前書きから失礼します作者です。
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皆さんこんにちは、試しの門からお送りしておりますゴン・フリークスです。
ギンがミケに興味津々です。
ゴン一行は観光バスツアーでゾルディック家が所有するククルーマウンテンに到着した。
原作のようにゴロツキによる試しの門チュートリアルを済ませた後、門番ゼブロに頼んでゾルディック家の執事に電話を繋いでもらう。
「こんにちは!キルア君は居ますか?友達のゴン達が来たって伝えてほしいんですが」
『帰れ』
ゴンがキルアに会いたいと電話をかけすぐさま切られるのを都合3回繰り返した段階で、ゴンは執事にしばらく滞在する旨を伝える。
これについては執事も特に何か言うこともなく、晴れてゴン一行は試しの門番達の社員宅にお邪魔することとなった。
怪我の完治したゴンが試しの門を4つ目まで開け、圧縮を解いたギンがミケにちょっかいを出すなどそこそこに波乱はあった。
しかしクラピカとレオリオは一切ツッコミを入れることもなく、死んだ目をしながらのそのそと森の中に建つ門番宅へと入っていく。
門番の鍛錬のためあらゆる物がバーベル並みに重い家なのだが、二人は多少力みながらも100キロ以上ある扉や10キロ以上あるスリッパなどに平然と対応していた。
「こりゃ驚いた、キルア様のお友達だけあって随分鍛えられてますね。これは試しの門を開けるのも時間の問題でしょう」
「開けられるようになってもビザが切れる一ヶ月はお世話にならせてください。ここまでの設備があるのは貴重なので」
その後滞在する間できる手伝いなどをゼブロから聞き、足りなそうな分はヒソカが現金で払う旨を決めて就寝することにする。
寝床に向かうレオリオとクラピカが、僅かに震えている事を疑問に思いながらもゼブロも自室へと戻る。
ゼブロが眠りにつく前、ゴン達の部屋から短い悲鳴が聞こえた気がしたが特に気にすることなく目を閉じた。
ゴン達がゾルディック家に到着してから二週間が経過した頃、レオリオとクラピカ共に試しの門を2つ目まで開けることに成功した。
それに伴いゴンの筋肉対話から卒業し、これからは普通に鍛えることを宣告されると二人で抱き合い静かに涙を流して喜んだ。
同時進行の念の修行も順調に進んでおり、レオリオがやや絶で苦戦したものの形だけは二人共に四大行を修得することが出来た。
そしていよいよ発に向けて、念の系統を調べる段階へと進む。
「ざっくり説明すると念は6つの系統に分かれてて、得意なこと苦手なことがある程度決まってるんだ。能力を決めるためにも重要な要素だけど、変更は利かないから望んだ系統になるように祈って」
ついに念願の能力を作れると、テンションの上がるレオリオにクラピカ。
簡単に6系統と水見式の説明を終わらせ、先ずはレオリオから水見式を行う。
「お、なんか薄っすら色変わったぞ!つまり放出系ってやつだな。正直具現化系で色々と医療器具作りたかったんだが、まぁなんとかなんだろ!」
レオリオの言葉通り、グラスの中の水が薄っすらと黄色に色づく。
望んだ系統でなかったことにやや無念さを滲ませるが、持ち前の楽天さからすぐさま気持ちを入れ替える。
そんなレオリオに続きクラピカも水見式を行えば、グラスの中になにかチリのようなものが少量ながら出現する。
「つまり私が具現化系か、復讐のことを考えれば強化系が望ましかったが、変更が利かないのならばこの手札で戦うしかあるまい」
クラピカもまた望んだ系統ではなかったが、ゴンから再三念の自由度を聞かされていたためこちらもそれほど気にすることはなかった。
「二人の系統が判明したから、今後はこの水見式の変化が強く出るように練の修行をしてね。クラピカはそれに加えて具現化したい物がないか考えはじめるといいよ」
二人の系統が判明しそれぞれが発について考える中、ゴンは少し悩んでクラピカにトリックタワーであったことを伝える。
「あのねクラピカ、トリックタワーで緋の眼になったことがあったでしょ?実はその時クラピカのオーラが膨れ上がってたんだ。もしかすると緋の眼の時は系統が変わるかもしれない」
その言葉にクラピカとレオリオは驚きを浮かべ、ヒソカもその時を思い出したのか小さく笑う。
「本当かゴン!?なら少し待っていてくれ、この森の中なら蜘蛛の一匹くらいすぐに見つかるはずだ」
