皆さんこんにちは、毎日文字通り血反吐を吐かされているゴン・フリークスです。指定カード攻略中に限り帰りが遅れてもいいと条件が付いてから、指定カードがどんどん埋まっていきます。
ビスケ指導の修行は、まさに熾烈を極めた。
精神修行中心のキルアや、勉学を言い渡されたレオリオですら連日血反吐を吐いた。
修行開始当初は無意識を鍛えるため、寝ている間も頭上の岩に繋がるロープを持ち続ける訓練など軽めのものだった。
予想以上に鍛えられていて、とんでもなくよく伸びるゴン達にビスケのタガが外れるまでは。
ゴレイヌの肉体改造は超急ピッチで進められ、後に本人は皮膚の下をすべてもぎ取られ新たな肉を詰められているようだったと青褪めながら語った。
レオリオも毎日ゲボを吐きながら修行をこなし、人体を理解するためという理由でビスケに身体のいたる所を破壊されては自分で治療するという地獄を見た。
キルアは瞑想の際は必ずビスケの発“
クラピカは後ろにレオリオがいる状態でビスケからの攻撃をいなし続け、動けなくなればレオリオが可愛がられるさまを血涙を流しながら見せられた。
ゴンに至ってはゲーム攻略に行くことを禁止され、ビスケ特製の筋肉養成ギプスを付け
ネテロすらドン引きするだろう修行密度を可能にしたのは、外科的治療を行えるレオリオと内科的治療を行えるビスケの存在に加え、オーラを吸い取り譲渡できるクラピカの存在が大きかった。
オーラに関しても、能力の使用を禁じられて余裕がありオーラ総量がバグりかけているゴンがおり、抽出してそれぞれに振り分けることでギリギリ賄えてしまっていた。
日々輝きを増すゴン達に目を眩ませていたビスケが正気に戻ったのは、クリスマスを控え指定カードが50種を越えた12月の中旬だった。
「いやぁー面目ないわさ! ちょっとテンション上がりすぎちゃった。まぁ年単位かけるところを3ヶ月に短縮できたと思えば安かったわね!」
「安くねえよ!? キルアは心が死んだところから戻すのに苦労したしクラピカも病んでやばかったんだからな!? 3ヶ月オレとゴレイヌがどんだけ苦労したかわかるか!!?」
「俺は後半ゲーム攻略が多かったからな、レオリオほど苦労はしてないさ」
「いやお前人がいいにもほどがあるだろ!?」
レオリオが激昂するのも当然で、連日の精神攻撃に対する防衛本能で一時感情を消失したキルアと、ビスケからレオリオを守れない日々が続いたクラピカがレオリオを鎖の檻に閉じ込めるなどメンタル方面のトラブルが相次いだのだ。
その間はゴレイヌが一人でゲーム攻略を進めたようなもので、ビスケはひたすらゴンと組手の毎日を送っていた。
「ごめんごめん、けどあんた等自分でも理解できるでしょ? 苦労した以上の成果は保証するわさ」
事実自信満々に告げるビスケの言う通り、ゴン達の実力は3ヶ月という短い間で飛躍的に上昇した。
ゴレイヌは肉体改造の効果で以前の比ではない身体能力とオーラ総量を手に入れており、並行して行っていた系統修行の成果もあって発の性能も向上している。
レオリオは人体に対する理解が深まったことと同じく発の性能向上により、治療スピードアップに加えてメンタルケアにも適性を見せた。
クラピカはマルチタスクの才能が向上したことで、
キルアも小生意気さは失わなかったものの精神的不安定さがなくなり、抜群の戦闘センスによる駆け引きに老獪さが見えるほどになった。
極稀にふらりと帰ってくるギンも汚れは目立つが非常に生き生きとしており、数枚指定カードの情報を持ち帰ってゴン達を驚かせた。
そして3ヶ月間誰よりも地味な修行を行い誰よりもビスケに殴られ続けたゴンは、未だ
それぞれが自分の弱みを克服して強みを伸ばしたデスマーチは、キルアのハンター試験とゲームの本格的攻略に向けて一旦終了を迎えた。
一度まとまった休息を入れてリフレッシュしたゴン一行は、ゲーム攻略に最重要と言えるスペルカードを手に入れやすい魔法都市マサドラを拠点とすることに決めた。
プレイヤーの実力を測る上でも重要な位置にあるマサドラは、スペルカードによる指定カードの強奪等も頻繁に行われる危険地帯とも言える。
しかしデスマーチを乗り越えたゴン達に恐れや戸惑いは一切なく、そこらのプレイヤーはブックと唱えてカードを収めるバインダーを出した瞬間拘束され持っているカードを物理的に強奪された。
「ありがとうございます! ありがとうございます! これで現実に帰ることができます!!」
「おう、こっちもいくつか欲しいカードが手に入った。もう戻ってくるんじゃねえぞ」
ゴン達はそんな襲ってくるプレイヤーに対して、悪質な者は素寒貧にして放り出し、現実に戻りたいプレイヤーや真っ当に攻略しているプレイヤーには交渉でもって所持カードを増やしていった。
「まったく、貴様私のレオリオに何をしようとした? その薄汚い口からスペルを言えないよう喉を掻き切るか?」
「許してください、ほんの出来心だったんです! 全て差し出しますから命だけは!?」
