オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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第35話 試合の後始末とさらば天空闘技場

 

 皆さんこんにちは、追い詰めこそすれど余裕を持って負けたゴン・フリークスです。有利な土俵でこれですからまだまだ修行が足りません。

 

 

 

 天空闘技場にある闘士のための医務室は、これまでお世辞にも設備が整っているとは言えなかった。それでもここ数ヶ月の好景気のおかげで最新設備2歩手前程になり、その手術室のベッドの上には今日も重傷の闘士が横たわりレオリオの治療を受けていた。

 

「ちくしょう、内臓もやばいが何より骨がグシャグシャじゃねぇか。あんな無茶すっからだぞ」

 

 医師免許を持っていないレオリオだが医療スタッフにその腕を見込まれ、アルバイトという名の主治医としてその能力を存分に振るっていた。

 

「もっと輸血持ってきてくれ!あと無理矢理治すからタンパク質と鉄分多めの飯も用意頼む。大丈夫だ、きっとすぐに良くなるから気を確かに持てよ!…ヒソカ!」

 

「治りが早いとはいえ麻酔くらいしてもらうべきだったかな♠」

 

 手術室の外では既に全快しているゴン含め、いつものメンバーが反省会という名の糾弾を行っていた。

 

 

 ご立腹なキルア、クラピカ、ウイングに囲まれたゴンは、いつかの様に正座して矢継ぎ早に並べられる小言を聞いていた。

 

「結果としてヒソカよりよっぽど軽傷だったんだし別にいいじゃんか」

 

 しかし今回はゴンもやや不満な表情で口を尖らせ、その態度がまたキルア達をヒートアップさせている。直ぐ側のベンチでは体力を使い果たしたズシがいびきを立て、その横でギンも丸くなって呆れたようにゴン達を見ていた。

 

「おいおい、まだやってたのかよ。とりあえずヒソカの治療も終わったから帰ろうぜ、流石に今日はもう疲れたわ」

 

 手術室から出てきたレオリオは、慣れた様子でスタッフに指示と脱いだ手術衣を渡すといつもの服装に戻る。レオリオに便乗してさっさと帰る準備を始めたゴンにため息を吐くキルア達も、最後は諦めたように支度を始めた。

 

『お疲れ様でしたレオリオ先生!!』

 

「おう、みんなもご苦労さんな」

 

 多くの医療スタッフに見送られて家路につくゴン達は、天空闘技場のスタッフ専用通路を使うことで何の障害もなくタワーを出る。

 天空闘技場の外はこの日も多くの人で賑わいごったがえしているが、絶により気配を消しているゴン達は注目されることもなくホテルへと帰還する。

 そしてズシを寝かせると集まり、これからについて話し合いを始めた。

 

「では皆さんは近々天空闘技場を去るということですね。ズシが寂しがりますし、私自身名残惜しさを感じます。」

 

「まだまだ教わりたいこともあるけど、やっぱり天空闘技場だとチームワークとかが疎かになっちゃうからね。ウイングさんには本当にお世話になりました」

 

 深々と頭を下げるゴン達を感慨深げに眺め、ついでにこの四人がごっそり抜けて天空闘技場は大丈夫なのかと心配になるウイング。

 

「直ちに出発ということはないでしょうが、今の内に私から皆さんに最後のアドバイスをさせて下さい。次に会った時、教えられることがあるかわかりませんからね」

 

 やや冗談めかして笑うウイングは一度全員を見渡した後、出会った当初から段違いに成長したゴン達に伝える。

 

「まずはレオリオくん、正直に言えばもう私から伝えることはありません。あなたの発の性質上、医療知識と技術の習得に努めてください。それと新しい発は形にこそなりましたが実戦で使うにはまだまだ練度不足、系統修行も怠らないよう頑張って下さい」

 

「オッケーだぜウイングさん、オレもここまで成長出来るとは全く思ってなかった。何かオレに出来ることがあればいつでも言ってくれ、力になる」

 

