オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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第36話 帰ってきたくじら島と束の間の休息

 

 

 皆さんこんにちは、約半年ぶりに帰郷したゴン・フリークスです。秒で森に突入したギンのせいか、島の動物達が騒がしいです。

 

 

 

 船に揺られてくじら島に到着したゴン一行は、ゴンによる島の説明を受けながら真っ直ぐミトの家へと向かっていた。島自体小さく島民もそれほど多くないため、病院などが充実していないことを嘆いたレオリオが簡易診療所を建てようとした以外時間もかからずに到着する。

 

「ミトさーん!ただいまー!!」

 

「ゴン!おかえりなさい!」

 

 ミトは駆け寄ってきたゴンを思い切り抱きしめると、キルア達を見渡して優しく微笑む。

 

「あなた達はゴンの友達かしら?ギンちゃんと違って人間の友達が来てくれて嬉しいわ。狭い家だけどゆっくりしていってちょうだい」

 

 その穏やかで包み込むような雰囲気にキルア達三人は抗うことが出来ず、親に付いていく雛のように一列で家の中へと入っていった。

 

 

 

「ギンちゃんひさしぶりね〜、大好きなカエルナマズの頭もあるからいっぱい食べるのよ〜」

 

「んぐまっ!!」

 

 ゴン達が風呂に入り船旅の汚れを落として夕飯の時間となった頃、森から出てきたギンはミトから貰った魚のアラなどをがっついていた。キルア達も普段あまり縁のない新鮮な魚介料理に夢中になり、ゴンとミトはその姿を嬉しそうに眺めている。

 

「へー、これがハンターライセンスねぇ、見た目は普通のカードじゃない」

 

 ミトはゴンから見せてもらったライセンスを隅々まで眺めながら、超難関なはずの試験をクリアした者が三人も目の前にいる違和感に苦笑いしていた。

 

「キルアも実力は十分なんだけど試験内容で落ちちゃったんだよね。もしまた受ければ合格間違いなしだよ」

 

「一応聞くけどギンちゃんはハンターになったわけじゃないのよね?」

 

「ギンは申し込みしてなかったからね、してたら貰えてたのかな?」

 

「ガフッガフッ、…くぅ?」

 

 小さくなった自分の体積以上に貪っていたギンはこちらを見る二人に気付いて一度止まったが、ミトの母親が追加を皿に入れたため再び食べ出す。

 

「あ~食った食った、ご馳走様です。いやー、ミトさんは料理上手いっすねぇ大満足っすよ」

 

「あぁ、こういうのを漁師飯と言うのだろうか?馴染みはなかったが非常に美味だった、ご馳走様です」

 

「ご馳走さん!しばらくこれが食えるのは楽しみだな」

 

 明らかに人数分の3倍はぺろりと食べたメンバーに、ミトと母親は嬉しそうに笑ってテーブルを片付け出す。手伝いを申し出るクラピカやレオリオだったが、ミトは断るとゴンに小さな箱のような物を渡す。

 

「それはジンがゴンに残していった唯一の品よ。一回本気で開けようとしたけど、無理だったからあなたにしか無理なのかもね?何が入ってたか後で教えて」

 

 そう言って片付けに向かったミトを見送り、ゴン達は客間で謎の箱を囲んで座る。

 

「一般人が開けられないとなれば、十中八九念が込められているのだろう。どうする、すぐに開けてしまうか?」

 

「いや、むしろいい教材があると思おうぜ。今のオレ等で無理矢理どうにかできないか試してみないか?」

 

 レオリオの意見が採用され、念を使うにしても攻撃的なら開かないと仮定して各々が開けようと試みる。

 結果としてはレオリオが中にもう一つ箱があることを突き止めた以外、本気のゴンが僅かに凹ませたくらいで歯が立たなかった。

 

「念ってのはこんなことまで出来んだな、まさかゴンでも壊せねえとは」

 

「ウイングさんの言ってた神字も使ってるんだろうけど、ジンの系統は放出系周りなのかもしれないね」

 

 オーラで個人認証している可能性も考慮し、ゴンが水見式の要領でオーラを込めれば今までの強固さが嘘のようにバラバラになる。

 

