オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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第41話 動き始めた蜘蛛とほくそ笑むピエロ

 ヨークシンドリームオークション開催前日の昼過ぎ、幻影旅団が拠点に定めた廃墟ビルに全団員が集合していた。

 

 No.1 刀を携えた侍ファッションのノブナガ

 

 No.2 漆黒のコートをまとう小柄なフェイタン

 

 No.3 くノ一風の気の強いマチ

 

 No.4 ピエロメイクの偉丈夫ヒソカ

 

 No.5 エジプト風の被り物をするフィンクス

 

 No.6 一見特徴のない優男シャルナーク

 

 No.7 顔に複数の傷があるフランケンめいた男フランクリン

 

 No.8 最も新人で眼鏡の女シズク

 

 No.9 記憶を読むグラマラスなパクノダ

 

 No.10 包帯で全身を包み込む男ボノレノフ

 

 No.11 原人のような服の筋骨隆々の大男ウボォーギン

 

 No.12 長髪に埋もれている小柄な男コルトピ

 

 そしてNo.0にして蜘蛛の頭、他人の発を盗む能力者クロロ

 

 旅団結成時から数えるほどしかない全団員での依頼、しかもフルメンバーとあってさすがに百戦錬磨たる悪人達も若干の困惑が見られた。

 

「よく集まったなお前等、全員指定された刻限に揃ったのは嬉しい誤算だ。単刀直入に言うが今回のターゲットは地下競売に出品される全て、根こそぎ俺たちが掻っ攫う」

 

 クロロの宣言にそれぞれが反応を示す中、特に血の気の多いウボォーギンは雄叫びを上げて歓迎する。

 

「サイッコーじゃねえか!命じてくれ団長、俺はどうすればいい!?」

 

「お前だけじゃない、全員に命令だ。…殺せ、邪魔する奴は1人残さずな」

 

 改めて雄叫びを上げるウボォーギンほどではないが、それぞれが好戦的な笑みを浮かべてこれから行う大仕事に高揚する。それを一度ゆっくりと見回したクロロは、オーラを滾らせ指を一つ鳴らして合図を出す。

 

 シャルナークが相手を操るアンテナをヒソカに突き付け、マチが念糸で全身を拘束した。

 

「…これってなんのアトラクション?マチにはこんな糸じゃなくて体で直接抑えてほしいんだけど♥」

 

「随分あっさり拘束されるじゃない、何考えてるわけ?」

 

「いやいや、それはボクのセリフだよ♦ちゃんと期日通りに集まったのにこの仕打ちはひどいじゃないか♠」

 

 事前に話し合っていたメンバー以外の戦闘員達は突然の展開に驚きを見せるが、相手がヒソカとあって特に止めることもなく黙って成り行きを見守る。

 

「ヒソカ、お前はマチにオークションで俺と戦うと言ったそうだが間違いないな?」

 

「戦うって言ったんじゃなくて、チャンスがあれば手を出したかったって言ったんだよ♣流石に全員揃ってる時に誘うわけないじゃないか恥ずかしい♥」

 

「きもっ」

 

 マチから漏れた言葉は無視され、クロロは真っ直ぐヒソカを観察するが動揺といったものは一切確認できない。

 

「ではパクノダに調べさせるが構わんな?」

 

「ご自由に、けどもし濡れ衣だったら貸一つだよ♠」

 

 ほとんど敵しかいない状況に置かれながらも揺れないその精神性は、強者だらけのこの場においても一等の凄みを感じさせる。

 そしてパクノダが能力を発動させ、“このオークションで何かするつもりか“と質問するとなんとも言えない表情を浮かべる。

 

「これは完全な黒とは言いにくいわね、こいつゾルディックに依頼してるけど依頼内容がなんとも言えないわ」

 

「おいおいおい、ゾルディックに依頼してるなんて真っ黒じゃねえか!?始末するなら俺にやらせてくれ!!」

 

 パクノダの診断結果に考える素振りを見せたクロロを差し置き、すでにテンションが最高潮のウボォーギンが再び声を上げた。

 

 

「黙るね筋肉ダルマ、それ判断する団長よ」

 

「確かに、旅団の掟的にもターゲット的にも決めんのは団長だ」

 

「そういうこった、少しは静かにしてろ」

 

 うるさいウボォーギンをうっとおしそうに見るフェイタンが釘を刺し、フランクリンとフィンクスもその考えに同調する。

 そして考えがまとまったクロロがパクノダに視線をやると、その意を汲んでゾルディックへの依頼の詳細を説明する。

 

