オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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第15話 ハンター試験終了とピエロの依頼

 

 

皆さんこんにちは、全身のヒビや骨折を筋肉で固定中なゴン・フリークスです。

 さすがにギンには歩いてもらってます。

 

 

 

 ゴン以外のハンター試験合格者6名が集まる小さな講堂で、ネテロを相手にレオリオとクラピカがキルアの失格について抗議していた。

 ネテロを相手に抗議が難航する中、入口の扉を開いて左手を吊る包帯まみれのゴンが入室する。

 そのあまりにもボロボロな姿に周囲が黙り込むが、当の本人は気にせず真っ直ぐキルアの兄イルミの元へと歩み寄った。

 

「キルアに酷いこと言ったみたいだね、家族の事にあんまり口出ししたくないけどやめたほうがいいよ。それにオレを殺すんだって?冗談にしても笑えないね」

 

 すぐ横で話しかけるゴンに対し、イルミは興味が無いのか一切視線を向けないどころか全く反応すらせずゴンを居ないものとして扱う。

 

「そっちがその気ならしょうがないね」

 

 イルミの態度を見たゴンはまだ怪我の軽い右手にオーラを集めると、座って無視を決め込むイルミにそのまま叩きつける。

 さすがに腕を差し込み防御するイルミが、そこでようやく不快そうにゴンへ視線を向けた。

 

「なに、喧嘩売ってるの?見逃してあげようと思ったけどやっぱり死んどく?」

 

「先に売られたのはこっちだよ、オレの大事な親友に変なこと吹き込んで」

 

 イルミがドス黒いオーラを纏って立ち上がれば、ゴンもまた鮮烈なオーラでもって応える。

 

「キルアが誰と仲良くなろうが、どんな生き方をしようがあんたに口出しする権利なんてない。オレたちに構うな」

 

「家族のことに口出しして何が悪いの?そっちこそ家の問題に関わるなよ」

 

 一触触発の空気の中ついにイルミから殺気が漏れ始め、それに反応したレオリオとクラピカが負傷中のゴンを援護するようにイルミに対し獲物を向ける。

 拙いながらも纏を行い構える二人には目もくれず、ゴンに対し手を出そうとしたイルミだったがゴンの発した言葉に思わず動きを止めた。

 

「やるって言うなら相手になるよ、ヒソカがね」

 

 成り行きを見守っていたヒソカはイルミからの警戒に苦笑いし、突然指名してきたゴンに対して苦言を呈す。

 

「言ってなかったけどイルミとはそこそこ長い付き合いでね♦ビジネスパートナーとしても得難い「一個言うこと聞いてあげる」…ゴメンねイルミ、君はいい友人だったよ♥」

 

「…面白くないけどキルが強くなること自体は悪くないしね、しばらくは様子見してあげる」

 

 ヒソカの手のひら返しにすぐさま殺気とオーラを収めたイルミは、軽く両手を上げることでゴンに降参の意を伝える。

 

「キルアを弱くしてるくせによく言う、すぐにあんたより強くなるから楽しみにしてるといいよ」

 

 引いたイルミにゴンもまたオーラを収め、肩透かしを食らうヒソカと庇ってくれたレオリオとクラピカへ感謝を告げる。

 

「ホッホ、話はまとまったかの。全員揃ったとこでもっかい説明するが、今回の結果が覆ることは一切ない。不満のあるものがいようが関係なしじゃ。これからはハンターとして自由に活動するように」

 

 そこでネテロは合格者7名を見渡し、その顔ぶれに満足したように頷くとヒゲを撫でながら言葉を続ける。

 

「今年のハンター試験は稀に見る豊作の年であった、しかしハンターになるのはゴールではなくスタートじゃ。停滞するものは容赦なく消え、先に進むもののみが生き残る。ゆめゆめ研鑽を怠ることなく精進せよ」

 

 最後に高らかに笑うと、残りの細かい説明をビーンズに任せ出口へ向かう。

 退室して扉が閉まる寸前に後ろへ視線を送ると、不敵な笑みを浮かべるゴンと視線がぶつかった。

 

(最近サボり気味じゃったし、ワシも鍛え直すかのぅ)

 

 背後から凄まじい勢いで迫る足音の幻聴を聞きながら、やすやすと超えられてなるものかと気を引き締めるネテロ。

 その表情は経験と自信に裏打ちされた、どこまでもふてぶてしい凄みのある笑みだった。

 

 

 

 

 ハンターとしての細かい説明も終わり、念願のハンターライセンスを受け取った合格者たちは各々が次の目的に向かって動き出していた。

 そしてまずはキルアを迎えに行こうと決めたゴン、レオリオ、クラピカ三人の元にスキンヘッドと大きな帽子をかぶった二人がやってくる。

 

「よう、お前らあのキルアってやつのとこに行くんだろ?任務がなければ同行したかったんだが、改めてオレからよろしく言ってたと伝えてくれねえか」

 

「オレはポックル、あんたらはまともそうだから同期として仲良くしたい。よろしく頼む」

 

 そう言って名乗ったハンゾーとポックルとはそれぞれホームコードを交換しあい、少し雑談した後お互いの無事を祈って解散する。

 特にポックルにはゴンが幻獣ハンターの先輩としてカイトを紹介し、自分の名前を出して鍛えてもらうよう強く言い含めていた。

 

「失礼、少々お時間頂いてもよろしいですかな?」

 

 続いてゴン達に声をかけたのは1次試験試験官だったサトツ。

 サトツは改めてゴンとジンの関係について確認するといくつかジンについて知っている情報を話し、尊敬するハンターなので殴る時は死なない程度に頼みますと冗談かわかりにくい頼みをしていた。