 レオリオはウイングと力強く握手すると、真っ直ぐ目を合わせて感謝を告げる。その姿は実年齢以上の風格と懐の広さを感じさせ、上に立つ立場のウイングをして参考にしたい程の振る舞いだった。

 

「次にキルアくん、その縛りを解いてあげたかったのですが力及ばずすいません。君のセンスは四人の中でも群を抜いています、その縛りから解き放たれた本当の実力もきっと使いこなせる筈、イメージをしっかり持って鍛錬を続けてください」

 

「これはオレがどうにかしなきゃいけないもんだから気にしなくていいぜ。それより表の技術を知れたおかげでかなり上達出来た、次に会うときはオレのが強くなってるから楽しみにしてなよ」

 

 あいも変わらず小生意気な態度ながら精一杯の感謝を口にするキルアに微笑むウイングは、心の中で自己鍛錬の密度を増やす決心を静かに固めた。

 

「クラピカくん、君の進む道は非常に困難なものとなるでしょう。しかしゴンくん達を頼れるあなたならきっと、最高の結末を迎えられると確信しています。あなた一番の長所でも短所でもある感情をしっかりコントロールして下さい」

 

「ウイングさんには迷惑をかけたし、いらない心配もさせていることを改めて謝罪させてくれ。あなたの教えは深く心に刻ませていただく、良い報告ができるように最善を尽くすことも約束しよう」

 

「ふふっ、実はそれほど心配もしていないのですよ。そうそう、あなたはせっかく頭が良いのに少々考えが硬い傾向があります。ゴンくんほどは無理でも柔軟な思考も心がけてください」

 

 頭を下げるクラピカに付け加えれば、しっかりと目を合わせて深く頷く。ネテロから聞いた以前の危うさが見えない、未来を見る瞳の輝きにウイングも笑顔を向ける。

 

「ギンくんにはあまり細かい指導が出来なくてすいませんでした。武を修める者として複雑ですが、あなたは野生を忘れることなく自由に戦って下さい」

 

「ぐ〜まっ」

 

 ギンを一撫でするウイングはこの手触りや癒しを忘れられず、後にペットを飼うことを本気で検討することになる。

 

「さて、最後にゴンくんですが困りましたね、私が言いたいことは全て理解しているでしょうし」

 

 お互い苦笑いを浮かべたウイングとゴンだったが、少し首をひねっていたウイングが閃いた顔をする。

 

「そうです!ゴンくんが硬を出来ない理由ですが、私の考えはゴンくんやヒソカと違います。ずばり、君が出来ないと()()()()()()()、です」

 

 その言葉に何とも言えない表情を浮かべるゴンに、ウイングは自分の思ったことと経験から考えを述べる。

 

「確かに脳筋万歳(力こそパワー)は強力無比な能力です。しかし君のオーラ運用技術ならば問題無いはず、ならば残りの理由は精神面ということになります」

 

「んー、オレ今まで念の修行で危ないと思ったこととかないし、出来ないと思い込むきっかけも思い浮かばないんだけどなあ」

 

 更に記憶を掘り起こして唸るゴンに対し、ウイングはそんなに深刻に考えないように言って続ける。

 

「私の同期の話なのですが、実力的に勝てる相手に決して勝てない者がいました。一時期は何か弱みを握られているなんて噂が立つほどでしたが、たまたまラッキーパンチで勝ってからは全戦全勝となりましたね」

 

 当時を思い出しながら語るウイングはゴンの肩に手を置くと、目線も合わせて穏やかに告げる。

 

「必要なのはほんの些細なきっかけです。ゴンくんはまだまだ若い、焦らず成長すれば必ず硬を会得できますよ」

 

「…押忍!」

 

 ウイングはゴンの返事に頷き、改めて全員を見渡す。

 

「皆さんは心源流の門弟ではありませんが、まごうことなく私の弟子です。いざという時はいくらでも私の名を使って下さい、力になることも師の甲斐性故にね」

 

