今話にはみんな大好きゴレイヌさんに対して作者の独自設定が多く含まれます。
そこんところよろしくお願いします。
皆さんこんにちは、予想より早いゴレイヌさん加入に驚きを隠せないゴン・フリークスです。原作でわかってた通り、頭もいいし性格もいいしでめちゃくちゃ優良物件ですね。
危険度Aクラス賞金首の集団である幻影旅団の完全討伐。
その偉業をマフィアが中心となって成し遂げたと聞いた瞬間、ゴレイヌは明かされていない真実があると直感し情報収集を行った。
結果判明した新人ハンター3人の
百聞は一見にしかず、ゴレイヌは直接相対したゴン達の予想以上の実力に舌を巻いていた。
「…えげつねぇな、幻影旅団に勝ったってのは俺の思ってた以上にやばいことだったらしい。しかも
いくつかの質疑応答を挟んだ後、ゴン一行はゴレイヌと正式に手を組むことを決定し食事を取りながらお互いの実力について簡単に話し合っていた。
その中でゴレイヌは改めてゴン達が真っ向から幻影旅団を打ち破ったと正しく理解し、さらにビスケの正体についても教えられて予想以上にレベルの高いグループだったと驚愕した。
「あんたも見た感じ、顔は好みじゃないけど十分磨く余地あるわさ。クリア後に持ち帰れるカードの権利をあたしに譲ればついでに鍛えたげるけどどうする?」
「え、それだけでいいのか!? 何なら報酬の分配は俺の分を減らしてくれても構わないんだが、可能ならぜひ頼ませてもらう。正直最近は限界を感じてたんだ、二つ星の直接指導なんて夢のようだぜ!」
「割と失礼なこと言われてんのに気にしねえとか人間出来すぎだろ。オレ等は大体説明したけどさ、ゴレイヌは何ができるわけ? 後で見るにしても少しは聞いときたいんだけど」
「むさい顔の自覚があるからな、ビスケさんも別に嫌悪感とかあるわけじゃないのもわかるし気にしねぇよ。そんで俺の能力についてだな」
ゴレイヌが簡単に説明したのは、自分が放出系能力者であり転移能力を持つ二匹のゴリラを具現化する発を使うということ。
ゴリラはそれぞれ自分か他人と位置を入れ替えられるが、今の所約20メートルの距離制限がありゴリラかゴレイヌの視界に対象が入っていなければ入れ替えは不可となる。
そこまで言ったところでゴレイヌは、自分の欠点についても正直に話す。
「道具を使うと特に酷いんだが、射撃センスってやつが壊滅的なんだよ。ほんの数m先の的に石とかを投げて当てるのが精一杯、弓や銃なんて使おうものなら100発撃って100発外す。だから遠距離攻撃系の発は作れなかったんだ」
しかし放出系としての強みがなければ能力者として大成など不可能、ならばと考えた末にたどり着いたのが入れ替えだったと語る。
ハンター協会からの初期指導を受けたあとは他のハンターに教えを請い、試行錯誤の末なんとか今の形になったのだと。
「いや、それゴリラにする意味あんの? 幻影旅団の団長も普通に転移使ってたし瞬間移動のほうがよくね?」
「逆にそこがミソなんだわさ、基本的に念の弱点や無駄な部分は制約として能力の底上げに使ってるのよ。発として普通の瞬間移動を作ろうとしたらとんでもなく難易度高いわさ」
「そういうことだ。入れ替える対象と類似性があったほうがイメージしやすいし、あまり知られてないが具現化するのも実在の生き物をイメージしたほうが楽なんだよ」
入れ替える対象を自分や他人とした場合背格好が似ていて、操作するにも具現化するにもイメージしやすい生き物。
さらに人間ほど細部にこだわる必要もないとなれば、自ずとゴリラに行き着いたとゴレイヌは言う。
「何より昔っからゴリラっぽいって言われ続けてたからな、よく見れば愛嬌もあって親しみやすいしこれだと思ったわけさ」
話しながらの食事にも関わらずスマートに食事を進める姿には気品すら感じられ、ここまで見た目で損をしていると思わせる人物もなかなかいないとゴン達は心の中で考えた。
