オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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第2話 船旅とトリオ+α結成

 

 皆さんこんにちは、ギンに肩乗られると体幹狂いそうなんで頭に乗ってもらってるゴン・フリークスです。

 

 ついに先程ミトさんや島の人達から見送られ、HUNTER×HUNTERの世界への船旅をスタートさせました。ギンについては大人しさからミトさんが世話すると言い出し、ギンもご飯の味をしめてちょっと葛藤しましたが無事一緒に旅立てて安堵してます。

 具体的な日時がわからないため原作の船に乗れるかの不安も、先程レオリオを見つけたことで払拭されたので例のシーンまでギンをモフモフして過ごそうと思います。

 なお、必要以上にモフられたくないギンとの高度な攻防力移動勝負なのでこれも立派な修行です。

 

 

 

 ゴンたちの乗る大型の帆船が、大時化すら子供騙しに思える荒波を進んでいく。一つ越えるたび船がバラバラになりかねない波にもまれる船内、ハンター試験を目指す益荒男たちはほぼすべてが船酔いでダウンしていた。

 当たり前だが、普通より鍛えているくらいで耐えられるような船旅ではない。有象無象をふるいにかける為にわざわざ荒れる海域を抜けるこのルートは、一度体験したらリピーター率ほぼ0%を誇っている。

 大きく揺れる船内、ゴンは原作同様ダウンした受験者を甲斐甲斐しく看護していた。横目で確認したレオリオとクラピカも、それぞれが記憶の中と同じように過ごしていて否応にもテンションが上がっていく。しかし全て同じというわけでもなく、明らかに原作と違うところが見られる。

 

(レオリオってこの時はエロ本読んでたはずなのに多分医療系の専門書だし、クラピカは武器の木刀がちゃんとした刃物になってる。やっぱり原作と違うところがそこそこあるのかな?)

 

 既に原作と違うギンという相棒がいる上に自分が関わっていない所でも差異がある以上、この世界はHUNTER×HUNTERによく似たパラレルワールドというのが濃厚になる。

 もっともゴンは、ここまで同じ様な展開になっている以上、流れに身を任せれば原作から大きく乖離はしないと期待していた。

 

 やっと嵐を抜けたところへ更に強力な嵐がくる宣告は、予定調和の様にゴン、クラピカ、レオリオ三人以外の受験者を船旅から脱落させた。残った受験者を見定めるためにやって来た船の船長は、例年になく若い三人に期待感が膨らむのを自覚していた。

 しかし目の前に並ぶ個性豊かな若者達をあえて睨めつけ、アルコールの入ったボトルを傾けながらお決まりの質問をする。

 

「お前さんたちがハンターを目指す理由を教えてくれ。言っとくがわしも試験官の一人だ、虚偽や気に入らねえ理由なら遠慮なく落とすぜ」

 

 堂々と私情で失格にすると断言する船長に、クラピカとレオリオは憮然とした表情になるが落第を仄めかされた以上口答えまではしない。

 二人が黙ったのを見てまずは自分かと、ギンを頭に乗せたままゴンが列から一歩前に出る。

 

「オレの名前はゴン、頭にいるのは相棒のギン。いつか超えたいと思ってる人より強くなるためにハンターになる。後ついでにプロハンターの親父を一発ぶん殴る」

 

 3人の中で一番の若造とは思えない堂々とした宣誓、目指すとかなりたいという願望ではなく、ハンターになるのはただの通過点だと言い切るゴン。

 多くの受験者を見てきた船長も、性格的に茶化すはずのレオリオも、ハンター試験の困難さを正しく理解しているクラピカも、誰も何も言えずに只々ゴンを見る。

 この場で最も若く小柄な体から迸る決意と覚悟に、それぞれの胸中に様々な感情が浮かんでは消えていた。

 

「あー、お前さんの親父っつーのに興味は有るが、とりあえずはサングラスのにーちゃん、あんたの動機を聞こうか」

 

 経験の差から一足早く我に返った船長に指名されたレオリオは、気を落ち着けるように瞑目したあと、下がったゴンの代わりに前にでる。

 

「オレはレオリオって者だ。ハンターを目指す理由だが、端的に言って金と名声さ。この2つがあれば、何でも買えるし何でも手に入る!」

 

 己を奮い立たせるための大声と大袈裟な身振り、それはゴンに呑まれかけた故に出た虚勢でもあり、どこか道化の様な滑稽さがあった。

 

「品性は金で買えないよレオリオ」

 

「んだとこら、そう言うテメーはさぞかし立派な理由なんだろうな?そんでもってどう見ても年下だろお前、レオリオさんだ」

 

 見た目のまま粗暴なレオリオはともかく、落ち着いた見た目の割に喧嘩腰なクラピカもまた、呑まれかけた動揺から立ち直れていなかった。

 

「私の名はクラピカ、クルタ族の生き残りだ。動機は一族の復興と、虐殺者共への復讐にハンターが最も適していると判断したから」

 

 深い悲しみと怒りこれでもかと負の感情を垂れ流しにするクラピカだが、それすらも先程の鮮烈な印象を与えたゴンに及ばない。

 

「けっ!イチャモン付けっからどんだけ御大層なもんかと思えば、田舎民族の血生臭え復讐劇かよ。お涙頂戴してまで合格したいにしてはちょいとチープすぎじゃねえか?」

 

「品性どころか人として大切なものすら欠けているようだ。どこで買うつもりなのか聞いてもいいかな」

 

 売り言葉に買い言葉でヒートアップしていく二人、船長はゴンが悪い意味で影響したと気付いているが当の本人は原作よりギスギスしてるなと能天気にしていた。

 いよいよ互いに譲れず刃傷沙汰まで発展すると思われたが、小腹の空いたギンが我関せずに鳴き始める。ゴンは餌の催促だとわかるが、周りからしたら小動物が怖がって鳴いてるようにも見える状況に一時妙な間が空く。

 

「レオリオさんはいくらなんでも言いすぎじゃないかな、クラピカさんも怒るのはわかるけど先に挑発みたいなこと言ってるし、まずはご飯でも食べて落ち着かない?勘だけどちゃんと話し合えば二人の相性結構良いと思うよ」

 

 ギンに干し果物を与えながらのほほんと提案してくるゴンに毒気を抜かれ、二人はややあって苦笑しながら改めて向き直る。

 

「すまないレオリオさん、他人の動機に口出しするべきではなかった。その後の礼儀のない態度も重ねて謝罪する」

 

「へっ、今更さんなんて付けんなよ、呼び捨てのタメ口でいい。こっちもクルタ族への中傷もろもろ全部撤回させてくれ、悪かった」

 

 冷静になって会話してみれば互いに嫌悪感は出ず、間にいるゴンとも敬語はなしとした上で話してみれば予想以上に盛り上がる。

 急に長年の友の様に話しながら食事の準備を始める三人に、一人取り残されて手持ち無沙汰の船長。

 

「わし、別に合格とも何とも言ってないんだけど」

 

 呟きすら無視して和気あいあいとする三人を淋しげに見つめ、それでも合格と思うくらいにはいいトリオだと思うのが少し悔しい船長だった。

 

 

 


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