オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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小話5 ハンター協会トップ達の悲喜交交

 

 

 ハンター協会本部の会議室、新首脳陣が一同に介し舌戦を繰り広げようとしている。

 

 

 ハンター協会会長代理 ジン・フリークス

 

 副会長 パリストン・ヒル

 

 副会長 チードル・ヨークシャー

 

 

 監査委員長 テラデイン・ニュートラル

 

 監査委員武力班 ブシドラ・アンビシャス

 

 監査委員頭脳班 ルーペ・ハイランド

 

 

 新生十二支んリーダー ミザイストム・ナナ

 

 十二支ん サッチョウ・コバヤカワ

 

 十二支ん ピヨン

 

 

 各陣営のトップ達が集まり、まずは進行役のビーンズがゴン含めて行った協会の今後の方針を説明したところだった。

 

「以上が新会長ゴン・フリークスの指示した今後の動きになります。質問や意見がありましたらどうぞ」

 

 ビーンズがメンバーに目をやる隙もなく、監査委員所属のブシドラが勢いよく立ち上がって口を開いた。

 

「神の方針に異議はない!! 我等はその経過に不正がないか注視するのみ!!」

 

「あぁ〜、言われてしまったがその通りだ。我々監査委員は当面の間運営に口は出さない。ゴンさんの考えをどれだけ実現出来るか先ずは拝見させてもらうよ」

 

 監査委員の武闘派筆頭ブシドラはすでにゴンさんを神の如く崇めており、苦笑する委員長テラデインが正式に監査委員としての方針を述べる。

 元々脱アイザック・ネテロを掲げていた“清凜隊”のメンバーなこと、新会長のゴンに大きな期待をしているからこその見という判断だった。

 

「十二支んも特に異論はない。ついでだから報告するが、新たに“申”のサイユウが十二支んを抜けることが正式に決まった。それに伴い新メンバーとしては一ツ星(シングル)のレオリオ及びクラピカから色良い返事をもらっている。残り二人に関しては声掛けを行っているがまだ報告できる段階ではない」

 

 十二支んはそれこそ最も信頼しているチードルが副会長になったこと、気に入らないが能力は認めざるを得ない嫌いな馬鹿二人もいることから特に文句をつけることはなかった。

 それに加えて残ったメンバー全員がゴンを好意的に見ているため、こちらもとりあえずの見を選択した。

 

「いやマジで助かるぜ、そろそろ堪忍袋の緒が切れそうな変態がいたからよ、やっと落ち着いて夜寝れるわ」

 

 そう言ってらしくもなく頭を下げたジンには濃い隈がしっかりと刻まれており、そこまでではなくともパリストンとチードルも大きく息を吐き出した。

 ゴンのこんな感じにしたいという漠然とした方針に、優秀が故に多くの政策を思いついてしまう3人は半ば自業自得なデスマーチを終わらせた達成感に浸り、改めてジンが真面目な顔をしてメンバーを見渡す。

 

「なんか問題があったら頼むから手遅れになる前に教えてくれ。最悪ゴンに処される奴はオレとパリストンの二人に抑えるけどよ、流石に親殺しをさせたいほどオレも腐ってないからな」

 

 その説得力しかない悲壮感あふれるオーラをピヨンですら茶化すことなく、恐怖により団結する首脳達の会議は驚くほどスムーズに進行した。

 

 

 

 

 首脳会議を終えた十二支んの3人は改めて別の部屋を訪れ、すでに集まっていた他のメンバーと合流していた。

 

「 ―― 以上がこれからの方針だそうだ。一言で言えば今までより好き勝手にして良いが、ラインを超えたら処されるといったところか」

 

「なんつーか本当にジンのガキか半信半疑だったけどよ、方向性が違うだけでイカれてんのは変わんねぇのな」

 

 ミザイストムの説明を受けてこぼれたカンザイの言葉に、その場にいた全員が深く頷くと年長者ボトバイが代表して宣言する。

 

「強さは別格とはいえ、やはり考え方は子供の域を出ていない。我々大人がしっかりと支えていこうではないか」

 

「意義な〜し。サイユウ以外抜けなかったってことは全員そういうことでしょ〜?」

 

「あのサルはクズ! 異論は認めない!!」

 

「まぁいいじゃない、正直あいつがいないとかなりストレスが減るわ」

 

