皆さんこんにちは、確かにわがままなところはあるけど思ってたより素直で良い子なネオンさんに好印象なゴン・フリークスです。趣味が悪いと思ってましたが、
オークション開催の2日前、朝の日課となった
「ついに来たか、ここからはより慎重に行動しなくてはな」
「さっさとノストラードのとこに行ってカメラ確認するか?」
「いや、万が一到着直後で鉢合わせても面倒だ。しっかり朝食を取って時間を置いてから行くぞ」
その後ゴン達は出歩く人々が増えるのを待ってからホテルを出発、ゴンとギンが周囲の匂いに注意しながら目立たぬようにノストラードファミリーの拠点に到着する。
ダルツォルネへの挨拶もそこそこに、監視カメラを担当していた構成員に聞けば印の付いた地図と2枚の写真を持ってくる。
「ヨークシンの外れにある廃ビル地帯なんですが、ほんの少し前に突然ビルの数が増えています。さすがに人影等は確認できませんでしたが、動きがあったのはここのみです」
そこは話し合いの結果最も可能性が高かった地点であり、だからこそ監視カメラは最小限どころか一つしか設置していない。
「タイミング的に見れば今日の朝イチの便で到着したか、夜に侵入して下調べしたかのどちらかだな。ゴンは匂いで何人来たか確認してきてくれ、センリツはこの廃ビルにどれだけ近付いたら音を拾える?」
「今日は晴れてて風もないし、音の取捨選択をしなくていい分一番近いビルの屋上に行けば誰かが居るかくらいはわかると思うわ」
「よし、ならばゴンとギンのペアとキルアとセンリツのペアでそれぞれ行動を頼む。私とレオリオはネオンの護衛になるか」
クラピカが大凡のプランを提示すると、各々が動こうとするのをゴンが止める。
「クラピカとレオリオはダルツォルネさんにオークション会場案内してもらいなよ、ネオンさんの護衛もオレが担当するからさ」
「ボスを危険な任務に連れていくつもりか?だとしたら重大な契約違反になるぞ」
「廃ビルに何人入ったかはギンだけでも調査できるからね、この公園でスクワラさんの犬達と遊ぼうと思うんだけどどうかな?」
そう言ってゴンは廃ビルがギリギリ見える範囲にある公園を地図で示す。キルアとセンリツが行く予定のビルからも近く、いざという時合流することも簡単そうだった。
「それでも幻影旅団に近付くのはどうかと思うが」
「この公園って見晴らしがすごくいいし人もそれなりに多いんだよね、幻影旅団みたいな裏の人は絶対に近付かないしこっちもすぐに気付ける。むしろ死角が多くて人口密度の高い、ショッピングモールとかのほうが危険だと思う」
「…なるほどな、ボスが許可したら認めよう」
そして外出準備の整ったネオンは昨日の疲れが残っていたのもあり、ゴンからの提案である公園に行くことを渋々了承する。
「その服昨日選んだやつだよね、やっぱりネオンさんの雰囲気的にゆったりした服が似合うね!」
「え〜?まあ、あたしレベルなら何着ても似合うしぃ?選んでもらったから早速着てるわけじゃないしぃ」
「馬子にも衣装だな、目がチカチカするわ」
「チビ頭のほうが光反射してうっとおしいんですけどぉ!それ実は禿げてるんじゃないの!?」
そして再びゴンがネオンと手を繋いで出発すれば、行き先は同じ方向ということでキルアとセンリツも護衛に混ざり部屋を出ていく。
「…すまない、本気で頼みたいんだがオークションが終わったら雇われてくれないか?」
「希望は薄いが考えておこう。それで?何か不安なことがあるようだが、予言で不吉な結果でも出たか」
「っ!?」
「え、マジでやばい予言出たのか」
クラピカの予測に表情を変えたダルツォルネを見て、レオリオも顔を顰めてテンションが下がる。
「想定内だな、こちらが数でも質でも劣っているのはわかっていたことだ。これで予言の内容が良かったらむしろ落とし穴がありそうで逆に不安になる」
「いやそれはそうだけどよ、100%当たるって言われれば良い内容の方が嬉しいだろ」
ダルツォルネは悪い予言が出たと言ったにもかかわらず、大して気にせず余計なプレッシャーを感じた様子もないクラピカとレオリオに頼もしさを感じる。
(そうだったな、お嬢様の予言は変えられることこそが最大の強み。それすら頭から抜け落ちるとは情けない)
気を持ち直したダルツォルネは予言の書かれた紙を持ってくると、二人に手渡し詩の構造について簡単に説明する。
「つまり詩が一節しか出ないということは、何もしなければ一週間で死ぬということだ。何か質問は…」
説明を終えて顔を上げたダルツォルネの目に映ったのは、ゴンも死ぬというおよそ信じられない内容に青褪めているクラピカとレオリオだった。
(…あれ?やっぱり手を引くべきだったか?)
