オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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第14話 ゴンの試験と百式観音

 

 

 皆さんこんにちは、全身骨折してる間に親友が実家入りしてしまい辛いゴン・フリークスです。

 ブラコンサイコパスマジブッコロ。

 

 

 

 4次試験終了から2日後、ネテロから最終試験の内容が決まったと報告を受けた試験官達が一堂に会している。

 渡された試験内容を覗き込む試験官達だったが、読み進めるうちに顔色が変わっていき最後は全員絶句する有様となった。

 

「会長!この試験本気なんですか!?」

 

「ちょっといくらなんでも不味くないですか?」

 

「今年の質の良さから、負け残りトーナメントはまだ理解できます。しかしルーキーなのはおろか12歳の子供に本気で百式観音を打つおつもりですかな?」

 

「大マジなんじゃが何か問題あるかの?そこにも書いとるが、百式観音の件はワシの判断以上に405番たっての願いじゃからな」

 

 メンチ、ブハラ、サトツの3人は負け残りトーナメントでも困惑したが、それ以上に405番のみ別の試験内容それもネテロの代名詞百式観音を受けることに猛反発した。

 しかし当のネテロは非難もどこ吹く風で、飄々とした態度を崩さないばかりかゴンの願いだと責任転嫁とも取れる言葉まで口にする。

 

「仮に405番の願いだとしても、他の受験者と露骨に差別するのは如何なものかと。ここまでする明確な理由がなければ納得できかねます」

 

 もっともな意見にネテロ以外の者はサトツに同調するが、ネテロも引く気がないのか試験内容の理由を告げる。

 

「まず大前提として結果が決まっとる試験はナンセンスじゃ、どの受験者にも必ずチャンスとリスクがあって然るべき。負け残りトーナメントはその点を考慮した結果であり諸君も納得できるじゃろ?」

 

 受験者にある実力の隔たりを考慮した負け残りトーナメントは、確かに程度の差こそあれ全受験者にチャンスとリスクが混在しているのはサトツ達も認めるところであり異論は出ない。

 

「そこで405番の話になるのじゃが、あやつが不合格になる結果を予想できる者はおるかの?提案したワシが言うのも何じゃが、正直必ず合格するとしか思えん。それこそ公平性を欠くと考えたわけじゃ」

 

 続く説明もこれまでのゴンの実力と人望を見てきた試験官達には容易に想像できることであり、優遇していると言われればこれもまた否定出来ない。

 

「まあこの辺は言い出したらきりがないからの、当初は組み合わせの左端に入れるつもりじゃった。しかし最初に言ったように本人から希望があっての、それならと個別試験にしたわけじゃ」

 

「本当に本人からの要望だったのですか?念を使えるとはいえルーキーがどこで百式観音の情報を手に入れたのでしょう」

 

「405番に念を教えたのはカイトという幻獣ハンターだそうじゃ、知っている者もいるのではないか?」

 

「…なるほど、二ツ星(ダブル)ハンターであるジン殿のお弟子さんで本人も良い腕だと聞きます。彼ならジン殿から百式観音を聞いていても不思議ではありませんな、そうなるとやはり405番の彼はジン殿の」

 

「まず間違いなくジンの子じゃろうな。フリークスを名乗っとるしそもそも顔がクリソツじゃ」

 

 サトツとネテロの会話に紛れ込んだ内容に、メンチはまた違うことで驚かされる。

 

「ちょっとちょっと、ダブルの子供ってまじ?完璧サラブレッドじゃん。会ったことないから気付かなかったけど、道理で規格外なわけだわ」

 

「ま、人格的にはあまり似てないがの。そもそも物心ついてから交流も無かったそうじゃし」

 

「ただのクソ親じゃん」

 

 メンチのあまりにストレートな罵倒に周囲が苦笑いを浮かべる中、しばらく考え込んだサトツがゴンの試験に対しての妥協案を上げる。

 

「会長の考えはわかりました。ですがやはり405番の難易度が他の受験者に比べて高すぎます。生存のみを合格条件にするべきかと」

 

「そこいらが妥当か、他の者も異論は無いかの?」

 

 皆表情は硬いものの、反論できるだけの理由がないため渋々405番の別試験を認める。

 それを確認したネテロは大きく頷くと、秘書のビーンズに405番を連れてくるように指示を出す。

 

