オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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小話7 その後の幻影旅団と流星街

 

 

「あなた達はやりすぎた。何も考えず報復するしか能のない無能に代わり、これからは蜘蛛が流星街を支配する」

 

 どんなものでも、それこそ兵器や人でさえ捨てられる世界のゴミ箱流星街。

 無法地帯ではあるが申し訳程度の法と常軌を逸した結束力を持つ街という名の国は、これまで長老達を中心に議会制度もどきによって運営されてきた。

 

「変わらんよ。流星街が廃棄場である限り、流星街は流星街としてしか存続できん」

 

 その最高権力者と呼べる長老達の一人が、己の発を盗賊の極意(スキルハンター)に再び譲り渡していた。

 

「我々としてはお前達が外で活動しようが中に戻ろうが関係なかったのだ。君臨してくれるというのなら喜んで座を明け渡そう」

 

「そのかわりわかっておるな? 我等の法は絶対、奪う者には報復を」

 

「やりすぎたと言ったが、だからこそお前達が流星街に戻れたのだ。それを忘れるな」

 

 普通じゃない国でトップに立てるのは普通じゃない者だけ、常識や感性が骨の髄から流星街に染まっている長老達は己の破滅に一切頓着しない。

 

「我々は何ものも拒まない、だから我々から何も奪うな」

 

「奪わせない、それだけは厳守しよう。それでは長老諸君、良い余生を」

 

 クロロは目的を達したと建物から出て、流星街特有の淀んだ空気の中待っていたメンバーを見渡す。

 褪せることのない敗北の屈辱とそれを上回る憤怒に縛られた蜘蛛は、いくつもの妥協と打算の末に手に入れた自由を握りしめた。

 

「これより流星街の全てを掌握する。お前達、頼んだぞ」

 

 囚われた蜘蛛が解き放たれた理由、それはゴンが会長になってからちょうど1年が経とうという時だった。

 

 

 

 

 

「はぁ? 流星街をどうにかしたいだ?」

 

「うん。ここ最近特に暴走が目立つからね」

 

 ハンター協会会長と会長代理による定期会議において、ゴンがジンに対していつもの無茶振りをかましていた。

 

「別に流星街をなくしたいとか、健全にしたいってことじゃないんだ。あそこの人達は基本的には外部に無関心でしょ? 悪い言い方だと隔離できないかなって」

 

「あぁ〜、割と有名な話なんだがな、あそこは主要国家も都合よく使ってんだ。持ってると色々とまずい、けど処分するにはもったいないって代物を青空倉庫に仕舞いましょうってな」

 

 本当にただのゴミ箱なら、余程の乞食でもなければわざわざ引っ掻き回すことなどしない。

 誰もが見たがらないゴミを隠れ蓑に貴重な品を紛れ込ませることができ、ついでにそこそこの腕のガードマンまでおまけで付いてくる。

 ゴミの中にお宝が埋まっているというリアル一攫千金のチャンスがある、それが裏世界や国の上層部が知る流星街の真の姿だった。

 

「だから末端のマフィアやチンピラは普通に潜るし、預けたと思ってるモノを回収したりするから問題が起きる。お前が産まれる遥か前から続くその業を、そう簡単に解決できると思うな」

 

 それは世界を見てきた、それこそ流星街すら踏破したジンだからこそ説得力のある言葉。

 流星街のありのままを見て壊すべきではない一つの生態系と判断し、そもそも手を入れられないと諦めた大人の選択。

 

「だからといって動いちゃいけない理由はないじゃん。案くらいは言わせてよ」

 

 そんなもん知ったこっちゃないと、絶賛(ゴンさん)へ邁進中のゴンは駄々をこねる。

 

「先ずはハンター協会は正式に流星街からモノを持ち出すことを禁止する。他所からの依頼は受けないし、違反したハンターは処罰を受けてもらう」

 

 元々ハンター協会は依頼を受けていたわけではないが、禁止すると正式に公表するだけで間違いなく内外に影響は出る。

 キメラアントの一件からハンター協会の影響力が大きくなっていることも考えれば、依頼を出す側である主要国家に対してそこそこの牽制くらいにはなる。

 

「そして流星街のトップ、そこに協力者を捩じ込む」

 

「…その口ぶりだとあてがあんのか、ていうか幻影旅団だな?」

 

「うん。クラピカのかけた制約と誓約を変更して流星街に解放、そのまま統治してもらう」

 

 十二支んの子に就任したクラピカの発である絆の鎖(リンクチェーン)は、その有用性から様々な案件に引っ張りだこでレオリオとは比べ物にならないレベルで稼いでいる。

 ジンも会長代理として何度も頼ったことがあり、その能力に対する信頼も高かった。

 

「幻影旅団が頷くか? あとクラピカも説得できんのか? そこら辺は言い出しっぺのお前の仕事だぞ」

 

 これはジンの嫌がらせでもなんでもなく、単純にどちらも自分には実現出来ないと判断したからこその丸投げである。

 名前を知ってるだけで拳を交えたこともない幻影旅団を説得できるとは思えず、いまだに自分への評価がマイナス値のクラピカを説得など夢のまた夢としかいえない。

 どうなんだと睨みつけたゴンの顔は、満面の笑みでジンのことを見返していた。

 

「クラピカは一番最初に相談して納得してもらったし、色んな人と相談して新しい制約と誓約の案はもう決まってるよ」

 

 ゴンの取り出した紙には、幻影旅団に打ち込む裁定する者の鎖(ルーリングチェーン)の内容が記されていた。

 