その後何とも言えない重い雰囲気が長く続き、オークション会場の下見に行けたのは昼も間近という時間だった。
ヨークシンシティの外れにある廃ビル、目当てのオークションまでまだ2日の時点で幻影旅団の半数近くが集合していた。
「ちょっと早めに来いって言うから来たけど何かあったの?」
幻影旅団の頭脳にして、情報戦等裏方の仕事に卓越したNo.6のシャルナーク。
「このメンバー見ればなんとなくわかんない?どうもヒソカがコソコソ動いてるみたいだから、腹芸出来ない奴ら除いて作戦会議よ」
記憶を封印されたことに気付けない、旅団内で上位の戦闘力と的中率の高い勘を持つNo.3のマチ。
「私はマチがからかわれただけなんじゃないかと思うんだけどね」
人や物の記憶を読む特質系能力者、強さ以上にその能力から旅団で最上位の価値を持つNo.9のパクノダ。
「さっさと始末しちゃえばいい、ぼくあいつ嫌い」
なんでも複製することの出来る具現化系能力者、戦闘力はパクノダと旅団内で最弱を争うが同じく替えのきかないNo.12のコルトピ。
「私も賛成〜、怪しまれた時点でアウトじゃないですか?」
生物以外何でも吸い込む掃除機を具現化する能力者、あまり表情の動かない旅団に入ってまだ間もないNo.8のシズク。
「ヒソカが実際に動くまでは泳がせる。シャル、ヨークシンで何かおかしなところは見つかったか?」
幻影旅団の頭にして他人の発を盗む特質系能力者、様々な名品珍品のコレクターの旅団長クロロ。
全13人の幻影旅団の内すでに6人がヨークシンシティに潜入し、狙うオークションそっちのけでヒソカについて話し合っている。
「色々調べてみたけど特に何もなし、オークションが近いからマフィアがピリピリしてるくらいだね」
幻影旅団での情報収集をほぼ全て担当するシャルナークをして、ヨークシンシティの例年と違うところを見つけることは出来なかった。
「ほらやっぱり。そもそもヒソカはクロロとタイマンしたいだけなんだから、全員集まる時に動いたり他人の手を借りておこぼれを取られたりしたくないでしょ」
「オレもパクの意見に賛成かな、バレない程度にヒソカの行動を漁ったけどハンター試験を受けて天空闘技場に行ったっぽいとこまではわかったよ。長距離通話の履歴もなかったし一応まだ白じゃない?」
ヒソカが動くと考えるクロロとマチに対し、パクノダとシャルナークはまだ動かないと予測する。
「関係ない、クロロに殺意あるならヤッちゃえばいい」
「私もヤッちゃっていいと思いますよ、だって団長狙いなのあからさますぎじゃないですか」
コルトピは普段からヒソカが自分を見る目、すなわち弱者を嘲る視線が気に入らないのも合わせて問答無用の粛清を提案する。シズクはそれほど他意はないが、ヒソカの隠す気のない殺意にはやや辟易していた。
「結局多数決で様子見ってことだね。どーするクロロ、何か理由付けてパクノダに見てもらう?」
「…そのあたりが妥当か。お前達もあまり露骨に警戒はするなよ、隙を見せすぎないことはヒソカにとって逆に隙となりうる」
『了解』
クロロの一声でヒソカについての話し合いが終了すると、裏稼業とはいえプロの気質か今までが嘘のように他愛ない世間話に移行していった。
「あ〜、あったかくてふわふわだよ〜」
きれいに整備された公園の芝生に寝転がり、周りを大小様々な犬に囲まれたネオンは初秋のひだまりの中うつらうつらと微睡んでいる。
その予言という破格に過ぎる能力から箱入りどころか檻入娘とも言える過保護さと、国のトップすら凌駕する護衛に気の休まることの少ない多感な年頃のネオンはその性格の奥で鬱屈とした思いを抱えていた。
「ネオン様、日差しが強くなってきましたのでパラソルを立てさせていただきますね」