「今から試験を行う故、405番を呼んでくるのじゃ」

 

「今すぐ試験ですか!?」

 

「安心せい、面接の時に日時は伝えてある。試験場所は郊外の荒野、医療スタッフも既に待機しとるからさっさと行くぞい」

 

 結局すべてがネテロの掌の上だったことに憮然とする試験官達だが、試験が気になるのもまた事実のため何も言わずに部屋を出るネテロに付いていくのだった。

 

 

 

 都市の郊外にある赤茶けた荒野、周囲に草木すらないこの場所に複数の人影と小さなテントが存在していた。

 ゴンとネテロが向かい合う形で対峙し、離れたところには試験官達とハンター協会の医療スタッフが固唾をのんで見守っている。

 

「さて、問題なければさっそく始めるがどうじゃ?一応遺言も受け付けるぞい」

 

 人の悪い笑みを浮かべるネテロに対し、緊張と期待からやや顔を強張らせているゴン。

 迸るオーラは飛行船の時とは雲泥の差であり、ネテロはおろか試験官達にもその覚悟と決意がヒシヒシと伝わっていく。

 

「知っとると思うが、ワシの百式観音は不可避の速攻。お前さんの準備が完了した直後に叩き込むゆえ、全力で防御を固めよ」

 

「押忍!貯筋解約(筋肉こそパワー)追加出筋(さらなるパワー)限度筋いっぱい!!」

 

 ゴンの言葉とともにその体が急激に成長していき、ネテロも見たことのある飛行船での姿を超え更に一回りは筋肉に厚みが加わる。

 

「こい!!」

 

 そして裂帛の気合とともに試験官達ですら慄くオーラがゴンの身を覆い、

 

《百式観音 壱乃掌》

 

 荒野に観音様の掌が墜ちた。

 

 

 

 離れた位置にいたサトツ達でさえ、全力で凝をせねば見ることすら叶わない神速の一撃。

 もはや観音は姿形もないが、ゴンのいた位置に立ち込める粉塵が打ち込まれた一撃の凄まじさを確かに物語っている。

 たとえ身構えていたとしても耐えることは不可能、サトツ達の脳裏には無惨な姿に変わったゴンの姿がありありと浮かんでいた。

 治療に入るため駆け出そうとする医療スタッフを横目に、未だ残心を続けていたネテロが突如として身構えた。

 立ち込める粉塵を掻き分けるように、憤怒のオーラを身に纏う小さな鬼が大地を踏みしめ立ち上がる。

 

 

 残心を続けるネテロの胸中を困惑が支配していた。

 優に一世紀を武に捧げてきたネテロの人生は、すなわち数え切れないほど人を殴ってきた人生である。

 そのネテロをして、百式観音から伝わってきた手応えは異質であり未経験のものだった。

 初めに感じたのは乳飲み子の様な柔らかさ、筋骨隆々のゴンから感じるはずのないものだ。

 次に感じたのは羽毛の様な軽さ、体重が3桁に届きそうなゴンのサイズではありえない手応えのなさだ。

 そして最後地に叩きつけるその瞬間、鋼の硬さと鉛の重さが突如として発生した。

 ゴンがどうやってそれを成したのかはわからないが、何のために成したのかは身を以て理解する。

 

(衝撃の分散と防御、念の攻防力や身体能力とは別に純然たる技術によってそれを成したか!)

 

 ダメージを与えはしたが微々たるもの、試験は合格だが武人としての性がネテロに残心を解かせなかった。

 そして噴き上がる憤怒のオーラ。

 反射的に身構えながらもゴンの怒りが誰に向かっているのか、己も経験したことのあるネテロには痛いほど伝わっていた。

 それが許せないのは弱い自分、激怒するほどやり場のない不甲斐なさ。

 最強を目指す小さな鬼が、弱い自分を超えるために立ち上がる。

 

 

 ゴンは極限の集中の中、振り下ろされる百式観音を視界におさめていた。

 加速した意識が身体を置き去りにし指一本動かせぬ中、ゴンは能力を発動させる。

 

筋肉対話(マッスルコントロール)、気化する様な全身の脱力を)

 

 百式観音が触れる直前完璧な脱力により衝撃を分散、身を任せることによりダメージを最小限に抑える。

 

(マッスルコントロール、脱力からの力みで鋼のような全身の硬さを)

 

 大地と百式観音に挟まれる直前力みにより衝撃に耐え、身を守ることでダメージを最小限に抑える。

 

(…はぁ?)

