでに街でも大人気スポットとして大繁盛を見せていた。

 

 今日もまた探偵事務所のボス、スクワラのもとに迷える依頼人からの連絡が届く。

 

「嫌だ!! 俺はマフィアから足を洗ったんだ、もう関係ないだろ! いくらダルツォルネさんのお願いとはいえ聞けない!!」

 

『話は最後まで聞け、依頼するのはゴンさん達が行くというくじら島での周辺警護だ。マフィアの仕事じゃない』

 

「あ、マジっすか? すんませんまた復帰の話かと思っちまって。けどゴン達がいるなら俺いらなくないですか?」

 

『ボスがエリザと犬達に会いたいと少し前にこぼしていてな、たまの休暇なら最大限リラックスしてもらいたい。エリザはもちろん犬達の移動費から滞在費まで全てこちらが負担するから期限は不明確でも受けてくれんか?』

 

「それなら受けましょう。残った仕事も片付けておくんで正確な日程が決まったら連絡してください」

 

『頼んだ』

 

 受話器を置いたスクワラは事務所を出てエリザの経営する喫茶店に入ると、ダルツォルネからの長期依頼を受けたと報告し少し長めに店を閉める旨を説明する。

 勝手に依頼を受けたことを軽く謝るスクワラだったが、エリザも久しぶりに会える顔を思い出して穏やかに笑うと気にしないように伝える。

 

 事務所の大ボスエリザの許可も得たスクワラは残っていた失せ物探しの依頼をさっさと片付けると、長期休みの張り紙やネットサイトの書き換えを行いながらふと違和感に気付く。

 

「ダルツォルネさんなんでゴンをさん付けで呼んでたんだ? まあ別にいいか、お前等もギンに会えるのは楽しみだな」

 

『わんわん!!』

 

 そしてスクワラは若干バカンス気分で訪れたくじら島で別人かと思うような修羅達に囲まれ白目をむき、楽しそうなエリザや犬達を癒しになんとか長期依頼をやり遂げる。

 

 そして帰ってきた我が城にて溜まりに溜まった依頼にまた白目をむき、激務に苛つく犬達やあまりかまえないエリザのご機嫌取りに必死になりながら働くこととなった。

 

 今日も“スクワラと犬達の探偵事務所”と“喫茶 犬の家”は、スクワラの苦労を代償に多くのお客の悩みとストレスを解消していく。

 

 

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