「正直ほとんど自己流で辿り着いたとは思えない良い発だわさ。あとはどこまで精密な遠隔操作が出来るか、ゴリラはもちろん本人がどれだけ戦えるかで化けるわね」
二つ星たるビスケからの最大級の賛辞を、ゴレイヌは若干照れながらも自信になったと笑って受け止める。
ゴン達は改めてこれからよろしく頼むと告げ、ゴレイヌは正しく森の賢人としての知性を感じさせる表情で快諾した。
「…えげつねぇ、なんて容赦の欠片もねぇんだ!」
ゴレイヌが仲間となってから数日は懸賞都市アントキバを拠点にしていたゴン達だったが、そもそも指定カードを集めるにはまだゲームについて無知すぎるということで一先ず街を北上したところにある山岳地帯で修行を始めることとなった。
最初は数日かけてビスケが全員の実力をしっかりと把握することに費やし、そこから個別に指導を行い休みの者はゲーム攻略を進めるプランを立てた。
そのプランは山岳地帯に入って突然襲ってきた、
「丁度いいからこいつと全力でタイマンしなさい、それを見て修行スケジュール組むわさ」
その結果、ビノールトは戦う度にレオリオから傷を癒やされ、クラピカからビスケのオーラを補充されることにより地獄の6連戦を行うことになる。
トップバッターのレオリオはかなりの接戦の末に何とか打倒。
次のクラピカはレオリオを傷付けられたことで最大倍率となった
キルアは電撃で麻痺したところを一瞬で意識を刈り取る。
ギンは残像に気を取られたビノールトに咆哮を叩き込んで終了。
ゴンに至ってはビノールトの武器たるハサミを普通に腕で受け止めて殴り倒す。
その惨状を見て絶句したゴレイヌも、具現化した
「ゲームから出て自首します、だからもうこれ以上は勘弁してください…」
ボロボロになった衣服以外健康そのもののビノールトだったが、完全に折れた心から色んな感情が漏れ出しハラハラと涙を流しながら懇願した。
「オッケー、大体わかったわさ。そしたらあんた等が本気で取り組めるようにあたしの実力も見せとこうかね」
トボトボと背を丸めて立ち去るビノールトは完全に無視して続けるビスケとゴン達に引いた目を向けていたゴレイヌも、二つ星の実力を生で見れるということで年甲斐もなくテンションが上がるのを自覚した。
「来なさいキルア、あんたが一番へそ曲がりだから叩き直してあげるわさ」
「けっ! 本当の姿にならなくていいのかよ、負けてから言い訳されるのはゴメンだぜ?」
「もちろんそのつもりよ」
ビスケは突然手袋に靴、しまいには来ているドレスを脱ぎ捨てるとインナーシャツとドロワという格好になる。
「見るなレオリオ!」
「目がぁーー!?」
見た目的にも露出的にもそれほど刺激的とは言えないながら、思わず動いたクラピカの目潰しでレオリオが膝から崩れて悶絶する。
「いやクラピカあんたねぇ、一応こっからが本番だしレオリオにもちゃんと見せるわさ」
呆れたビスケの視線を受けたクラピカは、不服そうに口を尖らせるも
「変な目で見たら潰すからな?」
「…安心しろ、子供に欲情するほど飢えちゃいねえよ。ったくまだかすみやがる」
ビスケは二人の様子を見て盛大にため息を吐くと一度首を振り、改めてキルアに向き直るとオーラを高める。
筋肉や骨の軋む音とともに、その身体が巨大化していく。
頼りなく細かった四肢は比喩なく丸太の如く。
少女らしく起伏の少なかった胴体は無駄をすべて剥ぎ取られた仁王像の如く。
愛らしかった顔は女性的でありつつも精悍すぎる風貌となる。
ウボォーギンに匹敵するか上回る至高の芸術と言える筋肉が降臨した。
「えぇ…」
「いらっしゃい坊や、優しく撫でてあげるわさ」
言葉も出ないメンバーと目を輝かせるゴンが見守る中、ビノールト戦以上の蹂躙劇が幕を開けた。
「さて、これからあんた達にそれぞれの大まかな育成プランを発表するわさ。あたしの指導に文句があったら問答無用で叩き潰すからそのつもりでね」