 

「皆さんは間違いなくこれから大きく伸びるでしょう、私も今回の試験では非常に考えさせられました。会長もおっしゃった通り、お互い日々研鑽に努めましょう」

 

 最後に三人と握手をすませると、1次試験から変わらない姿勢の良さに僅かな覇気を滲ませながら去っていった。

 

 

 

 

 

「じゃあ改めてキルアを迎えに行くわけだけど、二人は本当についてきてくれるの?」

 

 長いようで短かったハンター試験を終え、会場を後にしたゴン達は近くの喫茶店で小休止しながらこれからについて話し合っていた。

 内容はもちろんキルアのことであり、暗殺者達の根城に行く以上少なくない危険が予想されるためゴンからの最終確認が行われていた。

 

「当たり前だろうが。キルアはガキだが友達(ダチ)だ、あんな辛そうな面したキルアをほっぽってたらオレは自分が許せなくなんよ」

 

「私達はまだ出会って10日程度しか経ってないが、差し出がましくも皆を生涯の友だと思っている。いずれ別々の道になろうと、できればもうしばらくは共にいさせてくれ」

 

 ゴンの忠告に二人は一切怯むことなく同行の意思を見せ、出会った頃に比べ明らかに輝きを増したオーラを見せる。

 

「うん!オレもみんな大好き!しっかり修行もしてキルアのこと驚かせちゃお」

 

 二人の決意と成長に満面の笑みを浮かべるゴンと、あまりに真っ直ぐな言葉に思わず照れるレオリオとクラピカ。

 しばしおかしな空気が流れ飲み物を飲んでいたところ、喫茶店のベルが新たな来客を知らせる。

 

「ゴメン、待たせちゃったかな♥」

 

 空いているゴンの隣に座ったヒソカは、用事があると今まで別行動をとっていたがゴン達に頼みたいことがあるからとこの喫茶店で待ち合わせをしていたのだ。

 

「早速だけど野暮用の内容と、君たちに依頼したいことの説明をしてもいいかな♦特にクラピカにとってはまたとないチャンスだと思うよ♣」

 

「おいおい、クラピカが関わるってことはまさか」

 

 負け残りトーナメントの会話から話の内容に心当たりがあったクラピカは顔をしかめ、レオリオも察したのか剣呑な雰囲気を醸し出す。

 

「そう、幻影旅団が次に狙うお宝が決まったのさ♠9月1日にヨークシンシティのオークションをターゲットにするって♥」

 

 早くも復讐相手の情報を手に入れたクラピカのオーラが怒りに染まり、それを横目に見たレオリオがヒソカに質問する。

 

「ヒソカがなんでその情報を持ってんのかはさておき、オレらへの依頼っつーのはなんだ?」

 

「実はボク結構前から旅団の団長を狙っててね、そろそろ狩りたいんだけどガードが硬いんだ♦だから君たちには邪魔が入らないように他の団員の露払いをしてほしい♣」

 

「ほー、ゴンはともかくまだ念初心者のオレたちにどうにかなる相手じゃねえと思うんだがな。そこんところゴンはどう思うよ?」

 

「正直一対一でやり合えるようになるには時間が足りないかな。けどこっちの人数が多ければどうにかなるくらいにはいけると思う」

 

 ゴンの予想に思っていたより分が悪くないと考えるレオリオに代わり、クラピカがヒソカへと殺気を向けながら問う。

 

「単刀直入に聞くが、ヒソカは蜘蛛の一員か?」

 

 返答次第ではそのまま襲いかかりかねないクラピカに対し、ヒソカはオーラも乱さず余裕を持って答える。

 

「半分正解♦一応加入したことになってるけど、実は入れ墨も入れてないし裏切る気しかないからね♠だから旅団の情報に関しては信用してくれていいよ♥」

 

 クラピカはヒソカの返答に心を落ち着けるように一度深呼吸すると、ゴンとレオリオに向かい自分の意思を告げる。

 

「私はヒソカの依頼を受けようと思う。ただ私個人の怨みに皆を巻き込むわけには「おらっ」うぐっ」

 

 一人悲壮な決意を固めだしたクラピカの脳天にレオリオのゲンコツが炸裂し、思わず非難の目を向けるが思いのほか優しいレオリオの眼差しが返され言葉に詰まる。

 

「境遇考えたらお前がそうなるのも無理ねえけどよ、たった今生涯の友とか言ったばっかだろ?確かにゴン以外は頼りになんねえかもしれんが、それでも力になるのがダチってもんだろ」 

 

 乱雑にクラピカの頭を撫でながらゴンに向き直ると、真剣な表情を浮かべながら宣言する。

 

「大学行くのはしばらく延期だ、最低でも9月まではガッツリ鍛えてくれゴン」

 

「もちろん!メンチさんも言ってたけどハンターなら強さは最低条件、みんなが満足するまでできる限り鍛えるよ」

 

「ボクも君たちが強くなればメリットになるからね、依頼料とは別に手伝ってあげる♥」

 

 圧倒的強者二人からの言葉に感謝を告げるレオリオと、無言ながら深々と頭を下げるクラピカ。

 

「ちなみにヒソカさんよ、依頼料はいかほど頂けるんで?」

 

「んー、最低5億で後は出来高かな♦」

 

「命懸けでやらせていただきます先生!」

 

「ぼられてるよレオリオ」

 

「うそぉ!?」

 

「くふっ、アハハハ」

 

 それはクラピカにとって、およそ5年ぶりとなる心からの笑いであった。

 

 


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