「ストップ♥こっちの方が刺激的でしょ♠」
急いで緋の眼のトリガーになる蜘蛛を探しに行こうとするクラピカに対し、ヒソカは唐突に上半身の服を脱ぎその背中をさらけ出す。
「っ!?ヒソカ!その入れ墨は!?」
ヒソカの背中一面に描かれた12本足の蜘蛛、数字の4は幻影旅団No.4の証だが次の瞬間には跡形もなくかき消える。
「種も仕掛けもございますってね♥ほら、今の内に水見式しちゃいなよ♣」
なんとも言えない表情になるクラピカだったが、蜘蛛の入れ墨を見たことで緋の眼の状態になり水見式を行う。
「うおっ!?なんじゃこりゃ!」
「へぇー、これは興味深い♥」
水見式の結果は劇的だった、グラスから赤く色づいた水が溢れ葉は風もなく揺れチリが出現する。
ゴンが指先に付けた水を舐めれば、ほのかな辛味を感じることで特質系以外全ての反応が発現したと確認できた。
「つまり私は緋の眼の時は特質系となり、全系統を100%修得できるということか。これならばあの蜘蛛どもに、必ずや報いを受けさせることが出来る!」
「…クラピカ、その状態が前提の能力を作るのは構わないけど、戦闘用の能力は禁止するよ。特に幻影旅団限定の能力は絶対に駄目」
水見式の結果に歪んだ笑みを浮かべるクラピカだったが、顔をしかめるゴンからの忠告にその笑みが崩れ、怒りと悲しみが混ざる複雑な表情となる。
「何故だゴン!私の悲願を知っていて、応援してくれるのではないのか!?この力、
クラピカは悲痛な表情でゴンの胸元に掴みかかるが、途中で力が抜けたように膝を折るとまるで縋るように見上げる形となった。
「私に復讐を諦めろと言うのか?答えてくれゴン!」
涙を滲ませ血を吐くように叫ぶクラピカを、ゴンはただただ悲しそうに見つめ返す。
「私は、復讐のためだけに生きてきたのだ!!」
『…ってことがあってさ、オレも譲りたくないんだけど、クラピカの気持ちを考えるとどうしてもへこんじゃうよ』
「あー、まぁクラピカからしたらそう感じるよな。けど相変わらず幻影旅団のことになると短気だなぁ」
キルアは相変わらず拷問部屋に吊るされたまま、執事のゴトーに受話器を持ってもらいゴンと通話をしていた。
このやり取りはゴン達がゾルディック家にやって来て2日目から毎日行われており、念の四大行においてもクラピカやレオリオと大差なく修得している。
「兄貴に付き合うのも飽きたし、オレもそろそろそっちに合流しようかな。そうすりゃ組み手とかも目新しくなってクラピカも気が紛れるんじゃね?」
『キルアが来るのは皆待ってる。どんな理由でもいいから早く一緒に修行しよ!』
そこからしばらく他愛のない会話を続けるキルアの横で、視界に入らないように気を付けながら静かに微笑むゴトー。
初めは評判のよくなかったこの通話補助も、日に日に明るさを増すキルアを見れるからか希望者が後を絶たない。
「キルア様、あと1分でミルキ様が戻られますので本日はそろそろ」
「えー、もうそんなかよ。やっぱ兄貴に付き合うのは今日までだな」
『じゃあ明日、皆で待ってるから早めに来てね』
「オッケー。けどよ、今日の明日でクラピカ大丈夫か?今どっかに行ってんだろ」
『大丈夫!今はレオリオが一緒にいるはずだから、すぐに二人共戻って来るよ』
改めてクラピカの心配をするキルアの脳裏に、受話器の向こうで笑うゴンの姿が見えた。
標高3700メートルを超えるククルーマウンテンからの景色は、周囲に遮るものがないため広く遠くまで見渡すことが出来る。
試しの門の上に腰掛けたクラピカは、地平線に沈もうとしている夕日を一人静かに眺めていた。
その胸中には修行の時に取り乱したことへの恥ずかしさと、ゴンに対する申し訳無さが渦巻いている。
そして何度目かもわからない溜め息を吐くと、少し前から必死に試しの門を登っていたレオリオがやっとのことで顔を出した。
「だあー!なんつーとこにいんだよオメーは!探しに来るオレのことも考えろよな」
激しく呼吸を繰り返すレオリオの頭には小さくなったギンが乗っており、下ろせばもっと簡単に登れたのではと呆れるクラピカが声をかける。
「別に探しに来てくれと頼んだ覚えもない、揺れるだろうこっちにおいでギン」
「ったく素直じゃないことで。ほぉ~、こりゃ絶景だな」
膝に乗ってきたギンを撫でるクラピカと並んで、一面茜色に染まる景色を眺めるレオリオ。