「ん〜」
外出中でありながら今まで見たことがないほどリラックスしているその姿は、普段振り回されているとはいえ思わず微笑んでしまうほど見た目通りの可憐さだった。
「ゴン、センリツ達が偵察に行ってから大分経ってないか?何か問題が起こってないか?」
「大丈夫だよスクワラさん、キルアとギンは何も出来ないでやられるほど弱くない。それにまだ10分くらいしか経ってないよ」
落ち着いて堂々としている犬達とは違い、使役する側のスクワラは落ち着きなく周囲を伺っている。護衛団の同僚である放出系能力者のシャッチモーノも、落ち着きのない様子を苦笑いしながら見ていた。
「少しは落ち着けよスクワラ、そんな情けないざまじゃエリザに愛想つかされるぜ?」
「けっ!俺とエリザの仲はそんなに弱くねえよ、なあエリザ!」
「もぅ…」
落ち着きがないのも何のその突然惚気けたスクワラにネオンの側で待機するエリザは赤面し、からかったシャッチモーノは口笛を吹きながら能力の
護衛団の特に付き合いの長い彼等の様子を微笑ましそうに見ていたゴンは、するりと己の足元に戻ってきたギンに気付いて抱き上げる。
「全員?」
「くぅん」
「じゃあ6か7?」
「きゅぅ!」
「オッケー、ありがとね」
ゴンと簡単に確認だけすると、ギンは穏やかに眠るネオンの髪の中に潜り込み丸くなった。
「なあ、本当にギンは操作されてるわけじゃないんだよな?お互いの信頼関係だけでそれだと正直自信なくすぜ。うちの犬達も念に目覚められないのか?」
「ギンがどうして念を使えるのかはオレにもわからないんだよね、ギンの子供とか周りにいた動物達も結局目覚めなかったし」
犬を操作するスクワラからするとギンの存在は希望そのものであり、もし仮に念に目覚めた犬達を操作できればとんでもない戦力増強になるのだ。しかし現実問題として念に目覚めた動物自体ギン以外に報告がなく、どうやったかもわからなくては再現のしようがない。
「んー、無理矢理精孔を開いたらオーラの枯渇で死にかねねえし、瞑想させようったってなぁ」
スクワラが最も古参の犬を撫でたりオーラに触れさせてみたりと試行錯誤するのを横目に、オーラの補充が終わったサル顔で渦巻もみあげが特徴のシャッチモーノがゴンに気になっていたことを質問する。
「ゴンくん、君が凄まじく強いのは初対面の時にわからせられたけどよ、正直なところ幻影旅団と戦ったらどっちが強いか聞いてもいいか?」
「能力者同士の戦闘に絶対はないってのを前提にしてだけど、タイマンでなら全員に勝てるって自負してるよ。オレ自身は直接相対したことはないけど、信用できる情報を加味すると間違いないと思う」
シャッチモーノは年も身長も己の半分程度のゴンが、そこまでの高みにいることにどうしても懐疑的にならざるを得なかった。もちろん自分など歯牙にもかけず蹴散らされることは自覚していたが、センリツやスクワラのように特殊な感覚を持たない身では見た目通りの存在と脳が誤認してしまう。
「おいシャッチ、わからんでもないがそれ以上踏み込むな。世の中にゃあ見ないに越したことのない世界があんだよ」
「そうは言ってもよ、協力関係にあるからには組のためにもしっかり知るべきじゃねえか?お前とセンリツのことは信頼してるといってもよぉ」
「じゃあちょっとだけ見せてあげるよ」
幻影旅団という特A級が相手のため不安を拭えないシャッチモーノと、そんなシャッチモーノが理解できるためあまり強くは言い切れないスクワラ。そんな二人を見かねたゴンが口を挟めば、敵意がないことはわかっていてもネオンの周りにいる犬達が一斉に顔を上げる。
スクワラとシャッチモーノにエリザ含む侍女たち、ついでに犬達が視線を向ける先であぐらをかいて座っていたゴンが
