皆さんこんにちは、なんか急に強くなってる?取り戻してる?ネテロ会長に胸の高鳴りが止まらないゴン・フリークスです。人間はここまで強くなれると思うと、目指す
ゴン一行とネテロの邂逅から翌日の早朝、あの場にいたメンバー全員はネテロの案内で天空闘技場からそこそこ離れた平原に集合していた。移動はもちろんマラソンのため、途中でズシがギンの背に乗せてもらいながらも車以上に早く目的地に到着していた。
「ホッホ!レオリオにクラピカも走り切るとは驚きじゃわい。ウイングの指導も中々ためになっとるようじゃの!」
汗ひとつかかずに笑っているネテロとは反対に、レオリオとクラピカは倒れ伏し今にも内臓を口からぶちまけそうな有様である。キルアは息を乱しながらもある程度の余裕は見せており、ウイングとゴンは汗こそかいているが呼吸に乱れはない。
「レオリオ、
「…ひゅー、…こひゅー」
声なき声を聞いたゴンが2人に筋肉対話でマッサージするのをネテロが興味深そうに見学し、ギンとキルアは獲物を取りに近くの森へ、ウイングとズシは朝食の準備で火をおこし始める。その後ある程度回復したレオリオがワンマンドクターも併用したかいあり全員で朝食をすませ、そのままウイング指導の下軽い鍛錬に入る。朝食を取ったことと回復に重きをおいた鍛錬により、昼前にはほぼ万全の状態に回復したレオリオとクラピカ。早めに昼食もすませると、ネテロがウキウキしながらこれからする遊びについて説明する。
「そんじゃまずはレオリオ、クラピカ、キルアが順番にワシと組手じゃ。最初は1人、一周したら2人、最後は3人一緒にやるぞい。個人戦とチーム戦両方の訓練じゃな」
「チーム戦っつーならゴンとギンはどーすんだよ、オレ等は足手まといか?」
「実力差というより体力差じゃな。後半ほど休みなく組手となるからの、お主らの回復時間を多めに取るための措置じゃ」
朝一のマラソンは体力を見る意味もあったと言われれば、不満の残るキルアも納得せざるを得ない。そして組手を始める前に、やる気を出させる意味も含めてネテロからクリア条件が出される。
「3人の組手ではワシに一撃でも入れれば合格、発を使わせたら満点合格じゃ。褒美としてワシに出来ることなら何でも叶えちゃるぞい」
「ん?順番逆じゃねえのか?その言い方だと能力で攻撃防がないってことになるだろ」
レオリオの疑問も至極当然のことなのだが、百式観音を知るゴンとウイングにしてみれば的外れといえた。
「ワシの発は攻撃特化じゃからの、正直お主等3人相手じゃと手加減しても殺しちまう可能性のほうが高いわい」
露骨に手加減すると言われてしまえば面白くないのは当たり前だが、確認とばかりに3人はウイングとゴンに視線を送るとそれぞれ苦笑しながら肯定する。
「オレやギンでも戦闘中じゃ厳しいくらいだから、皆にはまだ早いかな」
「はっきり言ってゴン君とギン君も大概です。私ですら全力で備えなければ一撃で勝負が付きますからね」
ゴンとウイングのお墨付きも貰い、半ばヤケクソになったレオリオが上着やサングラスを外して啖呵を切る。
「敵情視察は弱い奴がするって相場は決まってらあ!クラピカとキルアはしっかり見とけよな!」
「ホッホッホ、元気がいいのう。どれ、ひとつもんでやろう」
「舐めんなよジジィー!」
組手一周目の所要時間は、レオリオ10秒、クラピカ30秒、キルア1分となった。
「2対1だ、さっきみてぇにいくと思うなよ!」
組手二周目は全ての組み合わせで1分もたなかった。
「3人に勝てるわけないだろ!いい加減にしろ!」
最後の三周目も1分もたなかった。
いくら実力差があるとはいえ、まるで歯が立たなかった3人は膝を突いて啞然としていた。天空闘技場で勝ち進んでいるという自信はもちろん、ハンター試験から続けている鍛錬にすら疑問が浮かんでいる。クラピカにいたっては、近付いたと思っていた幻影旅団の影が文字通り幻と消えたような絶望を味わっていた。
「基本的な基礎はまあ及第点じゃな、それぞれの発も系統や気質にあった良い選択をしている。じゃが連携がまるでなっとらんの、あれでは一対一を3回やっとるだけじゃ」
ネテロからの総評すら聞こえていない3人は俯いたまま動けず、弱った精神に引っ張られたオーラは濁りをみせている。
「まったく、…喝っ!!」
『っ!?』
オーラすら込められた一声に思わず顔を上げた3人は、指導者組からの厳しい眼差しにたじろぐも1人も目を逸らさず立ち上がる。
