皆さんこんにちは、生レイザーにテンション爆アゲのゴン・フリークスです。ギンも勝負に参加できないか聞いたけど流石に無理でした。
海賊との勝負はゴン達のストレート負けで呆気なく終了した。
というのも蚊帳の外になりかけたカヅスール達が我先にと勝負を挑み、これぞかませの真骨頂と言わんばかりに全員惨敗したからだ。
怪我人はレオリオとクラピカが早々に完治させたこともあり、ゴン達以外の全員が力の差を正しくわからされた。
「話にならないな、俺達の勝ちってことでここに居座るぜ。次があればちゃんと準備してから来るんだな」
レイザーは全員を見渡して忠告したように見えて、勝負に参加しなかったゴン達のみを見据えて喋っていた。
(明らかに他の有象無象とは隔絶した6人、こいつ等がやる気になってれば俺の出番もあったかな?)
既に次の挑戦を検討しているのか話し合うゴン達を見て、これなら再戦にすぐやってくると退屈が紛れることを喜ぶレイザー。
特にひときわ小柄なゴンの姿を見て、大きさに盛大な違和感を感じながらもジンの面影を懐かしく感じる。
(ゴンにしては小さすぎるし、まさか二人目のガキか? 最近の
レイザーが圧倒的実力差に意気消沈して立ち去るメンバーに続くゴン達を見ていると、見られているのに気付いていたゴンが顔だけ振り向いて口を動かす。
また来るから待っててね──
聞こえたわけではないが間違いなくそう言ったのを確信し、10年以上手持ち無沙汰だったことで溜まっていた鬱憤が嘘のように消え去っていく。
「…ジン、やっとお前の期待に応えられそうだ」
ゴンが出ていく最後の瞬間、その小さすぎる背から立ち昇ったオーラはレイザーの闘争本能を呼び起こすには十分過ぎるものだった。
温和だった表情が凄みのある笑みへと変わり、滾るオーラに当てられた荒くれ者の海賊達が恐怖から後ずさる。
「燃えるねぇ、久々にいい感じだ」
次の挑戦まで時間は開かないとわかっていながらも、レイザーは最近の強さをキープする鍛錬から強くなるための鍛錬へと新たにスケジュールを組んだ。
ソウフラビの入口に戻ってきたゴン達は、どうにかして海賊に勝つ方法を模索するカヅスール達をやや憐れむように眺めていた。
イベントの発生条件と勝利条件的にゲンスルー組がカードをゲットする可能性は限りなく減ったが、ツェズゲラ組が油断ならない以上何とかして独占しておきたい故の悪あがきである。
「何とかして8勝するためにはそれぞれのスポーツを専門的に学ばなくては、ゴレイヌ組はどのスポーツなら勝算がある?」
「それなんだがな、俺達はここで抜けさせてもらう。先に今から集められるカードを集めようと思うんでね」
まさかの最高戦力から離脱を宣言されてカヅスール達が愕然とする中、キルアが若干茶化すように指摘する。
「仮にオレ等で6勝したとしてさ、あんた等もカード寄越せって言うのはちょっと図々しくない? しかも絶対に一組はゲット出来ないし、そもそも誰も持ってないカードなんて持ってたら確実に
やや挑発的ながらも的を射たキルアの指摘に、カヅスール達もやっと考えが及びボマーの名を聞いて顔を青くする。
引き止める様子もなくなったのを確認したゴン達は改めてゲームシステムやカードの情報に対する礼を述べると、
ゴン達がいなくなった後残りの3組はしばらく所在なさげに佇むも、諦めたような顔をしたカヅスールが解散を告げて散り散りになる。
誰も口にはしなかったが、3組のこれからの方針は決まっていた。
ツェズゲラ組とゲンスルー組、そしてゴン達が抜けているだけで十分上位グループに名を連ねていた3組のグループが、ここでついにゲームクリアを完全に諦めたのだった。
「さて、間違いなくクリアを射程圏内に収めたが最後の難関がバカみたいに高い。どうすればツェズゲラとゲンスルーを出し抜ける?」
マサドラに戻ってすぐに始めた話し合いは、ゴレイヌの言うとおりどうやって上位二組を突破するかに焦点を当てていた。
ゴン達が優位にあるのは“奇運アレキサンドライト”を独占していること、そして間違いなく純粋な戦闘力で勝っていることである。
