オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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第16話 筋トレ(筋肉をトレーニングされる)

 

 

皆さんこんにちは、人間アブトロニックと化したゴン・フリークスです。

 ギンにとっては人間マッサージ機です。

 

 

 

 暗殺一家ゾルディック家が所有する死火山ククルーマウンテン。

 キルア奪還を掲げるゴン一行はその山を目指すべく、ハンター試験が終了したその日のうちにパドキア共和国行きの飛行船に飛び乗った。

 それほど時間をかけずにパドキアへ到着する予定だが、幻影旅団との衝突が9月に決まった以上無駄にしていい時間は少しも無かった。

 

「ということで、クラピカとレオリオには最優先で手に入れてほしいものがあります。それは何でしょうか、はいレオリオ答えて」

 

「ん?そりゃあ念能力じゃねえのか?相手は全員能力者なんだから手に入れなきゃ始まんねえだろ」

 

 飛行船内の個室で集まって纏の鍛練をしていると、突然ゴンから質問されるがレオリオはある程度自信を持って念能力だと答える。

 

「ハズレです。確かに念能力は必要だけどそれ以上に優先するものがあります。はいクラピカ答えて」

 

「ふむ、念能力でないとなると、…なるほど、蜘蛛たちの情報だな?情報を制する者は勝負を制すと聞いたことがある。こちらには裏切り者がいるから情報戦で有利に立てる!」

 

 クラピカも同じく質問されると、レオリオの結果も踏まえてこれだと自信をもって答える。

 

「レオリオよりひどいハズレです。そんなもの8月31日に一夜漬けでいいよ」

 

「レオリオ以下・・・だと」

 

「おいコラどういう意味だ」

 

 二人の解答がお気に召さないゴンは大きくため息を吐くと、この場にいる中で最強のヒソカに期待を込めて視線を送る。

 

「んー、ボクから見たらとりあえず身体能力♠ゴン好みに言えば筋肉が足りないかな♥」

 

「大正解!二人にはまず最低限の筋肉を付けてもらいます」

 

 高らかに宣言するゴンに対し、レオリオとクラピカはやや不可解そうな表情を見せ更に説明を求める。

 

「例えるなら二人は、ボクシングチャンピオンに挑もうとしてる素人のヒョロガリです。短い期間でワンチャン狙うなら、技術より先に身体を鍛えましょうってことだよ」

 

 その説明にクラピカは納得の表情を浮かべるも、レオリオはやや憮然とした態度を崩さない。

 

「オレはこれでもそこそこに鍛えてるんだけどよ、それでも最優先は筋トレか?ゴンの身体能力も念がかなり影響してんだろ?」

 

 そんなレオリオの疑問に対し、ゴンは傍らにいたギンを片手で持ち上げレオリオに差し出す。

 

「見ての通りオレ怪我してて万全じゃないんだけどさ、レオリオはギンのこと持てる?」

 

 特に違和感なく片手でギンを持つゴンに、レオリオはバカにするなとギンを受け取ろうとするがまるで支えることも出来ずに取り落とす。

 

「なんじゃあこりゃあ!?ありえんほど重いぞオイ!」

 

「ギンは能力でちっちゃくなってるだけで、重さは試験の時と同じだからね。少なくてもギンを持てるくらいじゃないと幻影旅団とは勝負にならないよ」

 

 レオリオが改めて両手で持とうとするも、びくともしないギンを見てクラピカも目を見開きながらたずねる。

 

「ギンは何キロくらいあるんだ?」

 

「測ったことないけど多分500キロ近いんじゃないかな?」

 

 想定外の重さに二人が絶句する中、ゴンは殊更真剣な顔で告げる。

 

「もちろん一概に言えることじゃないけど、これが念能力者の世界なんだ。まぁオレが他の人よりフィジカル優先なのは否定できないけどね」

 

 再びゴンが片手でギンを持ち上げヒソカに放ると、ヒソカもまた特に苦もなく片手でキャッチする。

 

「飛行船じゃ普通の筋トレは難しいけど、オレの念能力で一気に鍛えちゃおうと思うんだ。試験の時はまだ教えないって言ったけど、時間を無駄にするほうが勿体ないしね」

 

 クラピカとレオリオにベッドで横になる様に言うと、二人の体に触れながら能力を発動させる。

 

「能力名は筋肉対話(マッスルコントロール)、多分気絶すると思うけどがんばってね」

 

「え、そんなにつらアガッ!?」

 

「グワー!?」

 

 突然二人の体が高速で痙攣したのち、短い悲鳴を上げて気を失う。

 引き続き二人の筋肉を能力でマッサージするゴンに、ギンに引っ掻かれて顔から血が流れるヒソカが疑問を口にする。

 

「その能力って他人にも効果あったんだね♣放出も捨てたって言ってたから自分にしか使えないと思ってたよ♦」

 

「触れてないと発動は無理だし、素人にしか効果ない出力しか出せないよ。ヒソカどころかキルアに対してもマッサージくらいが限界だね」

 

 一瞬で酷使しすぎた筋肉をほぐし終わり、ギンに圧縮してもらっていた超高タンパク質を無理矢理飲ませる。

 ヒソカに投げた事を抗議するギンをあやしながら、ゴンは自分自身も筋肉対話で全身余すことなく筋トレを続けた。

 

「その使い方を見ると結構便利な能力だね♦身体能力がずいぶん高いと思ってたけど納得だ♠」

 

 常人では不可能な、全身の筋肉を一度に収縮させることで実現する全身負荷トレーニング。

 さらには部位鍛錬も可能な上に、左右のバランスも均一に鍛えることも出来る。

 ヒソカは初め戦闘用の能力だと考えていたが、この様子を見ると鍛錬用に作った能力ではないかとすら思えた。

 

「実際作ってみたら思った以上に色々できたってのはあるね。我ながらいい能力だよ」

 

「そのうちボクにもマッサージしてね♥それよりそろそろ纏以外の四大行に挑戦させても良いんじゃないかな♦」

 

「ヒソカもそう思う?二人共伸びが良いから色々前倒しにできそう」

 

 その後もこれからの修行プランの相談など、ゴンとヒソカの夜はまだまだ長く続いていった。

 

 

 

 

 

「コフー、コフー、オイ纏使うのやめろ!全然ダメージ通らねえし拷問になんねぇよ!!」

 

 ゾルディック家にある薄暗い石造りの拷問部屋、天井から鎖で吊るされたキルアは纏を維持しながら深い眠りに落ちていた。

 

「コラ起きろ!何だお前反省してんのかしてねえのかどっちなんだよ!」

 

 ゾルディック家次男のミルキは、太った体を弛ませながら必死にキルアを鞭打つも薄っすらと赤くなる程度のダメージしか残せない。

 そして変わらず熟睡し続けるキルアにさらにヒートアップして鞭を振り回し、最後は電流のスイッチも入れるがこれでもキルアは一向に起きない。

 

「チクショー誰だよキルに念教えやがったのはよー、これ以上は親父とかに叱られるしよー、オレは腹刺された被害者だぞ」

 

 厚い脂肪に守られて早々に完治した腹を撫でながら、ミルキは本日2回目の夜食を食べるために執事が待機する部屋へと足を進めるのだった。

 

 


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