 ウイングが最後は茶目っ気たっぷりに笑うと、ゴン達は今一度頭を下げ感謝を告げる。

 そして次の日の朝、改めてズシ含めて挨拶すると夜には天空闘技場を旅立った。

 

 

 

 ゴン達がいなくなった天空闘技場は驚くほど落ち込んだ、と思いきや意外なことに好景気をキープし続けた。

 そもそも宣伝活動や闘士のアフターケア等が杜撰だった状態で訪れた好景気であり、その辺りを改善した天空闘技場の人気は新しいファンや市場の獲得に成功していた。

 そしてゴン達四人とついでにヒソカの抜けた穴を埋める様に、天空闘技場では新たな人気闘士が誕生する。

 

 甘いマスクと何故か二人に増える虎咬真拳の使い手“双虎”のカストロ。

 

 顔の半分を隠す仮面を付けた強面ながら、人格者であり最近子供好きも判明した合気使い“キング投げ”のゴードン。

 

 この二人を筆頭に多くの人気闘士が覇を競う戦国時代に突入し、ついには200階の4敗したら終わりのルールすら廃止された。

 正しく闘技者の聖地へと姿を変えた天空闘技場は、今日も多くの荒くれ者と格闘家の集う武の中心地として高く高くそびえ立つのだった。

 

 

 余談だが、映画化やグッズ化でゴン達以上の経済効果をもたらした闘士として“リアルベ○ブレード”ギドは後に伝説となる。

 

 

 

 ゴン達が天空闘技場から旅立つ前、タワー内にあるヒソカの部屋では最後の作戦会議が開かれていた。

 

「それでは最終確認だ。団長のクロロはヒソカに任せるとして、最優先ターゲットはNo.6シャルナークだ」

 

 クラピカの示した指の先には、金髪の一見優男が朗らかに笑う似顔絵がある。ゴン達は幻影旅団と争う上で、一番最初に仕留めるべき相手をクロロではなくシャルナークに定めていた。

 理由は一つ、旅団内で唯一クロロに匹敵あるいは上回る頭脳を持っているからである。

 

「こいつを真っ先に仕留めることが出来れば、それだけ情報戦で有利に立てる。さらには参謀を失った分クロロの負担が増えることになるからな」

 

「マジでこいつは厄介だわ。ネット関係とかも担当してるって言うからさ、家のブタくんに聞いてみたらそっち界隈で普通に有名っぽい。まぁ当たり前だけど確証はないんだけどね」

 

「しかも他人を操作するオーソドックスな操作系能力者だろ?顔知らなかったらそれだけで致命傷だな」

 

 ヒソカ的には美味しくない相手のため詳細な情報はあまりないが、それでも総合的な厄介さで言えば断トツだとゴン達の意見は一致していた。

 

「そんでもって避けられない最終決戦前に確保しておきたいもう一人が、No.2のフェイタンだね」

 

 ゴンの見る絵には黒髪ツリ目の小柄な男、一発逆転の発許されざる者(ペインパッカー)を持つフェイタンが写っている。

 

「そうなるな。理想は全員各個撃破だがまず不可能、多くても一人か二人がせいぜいだろうな」

 

「しっかしそれでどーすんだよ、全員集合ってことは一網打尽にするチャンスだけど数で負けてちゃ世話ないぜ?」

 

 唸るゴン達を眺めていたヒソカだったが、少し考えた後に話し合いに混ざる。

 

「実はそんなに悪い賭けじゃないよ♦詳しくは言えないけどボクも色々と用意をしているからね♣」

 

「なんだよ勿体ぶるじゃねぇか、それでこの数の差をどうにか出来んのか?」

 

「まずそこが少し間違ってる、正直な所数の差ってのはそこまで深刻じゃないんだよ♠」

 

 ヒソカの見解は幻影旅団での役割分担が関わっており、すなわち戦闘員とそれ以外に分けられることだった。

 

「はっきり言ってパクノダとコルトピに関して言えば、レオリオでも勝ちの目があるし、キルアとクラピカにいたってはシズクにも勝てる♦そして蒐集欲の強いクロロは最低でも一人はこの三人に護衛を置くだろうね♣」