「それで良し。負けることは恥ではない、負けから学ばず同じ過ちを繰り返すことこそ恥と知れ。お主ら3人は間違いなく伸び盛りじゃ、落ち込む暇があれば1秒でも多く考えるがよい」
『押忍!』
満足げな笑みを浮かべて頷いたネテロは、その笑みを獰猛なものに変えるとゴンとギンに向き直る。ゴンも好戦的な笑みで、ギンは興奮に毛を逆立ててネテロと対峙する。
「孵化したばかりのひよっ子共は片時も凝を怠るでないぞ、お主らにないものがつまりにつまった組手となるからの」
2人と1頭のオーラに当てられて戦慄するキルア達はもちろん、一人蚊帳の外にいるズシもまた気を引き締め直した。
ネテロと先に組手となったのは、2メートル程の引き締まったサイズになったギン。ネテロからある程度の距離を取ると、合図を待つかのように低く身構える。
「いつでも始めていいぞい、本番は合図などなくて当たり前じゃからの。…これ意味伝わっとる?」
よく考えなくても獣であるギンに言葉が通じているのか不安になったネテロがゴンに意識を向けた瞬間、音も衝撃も無い霞む程の速度でギンが仕掛ける。ズシでは凝をしていても見失う速度で、ネテロの横を通り抜けざまオーラを纏った爪で首を刈り取りに行く。
虚を突かれながらも反応したネテロは受けではなく回避を選択し、オーラで数cmリーチを伸ばしていることすら見切って爪の範囲から逃れる。
そして隠によってオーラを感知できない尻尾による一撃が、ギンの爪と牙を目で追うネテロの横っ面に炸裂した。
「さっきの一撃は何だ?あのフサフサな尻尾にあれだけの威力があるとは思えないのだが」
「あれは絶の応用技術となる隠ですね、込めたオーラを見えにくくする技術でより強力な凝を行えば看破できます。先程のギン君の一撃には爪以上にオーラが込められていました」
「元々野生動物だったからかギンって昔から絶系統のセンスが高いんだ。それこそ隠に関してはオレもまるで敵わないよ」
「しっかし普段手加減されてるのはわかってたけど予想以上だな、本気でいってる時は割とミケっぽさもあるわ」
「正直ちょくちょく見失いそうになるぜ、あれが戦闘方面に鍛えた放出系かぁ」
「自分ほとんど見えないっす(泣)」
ネテロの被弾で始まった組手は、一撃以降距離を取って3種類の“咆哮”による牽制を続けているギンが有利に見えた。さらに隠の切替はもちろん絶も織り交ぜたギンの高速移動は、姿の残像にオーラの残像と分身を作っていると錯覚するほどの撹乱力となっている。
(これは凄まじいのぉ、まさか獣がここまで見事なオーラ運用を見せるとは。しかも野生の本能かワシのダメージが抜けないよう上手く攻めるわい)
意表を突かれた一撃で軽くないダメージを受けたネテロは、その後の主導権を握ったギンの猛攻に対処しつつその実力に舌を巻いていた。人間を軽く上回る身体能力に、そこらの念能力者では足元にも及ばないオーラの運用技術。これみよがしに爪や牙にオーラを集めながらも、放出系による遠距離攻撃を行う狡猾さと発の性能の良さ。はっきり言えば、この2ヶ月行っていたどの組手よりも充実していた。
(百式観音は使わんとして、ちょいと本気は出さんといかんか)
ネテロはギンの咆哮を捌ききれなかったと装い、その経験の多さからくる老獪なまでの演技力で攻め込ませる僅かな隙を見せた。罠であるその隙を見逃さなかったギンは十中八九罠と理解していながらも、組手であることから大金星の可能性を追い接近戦を仕掛ける。
(初心者組の3人と違って教えることは少なくても鍛えがいあるのぉ。今日は色々と人間の恐ろしさを理解させるとしよう)
罠にあえて食い付いてきたギンを逃さぬよう、詰将棋の如く取れる選択肢を一つ一つ潰していく。ギンは行動を誘導されているのを知りつつも、勝ち筋を残すため自分に出来る最善策を取り続ける。
時間にして僅か数分、しかし濃密な攻防が繰り広げられた組手はネテロの裸絞にて決着した。
絞め落とされたギンが起きてからというもの、初心者組は激闘を繰り広げたギンに群がっていた。
「やべぇなギン!あの高速移動教えてくれよ、オレも肢曲教えるからさ!」
「素晴らしい戦いだった。主導権を渡さなかった距離感が見事としか言えない」
「気持ち悪かったり体に変な所は無いな?一応後でしっかり診てやるから何かあったらすぐに言えよ」
「全然見えなかったっす!すごかったっす!」
「ぐま!」