「押『イエスマム!!』忍…」
再び可憐な少女の姿に戻ったビスケを前にしながらも、ゴン以外のメンバーは軍人のように直立不動で返事を返す。
もちろんキルアも例外ではなく、痛々しく腫れ上がった両頬が滑稽さ以上に悲惨さを演出していた。
「最初にキルア、あんたは精神修行を重点的に行うわさ。心技体の心が未熟すぎて全体のバランスが崩れてるし、オーラの質が軽いからこれから修行の大半を瞑想に当てるわさ」
「了〜解しました。しかし強くなっても課題が減らないのは嫌んなるな」
「それだけ伸び代があるってことだわさ。センスで言えば断トツなんだから真面目に取り組みなさい」
まだまだ動きたい盛りのキルアとしてはあまり面白くない修行内容だが、ビスケからしたら体と技を現時点の限界値まで到達させていることに驚愕していた。
(キルアの才能が一番の理由だとしても、間違いなく地獄の日々だったはず。こうして普通の小生意気な子供でいることが奇跡としか言いようがないほどに)
ビスケは仲睦まじくじゃれ合うキルアを不憫に思うと同時に、得難い友を得られたことを心の底から嬉しく思った。
「次にレオリオ、あんたはこれから戦闘の訓練よりも医療関係の勉強をしなさい。まだまだ強さに伸び代はあるけど、念の成長期と言える今の時期は本命の発を伸ばすことに専念するわさ」
「了解。次の大学試験には出たいと思ってたし丁度いいな、守られるのは癪だがそれ以上に治せることを誇りにするぜ」
レオリオ自身まだまだ強くなれる自覚があるものの、幻影旅団クラスとやり合えるまでは到底辿り着けないことも理解していた。
その上で自分に出来ること、ゴン達にしてやれることを考えて行動できるのは間違いなく心の強さである。
(本当に見た目とは違って真人間だわさ。他人を従えるのではなく、他人に支えたいと思わせられるのも才能なのよね)
ゴン達の中で文句なく最弱ながら、最も頼りにされていることがわかるレオリオの人間性は手放しで称賛できるほどである。
そんなレオリオを誰よりも誇らしげに見つめるクラピカに苦笑いしたビスケは、そのままクラピカの修行について話し出す。
「クラピカは体術中心に護衛術を学んでもらうわさ。攻撃面は
「それは願ってもない修行内容だが、敵を打倒する技術も必要なのではないか?」
「あんたの鎖の中で一番強力なタイタンチェーンには強い感情が必要だわさ。復讐を成し遂げて攻撃性はほとんど残ってなくても、大事な人を守るためなら最高のパフォーマンスを発揮できるでしょ?」
そう諭されたクラピカは納得したように頷くと、レオリオを見つめゴン達にも視線を向けたあと改めて深く頷く。
その目は二度と家族を失わないという強い決意に満ち溢れ、煌めく緋色と紅紫色は宝石専門のビスケをして手元に置きたくなる美しさだった。
(この子はキルアとは逆に精神力が突き抜けたわさ。絶望を知るからこそ今とこれからを自分含めて守る決意、それだけの相手と出会えたのは同じ女としてちょっと嫉妬しちゃうわね)
続いてビスケはゴレイヌに視線を向け、気の毒なほど緊張しているとわかる姿に手を振りながら気楽に告げる。
「ゴレイヌは肉体改造から始めるわさ。ゴン達は非常識なくらい無駄なく鍛えられてるけど、あんたは完全に常識の範囲内だからね。その体格のまま完璧に鍛え上げるわさ」
「そうなのか? これでもかなり鍛えてきたつもりだったんだがな、参考までにゴン達がどれくらいなのか確かめさせてくれないか?」
ゴレイヌの頼みにゴンが簡単な力比べを申し出ると、お互いに絶の状態で相撲を取ることになる。
あまりにも小さいゴンに初めは乗り気じゃなかったゴレイヌも、いざ組み合えばその力強さが嫌でもわかった。
(なんだよこれ、こんなちっこいのにほとんど動かせねぇ! これで弱体化してるって本気で言ってんのか!?)