 だらけながらもやる気は見せるピヨンと、十二支んを抜けたサイユウに文句をいうクルックと貶すゲル。

 十二支んに残る女性ハンターの3人はすでにゴンを弟のように認識しており、ネテロとはまた違った方向で推していくことを決めていてピエロのブラックリスト入りを果たしていた。

 

「やや血の気の多いところはあるが、それを抑えられるだけの分別は持っている。協会が新しくなる上で最善の会長かもしれんな」

 

「あの強さは魅力的に過ぎるけんど、変われない古い奴を振り落としかねない危うさは心配だどもな」

 

 十二支んでは性格的に穏健派なサッチョウとギンタも、懸念するところはあれどメリットの方が大きいと武闘派の極みたるゴンを普通に認めている。

 

 クセの強さで選ばれたのではないかと影で言われるほど個性的メンバーが揃ってゴンを支持する理由、それは清々しいまでにわかりやすすぎるゴンの生き様にあった。

 何を考えてるのかしてるのか全てが胡散臭いパリストンや、何を考えてるのかしてるのか全てが予測不能なジンでは決して得ることのできない信頼。

 

 わからないことに不安を覚える人類にとって、ただただ本能に訴えかける暴力オンリーのゴンさんは眩しくも惹き付けられて当然の頂だった。

 

「十二支ん入りが内定しているレオリオとクラピカは問題ないとして、ゴンに友好的ながら正せる人員をもう二人集めるのは至難だな」

 

 十二支んのリーダーとなったミザイストムが頭を抱える新メンバーの選定、誰もが唸るその難問に直感で生きるカンザイがあっけらかんと答える。

 

「ビスケさんは心源流の新しい総師範になって忙しいから無理なんだろ? もういっそ強さでヒソカとキルアでよくね?」

 

「バカンザイ! ゴン君の愉快な仲間達勢揃いじゃん!!」

 

「パワーバランス悪くな〜い?」

 

「ありえないわね」

 

「えー? わりとありだと思うけどなぁ」

 

 腑に落ちないカンザイとそれを責める女性陣が騒がしくする中、ミザイストムが盲点とばかりに目を見開いて天啓を得た。

 

「いや、むしろ最適解かもしれん。彼等は強固な絆で繋がれているが、その実ゴンのストッパーになっていることが大半だ。あえて十二支んに入れるのは強さのバランス的にも悪くない」

 

「問題は監査委員の貧弱さだが、そこは政に尽力してもらえばまだなんとかなるか」

 

「レオリオとクラピカはそこそこ仕事をしてもらうとして、キルアとヒソカはゴンの位置情報や活動を報告することを役割にすれば良いな。居場所等が把握できるならむしろ最重要案件でもある」

 

「ええんでないか、ついでにヒソカの足取りも掴めるど」

 

 男性陣が賛成したことで過半数によりキルアとヒソカに十二支ん入りを要請することが決まり、懸念事項が早急に解決したものの女性陣の機嫌はすこぶる悪い。

 自分の考えなしの案が採用されたこともあり嫌嫌ながらカンザイが不満点を聞くと、目一杯顔を顰めて声高らかに告げられた。

 

『クラピカ以外にも可愛い女の子が欲しい! 後変態は嫌!!』

 

 その絶叫に男達も満場一致で深く頷くも、他の代案が浮かぶことはなく虚しく会議は終了した。

 

 

 

 

 

 最高級ホテルのスイートルームで二人のトップハンター、テラデインとモラウが高級酒を片手に談笑していた。

 

「しっかし予想外だったぜ、あんたが監査委員を受け入れるなんてよ」

 

 自身も清凜隊に勧誘されたモラウとしては、テラデインは会長にしか興味がなくゴンの要請を断ると見ていた。

 しかし現実は二つ返事で監査委員長を受け入れ、むしろかなり好意的に見守る体制を取っている。

 

「ふふっ、私も思うところがあったのだよ。何よりブシドラの奴が完全に骨抜きになったからな、あれはあれで下からの評判はいいんだ」

 

 ハンター協会の風紀委員と呼ばれるほど清廉潔白なブシドラは裏表のない性格と武闘派なところから善良ハンター達からの信頼が厚く、そんなブシドラがゴンさんに傾倒したことで清凜隊のトップであるテラデインですら無視できない流れが生まれてしまった。

 ただ当初の予定からかなり変化したが、テラデイン本人も特に悪い気がしないのもまた事実だった。

 

「モラウ、君の変化も大きかったのだよ」

 