負けたことは悔しいながらも、ちやほやされて満更でもないギンは鼻息荒くされるがままとなっている。そしてすごいすごいと撫で回されるギンから少し離れたところに、勝者でありながら蔑ろにされたネテロが寂しそうに立ち尽くしていた。
「勝ったのワシじゃよ?すごいのワシじゃね?」
「まあまあ、会長はなんというか超えるべき壁ですからね、ラスボスってやつですよ」
ウイングは拗ねて若干めんどくさくなっているネテロを宥めながら、マイペースに準備運動を続けるゴンに視線を向けた。組手の結果はどうであれ急激に伸びている3人と、指導ではここまでの強さと見抜けなかったギン。ゴンは彼らより更に強いことはなんとなくわかるが、その最大値を見極められているのか正直わからなくなっていた。
「面白いじゃろ?見極めたはずがわからなくなる、ワシは試験の時に直接触れておるが既に別人にしか見えんわい。成長率が狂っとるのもあるが、それ以上に発想や着眼点がいい意味で頭おかしいせいで予測が当てにならん」
「発想等は確かに普段の指導でも感じますね、基礎的なことを教えればその応用を瞬時に思い付く。まるで念という山の全体像は知っているのに木々や川を知らないような、不思議なアンバランスさを感じます」
ギンやキルア達が落ち着いたのを見計らった様に準備運動を終えたゴンが、これから行う組手を思って満面の笑みとキラキラした瞳でネテロを見据える。ある意味このために来たと言っても過言ではないネテロも、深い笑みと昂るオーラでゴンと相対する。
「少しはマシになっとるようじゃな、とりあえず百式観音で潰さずに胸を貸してやろう」
「最近やっと自分の完成形が見えてきたんだ、ネテロ会長なら全力でぶつかれるからすごく楽しみだよ」
邪魔にならないよう離れたメンバーは、2人のオーラに息を呑み更に数歩後退る。相変わらず重厚なゴンのオーラには慣れてきていたが、ネテロの研ぎ澄まされた鋭いオーラはまた違った威圧感を振りまいていた。
「おいおいギンの時もあそこまでじゃなかっただろ、ゴンの奴大丈夫なのか?何か大怪我しそうで怖いんだが」
「流石にそこまでにはならないと思いたいが、あの2人のオーラを見ると怪しく感じてしまうな」
不安そうに見守るレオリオとクラピカに対し、キルアは無言で凝を行い一瞬たりとも見逃さない決意を固めた。ギャラリーの準備が整う中、ネテロは今回の目的の一つである質問をする。
「そう言えばお主ワシを殴ると言っておったが、百式観音をどうやって掻い潜るつもりなんじゃ?完成形が見えてきたと今言ったが、新しく発でも作るつもりか?」
冷静になってから特に根拠もない子供ながらの無鉄砲さという線も考えたが、再び対峙したネテロはゴンが確固たる根拠を持っていると確信していた。ゴンのオーラは無鉄砲さとは無縁な自信に溢れていて、その目からはネテロを超えていく壁としか見ていないふてぶてしさを感じる。
「ネテロ会長や百式観音のことを知ってから色々考えて、ハンター試験で実際に百式観音を受けた時に確信したんだ。新しい発は必要無い、百式観音にある仕様上の弱点を突く」
「ホッホッ!そりゃ是非とも教えてもらわんといかんの、組手の後にでも聞き出すわい」
笑っていない目は好戦的に輝き、ネテロのオーラは刺々しさを増す。ゴンは青褪めるキルア達を尻目に、ハンター試験では見せられなかった
「
「それでよいのか?その上にまだあるじゃろ、
一気にウイングすら上回る肉体となったゴンだが、それ以上を見たことのあるネテロにしてみれば違うとわかっていても手を抜いているように見える。そんな信頼と疑念に対し目を瞑ったゴンは大きく深呼吸すると静かに、そして厳かに言魂を吐き出す。
「…練」
溢れ出すオーラはゴードン戦を遥かに上回り、そればかりか全身の筋肉が爆発的に膨れ上がる。アンバランスさすらある巨大な筋肉の塊は、しかしながらネテロからすれば見掛け倒しもいいところだった。
「なんじゃいその見せ筋は、そんなもん2流をビビらす程度で中身が無いわい」
辛辣な言葉を浴びせられながらも、集中するゴンはネテロに応えず行動でもって答えを示した。
「
言葉と同時に巨大化していた筋肉がギンの発のように圧縮されていく。質量そのままに抑え込まれた筋肉は見るからに密度を増し、開放される時を今か今かと待つ爆弾のようなパワーを感じさせる。