しばらく無言の時間が流れるが、口火を切ったのは意外にもクラピカだった。
「わかってはいるんだ、蜘蛛特化の能力ではいざという時対応が出来なくなることも、
静かに話すクラピカは普段の冷静さからゴンの懸念にしっかりと気付いており、頭を冷やした今は自分がどれだけ視野狭窄だったか客観的に見ることができていた。
「私が復讐出来る可能性を高めるために指導してくれているのも、レオリオやキルアが力を貸してくれるのも全部わかってはいるんだ」
撫でているギンにも隣に座るレオリオにも視線を向けず、かといって景色を見ているわけでもなく、クラピカには今は亡きクルタ族での日々が見えていた。
「ダメなんだ、抑えられないんだ。クルタの皆の最期が、
クラピカ本来の鳶色の瞳が夕日に照らされ、赤みを帯びたその瞳から涙が溢れるのをレオリオは幻視した。
「…試験の時も言ったが、オレはお前やキルアと違って大したことない人生送ってきたただの一般人だ」
再び沈黙が支配する中、レオリオもまた静かに言葉を紡ぐ。
「そんな一般人代表だったオレだけどよ、気付けばとんでもないとこまで来ちまったもんだぜ」
これまでのことを思い返したレオリオは、たまらず笑いとも苦笑いとも取れる表情を浮かべる。
何が言いたいのか察することのできないクラピカが顔を向けると、真面目な顔に戻ったレオリオと視線がぶつかる。
「一ヶ月前のオレじゃあ想像すら出来ねえよ、何だよ8トンの扉開けるとか数百キロ頭に乗せるとかよ。こんなとこまで来れたのは、間違いなくゴンとお前らのおかげさ」
そう言って体ごとクラピカに向き直ると、これ以上ないほどの自信を持って断言する。
「一ヶ月でここだ、あと半年もあったら何処までも行けるぜ!幻影旅団も何のその、オレ達4人にギンおまけにヒソカがいればできないことなんて何もねぇ!」
根拠も何もない話だが、少なくてもレオリオにとっては間違いのない事実である。
「焦るのはわかる、不安なのもわかる。だからよ、こんなとこで一人になるんだったらもっとオレ等にぶちまけろ、八つ当たりだろうとなんだろうと迷惑に思う奴なんかいねえ」
思わず視線をそらすクラピカの肩を叩き、ゴンやキルアも思っているだろう思いを伝える。
「オレ等は赤の他人だけどよ、お前にとってのとまり木くらいいくらでもなってやる。お前にいつか本当の家族ができても、オレ等は仲間で家族だと思ってるぜ」
「…私にはもう本当の家族も帰る場所もないのだぞ、お前達以外の家族など何処にいるというのだ」
顔が熱いのは夕日のせいにして、言外に他はいらないとまで言ったクラピカ。
しかしレオリオはそれに気付かず、今までの真剣さが嘘のようなゲスの顔を浮かべた。
「な~に言ってやがる、クルタ族の復興が目的って言ってたじゃねえか。つまり!お前実はハーレム目指してんだろ!?」
突然の豹変に何も返せないクラピカをよそに、レオリオはヒートアップし続ける。
「お前モテそうだからなぁ〜、いいなぁ〜オレもなぁ〜金髪ボインのチャンネーとよろしくしてぇなぁ〜」
「…」
「なあなあハーレム作るときはオレにもおこぼれくれよ、幻影旅団倒す手伝いの報酬によ〜いいだろ〜?」
「そんなものは知らん!今の私に復讐の先のことは考えられん!」
「ダメだ、考えろ」
「レオリオ!貴様巫山戯るのも大概に、」
さすがにレオリオを咎めようと再び顔を向ければ、先程のお巫山戯が嘘の様な真面目な表情に戻っている。
「医療に携わる者として言わせてもらうが、生きるのを諦めた患者に効く薬はないんだよ。最後完治するには治った先、生への渇望が無視できないほど重要なんだ」
「だから私にハーレムを作れというのは飛躍し過ぎではないか?」
「何でもいいから未来に目を向けろってことだよ、復讐以外見えないし相打ちも辞さないなんて途中で頓挫するに決まってる。復讐なんてできて当然!通過点だと思わねぇとな!」
クラピカは一つ大きく溜め息を吐くと、レオリオの言いたいだろうことを自分なりにかみ砕いて納得させる。
レオリオの言う通り一族の復興を掲げるのならば、復讐で満足するようでは話にならないのだ。
「そうだな、まだ半年もある。復讐のこと、復興のこと、修行しながらもう一度しっかり考えてみるよ」
クラピカのその言葉に破顔したレオリオは、夕日が沈んだのを確認して立ち上がると手を差し出す。
レオリオの手を取るクラピカの眼は、一族の虐殺以降初めて過去ではなく未来を見始めていた。