オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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第37話 ヨークシンシティ到着と集う者たち

 

 

 皆さんこんにちは、いよいよヨークシンシティに到着したゴン・フリークスです。先んじて下調べ出来る事も考えると、やっぱりヒソカがMVPなのでは?

 

 

 

 

「よし、どうやら蜘蛛より先に到着出来たようだ。今の内に潜伏場所の候補を絞り、バレない程度に監視体制を整えよう」

 

 ゴン一行がヨークシンシティに到着してまず最初にした事、それはクラピカの導く者の鎖(ガイドチェーン)による幻影旅団の有無の確認である。既に8月下旬ではあるものの、犯罪者集団が一箇所に長期滞在しない可能性が高いということでギリギリまで鍛錬したことが裏目にならずにすんだ。

 

「じゃあオレとキルアにギンは廃墟とか人目の付かない所のあぶり出しで、クラピカとレオリオはマフィアと繋がりが出来ないか試すでいいのかな?」

 

「うむ、マフィアに関してはオークションが直近に迫ったこの時期に外部の人間と関わりを持つ可能性は低いが一応な」

 

「ま、とりあえず動こうぜ。日が暮れる前にホテル集合でいいな」

 

「オッケー、遊ぶなよレオリオ」

 

「それはむしろお子様組に言うやつだぞ」

 

 ゴン達は滞在場所に選んだホテルから、二手に分かれて行動を開始する。連絡はこまめに取ることと異変を感じたらすぐさま離脱することを徹底し、自分達の存在が露見しないことを最優先に街の中へと進んだ。

 

 

 

 潜伏場所探しの担当になった年少組は暗殺者としての経験からキルアが主導しようとするも、歩き回るよりいい方法があると言うゴンの提案で住宅街の近くにある大きめの公園へと訪れていた。

 平日の昼間ながら家族連れ等多くの人が行き交う雰囲気の良い公園は、まさに犯罪者集団の潜伏場所とは正反対すぎる活気に満ちている。

 頭に疑問符しか浮かばないキルアを引っ張るように、ゴンは小さな子供達を連れたママさん集団へと突撃する。

 

「すいませーん!聞きたいことがあるんだけどいいですか?」

 

 いつも以上に子供っぽく振る舞うゴンにキルアは変な顔になるが、ママさん達は可愛らしいお客さんを微笑ましそうに受け入れた。

 

「あらあらどうしたの?ここら辺じゃ見ない子だけど迷子かしら?」

 

「オレ達オークションに用があって来たんだけど暇なんだ、だから近付いちゃ駄目な所とかを教えてもらって来いって言われた」

 

「ああ!もうそんな時期ですもんね、ちゃんと言いつけを守って偉いわね。危険な所と言えばやっぱり町外れの廃墟ビルかしら、何度も事件が起きてるしね」

 

「あそこあそこ、ヨークホテルの近くにある元別荘の廃墟もここから近くない?」

 

「それなら五丁目の…」

 

 女三人寄れば姦しいと言うが、5人以上のママさん情報網は留まることを知らない。ゴンは地図に情報を書き込みながらも、ママさんの会話に遅れることなく付いていく。

 置いてけぼりをくらい所在無さげに立ち尽くすキルアだったが、ふと子供達が自分を見ていることに気付いた。まだ一桁だろう子供達も暇そうにしているのを確認すると、ゴンに一言かけ広場へと連れて行く。ゴンとママさんが満足するまでの間、キルアとギンは子守をして悪くない時間を過ごした。

 

 

「お姉さん達ありがとう!すごく助かりました!」

 

「私達も楽しかったわ、子供の面倒も見てくれてありがとう」

 

「キルアにぃちゃんまたあそぼーね!」

 

「ギンもまたおひるねしようね!」

 

『バイバーイ!』

 

 夕方に差し掛かろうという頃ようやく解散となり、様々な情報の書かれた地図を確認したゴンがふと横を見るとそこには複雑な表情をしたキルアがいた。去っていく子供達を見る目はナニカ別のものを見ているようで、それでいてどこか満ち足りた感情もアルカに思える。

 

「キルア、どうかした?」

 

「あ~、上手く言えねぇんだけどさ、多分オレの消されてる記憶に関わってるんだと思う。なんつーか無性に寂しいし、無性に楽しかった」

 

 ただ見つめるしか出来ないゴンと、足に擦り寄るギンに苦笑いしたキルアはギンを抱き上げるといつもと変わらぬ笑顔を浮かべる。

 

「日の入りまで時間も大してねぇんだ、さっさと次動こうぜ」

 

「…だね、怪しい順に五ヶ所が候補だから早速行こう。ホテルから遠いのはあっちかな」

 

 地図を見ながら先導するゴンに付いていきながら、キルアは子供達の見えなくなった方向を振り返る。

 

(わりぃな、もう少し待っててくれ、絶対に思い出すからよ)

 