相撲自体はなんとかゴレイヌが押し勝ったものの、その底知れぬ身体能力に触れたゴレイヌの顔から修行内容に対する一切の迷いや疑念が消える。
(やっぱりゴレイヌも心が強いわさ。射撃センスがなくても自暴自棄にならず、あくまで放出系に強みを見出した時点でわかってたけどね。今のゴンに力でいい勝負をされても素直に受け止め、それどころか敬意を持つなんてなかなか出来ることじゃないわさ)
そのどことなくレオリオにも通じる人格面の優良さは、ビスケ含め破天荒な者の方が多いハンターにおいて希少とすら言えた。
(まだまだ未熟なれど指導次第で劇的に化ける。尖ったところがない分その真円は見るものに安心と信頼を与える。一歩間違えばその他多数でも大成すれば唯一無二となるまさしく
レオリオと共にハンター協会の幹部になれば面白いかもしれないと考えながら、続いて自分には出来ることがないギンと目線を合わせて告げる。
「あんたは一度野生に帰りなさい。ある意味念獣だらけのここならあんたにとって得難い経験が出来るわさ」
「キューン…」
「あんたが心配するゴンにはあたしが付くわさ。修行以外では傷一つ付けないと約束する」
ビスケの力強い言葉を聞き、ゴンが頷くのを見たギンは遠吠えをすると早速森の中に消えていった。
(獣であろうとするならたまには自然に帰らないと弱体化しそうなのよね。あのモフモフがいなくなるのは痛いけどしょうがないわさ)
最後に思いっきり撫で回すべきだったかと手をワキワキさせながら、最後に残ったゴンの修行内容を口にする。
「ゴンはひたすらあたしと組手をしながら動きを調整するわさ。あんたは感覚型ってより刷り込み型みたいだからね、ミリ単位で殴る蹴るの動きを仕込んであげる」
「押忍!!」
一切の迷いなく返事をするゴンに頷き、他のメンバーも異論がないのを再度確認したビスケは一つ咳払いをすると改めて方針を告げる。
「修行は適時休息を入れるからその間はゲーム攻略に当てるわさ。ローテーションを組むことになるだろうから、集まった時は互いの情報交換も密に行うこと。無茶無謀はなし、けれど全力を絞り出しなさい」
全員を見渡したビスケは既に輝きを増し始めているゴン達に満足そうに笑いかけ、己のプライドとダブルの称号に誓って宣言した。
「ゲームをクリアする頃には、今のあんた達に100%勝てるようにしてあげるわさ!」
『押忍!!』
世界最高の師匠の下、原石達がその輝きを爆発させようとしていた。
「あぁ♥感じる、感じるよ、ゴン達の成長がヒシヒシと伝わってくる♥」
身震いしたことで取りこぼしたトランプを拾いながら、ヒソカは予想以上に思い通りにならない念の腕に苦戦していた。
(思った以上にパワーは上がったけど思った以上に不器用だね♣上がったパワーもゴンには到底及ばないだろうし、これは本気で取り組まないと間に合わないかな?)
ヒソカの比較対象であるゴンに対して、有効打に繋げるには力より技術が重要と考えると喜ばしいとは言えなかった。
(実戦よりも反復練習、やっぱり別行動したのは正解だったかな♦)
「何してんだ新入り! アジトに向かうからさっさとこっちに来い!」
「…はいはい、今行くよ♣」
ヒソカは我慢することを覚えた。
待つことには慣れていたことに加え、ゴンという最高の相手が出来たことで精神的に安定したのだ。
しかしそれはヒソカが真人間になることとは全くの別問題。
津波の前には一度波が引くように、鞘に入っていても刀は人を殺す鋭さを持つように。
安定して見えるヒソカの姿は、より深くなる狂気の前触れでしかないのだ。
弾ける時を待つ最凶のピエロが、静かに人混みの中へと消えていった。