「はあ〜見事なもんだな。おっ、これが神字か?流石に見ただけじゃ何もわからんな」

 

「ふむ、余裕が出来たら学んでみたいものだな」

 

 神字らしきものが書き込まれている以外なんの変哲もない鉄の棒に興味を示すレオリオとクラピカに対し、ゴンとキルアの年少組は新たに出てきた箱へハンターライセンスを差し込んでさっさと中身を確認していた。

 

「なんだぁ?カセットテープにジョイステのメモリーカード、そんでもって指輪?」

 

「とりあえずラジカセ持ってくるね」

 

 部屋を出て行ったゴンに気づいたレオリオとクラピカも箱の中身を確認し、3つの品全てが僅かにオーラを纏っていることまでは判明した。

 そしてキルア達は戻ってきたゴンに、改めてゴン宛のメッセージを聞いていいのかを確認し全員でテープの音声を確認した。

 

 

 

「ちっ、まぁ理解できるとこもあるが基本的には面白くねぇ親父だな」

 

「同感だな、たしかに危険も呼び込むだろうがそれを言い訳にしても不干渉すぎる。もっと出来ること、するべきことがあったはずだ」

 

「あんま誇れた家族関係じゃねえけどこれはないわ。ゴンお前よくひねくれなかったな」

 

「ミトさんとばあちゃん、それにギンが居たからね。島のみんなもいい人達だし寂しさとかは全くなかったかな」

 

 テープの中身は自分達の作ったグリードアイランドと言うゲームの自慢と、会いたいなら探しに来いというおよそ実の親とは思えない言葉。

 腹を立てるキルア達と諦めているのか苦笑いのゴンの横で、再生され続けていたテープから再びジンの声が聞こえてくる。

 

『あ〜、ここまで聞いてたなら一応聞くけどよ、お前の母親について聞きたいか?オレはあんまり言いたくないから1分待つ、母親について聞きたけりゃこのままにしときな』

 

 キルア達がゴンのことを確認すると、特に動くこともなく黙ってラジカセを見続ける。

 

「…ちょっと意外だな、ゴンなら母親はミトさんだって止めると思ったわ」

 

「うん、オレのお母さんはミトさんだよ。ただもし産みの親が生きててさ、親父が迷惑をかけてたなら一度会ってみたいってのも本音なんだ。とりあえず聞くだけ聞いてみようかなって」

 

「そうだな、ジン殿とは違って何か事情があった可能性もある。もしゴンに会いたがっているならば顔を見せるのも悪くはないな」

 

 ゴンの当然と言える思いを聞いたキルア達も黙り、静かにジンの言葉を待っているとついに音声が流れ出す。

 

『は?嘘だろお前ここは母親はミトだっつって聞かねえとこだろ、なんだよ義理人情ないわけ?』

 

 キルア達は思わず目を剥き、ゴンの額には青筋が立つ。

 

『そもそもこんな大事なことを直接じゃなくただの録音で聞こうとするのもどうかと思うわ、ハンターとしてもっと自分で未知を解明する心構えを持ったほうがいいぜいやマジで』

 

 キルア達はゴンから漏れ出してきた怒りのオーラに冷や汗を流し、もう余計なことは言うなと十年前のジンに心の中で懇願する。

 

『お前ハンター向いてないんじゃね?ミトとかにもっと心を開いてればこんなことわざわざ聞かなくていいのによ。あ~あ、オレは聞かれないって読んでたんだがなぁ』

 

 いよいよミト達も気付くのではというほどのオーラが部屋に充満し、キルア達ももうどうにでもなれと達観した表情を浮かべた。

 

『よし、やっぱ気に食わねぇから母親については教えねぇ、聞きたけりゃ直接聞きに来い。ま、今みたいな性根じゃ一生無理だと思うけどな、あばよ』

 

 そこでテープが終了し室内が静寂に包まれるも、突如としてラジカセにオーラが宿り勝手にテープを巻き戻し出す。

 

「なんだぁ!?」

 

「これは、カセットテープに念が込められていたのか!」

 

「巻き戻して何を、って録音始めやがった!こいつ自分の痕跡を消すつもりだぞ!」

 

 キルア達は慌ててラジカセを止めようとするも、スイッチを切ることも壊すことも出来ない。

 