 決意を固めたキルアは前を向き、強くなることを改めて誓った。

 

 

 なお廃墟の探索は獣ギンと野生児ゴンの常軌を逸した嗅覚により一瞬で終了し、この日何一つ仕事のなかったキルアは顔をしわくちゃにしてホテルに戻った。

 

 

 

 

 マフィアとの接触を目論むクラピカとレオリオは、二人揃って黒スーツに着替えるとガイドチェーンの案内で人気のない路地裏を探索していた。

 

「ここまで来といて何だけどよ、そんな簡単にマフィアと会えるのか?事務所とか行っても基本は門前払いだろ」

 

「そうだろうな、だからこそ今探しているのは裏の仕事等を斡旋している受付のような所さ。こういった大都市になると何ヶ所か存在するのが普通でな、そこから人手を求めるマフィアの情報を得る」

 

「ほーん、そんなとこもあるんだな」

 

 その後数分の探索で目的の場所を見つけた二人は、細く暗い地下への階段を下っていく。薄汚れたクローズの看板が出迎えるが、クラピカは全く躊躇せずに古びたベルの付いた扉を開ける。

 

「おや、見かけない顔だがよくここに辿り着けたな。いらっしゃい、何がお望みだ?」

 

 酒も何もないカウンターにいたのは、目の周りを黒くメイクしたパンクロックファッションの男。細身ながら引き締まった体を持ち、さらに驚くことに念能力者だった。

 

「…それなんでブラしてんの?」

 

「ブラじゃねえファッションだ。冷やかしなら帰りな」

 

「見ての通り私達も念を使える、オークション中どこか働き口がないかを聞きに来た(ブラではないということは、大胸筋矯正サポーターか?)」

 

「時期が悪いな、一ヶ月前なら紹介も出来たが今は難しい。後ファッションだって言ってんだろ丈の短いタンクトップだ」

 

「やはりそうか、ならば他を当たらせてもらう(こいつ直接脳内を!?)」

 

「まぁ待ちな、一発でここに来れた腕に免じていくつか教えてやる。そんでお前さんは顔に出すぎだ」

 

 見た目の奇抜さからは想像できないほどまともな男の説明によれば、どこのマフィアも使い捨ての鉄砲玉くらいしか雇うことはないということと他の斡旋所に行っても意味がないということだった。

 

「一言で言えばお前さん等は使えすぎるんだよ。その強さは長期雇用向けだし、短期雇用しようにも何もない状況で雇うには費用がかさみすぎる」

 

「なるほど、他の斡旋所に行っても意味がない理由は?」

 

「他の都市ならともかくここヨークシンシティは“十老頭“が全部仕切ってんのさ、ランク分けこそされているが大本が一緒だから他に行っても変わらん。ちなみにこの斡旋所が最高ランクで、かの“陰獣“も御用達だ」

 

 その説明でクラピカは十老頭の影響力が予想以上だったことに気付き、無理にマフィアと接触した場合のことを考える。

 

(仮に接点を持てたとしても、これだけの影響力となると蜘蛛も何かしら手を打っている可能性があるな。となるとここで粘るのはむしろ悪手か)

 

 考えをまとめたクラピカはアホ面を晒すレオリオの頭を軽く叩くと、色々と教えてくれた男に多めの金と連絡先を渡す。

 

「しばらくはヨークシンシティに滞在しているからな、もし状況が変わったら教えてくれると助かる」

 

「ま、それくらいならいいだろう。まいどあり」

 

 男は連絡先を確認すると、そのまま燃やして処分する。その対応に軽く頭を下げたクラピカは、レオリオを連れて外へと向かう。

 しかしレオリオは扉を閉める直前に振り返ると、未だに引っかかっていることを質問する。

 

「ねぇなんでブラしてんの?」

 

「ブラじゃねぇよ!ぶっ殺すぞゴラァ!!」

 

 閉じた扉になにか硬いものが投げ付けられる音がこだました。

 

 

 

「さっきの奴見た目の割に随分良い奴だったな」

 

「レオリオなりの人格判定なのだろうが、あまり初対面の相手にやりすぎるなよ?」

 

「時と場合は選ぶさ、しっかし世の中はオレの知らない世界で溢れてんなぁ。どんだけ恵まれた環境にいたか実感するわ」

 

 レオリオはグループの年長者ながら、苦労少なく過ごしてきた自分に負い目を感じていた。率先して皆を引っ張るべきと思いながらも、強さはゴンに遠く及ばず頭の回転もクラピカやキルアに及ばない。自分が出来る治療も、すなわち守られているようなもので年下を前線に出すことになる。

 己の生き方は何度繰り返したとしても変えられない自覚すらあり、そのことがレオリオの心に小さな針を刺し続けていた。

 

「そうだな、ゴンも実の親がいないだけとはいえあの修羅具合だからな、ハンター試験まで最も快適に過ごしていたのはレオリオで間違いない」

 

「んぐっ!?」

 