逆に言えばそれ以外はまるで歯が立たない状況であり、それは仮に“一坪の海岸線”を独占したところで変わらない。
むしろゴン達よりもはるかにゲームシステムを知り尽くしている相手の方が有利なのは確実で、まだ油断しているであろう今しかチャンスはないというのが結論だった。
「問題なのは私達の他に二人強者を集めたとしても“一坪の海岸線”入手は難しいことだな」
「それな、最後にやったビーチバレーは二人分の勝敗が動くって言ってやがった。つまり7勝しても8人でやるスポーツを出されたらそれで終わりだ」
クラピカとキルアの懸念をビスケやレオリオは考えすぎだと言うが、ゴンの言葉で一気に懸念が現実味を帯びる。
「イベントの名前は“レイザーと14人の悪魔”、あそこにいた海賊の人数は14人よりも多かったよ」
実力的にそこまで注目すべきところがなかった故に見逃してしまった初歩的なミス、少ないならたまたまいなかったと見れても多いとなると完全に人数が合わない。
「おいおいマジかよ、つまり本命が隠れてるかレイザーのやつが発で増えるってことか!? そこらのクイズ番組じゃあるまいし一発逆転を運営側がしたら反則だろ」
「少なく見積もっても10人は頭数が必要そうだな、しかもそれ相応の実力者を二組以内でか。私達の会ったことのあるプレイヤーでは候補がいないな」
「一人はヒソカだろ、何してるか知らねえけどゴンが呼べば飛んでくるだろ」
「そこも大事だけどゲットした後が問題だわさ。カードを守る手段、奪う手段をしっかりしとかないと最後に足をすくわれるわさ」
あーでもないこーでもないと話し合うメンバーの中で一人、ゴンだけが静かに考えをまとめていた。
アベンガネの言葉やゲンスルーの動き、何より原作知識という反則からゴンの頭の中でゲームクリアまでの道筋が浮かび上がる。
「とりあえずは手に入れられるカードを入手するところからだよね? その間にちょっと確かめたいことがあるんだ、ビスケとオレは少しの間別行動させてくれないかな」
「もったいぶるじゃん、確かめること次第でこれからの方針決められんの?」
黙って考えていたゴンからの提案は特に有効打が浮かばない現状では取らざるを得ない次善策とも言えるが、それ以上にある種の確信を感じさせるゴンの表情にキルアが試すように問う。
キルアはもちろん他のメンバーの期待する視線を受けたゴンは、確証はまだないと言いながらも自信有りげな笑みを浮かべて告げた。
「オレの予想通りなら、ゲンスルーもツェズゲラさんも追い抜いてゲームクリア出来る!」
その言葉を誰も疑うことなく、ゴン達はゲームクリアに向けてラストスパートをかける。
ゲンスルー組と不毛な牽制合戦や情報戦を行っていたツェズゲラのもとに、名も知らぬプレイヤーから連絡が来たのは2月の中旬に入った頃だった。
謎の相手からの連絡に訝しみながらも通信を繋げば、聞こえてきたのは数ヶ月前に会ったきりとはいえ未だに印象深く残るレオリオの声。
用件は単純で指定カードのトレードと情報交換の提案であり、話だけでも聞いてくれるなら拠点としているマサドラで会いたいというものだった。
「私としては話だけでも聞くべきだと思うが、お前達はどう思う?」
ツェズゲラは長く仕事を共にするチームである3人、バリー、ドップル、ロドリオットに意見を求める。
彼等は
ゲームクリアを目指す上でも互いの独占カードのトレードは決して悪い話ではなく、ゲンスルー組と違って人格面にも問題ないなら是非にも応じるべきだと満場一致で決まる。
「ふむ、そうなるとどこまでトレードに応じるかだな。彼等の指定カードはどれだけ埋まっているんだ?」
「今日の朝調べた限りはおそらく90種だな、驚異的なスピードで集めたがこれ以上は実力云々で入手できるものでもない。だからこそ他のプレイヤーを使ってまで接触したんだろう」
「そうなるとゲームシステムは別として頭のいい奴がいるな、実力だけじゃないとなると慎重にいくべきだ」