「あぁ? そんなにわかりやすく変わった自覚はねえけどな」

 

「本人は気付かないものだろうな。アイザック・ネテロが最も顕著だが、君とノヴ、そしてビスケット・クルーガーはオーラの質が明らかに変わっている。歳を取った私からは眩しくてしょうがないよ」

 

 目を細めるテラデインには、モラウだけでなくゴンと関わったことで心機一転した多くのハンターが映っていた。

 自分はもっと上の立場に立つべきだと薄黒く澱んでいたテラデインのオーラとは真逆の、少なからず停滞していたはずが清流のように流れ輝きを取り戻した溌剌としたオーラ。

 

 その初心とも言えるありのままの姿は、ゴンさんのインパクトと合わさりテラデインの心から卑屈さを吹き飛ばした。

 

「私も変わりたくなったのさ。当面は依頼や仕事そっちのけで筋トレを始めたブシドラに付き合いながらルーペといろいろ調整していく。…モラウ、ハンター協会は変わるぞ。我等が会長にして破壊神が全てをぶっ壊してな」

 

「……壊しすぎたり変なことにならないよう頼むぜ? ちょっと前までのあんただと不安しかなかったが、今のあんたなら信頼できる。暇な時は手伝っても良いと思っちまったよ」

 

「はっはっは! 監査委員は私がゴンさんから直接いただいた役目だ、もったいなくて君に分けたくないな!」

 

「そうかよ、じゃあ泣き言くらいは聞いてやろうかね、良い酒があるのが条件だがな」

 

「それは心からお願いするよ。私よりゴンさんと長く付き合っている君の意見はとても貴重だ」

 

 ハンターとして経験も実績もトップクラスの二人は静かに話しながら酒盛りを続け、筋トレ明けでいつもより暑苦しいブシドラと心なしやつれたルーペも合流すると少し騒がしくも和やかな時が過ぎていった。

 

 

 

 

 

「バカお前嫌に決まってんだろ!?」

 

「あなたがやらないで誰がやるんですか!? あまり我儘ばかりだとビーンズさん経由でゴンに伝わりますよ!」

 

「諦めなさいバカジン、長くても1年あれば諸々落ち着く見込みでしょ」

 

 

「グリードアイランドはオレの作ったゲームなのにちくしょぉ〜」

 

 連日の会議で取り急ぎ必要なことをまとめ終わったハンター協会首脳陣は、代理とはいえトップのジンが早速エスケープしようとしたところを止められていた。

 もともと一つの場所に留まることが大の苦手な気質に加え、自らが仲間と作り上げたグリードアイランドがバージョンアップして盛り上がっていることが大きかった。

 

「ドゥーンもリストもめちゃくちゃ楽しそうに自慢してきやがるし、レイザーにエレナとイータも殴られた映像で爆笑してやがったから文句言いに行きたかったんだがなぁ」

 

「自業自得でしょ、これに懲りたら少しはまともに生きてみなさい」

 

「ま、無理でしょうけどね☆」

 

「他ならぬテメーに言われると本当に腹立つな」

 

 もはや今までのいがみ合いが嘘のように慣れ親しんでしまった3人は、今回の全体会議で決まったハンター協会のこれからを全世界に発信する最終調整を行っていた。

 間もなく暗黒大陸探険隊の第一次募集が締め切られることもあり、大々的な発表をする以上会長代理のジンが矢面に立つ必要がある。

 

「めんどくせぇなぁ、早いとこゴンの奴デカくならねぇかな」

 

「その場合私とジンさんは処される時の危険度が跳ね上がりますね」

 

「……マジで子育て失敗したな、いやできないのがわかってたから任せたんだけどよ、まさか勝手にあそこまで育つなんて思わねぇよ」

 

「それについては同情もしますが結局は自業自得ですよ」

 

「むしろあんた等以外にとってはいい子だからこっちとしては助かるわ」

 

『………はあ〜〜』

 

 うなだれる二人を呆れたように眺めるチードルはピヨンからキルアとヒソカの十二支ん入り案をメールで報告され、そうなった場合のヒソカの面倒臭さに天を仰いだ。

 子供のために大人が率先して頑張る至極普通の光景、しかし所々暴力の影がちらつく不健全な職場。

 

 首脳陣の紅一点にして常識枠のチードルは、さらなる苦労に泣きながら女子会を増やす決心を固めた。

 

 

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