「しかしなレオリオ、何度も言うのはむず痒いから一度しか言わんぞ。我々は皆、特に私とキルアは間違いなくお前に救われている」

 

 突然の糾弾とも取れる言葉から続いた内容に、レオリオは何とも言えない顔で前を歩くクラピカを見つめる。

 

「私はクルタ族が壊滅してからお前達に出会うまで、この世の悪い部分しか見てこなかったし、恐らくキルアも人生の大半がつらい記憶だろう。だからこそ、ゴンとお前は私達にとって光そのものだ」

 

 突然の告白に顔が赤くなるのを止められないレオリオは、クラピカのうなじも真っ赤に染まっているのを見て更に照れる。

 

「ゴンやギンが一番言うことを聞くのは、キルアが一番ちょっかいやイタズラをしかけているのはお前だレオリオ。おそらくは兄のように、あるいは父のように慕っているのがよくわかる。私は…」

 

 そこで黙ったクラピカは一度咳払いを挟み、らしくない上ずった声を上げる。

 

「とにかく!お前はそのままでいいんだ。私達が振り返ったらすぐそこで呑気に笑っていろ、わかったらうじうじするな気持ち悪い!!」

 

「…ハハッ、はいはいわかりましたよ。オレはお前らの後ろから付いて行って尻拭いでも何でもしてやるさ、だからちゃんと前向いて歩けよ」

 

 決して心に刺さる針がなくなったわけではない、しかしそれ以上に自分がいる意味を強く意識した。

 

「しかし急にどうしたよ?随分こっ恥ずかしい事言うじゃねえか」

 

「…どれだけ準備したところで確実ではない。自分でも弱気だと理解しているが、伝えられずに終わることだけはしたくなかった」

 

「それフラグだぜ?ま、年長者として弱音も愚痴も聞いてやるからよ、お子様の前では自信満々でいろよ」

 

「ふん!言われるまでもない」

 

 まだ日が暮れるまで時間があるため、地理の把握も含めていくつか買い物を済ませていく。

 そして夕焼けになった頃ホテルへ向かっていると、ゴン達がこちらに気付いて走ってきているのが見えた。

 

(…死なせたくねぇなぁ。全員で笑ってまた遊びに行かねえとな)

 

 夕日に照らされながら帰路につく4人と一匹の姿は、周囲からまるで家族のように見られていた。

 

 

 

 

 

「やだやだやだやだやぁーーだぁーーーー!!」

 

 少女趣味全開の部屋の中で、髪の長い少女が癇癪を起こして暴れている。

 

「オークション前にも買い物するのぉーー!!」

 

「しかしすでに多くのマフィアがヨークシンシティに集まっていますので、お嬢様の安全を考えますとこちらとしては」

 

 そんな少女に恭しく対応するのは、中年の体格が良く目の下の入れ墨が特徴的な男性。

 

「じゃあ占いしない!!もう誰も占わないもぉーーーーん!」

 

「…わかりました、なんとかお父上に3日前からヨークシンシティで行動する許可を得ますのでなんとか」

 

「ぷぅ~、わかったそれで我慢する。けど買い物はもちろんオークションにも出るからね!!」

 

「それはまたお父上に直接お願いしてください。準備を開始するので失礼します」

 

 部屋から出た男性、ネオン・ノストラードの護衛隊長ダルツォルネは新たに発生した仕事にため息を吐いた。

 

 

「スクワラとセンリツ、お前達は明日ヨークシンに向かってホテル周囲の安全を確認しろ。場合によっては滞在ホテルの変更も認める」

 

 ダルツォルネは護衛の中で特に索敵に優れた二人を呼び出し、護衛とは別の新たな任務を言い付けていた。

 

「了解です。何かあれば報告しますが、こちらの裁量で何処まで動いても?」

 

 一人は額にホクロのある長髪の男、多数の犬を対象とした操作系能力者のスクワラ。

 

「他のマフィアとトラブルを起こさなければ構わん、ノストラードの名も使っていい」

 

「現地で買い物と聞こえましたけど、護衛を増やしますか?」

 

 もう一人は小柄で頭頂部に髪のない出っ歯の女性、音に敏感な放出系能力者のセンリツ。

 

「いや、現地調達はリスクの方がでかい。そのあたりは特に考えなくていい」

 

 ダルツォルネは付き合いの長いスクワラと、新入りながら思慮深さを随所に見せるセンリツを見込んでヨークシンシティへ先行させることに決めた。

 

「方針は変わらん、全てはボスの安全が優先される。それを脅かす存在だけは決して許すな」

 

『了解』

 

 ヨークシンシティに役者が集う。

 

 唯一結果を知ることの出来る占い師は、興味が無いため先を観ることがない。

 

 一つの結末を知りながら運命を圧し曲げた筋肉は、最高の未来を掴み取ることができるのか。

 

 いくつもの思惑が交差する、激動の数日間まであとわずか。

 

 


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