オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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第1話 原作のはじまりと乖離

 

 

皆さんこんにちは、沼のほとりでヌシ待ちしてるゴン・フリークス11歳です。

 

 物心付いてから早いもので既に6年の歳月が経ち、遂に原作へと足を踏み入れてしまいました。なかなかに濃い6年間でしたが、やってることは結局修行しかないのである意味単調な毎日だったと言えます。

 

 さて、肝心の修行結果は正直想定の倍以上の成果を得た。おそらく単純な戦闘力なら、集団リンチでもされないかぎり幻影旅団クラスなら負けることはないレベルまで到達出来た。まあ、その程度ではキメラアント編を生き残れないと考え直し、より一層修行に力を入れたが。

 修行内容的には、良い念の修行相手になってくれたキツネグマと、長期滞在してくれたカイトによる指導のおかげで予想よりかなり充実したものだった。野生の本能からか攻防力移動はもちろん硬に隠まで駆使してくるキツネグマと、具現化する武器に複数の能力を持たせたことからわかるように念の各系統をバランスよく高いレベルまで鍛えたカイトの指導は、余すことなくゴンくんボディの血肉になった。

 そして一番肝心となる発は、最終的に3つの能力を作成した。詳細は省くが、1つ目は最強を目指す上で根幹となる能力、2つ目は短期決戦用のブースト能力、3つ目はオーラの操作を補助する能力になる。1つ目の能力についてはカイトから苦言を受けたが、自分が目指す最強のゴンさんの為に決行させてもらった。

 発自体はカイトが旅立つ寸前に作成し、その身を以って効果を確認してもらったが二度とまともにやり合わないというお褒めの言葉を頂けた。後はとにかく地力を上げながら、親友組の育成プランを考えるのみ。

 ちなみに転生した影響か、念の系統は操作系だった。

 

 

 

 これまでのことやこれからのことがゴンの頭をよぎる中、エサに食いついてきたヌシを片手一本で容易く釣り上げる。こんな小さなことでも自分の努力が報われているようで、これから始まるハンター試験への期待も合わさり年相応にはしゃぎながら我が家へと向かっていった。

 

 

 

 ゴンが沼のヌシを担いで帰り、騒がしい周囲を無視してミトにハンター試験の応募用紙へサインを強請っている。

 ミトは原作同様、ゴンがハンター試験を受ける最後の条件に沼のヌシを釣り上げることを求めた。理由としては単純な強さを求めるより、警戒心の強いヌシを釣り上げることの方が成功率は低いと判断したからだ。

 ただし、ミトとしてはゴンがハンター試験を受けることに対して原作ほど反対していない。これはれっきとしたプロハンターのカイトが凡そ半年ゴンを指導したことと、そのカイトがゴンの合格に太鼓判を押したことが大きい。それに加えてゴンが通信教育で高校相当の単位を取り、ハンター資格の将来性を説くことでむしろ応援する立場へと変化した。

 保護者のミトからサインをもらい、申込書に不備がないのを確認してすぐさま投函に向かうゴン。ミトも近所の野次馬も、普段のませた態度とは違うその姿を微笑ましく見守っていた。

 

 

 

 無事ハンター試験に応募したゴンは、その足で森の最深部にある修行場を訪れていた。そこには既に各動物の代表と、何よりこの6年間互いに切磋琢磨したキツネグマがいた。

 ゴンは原作に入る11歳になる前に、いつかこの島を出ていくこととその後は森に来ることもほとんど無くなることを説明しており、今までの感謝をしっかりと伝えていた。

 感謝を告げてからは通信教育を片付けるのを優先した為久しぶりの訪問だったが、ゴンは動物達の様子がおかしいことに一目で気付いた。特に念を使うキツネグマの子供、原作ではコンと呼ばれていただろう個体が、普通より一回りは大きな体で直立不動になっている姿はゴンの笑いを誘った。

 

「みんなに呼ばれたと思ったから来たんだけど、ヌシの子供がなにかしたの?前も言ったけど、オレはもう森のことに関わらないから口出ししないよ」

 

 場が動かないことを察したゴンが促すと、黙って伏せていた森のヌシが静かに起き上がる。名前もない彼は、念を覚えてから徐々に身体が引き締まり、今ではガチムチ成人男性程度の体型に収まっている。ゴンはほんの数ヶ月前に、この現象がヌシの発によるもので元の身体を圧縮して強化する能力だと気付いた。

 動き出したヌシがゴンの前まで来ると、一鳴きしながら背後の動物たちを振り返る。それに反応したキツネグマが動物達より前に出て、大きな体を滾らせながらゴンとヌシに対して威嚇をし始めた。それに呼応して他の動物たちも、それぞれが必死に二人を追い立て始める。

 ヌシはそんな動物たちを見て満足した様に鼻を鳴らし、まるでそこが自分の場所かのようにゴンの横に並ぶ。

 

「ごめんちょっと待ってもらっていい? ヌシも付いてくるつもりなのは分かるけど流石に無理だよ。せっかく情が移りすぎないように名前付けるのも我慢したのに」

 

 ゴンにとっては嬉しいのだが、ヌシはまだハンターでない上に未成年が連れ歩けるような存在ではない。戦闘力は高くそれを御する知性も持ち合わせ、いたずらにトラブルを生むことはないと断言出来るが、いかんせん悪目立ちする。何なら家に連れ帰ったらミトが卒倒する。

 

「せめて生後間もないくらいの大きさなら連れていけるけど、いくら何でもそんなに小さくなれないでしょ。悪いけどこのまま森で暮らしてくれないかな」

 

 ゴンの話を聞き不満げに唸ったヌシだったが、しばらくジッとしていたかと思うと形容し難い音と共にみるみる縮んでいく。最終的にゴンの頭や肩に乗せれるほどの大きさになると、まるで幼子の様な高い声で鳴く。

 そこまで身体を圧縮できる事にゴンは驚くが、初めて見せるということはビスケと同じく弱体化していると見ていいことに思い至り苦笑する。

 

「わかった、そこまでしてくれるなら一緒に行こう。これからヌシのことはギンって呼ぶね。普段は大人しくしてくれると助かるな、よろしくねギン。あ、ついでに新しいヌシのことはコンって呼ぶね。森のことは任せたよ」

 

 肩に登ってきたヌシ改めギンを撫でながら、いつの間にか威嚇をやめてこちらに手を振る動物たちに背を向ける。物心付いてから大半を過ごした場所を旅立つのは寂しいが、それ以上にこれからのことに心が躍る。

 ギンという原作にいない相棒を得たことでどの様な変化が起こるのかわからないが、面倒なことは大体拳で解決出来るのがHUNTER×HUNTERの世界だ。

 

「バイバイ!元気でな!」

 

「キューン!」

 

 ギンの鳴き声に対して妙に人間臭い敬礼を返すコンに笑いながら、旅立ちの準備を始めるために帰路につくのだった。

 

 

 ちなみにギンは身体を圧縮して小さくなっているため、ゴンの肩には数百キロの重しが乗っていることになるがその足取りと体幹は一切乱れていなかった。

 

 

 


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