 

 ダメージを受けこそしたが微々たるもの、予想に反した結果に一瞬困惑するも頭をよぎった疑念に頭へ血が上る。

 

 手加減された。

 

 恐らくネテロにその気は無かったことだろう、だが実際に百式観音を受けたゴンにはその一撃がひどく軽く感じた。

 

 百式観音の要とも言える感謝が無かった。

 

 期待してくれただろう、楽しんでくれただろう、だがゴンに会えたことに感謝を持ってはくれなかった。

 

 ゴンは激怒した。

 

武の到達点と言えるネテロに、中身の無い一撃を打たせてしまった自分自身に激怒した。

 

(ふざけるな、百式観音がこんなもののはずない。この程度に抑えられるほどオレが強いわけない!)

 

 筋肉こそパワーが切れたことで子供の姿に戻りながら、ネテロが無意識に手加減するほど弱い自分に絶望するほどの怒りが湧き上がる。

 

(調子に乗るなよゴン・フリークス! お前が見てる最強(ゴンさん)は、こんな温さで辿り着ける頂か!?)

 

 溢れ出たオーラが憤怒に染まり、こちらを見るネテロに血の滲むような叫びをぶつける。

 

「オレは!ネテロ会長を本気にさせるほど強くありません!けど、今できるありったけをぶつけさせてください!」

 

 憤怒のオーラが渦を巻いてゴンの髪を揺らし、あたかも一対の角がある様に捻じれる。

 

「もう一度、百式観音を!!」

 

 修羅道を征く小さな鬼が、今一度観音様へと立ち向かう。

 

 

 

 ゴンの怒りに誰一人動けぬ中、ネテロは菩薩の様な優しい眼差しをゴンに向けていた。

 武に携わる者なら必ず通る、自分の弱さを許せぬ怒り。

 本来負の面が強い感情で、これほど真っ直ぐで鮮烈な輝きを発するゴンへ何度目かもわからぬ驚きを感じていた。

 

「すまんかったのう、無意識に手を抜くとはワシも耄碌したもんじゃ」

 

「悪いのは、出せるはずの全力を出し惜しんだオレです。こっちこそすいませんでした」

 

 ネテロは自分の十分の一も生きていない相手へ躊躇無く頭を下げ謝罪し、ゴンもまた悪いのは自分だと頭を下げる。

 頭を上げた二人が再び視線を合わせた時、ネテロから先とはまるで異なる刺すようなオーラが噴出する。

 ゴンの燃え盛るようなオーラとネテロの針のように鋭いオーラが鬩ぎ合い空間を歪め、ついに臨界点を突破する。

 

「これがオレの全力全壊!借筋地獄(ありったけのパワー)!!」

 

 まだまだ未熟な小さな鬼は、未熟なれども閻魔へと至る。

 

「お前が生まれてくれたこと、お前を育ててくれた全てに感謝するぜ《百式観音 参乃掌》」

 

 感謝を捧げる観音は、まるでハグするように両の掌を振り抜いた。

 

 

 

 先程の一撃が児戯にすら思える衝撃が荒野を駆け抜ける。

 もはや息をすることも忘れたように動けぬ試験官と医療スタッフに対し、残心を解いたネテロは子供の姿に戻ったゴンに歩み寄る。

 ゴンの左腕はひしゃげ全身余すことなく打撲と擦過傷に苛まれているが、大地を踏みしめる足は揺るぎ無く輝く笑顔でネテロを迎えた。

 

「やっぱり百式観音はすごいや!いつかぶん殴るから待っててね!!」

 

「ホッホッホ、老人をあまり待たすでないぞ」

 

 意識を失い倒れ込むゴンを受け止めながら、ハンター協会会長として試験の沙汰を言い渡す。

 

「受験番号405番ゴン・フリークス、287期ハンター試験はなまる合格じゃ」

 

 




ゴンに刃牙理論がインストールされました。


貯筋解約のバリエーション借筋地獄(ありったけのパワー)

全ての筋肉を犠牲にして“身体能力のみ“ゴンさんのレベルに引き上げる(同レベルとは言ってない)
解除後は反動で強制的に子供の姿に固定され、発動1秒毎に数日分の筋トレを捧げないと元の筋肉に戻れない。


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