オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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小話6 グリードアイランド2とあの夫婦

 

 

 とある海の真ん中に、地図には印されず辿り着くことも極めて困難な島が存在する。

 トップハンターが複数で所有し秘匿するその島は、知る人ぞ知る超有名ゲームが行われているプレイマット。

 グリードアイランド2にバージョンアップしたその島で、今日もゲームクリアを目指すハンター達が鎬を削っていた。

 

 

「あ〜、何度見ても笑えるわね!」

 

「ちゃんと約束守ってくれるなんて、やっぱりゴンくんはいい子ね。この可愛い姿でまた来てくれないかしら」

 

「…映像越しとはいえそう言えるお前等は大したもんだよ」

 

「そうですよ、僕もドゥーンもゴンさんを直視して発狂しかけたんですから」

 

「もうだめだ、おしまいだぁ、勝てるわけない」

 

 島の中に建つGMだけが入れる拠点の一室に、グリードアイランドのシステムを統括するエレナとイータ、武闘派筆頭のレイザー、そしてプロハンターでもあるドゥーンとリストが揃っている。

 ゲームシステムに関する会議も一段落つき、会長選挙のゴンとジンのやり取りを録画で鑑賞し楽しんでいた。

 

「けどレイザー本当によく生きてたよね。システムも一部破壊されちゃったしあの頃から凄かったんでしょ?」

 

「いや、あの頃のゴンなら直接戦闘でもまだ勝負になったかもしれんがゴンさんは無理だ。何度想像してもデコピンで血煙になる結果しか出てこない」

 

「なにそれウケる」

 

「てかよ、仮にだがあのゴンさんをゲーム内に存在させられるか? システムパンクしねぇ?」

 

「残念ですが、ゴンさんをゲーム内に招待するには少々心許ないと言わざるをえませんね。せめて彼のオーラをシステム外に流すプログラムを組まないと」

 

 バージョンアップしたことでいくらか出ていたバグや不具合の調整もあらかた終わり、ゲーム開発当初に比べて洗練されたシステムはより多くの新要素と拡張を行ってもまだまだ容量に余裕がある。

 その使い道をゴン個人への対策にあてるのは身内贔屓もいいところだが、それに異を唱えるものは一人もいなかった。

 

「また会いに来るって約束はしてくれたし、いつかはわからないけどいつでもいいように準備だけはしておかないとね」

 

「そうそう! あたし達が一番忙しいんだからあんた達もちゃんと協力してよね!」

 

「オーラを放出する方向なら俺の管轄だしもちろん協力するさ。戦闘は無理でもスポーツでならまた勝負したいしな」

 

「…お前も直接ゴンさん見たらそんなこと言えなくなるぜきっと」

 

「いいじゃないですか、ゲーム内ならGMの緊急時は即座に治療できますから。笑いのネタが増えるだけですよ」

 

 クリアされたことである意味ジンの手を離れたグリードアイランドは、それでも多くの熱意と愛によってこれからも運営される。

 ゴンを成長させるという役割を終えたグリードアイランドは、全てのプレイヤーのために変化(成長)していく。

 

 

 

 

「 ―― とまあそんな感じで最序盤は金策、足場を固めてからのほうが進めやすいですよ。中盤以降はカードの有効活用に加えて純粋な実力が物を言うようになりますから挽回も利きますしね」

 

「なるほど、有意義な情報だった。流石に前作トロフィー持ちは違うな! またなんかあったら相談させてくれ!」

 

「攻略最前線から2歩手前までのことなら相談にのりますよ」

 

 始まりの街で初心者に少しの金銭や現実の情報を報酬に色々とレクチャーした男、モタリケは今日の稼ぎを確認しながら愛する家族の待つ家へと向かった。

 

「ん〜、やっぱり初心者相手のセミナーもどきは家族との時間は取れても稼ぎが少ないな。スタートダッシュで稼いだ貯金も減ってきたし、やっぱり定職に就こうかな」

 

 ゲーム内で数少ない、というかクリアしたゴンと仲間達(ツェズゲラはギリギリアウト)以外存在しないトロフィー持ちのモタリケ。

 実力の伴わない底辺能力者だったが、血反吐を吐く特訓とある制約を設けることで一定以上の力を手に入れることに成功していた。

 

 グリードアイランド内にいる家族のため、それ以外で念を使用不可にするという制約である。

 

 結果的にツェズゲラが普通に認める実力と、呆れるばかりの熱意により見事グリードアイランド2の最初期メンバーとしてゲームに帰還した。

 そこからは家族との再会を果たし、実力がなかったからこそ培われた前バージョンの知識等を活かしスタートダッシュで攻略情報を多くゲットした。

 実力者のツェズゲラ達がキメラアントによりゲーム開始を遅らせたこともあり、今現在モタリケは最前線組から一歩後ろ辺りにいるアドバイザーとしての地位を確立している。

 