 

 ヒソカは旅団の絵から三人を除外し、シャルナークとフェイタンも外して自分とクロロを持ち上げる。

 

「はい、二人先制出来ればその時点で5対6、ゴンとボクの隠し玉があることを考えれば十二分に勝ち目はあるよ♥」

 

『おぉ〜』

 

 感心したように唸るキルアとレオリオに対し、そこまで上手くいくと思えないクラピカと嫌な予感がするゴンの表情は晴れない。

 

「ま、こういうのは最悪を想定するのもいいけど考えすぎないことも大事さ♣それで本題なんだけどクラピカ、ボクにかける裁定する者の鎖(ルーリングチェーン)の内容を決めさせてよ♦」

 

「それは構わんが、あまり細かく設定は出来んぞ?」

 

 顔をしかめるクラピカとは対象的に、ニチャリと嗤うヒソカは自分の思い通りにことが運んだ時の快感を想像する。

 

「大丈夫♥封印するのは二つだけで一つは君達とボクが手を組んでいるという記憶、もう一つは君達への“  ”さ♠」

 

 ゴン達は一つ目こそ納得できたが、二つ目がそれだけでいいのかと首を傾げる。しかし結局は間違いないと言うヒソカに折れ、さらに保険ということでゴンとの試合の記憶も封印することに決まった。

 

「じゃあ次に会う時はヨークシンシティだね、更に成長した君達に会うのを楽しみにしてるよ♥」

 

 そしてヒソカは緋の眼を発動したクラピカによって、完成した真のルーリングチェーンを受けた。

 

 

 

 

「本当にこの依頼と報酬でいいの?オレとしては得するから別にいいんだけどさ」

 

「構わん、こちらとしては受けてもらわなければ話にならないからな」

 

「オッケー、じゃあこの依頼受けてあげる。報酬はちゃんと払ってよね」

 

「わかっている、お前達と敵対するほど暇じゃないからな」

 

 ゴン達は蜘蛛に向かって全力で走り続け、ピエロはその横をマイペースについていく。

 とんでもない速度で近付くゴン達だが、相手は逃げないながらも()をはるのが本業の蜘蛛。

 引き千切るのか絡め取られるのか、避けられぬ結末まで2ヶ月を切っていた。

 

 

 




 本編とは何の関係もありません。


アニメベ○ブレード

 ついに世界征服を企む暗黒ベイの首領へとたどり着いた主人公たち。
 そこに待ち構えていたのは己自身をコマとして戦う最強の敵ギド!世界の回転を手にしようとするギドに負けるな!!
次回『耐えろ、必殺技ギドタイフーン』ゴーシュート!!


アニメ第2期

 真の敵は星の自転や公転を狂わせようと目論む邪神ベイ教団!?コマを犠牲に教主を倒した主人公たちだったが、地球の自転を司る祭壇が狂ってしまった!もう手は無いと絶望しかけた主人公たちの前に現れたのは、その野望を砕かれ消えたはずのギドだった!?
次回『地球の回転は我のものだ!』ゴーシュート!!


「無理だよギド!地球の自転を一人でなんとかしようなんて出来っこない!」

「無理なものか、我は今こそこの星の一部、回転そのものになるのだ!」

「だからって、もし成功してもギドは!」

「どの道成功しなければ星は砕ける、もし成功したならそうだな、我のことを未来永劫語り継ぐのだ」

「ギド!」

「さぁやれ!貴様の手で我を打つのだ!!」

「うぅ、ゴーシューート!!」



「ギドさん、今日も地球はあなたのおかげで廻ってます」



劇場版

「あたしのコマの中にいるあなたはだれ?」

『さあな、夢を叶えた男か、この世に未練のある男か』

 小さな女児のコマに宿る謎の意思、それは新たな乱回転の始まり。
 秘密結社の極秘研究所で、祭壇より盗まれた男の体が脈動を始めた。



 作者に○イブレードの知識は欠片もないので全てがテキトーですご容赦ください。

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