 ①ハンター協会が定める流星街の境界線から外に出る事を禁止する。

 ②直接的でも間接的でも外に害を及ぼす行為を禁止するが、要相談の上で正当と判断されれば報復を認める。

 ③外部から流星街への侵入者は発見次第処分を認めるが、侵入に対する報復は要相談。

 ④上記の制約を守る限り念の使用は制限されず、破った場合はすでにかけられている誓約が履行される。

 ⑤定期的にゴンと愉快な仲間達の誰かが流星街を訪問し、雪辱を果たすチャンスを与える。

 

「……これで頷くか?」

 

「殴ってでも頷かせる」

 

「ん〜、まぁこんだけ縛ればぱっと見問題ねえか。次の会議でもんどくわ」

 

「よろしく」

 

 そして会議の結果、現状の流星街から悪化する可能性よりゴンさんに処される可能性の方が高いという理由から可決され、無理やり血判を押印させられた幻影旅団は晴れて限定的自由の身となったのだった。

 

 

 

 

 

 流星街のトップとなったクロロは精力的に働き続け、一つの区切りがついた事を秘書のパクノダからの報告で実感した。

 

「よし、とりあえず各地区は制圧し終わったか」

 

「滞りなくね。むしろ大半が協力的でウボォーなんかは退屈だったらしいわ」

 

 クロロが流星街の統治で真っ先に行ったこと、それは流星街をいくつものブロックに分けて管理者を置くことだった。

 今まで縄張りや顔役といった存在がいなかったわけではないが、それをより明確にしてブロックごとに異なる役割を与えることにしたのだ。

 

「1から3ブロックにゴミをそれぞれ分別して集積、0ブロックで再利用できるように加工する。そしてゴミがよく捨てられるエリアを5から12ブロックに振り分けて各々管理させる。4ブロックはなくていいのよね?」

 

「あぁ、4の数字はできる限り見たくないからな」

 

「同感。それにしても羽根を伸ばすっていうのはこういう事を言うのね、ウボォーじゃないけど思いっきり暴れたい気分だわ」

 

「同感だ」

 

 一流の念能力者から念を取り上げること、それは一般人にとって四肢をもがれたも同然で肉体的にも精神的にも多大なストレスがかかる。

 およそ2年ぶりに限定的とはいえ自由になった幻影旅団は、そのうっぷんを晴らすべく誰もががむしゃらに行動していた。

 

「ここまできたら後は急ぎの案件もない。他の奴等には仕事がなければ自由にしろと伝えてくれ」

 

「了解。全員鍛錬を始めるのかしらね?」

 

「あそこまで露骨に喧嘩を売られたんだ、シズクやコルトピですらキレてるだろうな」

 

 解放されすぐにでも暴れたかった幻影旅団だったが、速やかに流星街を掌握して外への被害をなくさなければそれぞれがルーリングチェーンによる被害を被る。

 その点をクロロがウボォーギン筆頭に頭わるい勢にも懇切丁寧に説明し、そのかいあってペナルティ無しになんとか最初の山場を乗り切ることができた。

 

「パク、シャルにハンター協会へ連絡を入れさせろ。こっちは片付けた、最初のチャンスを貰うとな」

 

「オッケー。みんなにも伝えてくるわ」

 

 パクノダが退室し一人になったクロロは、捕まる前に比べて驚くほど薄っぺらくなってしまった盗賊の極意(スキルハンター)を具現化する。

 希少性の高かった能力も汎用性の高かった能力も等しく失われ、まだ数ページしかない本の最後のページ。

 流星街の蜘蛛の頭として、奪った相手に対してのみ報復として使用可能になる特別ページがある。

 

 そこには脳筋万歳(力こそパワー)が記されていた。

 

(今回は俺が使用する。何とか能力を移す発を手に入れてウボォーさんはもちろん他のメンバーでも試してみたい)

 

 クロロは今はまだ勝てる可能性は低いと考え、リハビリ期間と言えるこのタイミングでゴン達とやり合い無理矢理勘を取り戻すつもりだった。

 

(蜘蛛が弱くなったと思っているなら、その隙をついて喰らいついてやろう)

 

 確かに幻影旅団は念を使えずろくな修行も出来ていなかったが、それでそのまま弱くなったとは決して言えない。

 念とは心技体すべてが揃って真価を発揮する以上、囚われていた間続けた身体トレーニングや殴り合い、そしてその身を焦がし続けたゴン達への復讐心が無駄になることはない。

 

(流星街を統治させたいということは命まで取らないつもりなのだろうが、蜘蛛を、俺達を舐め過ぎだ)

 

 目には目を歯には歯を、奪われたのなら奪い返すのみ。

 

(クルタの生き残り、今度こそこの世からクルタを消滅させてやろう。ゾルディック、暗殺と戦闘は違うことをその身に刻んでやる)

 

 ただ蜘蛛は知らない、自分達を破った筋肉達がどんな事になっているのかを。

 

(もう医療系能力だからと惜しまん、確実に殺す。ウボォーさんに勝ったあいつも絡めに絡めて封殺する)

 

 総力戦を想定しているクロロはその卓越した頭脳で戦況を予測し、ゴン達の伸び幅を考えられる最悪のさらに一歩先に想定する。

 

(そしてヒソカ、奴だけは何としても始末する!)

 

 滾るオーラと身体、そして心を燃やす蜘蛛は今度こそ一心同体となって筋肉に挑む。

 意に反する脚も操られた脚もない万全の布陣、さらには挑戦者として欠片の驕りもない完璧なコンディション。

 

(覚悟しろ、最後に勝つのは俺達。蜘蛛だ!!)

 

 そして指定された日、散歩気分で現れた筋肉とピエロの二人に完膚なきまでにボコボコにされた蜘蛛は心折れかけ、それでも何とか持ち堪えて似合わない鍛錬の日々を開始した。

 

 

 

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