「ゲームクリア自体には興味ないしなぁ。よし、明日からハローワークに通おう」

 

 モタリケの聞いたNPCが進化したというアナウンスのとおり、前バージョンが嘘のようにリアリティを増した妻と子供。

 日に日に愛しさの増す二人に報いるため、地位や名声に一切頓着のないモタリケは誰よりも早く攻略戦線から身を引いた。

 

「そうと決まれば一応前の職が残ってないかの確認もしとこう。ついでにお土産におやつも買っていくか」

 

 そのオーラが徐々にグリードアイランドへと侵食していき、ゲームマスター達が異常に気付いた時には手遅れとなっていた突然変異の後天的天才。

 

「よし! これからも頑張るぞい!!」

 

 愛により発動した無意識下の発、“家族との絆(ネバーランド)”により半人半念の存在へと変化しながら、モタリケは今日も笑顔でグリードアイランドを闊歩する。

 

 

 

 

 

 海の見える丘に建つこぢんまりとした一軒家に続く道。

 一番近い商店までそこそこ歩くことになる海岸線を、一組の夫婦が手を繋ぎゆっくりと進んでいた。

 少し年上に見えるが精悍な顔と貫禄ある雰囲気を纏う夫と、穏やかながら芯を感じさせる野菊のような可愛らしい妻。

 

「今日も海風は穏やかで気持ちいいな。身体は冷えないかオボロ、私の上着を使うか?」

 

「身体を寄せれば温かいですよ。それでも最近は冷えてきましたね、今日はバッテラさんの好きなシチューにしましょうか」

 

「おお、それは楽しみだ」

 

 最近越してきた二人はそれぞれが町議や婦人達から気に入られることに成功しており、すでに近隣の住人から色々相談されるくらいには信頼を勝ち取っている。

 そんな誰もが羨むおしどり夫婦の片翼は、深く繋がるからこそその内心を看破していた。

 

「まだ迷ってるんですか? いい加減素直になればいいのに」

 

「なんのことかな? 私は今が人生で一番満たされているというのに」

 

 オボロからの指摘にバッテラは一切動揺せず応えるが、心の奥底では嘘を言っていないだけだと自覚していた。

 そこまで正しく把握しているオボロはしょうがない人と苦笑し、バッテラの胸の奥に潜む本音を口にする。

 

「ゴンくんに頼られて嬉しかったんでしょ? 力になりたいと思ってるんじゃないの?」

 

 最低限の私財以外を手放し一線から退いたバッテラは、その時間を全てオボロとの時間のためにだけ使っていた。

 側にいるのにもかかわらず触れ合えないという状況が続いた反動は大きく、普通なら重いと感じても何らおかしくはない依存具合といえる。

 

 それでも一向にかまわないとはいえ、もっとカッコいい夫も見たいというのがオボロの偽らざる本心だった。

 

「私も手伝うわ、大きな恩があるゴンくんの手伝いを私もしたいの。プライベートの時間は減っちゃうけど一緒に働けばそれもきっと楽しいわ」

 

 とてつもない資産家でそれにふさわしく気難しいバッテラを射止めたオボロ、彼女は有能なバッテラの目に留まるほど仕事のできる女性でもある。

 実際ゴンからバッテラに届いたスカウト内容にはオボロも含まれており、そこらの会社員がブチ切れするほどホワイトな条件の目白押しだった。

 

「どう? 今ならあなたの好きなタイトスカートに濃い目のストッキングの秘書がついてきますよ?」

 

「………ふん、仕事で色目など使うか。他の者の目もあるんだ、あまり気を抜きすぎるな」

 

「あら、じゃあパンツスーツにしましょうか」

 

「…………いや、派手すぎなければスカートでもいいんじゃないか?」

 

「ふふっ、地味目ですね、あなたのどストライクですけどちゃんと我慢できますか?」

 

「………………できる」

 

 オボロが妖しく笑いながら見上げているのを視界の隅に収めながら、バッテラは平静を装いゴンにスカウトを受けるメールを送信する。

 

「バッテラさんも若くなって魅力が増してるんですから、下手な雌猫には気をつけなきゃ駄目ですよ。もし何かあったらわかってますね?」

 

「もちろん。私はオボロ一筋だとも」

 

 惚れた弱みと失いかけた恐怖から一向に強く出られないバッテラだったが、なかなかどうして心身共に満たされながら今日も輝く日常を謳歌していた。

 

 

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