オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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第11話 ゴンVSヒソカのその裏で

 

 

 皆さんこんにちは、6点分のプレートを集めて消化試合に突入したゴン・フリークスです。

 

 

 

 ゴンがヒソカを痛めつけていたちょうどその時、受験番号384番ゲレタは広場の端からその惨劇を目撃していた。

 熟練の狩人であるゲレタは、自分のためにあるようなルールにターゲットが子供のゴンに決まった時点で4次試験のクリアを確信した。

 しかしいざ蓋を開けてみれば、ゴンは自分よりデカくなるわあの狂人ヒソカをマウントポジションでタコ殴りにしているわでどう考えても手に負える相手ではなかった。

 

(他の受験者から3枚集めることにしよう、それが一番堅実だ)

 

 ゴンは諦めて他に行こうと決めたゲレタだったが、それを実行に移すのに時間をかけすぎていた。

 今まで数多の獲物の背後を取ってきたゲレタが、およそ初めて明確に背後を取られた。首筋に当たる生暖かい吐息に獣臭さ、見ればゴンを挟んで対角線上にいたはずの異様な獣の姿がどこにも無い。

 

(バカな!あのサイズの獣が移動して気付かないだと!?だが所詮は畜生、背後を取った時点で仕掛けなかったことを後悔するがいい!)

 

「グルルル(こいつ何してんだ?と見てるだけ)」

 

「(おいおいおい死ぬわ私)…あの、これつまらないものですが」

 

「グル?」

 

 4次試験で不合格となった狩人ゲレタ。試験後の彼は自然や野生動物の保護活動をする団体に所属し、凄腕のアマチュアハンターとして活躍しながら講演やコメンテーターなどマルチな才能を開花させていく。

 そしてある日のインタビューでプロハンターを目指さないのかと質問されたゲレタが答えた『私ごときが通用する世界ではない』という言葉は、世間にハンターの過酷さをより一層浸透させた。

 

 

 

 ゼビル島でも特に深い森の中、キルアは一人これといった目的も無く歩き回っていた。

 自分をつけていた受験者から早くも198番のプレートを奪い幸先のいいスタートをきったはいいが、ターゲットの199番にまるで心当たりがなくどうしたものかと散歩しているのだ。

 

(思った以上に誰とも会わねえし、啖呵きっちゃったからせめて6点以上集めねえとカッコつかないよなぁ)

 

「いたよ兄ちゃん!あいつだ!」

 

 いっそ大声でも出して人を集めようかと考え始めた所で、キルアの周囲を3人の受験者が取り囲む。しかもその内の一人は先程キルアがプレートを奪った相手であり、呼びかけから残りは兄弟であろうことまでわかった。

 

「こんなガキにやられたのかよ、いい加減そのヘタレどうにかしろイモリ」

 

「まぁそう言うな、このフォーメーションを組んだ以上勝ちは揺るがないしよ」

 

「オレのプレート返してもらうぞ、3人に勝てるわけ無いだろ!」

 

 

 結果は言わずもがな、キルアは返り討ちにした3人からターゲットの199番も含めて4枚のプレートを手に入れた。

 

「…まだ見てる奴、この雑魚の中にターゲットがいたんならくれてやるから出てきなよ」

 

 キルアの呼びかけに暫く反応は無かったが、やがて離れた位置に忍び装束の青年が現れる。やや警戒していたものの、キルアに争う気がないのを見て自分も警戒を解く。

 

「よくオレの気配に気付いたな、目的はなんだ?」

 

「どこにいるかまではわからなかったけどね、目的はこれからあんたに付きまとわれたくないからだよ。6点以上集まったしこの後修行する予定なんだ」

 

 キルアの言葉に少し考える仕草をしたあと、納得したように一つ頷く。

 

「…そういうことならありがたく頂こう、ターゲットは197番だ」

 

 キルアから投げ渡されたプレートが間違いなく自分のターゲットだと確認すると懐にしまい、代わりに取り出した名刺をキルアへと投げる。

 

「オレの名はハンゾー、忍びとして受けた恩は返すから手が必要なら連絡をくれ」

 

 そのまま返事を待たずに姿を消すハンゾー、暫し動かなかったキルアだがゴン達と合流するために自分も移動を開始した。

 