「ちっ、オレの電気でもショートしないのかよ」

 

命奪う者の鎖(アサシンチェーン)でオーラを吸い取ることも出来ん、本当にこれが十年前にかけられた念なのか!?」

 

「ダメだ!どうやっても止めらんねえ!」

 

 キルア達がラジカセを止めるのを諦めた時、黙って座っていたゴンが立ち上がると本来の姿に戻りラジカセを持ち上げる。

 

「…もともと一発殴るつもりだったけど、そんな本気で殴る気はなかったんだ」

 

 両手で挟み込むようにラジカセを持つと、徐々に両手で力を込めていく。

 

「気が変わった、殴る時は本気でぶん殴る」

 

 ジンのオーラを纏う強固なはずのラジカセが、軋む嫌な音を立て傍目にも潰れていくのがよくわかった。

 

「あー、ゴンさん?もうラジカセ止まってる気がするんだけどそれ以上はちょっと…」

 

 恐る恐る声をかけるレオリオも無視して、プッツンしているゴンはあえてジンのかけた念を破る。

 

「これはオレからの宣言だ、せいぜい首を洗って待ってろ!!」

 

「あああああ、ラジカセぇぇぇー!!」

 

 ゴンの力に耐えきれなかったジンのオーラは、ラジカセもろとも粉々に粉砕された。

 

 

 

 初日からゴンがぶち切れるハプニングがあったものの、一行は当初の予定通りチームワークを詰めながら穏やかな日々を過ごしていた。

 それでも組手や念の修行はもちろん、尾行や潜伏を想定したかくれんぼや鬼ごっこといったものも行っていく。

 そして多めに取った休息兼自由時間は、各々性格の出る過ごし方をしていた。

 ゴンとキルアの年少組はギンと共に森の中で遊びなのか鍛錬なのか疑問になるほど動き回り、毎日のようにドロドロになって帰ってきてはミトに小言を貰い風呂に叩き込まれた。

 レオリオは島に到着直後から計画していた簡易診療所を建て、島民はもちろん訪れる漁師達にも診察を行いここでも先生と呼ばれだしている。

 クラピカは基本的にはレオリオの手伝いが多く、それ以外ではゴン達に付いていったりミトの持っている書籍を読んだりと一番休息らしい休息を取っていた。

 

 遊び回っていたゴンとキルアが島に隠された財宝を見つけたり、女性しかいない漁船の船員達にレオリオが連れ去られかけたり、見目麗しいクラピカがミト率いる島のマダム軍団にもみくちゃにされたりと、所々賑やかな島での生活を全員が堪能した。

 

 そして8月もそろそろ終わりが見えてきた頃、ゴン一行は惜しまれながらくじら島を出発する。

 幻影旅団との決戦の地、ヨークシンシティへと旅立った。

 

 

 

 

 

「…んあ?この感じは、ミトに持たせたテープが発動した?いや、こりゃ破壊されたの方が正しいのか?」

 

 人類未踏の秘境の奥の奥に、ダブルハンターにして世界最強の一角ジン・フリークスは一人滞在していた。

 

「ん〜?ちゃんと正しい手順で発動したのに破壊されたってことは、ゴンの奴が壊したか強い仲間がいるってことか」

 

 たとえプロハンターでも大半が数日と生きられないような超危険地帯にいながら、まるで自宅のリビングの如くくつろぐジンは破られた念について考える。十年前にかけた念とはいえ、そうやすやすと破壊されるような強度ではないはずなのだ。

 

「おもしれぇじゃん、もうそこまで強くなってんのか、そんな強い奴を仲間にしてんのか。案外見つかっちまうのも早いかもな」

 

 己が十年前にかけた念の発動と破壊に気付いた感性は凄まじいが、ジンはゴンの強さを正しく予想することは出来なかった。

 

「会いに来なゴン、世界は絶望するほどでかくて、それ以上に楽しいことが盛り沢山だからよ」

 

 不敵に笑うジンは知らない、既にネテロをして死を連想させる筋肉が自分をロックオンしたことを。

 既に十年前自分がどんな音声を録音したか覚えてないジンは、怒らせてはいけない相手を怒らせたことに対峙するまで気付くことはない。

 

 

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