もともと50種を越えて折り返し地点を突破していたこともあり、噂が広がってちょっかいを掛けてくるプレイヤーがいなくなる頃には70種以上の指定カードを集めることに成功する。
未だに誰も手に入れていないカードや最高難度カード、そして独占されているカードを除き集められるだけ集めたゴン達はプレイヤー全体でトップ5に入るグループとしてその名を轟かせた。
「やっぱり納得いかねえー! クラピカ! お前なんで復讐終わった後の方がオーラの強度増してんだよ!? 発なし組手でそんな強くなかったじゃねえか!」
デスマーチは終わっても修行は終わらず。
ゴン達は無理のない程度に組手や系統修行は続けており、その中でも発を用いない組手でクラピカに不覚を取ったキルアが不満をぶちまける。
精神的に落ち着きを見せてきたキルアの逆行とも言える不平不満には理由があり、一つは言った通りオーラの質で完全敗北したこと、もう一つは口にはしないながらクラピカの見た目にあった。
復讐以降女を強く意識したクラピカは男のふりをするのを止め、ホルモンバランスなども正常になった影響でもはや男と間違えられることはないほど見た目が変化しているのだ。
3ヶ月の間に伸びた髪は肩よりやや下まで伸び、身体は全体的に丸みを帯び特にビスケのクッキィちゃんによるバストアップマッサージで壁が丘へと進化している。
言葉遣いこそまだまだ固いが、レオリオに恋する乙女クラピカちゃんはもはや絶世と言える美少女へと変貌したのだ。
「私もビスケに言われるまで知らなかったが、そもそも女の方が基本的にオーラの質はいいらしい。蜘蛛を狩るまで女を捨てていたからな、今は女を自覚したことで本来のオーラになったというのが正しいようだ」
オーラとは生命エネルギーであり、寿命や子供を体内に宿すことなど基本的には女性の方が生命力は強い。
これこそ身体能力的に劣るはずの女性が男性と問題なく戦える理由であり、極稀にいる身体的にも劣らないビスケが最強の一角に居座る大きな要因である。
「なるほどねぇ、バbっ、ビスケみたいな例外はあれど基本的にはそれで釣り合い取れてるのか。ちくしょ〜、成長しないときついってことかよ」
「てかゴンは例外としてあんたも大概だわよ、その歳でその身体まで鍛えて壊れてないのははっきりと異常だわさ」
「オレだって普通に鍛えてただけだし、念に目覚めればこれくらいいけるんじゃないの?」
「ゴンについては断言するけど自分の筋肉で押し潰されるか耐えきれずに破裂するかの二択しかないわさ」
改めて告げられる年少組の異質さに皆が言葉をなくす中、いよいよ近付くキルアのハンター試験に話題が移る。
ゴンが案内人として魔獣のキリコを紹介し、ビスケはよほど変な試験内容じゃなければ全力で他の参加者を潰せとアドバイスする。
「場合によっては最速で合格もあり得るから、ちゃんと試験官の言葉に耳を傾けなさい。今のあんたならルールの中で悪さするくらい余裕だわさ」
「
その後はゲーム攻略に向けてどう動くかの話し合いをしていたところ、滞在するホテルのベランダに一人のプレイヤーがスペルカードを使って降り立つ。
一瞬で制圧態勢を取るゴン達に両手を上げたプレイヤーは、肩に歪な何かを付けたまま交渉を行う。
「突然の訪問は謝罪する。見ての通り非常事態でね、話だけでも聞いてくれると助かる」
そこに居たのはゴン達と同時にゲームに入り、ハメ組の勧誘を受け入れた浅黒い肌の男。
希少性の高い除念出来る発を持つ、アベンガネがゴン一行の前に姿を現した。
アベンガネから簡単に説明されたハメ組の非常事態、それは幹部のゲンスルーが裏切り、しかも有名なプレイヤーキラーである
しかもゲンスルーはハメ組の最高戦力だったジスパーを軽くあしらい、集まっていたハメ組の全員に
「人が多い弊害が露骨に出ていてね、話はまとまらないしどうにかできる実力者もいないときた。一人カードを全部くれるならボマーを始末するというプレイヤーがいたが、当たり前の如く却下される始末さ」
肩をすくめ首を振るアベンガネからは、もうどうしようもないという諦めというより何か別の意図が見え隠れしていたがそれを指摘する者はいなかった。
「話がまとまらないとはいえ、最終的にはカードをボマーに譲って一縷の望みにかける以外選択肢はない。それでボマーがゲームクリアするのは我慢ならないからな、こうして有力なグループに情報を流してるのさ」
ボマーはカードを渡せば解放すると言ったが、アベンガネはそれは一斉爆破だと読んでいる。
「今最も勢いがあるのは君達のグループだ。どうか我々の無念を晴らしてくれ」
そこまで言ったアベンガネは他のグループにも情報を流すとスペルカードで去っていき、残されたゴン達は顔を見合わせると早速話し合いを始める。
グリードアイランドに潜んでいた地雷が満を持して動き出し、ゲームはフィナーレに向けて加速していく。
栄光を手にするのは爆弾か、それとも最初の一つ星か、はたまた未だ回復中の筋肉か。
ただ一つ、確実に言えることがあるのなら、鍵を握る変態はこれからも闇に潜み続けるのだ。