「俺も同感だ。話を聞くまでなんとも言えないが、最高でも持っていない指定カードを2枚渡すくらいじゃないか?」
もともと強い信頼関係で結ばれていたチームだったが、最近はさらに結成当初の情熱まで戻ったことでより良い雰囲気と高いモチベーションを維持出来ている。
トレードしてもいいカードや逆に手放すべきでないカード等、意見をしっかりと統一したツェズゲラ組に隙は一切ないと言ってよかった。
強化されたツェズゲラ組が、図らずも原因となったゴン達の前に立ちはだかる。
マサドラ近郊で相対したゴン達とツェズゲラ組は互いの独占する指定カードを一枚ずつトレードし終わると、代表してゴレイヌがツェズゲラに対して交渉を持ちかける。
「単刀直入にいこう、俺達は“一坪の海岸線”に繋がるイベントを発見した。指定カード何枚でこの情報を買ってくれる?」
ジャブも何もないいきなりのストレートに流石のツェズゲラも目を見開き、仲間と一瞬のアイコンタクトで意思疎通を行うと慎重に言葉を選んでいく。
「もしその情報が確かなら、君達の持っていないカードを更に2枚譲るくらいがこちらの出せる最大限だ。こちらもクリアを目指す以上、それが無理なら情報は諦める」
ゴレイヌはその2枚のカードを教えてもらうと一度ゴン達に顔を向け、問題ないと確認するともう一度ツェズゲラに確認する。
「よし、俺達の情報が正しければさっき言った2枚の指定カードを貰えるってことで間違いないな。それならイベント“レイザーと14人の悪魔”について教えよう」
ツェズゲラはゴン達が入手出来ていないことから、恐ろしいほどの難易度かゲームシステム的に厳しいかのどちらかだと予測していた。
そうでなければ所持していない指定カード2枚と交換とはいえ、わざわざ教えるメリットが少なすぎると考えたのだ。
しかし語られたイベントの発生条件を聞き、自分達が罠にハマったということを悟った。
「…なるほど、その情報は正しいのだろうな。そして私達はカードを2枚譲るだけでなく、さらに戦力として協力せざるを得ないというわけだ」
苦笑したツェズゲラは同じく苦笑するドップルのバインダーから2枚の指定カードを受け取り、ゴレイヌもしっかりと確認した後にカードをバインダーに収める。
「それで? 我々と君達以外にもあてはあるのか? カード化限度枚数を考えるともう一組しか枠はないと言えるが」
「一度このメンバーに数合わせを入れて挑戦するつもりだ。向こうが勝ちに徹するなら15人強者を揃える必要もあるんだろうが、ゲームを謳ってる以上流石にそこまではしないと俺達は見てる」
ゴン達の予想を聞いたツェズゲラもその考えに同意し、数合わせの調達と担当するスポーツの軽い練習として5日ほど期間を設けることを決める。
グリードアイランドの発売以降誰も入手したことのない最後のカードを手に入れるため、ゲームクリアに最も近い3組の内2組がここに手を結んだ。
時は少し巻き戻り、キルア達が90種目指して奔走していた頃。
深い森の中のとある洞窟で、ヒソカが楽しそうに独り言を呟いていた。
「クフフッ、バレちゃったか♥まだ誰にも気づかれてなかったのになぁ、最後の最後でビックリさせようと思ってたのに残念無念♠」
この数ヶ月のほとんどを
むしろビスケ的にまだまだ磨きがいがある原石のゴン達とは違い、既に磨き終わった宝石で後はどう装飾するかという段階にあるヒソカの成長速度は常軌を逸していると言えた。
「この腕もだいぶ馴染んだし、そろそろまたヤろうかな? それともまだ待つ? あぁ、この悩ましさすらこんなに愉しい♥」
ヒソカがゴンと別れてから約半年、記憶を消されていない状態では間違いなく最長の別離は麻薬に依存する患者のようにその精神を蝕んでいた。
そして久方ぶりに聞いたまだ弱体化していると思われるゴンの甲高い声と、その言葉の節々から感じる成長はいよいよ我慢の限界を迎えさせるには十分だった。
「ゴン、君は壊れないでくれるかな♥」
闇に潜むピエロが現れる時、グリードアイランドに風雲急が告げられる。