更には大量に溢れていた練によるオーラすら圧縮されていき見た目は纏程の大きさに収まる。いったいどれだけのエネルギーが抑え込まれているのか、全身のいたる所で小さな爆発のような現象を引き起こしていた。
対峙しているネテロは驚愕に目を見開き、離れて見ているウイングは耐えきれずに絶叫する。
「馬鹿な!!堅の圧縮を成し遂げたというのですか!?」
やがて爆発も少なくなりほぼ安定状態に入ると、ゴンは大粒の汗を浮かべながらもネテロに向かって笑いかける。
「おいおい何か見るからにヤバそうなんだがあれ大丈夫なのか!?」
「オーラの圧縮、つまりは円の反対の技術ではないのか?ウイングさんがそこまで取り乱すとはなにか曰く付きなのか?」
対峙するネテロはもちろんウイングも冷や汗を流しながら、今目の前で起こっている異常事態を説明する。
「何十年も前にオーラ運用の匠と呼ばれた念能力者がいました。そんな彼が生涯をかけても実現出来なかった机上の空論、それが練の応用である堅を圧縮する技術“
匠は戦闘において堅をしない能力者だった。何故なら攻防の瞬間のみ硬か凝を行うことが出来たからだ。普段は戦闘中すら絶をすることで気配を薄くし、更には回復しながら戦闘を行うことで継戦能力を高めていた。その技術力のみでオーラ総量、出力共に凡人以下でありながら百式観音を使わないネテロと真正面から殴り合えた武人だった。
「彼は牢を実現することは全身でデコピンをするのと同じことだと言いました。全身満遍なく全力を込めて、歩く場合は邪魔になる筋肉だけ力を抜くようなものだと」
もちろん普通に考えて不可能であり、出来たとしても普通に歩いたほうが圧倒的に効率がいい。しかし仮に十全に行えたならば、燃費の悪さを補って余りある絶大な力を得ることが出来ると考えられていた。
「ホッホッホ、まさか埃にまみれた理想論をこの目にするとは、長生きはするもんじゃの」
肉弾戦で間違いなく好敵手と呼べた者が考案し、生涯をかけて会得できなかった一つの到達点。それを10代前半で成し遂げている事実は、ネテロの心に畏怖を生じさせるには十分過ぎる偉業である。
動き方を確かめるようにギクシャクしていたゴンは徐々になめらかな動きに変わり、問題ないと判断すると最後に四股を踏むため片足を上げる。
ゴンの足が降ろされた瞬間比喩なく大地が揺れた。
大して力を込めていないように見える踏みつけで起きた地震にゴン含め全員が驚く中、ゴンはネテロに向かって謝罪を口にする。
「ネテロ会長、殺しちゃったらごめんね」
「ガキが、いらねぇ心配だ。お前の全部をぶつけて来い!」
人の手の入らぬ辺鄙な平野で、凄惨な笑みを浮かべた2人の修羅が激突した。
所は代わり天空闘技場200階ロビーの片隅で、一人トランプタワーを作っては壊すヒソカがいた。
(試合の観戦に来るかもって思ったけど、これははずれちゃったかな♠)
ゴン達の滞在するホテルへの引っ越しを本気で検討しながらも、グッズ購入費で割と余裕の無い財布事情が邪魔をしていた。
(ゴードン戦の写真はそそられるのが多かったからねぇ、沢山買っちゃったのは必要経費♥…崩れちゃった♠)
部屋を彩るゴン達の写真やポスター(本人の許可無し)に想いを馳せていると、珍しくトランプタワーが完成する前に崩してしまう。
(揺れの感じからして地震かな、地上はほとんど揺れてないだろうけど珍しい♣)
ゴン達が来ることはほとんど諦めながらも、未練がましくロビーでトランプタワーを続けるヒソカ。
神ならざるヒソカでは、最推しが現在進行系で突然変異的進化を遂げていることに気付くことはない。
後書きに失礼します作者デス。補足説明入ります。
筋肉が先かオーラが先か(パーフェクトコミュニケーション)
筋肉対話の到達点とも言える能力で、筋肉とオーラが互いに互いの動きを補助する。
筋肉「1+1は2じゃないぞ。オレたちは1+1で200だ。10倍だぞ10倍。」
ゴンはこの能力を使い肥大化させた筋肉を圧縮することでオーラの圧縮を実現し、全身シャコパンチ方式で戦闘を行う。
オーラ運用技術“牢”。
名称は堅牢かつできたら体の自由が効かなくなることから
練の応用堅を圧縮する超高等技術。前提として作者が把握している限り、オーラの圧縮は本家ゴンさんがピトー戦でやったのみ。バトル系において圧縮して弱くなることはないという作者の信念のもと、原作で出てこないということは難易度が馬鹿高いと考察。話の中で書いたように全身シャコパンチ方式で動けなければ実現不可能レベルの難易度としました。