「依頼自体かなり漠然としてるんだけど、“オークション期間中にチャンスがあったら団長とタイマン出来るよう手伝う“ってのが詳細。ゾルディックってこんな依頼も受けてくれるのね」

 

「殺しじゃない依頼はむしろ割高になるがな、ある程度懇意になることが出来れば少しは融通がきくのさ」

 

 クロロが片手を上げるとマチは渋々と、シャルナークは軽く謝りながらアンテナをしまう。

 

「はあ!?何で止めんだよ?」

 

「いやいや、ヒソカが団長とタイマンしたがってるのは全員知ってることだろ?それ込みで旅団に入ったんだからあれくらいの依頼はセーフだよ。タイマンする場を作れとかの依頼だったらアウトだったけどね」

 

「そうなのか?せっかくヒソカとやれると思ったのによ」

 

 シャルナークからの説明を受けても未練たらたらなウボォーギンを尻目に、解放されて肩を回すヒソカはクロロに向って笑いかける。

 

「じゃあ貸イチってことでやろうよクロロ♥」

 

「バカを言うな、あくまでグレーであって白じゃない以上貸はつかん。さっさとオークションを襲うメンバーを選抜するぞ」

 

 ヒソカからの挑発を全く意に介さず、クロロは本命のオークションについて話を始めるとしょげていたウボォーギンのテンションが再び上がる。

 

「おっ!じゃあ俺が一人目だな!!根こそぎ奪うなら俺様がいないと運びきれないだろ」

 

「いや、お前は留守番組だ」

 

「なんでだっ!?」

 

「ウボォーギンは残ってヒソカの監視だ。いざとなればヒソカと戦えるし悪くはないだろ?」

 

 クロロからの命令に強い相手と戦うのが好きだが、弱い相手を蹂躙するのも大好きなウボォーギンは何とも不思議な顔で唸り声を出し続ける。

 

「オークション襲撃組はシャル、マチ、フェイタン、フィンクス、フランクリン、シズクの6人だ。とりあえず最初は出来る限り証拠を残さずやれ」

 

 指名された6人は各々が返事を返すと、下調べを済ませていたシャルナークの説明を受けながら潜入するために拠点を出発する。

 そして残ったメンバーはしばらく待機を言い渡され、クロロとパクノダにコルトピもヒソカから離れるために別の廃ビルへと移動していった。

 

「ククッ、ボクの信用ないなぁ♠」

 

「当たり前だろ、動ければ動くなんてのはほとんど黒のグレーじゃねえか。この程度で許してる団長に感謝しな」

 

 油断なく刀の間合いで監視するノブナガからもたしなめられ、ヒソカはつまらなそうに肩をすくめるとトランプを取り出す。

 そして落ち着いたのか監視を命じられていながらさっさと昼寝を始めたウボォーギンに、ボノレノフはイヤホンを付けて音楽を聞き暇をつぶしだす。

 ちゃっかり監視を押し付けられたノブナガはそのことに気付くことなく、トランプタワーを作り始めたヒソカを一生懸命注視し続けるのだった。

 

 

 

 

 

「へー、キルアってチビのくせに結構すごいんだね。ねぇねぇその爪伸ばした状態の指頂戴?」

 

「嫌に決まってんだろアホネオン、その悪趣味どうかと思うぜ」

 

 オークション前日も変わらず買い物と散策で1日を潰したゴン一行にノストラードの面々。朝一にネオンが天使の自動筆記(ラブリーゴーストライター)で大量に予言を量産する一幕はあったが、特に何かあるわけでもなくこの日もネオンは大変満足してホテルへと帰還した。

 

「じゃあ明日はいよいよオークションだから早く寝るね、絶対行くんだから遅刻しないでよキルア!!」

 

「いやお前早く寝てどうすんだよ、目当ての地下競売が開かれんのは明日の夜だぞ?」

 

「それまでは普通に遊ぶの!!つべこべ言わないでちゃんと来るの!!」

 

「へーへーわかりました、いいからさっさと寝ろ」

 

 ネオンが侍女達と寝室へと向かい、残った護衛メンバーは明日のオークションについて話し合いを行う。

 最初にネオンの予言を上に伝えたダルツォルネが、十老頭のこれからの動きについて報告する。

 

「十老頭の方針は変わらず先手はくれてやるだそうだ。あれだけ死の予言が出ればなにか対策を取ると思ったんだが」

 