 4次試験で不合格となったアモリイモリウモリの三兄弟。あまりにも惨めに敗北した彼らは次年の試験を断念し、地元の芸能事務所にトリオ芸人として所属する。

 優れた身体能力とキャラが立っていたこともあり、様々なバラエティで引っ張りダコとなったトリオ『アイウモリ三兄弟珍道中』は、モリ三中の愛称で親しまれ長い間お茶の間を楽しませ続けた。

 

 

 

 無事合流したレオリオとクラピカは、お互いのターゲットでわかっていることを確認し合いながらこれからのことについて相談していた。

 幸いクラピカのターゲットであるトンパはトリックタワー最後のクリア者だったこともあり、二人共しっかりと印象に残っている。問題はレオリオのターゲットであり、二人共心当たりがないため最悪3枚集めることを視野に入れていた。

 

「じゃあとりあえず16番のおっさんを重点的に探して、それ以外も狙えそうなら狙うってことでいいな」

 

「うむ、それしかなかろう。できることなら3日以内に終わらせたいところだが」

 

 方針も決まりいざ行動に移ろうとした二人だったが、突如近くの草むらから大型の獣が立ち上がる。

 思わず武器を構えるクラピカとレオリオだが、襲いかかってこない獣を観察していたレオリオが口を開く。

 

「なあクラピカ、こいつギンじゃね?」

 

「馬鹿なことを言ってないで構えろレオリオ!あの愛くるしいギンはこんなにデカくないだろう!」

 

 クラピカの言葉のほうがもっともなのだが、医者を目指し観察することを鍛えているレオリオにはギンと目の前の獣の共通点が数多く見えていた。

 

「お前ギンだよな?ほれ、前もやった非常食のナッツやるから座ってくれねえか」

 

「ぐまっ」

 

 レオリオの言葉に大人しく座り、口を大きく開けて待つギン。デカい分物足りなくて悪いなと謝りながら、一袋分のナッツを開いた口の中に放り込んでいる。ここまでくればクラピカも信じる他なく、成長ではありえない変化にしきりに首を傾げていた。

 

「間違いなく念能力だろうな。どう考えても賢すぎるしなんか変だとは思ってたんだよ」

 

 ギンの艷やかな毛を撫でながら語るレオリオに、ただ可愛いとしか考えていなかったクラピカは若干の悔しさをにじませる。しかしギンがこうしているということはゴンがヒソカに勝利したということであり、二人を手伝うために来てくれたのだと気を持ち直す。

 

「ギン、トリックタワーで最後に出てきた中年の男を覚えているか?可能ならその男の下に案内して欲しいのだが」

 

「ぐまっ」

 

 立ち上がり先導して歩き出したギンを慌てて追いながら、二人は今までとは似ても似つかない頼もしい後ろ姿に念の奥深さを実感していた。

 

 4次試験開始位置からほとんど離れていない岩の陰に、受験番号16番トンパが力なく座り込んでいる。こうなった原因はトリックタワーで彼が選んでしまったルート、逃走の道にあった。簡単に言えば、いくつもの妨害の中迫ってくる毒ガスから逃げるだけの試験である。

 いつものトンパであれば3次試験辺りで身の安全のために棄権するのだが、失格イコール死の道を選んでしまったためなし崩し的に4次試験にまで進んでしまったのだ。その代償は大きく、少なくとも2日は休まなければろくに動けないと自己分析している。

 

(オレもいよいよ年貢の納め時か?それとも奪いに来る奴次第でなんとか生き残れるか?)

 

 自分ではもうどうしようもない状況に諦観しながらも、少しでもいい結果になるように信じてもいない神へと祈る。

 祈りが通じたのかは定かではないが、このあと訪れたクラピカとレオリオにプレートを渡す対価として治療と栄養補給を施される。これによりトンパにも余裕ができ、試験には落ちたものの無事五体満足でハンター試験を終えることができたのだった。

 

 4次試験で不合格になった新人潰しのトンパ。最後の最後で今まで潰してきた新人に助けられた彼は、試験後今一度自らを鍛え直すことを決意し全盛期に近い体力を取り戻すことに成功する。そして体が動く限りハンター試験に参加し続け、新人を見つけるとその手助けをして実力以上の試験をクリアさせていった。

 そして土壇場で裏切り絶望に染まる表情を最も近くで見続けるのだった。

 

 

 


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