体重換算で倍以上にパンプアップしたゴンに全員が驚きの声すらあげられずただ目を見開いた。
「あん?何で元の姿になってんだ?別に問題があったわけじゃないだろ」
そこにキルアとセンリツがタイミングよく戻り、平然と対応するキルアと違ってセンリツも目と口をあんぐりと開けている。
「強さを知りたいって言われてさ、戦うわけにもいかないしちょっと見せてた」
「だとしてもいきなりやってんじゃねえよ、どこに目があるかわかんねえんだぞ」
キルアは座っていてなお自分と大して変わらない位置にある頭を引っ叩くと、未だにフリーズしている周りを見て自分も通った道かと盛大にため息を吐いた。
「しかしマジでセンリツは反則だったぜ、今いるメンバーも多分わかったし話してた内容も大体見当がついた」
あの後完全に熟睡に入ったネオンを連れてホテルへと戻り、下見から帰ってきたクラピカ達も交えて再び話し合いを行っていた。
「今いるのはほとんどが非戦闘員で団長もいるのか、千載一遇のチャンスとはこのことか。これは揃う前に動くべきか?」
「そうしたかったんだけどさ、聞き取れた範囲だとすぐに追加が来るんだって。下手に挟まれるのも嫌だし最初の予定通り行くべきじゃね?」
「それならしゃあねえな、こっちも下見とかどうでもいい予言があったからそれについて詰めようぜ」
そして改めて全員で予言の内容に目を通せば、ゴンもキルアも顔を顰めこそすれど大したショックを受けた様子もなく受け入れる。
「あれ、そんな反応なのか?オレやクラピカはめっちゃ動揺したんだが」
「オレの予言は完全に想定内だし、ゴンがやられたってんなら全滅も驚かねえよ。むしろ悪い予言が出たんならラッキーまであるだろ」
思っていた反応との違いに釈然としないレオリオに対して、キルアは鼻を鳴らして考えを述べた。
「これ見たらそもそもオレが戦線に入れてないみてえだし、ゴンが操られてるっぽいってことはそこから総崩れの決着だろ。ならやっぱり何とかしてシャルナークの奴を潰せば良いだけだ」
自分とゴンの予言を指で叩きながら断言するキルアから悲壮感といった感情は感じられず、そこにはいつも通りのふてぶてしい生意気さがあった。
「確かにその通りだ。悪い内容に気持ちからして負けかけていたが、キルアの言うように良い予言から対策するより悪い予言からの方が対策は容易い」
キルアの指摘を受けて再び予言を熟読するクラピカとレオリオだったが、静かなゴンを不思議に思い目を向ければ険しい表情で己の予言を見つめていた。
(あなたはあなたじゃない、これが操作されるって解釈ならまだいい。問題は
操作されるであれば対策のしようもあるが、もし人格の否定だった場合出来ることが何も無くなる。
覆ることのない破滅の予言と化してしまう。
「どうしたゴン、何か気になるとこがあんのか?」
「どうせあれだ、頂に未到ってのが気に入らねえんだろ?死んだら未到なのは当然なんだから気にすんなっての」
「うむ、私達は皆お前が頂に到ると確信している」
「…そうだね、頂の前に幻影旅団だしね」
ゴンは言えなかった。
そもそも初めからゴンだった以上キルア達にとってのゴンは自分であり、原作がどうのこうの言ったところで混乱するだけで何一つとして良いことはない。
原作から変化していることも含めてアイデンティティの確立は出来ているつもりだったが、曖昧とはいえこうして指摘されてはその想いも揺らいでしまう。
(大丈夫、たとえ不安通りの予言だったとしても、全部ねじ伏せれば問題ない!)
ゴンは空元気だということを自覚していたが、それ以上何も出来ない現状を歯痒く思いながら話し合いを続けるのだった。