「いや、おそらくは見えない範囲で手を打っているはずだ。未来の襲撃に怯える姿は見せられずとも、いざ襲撃があった場合に何もしていなかったのではそれもまた外聞が悪い」

 

 落胆を見せるダルツォルネに対し、クラピカは予測ではあるものの何かしらの手は打っていると判断していた。

 

「…確かにその通りだ。それでだ、オークションに行くメンバーはどうする?お前達が行く場合でも全権を譲るつもりだが」

 

 クラピカの予想に少し気が晴れたのか、最も重要と言えるオークション参加組の話となる。

 

「明日開催される地下競売にはお嬢様が目当てとするミイラが出品される。本人は絶対に行かせられないが、それでも誰かが行かなくては納得しないだろう」

 

「それなんだがな、私達が行くと嘘をつこうと考えている」

 

 あまりにもあっけらかんと言うクラピカに目を剥いたダルツォルネだったが、襲撃にあった場合元々の護衛団で生き残れるとは到底思えなかった。

 

「一応理由と目的について聞かせてもらえるか?」

 

「前提としてオークションは中止になるだろう。一つはそちらもわかっているように無駄な死人を増やさないため、もう一つは追跡してベストのタイミングで仕掛けるためだ」

 

 襲撃があったとしてもそれこそ無尽蔵にいるマフィアの下っ端を根絶やしにしている暇はないはずで、もし地下競売の品を盗めた場合それが足枷となる。

 

「間違いなく追跡部隊が組まれるだろう、私達はそこに紛れて一人ないし二人ほど蜘蛛を拉致する。安全に離脱することを考えればそれが上限だ」

 

「わかった、ゴン達が行くとなればお嬢様も渋々納得するだろう。拉致した奴等の拘束手段もこちらで手配しておく」

 

「んー、あんまり嘘はつきたくないんだけどなぁ」

 

「オークションに行くのは間違いねえし、中止になれば手に入らなくて当たり前なんだからいいんだよ。こういうのは嘘じゃなくて方便って言うんだ」

 

「さすが嘘つきに一家言ある変化系は違いますなぁ」

 

「うるせぇバカリオも少しはいい案出せよ脳筋以下か?」

 

「やめろその指摘はオレに効く」

 

 わちゃわちゃし始めたゴン達を見てため息を吐くクラピカとダルツォルネは、オークションへの潜入に必要なもの等まだまだある決めるべきことを話し合い続けた。

 

 

 

 

 

 コルトピの発神の左手悪魔の右手(ギャラリーフェイク)で複製した廃ビルの中。パクノダはクロロとコルトピと共に過ごしながら、ヒソカから読んだ記憶の中身を整理していた。

 

(ゾルディックへの依頼が前面に出てたから気付かなかったけど、このクラピカって子がなにか仕掛けてくると思ってるのかしら?)

 

 ヒソカの膨大な思考の中に数多ある、クロロとのタイマンに繋がる可能性のある事象。その中のほんの片隅に、今年受けたハンター試験で出会ったクラピカの姿があった。

 

(幻影旅団に恨みを持っていて、それを理由にハンターになったねぇ。念すら覚えたてで何が出来ると思ってるのかしら)

 

 それでもパクノダが引っかかったのは、クラピカがヒソカに名前を覚えられているという一点。強さについてはまるで脅威と思ってない以上、つまりは伸びしろでヒソカが興味を持ったということ。

 

(ま、念を覚えてから半年ちょっとじゃ伸びるにも限界があるわね。ヒソカもそこまで“興味“がないから記憶の片隅に残ってるだけなんだろうし)

 

 パクノダは色々考えた末に、クラピカについてクロロに報告することを止めた。当たり前の話として、念を覚えて一年未満の初心者が脅威になるとは思えなかったのだ。

 

 その自信は半分慢心だった。

 

 事実としてクラピカは、原作より幻影旅団に対する強さが減少している。特化型から汎用型に変わった発は、間違いなく原作ほどの脅威はないのだ。

 

 このパクノダの判断も、ゴン達と幻影旅団にとって分岐点の一つだった。

 

 ここで蜘蛛はまたしても、筋肉に繋がるはずだった情報を見落とした。

 

 それだけヒソカやゾルディックの印象が強いとも言えるが、天空闘技場のことを調べない等明らかな手落ちがあるのもまた事実だった。

 

 そもそも誰かと協力するという疑いが持たれない以上、ヨークシンシティの全てはピエロの掌の上で転がされ続けるのだ。

 

 

 

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