オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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第59話 再戦と折れるもの

 

 

 皆さんこんにちは、いよいよレイザー戦に挑むゴン・フリークスです。感覚的にはなんとか間に合いそう。

 

 

 

 

 

「本当にいいのかよモタリケ、ゲームから脱出する機会なんてもうないかもしれないんだぞ」

 

「俺にはもう守るべき家族がいるんだ、あいつ等を置いて行けるかよ。俺に必要なのは離脱(リーブ)じゃない、苦労させないための金だ!」

 

「嫁も子供もNPCじゃ苦労もなにもないと思うんだがなぁ」

 

 ゴン達とツェズゲラ組が手を組んでから5日後、予定通り数合わせのプレイヤーを調達し今まさにソウフラビへ向かおうとしていた。

 数合わせの5人は離脱のカードを報酬にして募集をかけたところ秒で集まった、最初の街とも言える懸賞都市アントキバでくすぶっていた底辺プレイヤー達。

 4人にはゲームから脱出するための離脱のカードを、一人にはゲーム内で使える換金カードを報酬に約束して協力させている。

 

「まあゲーム内結婚とかブタくんもやってたしいいんだけどさ、ここだとどういう感じなんかな? 決まったセリフしか言わないとかだったら勘弁なんだけど」

 

「アイアイを見た感じだとそこまで違和感なかったわさ。長時間一緒にいたらどうなるかまではわからないけどね」

 

「ビスケはハーレム作って遊んでたもんね。会話パターンとかどうなってるか知らないけど、NPCも普通に日常会話してるしね」

 

 数合わせのメンバーにNPCと結婚し定職にも就いている猛者がいたが、もれなくマサドラまでの旅路すら命懸けになる念能力者としての最底辺達である。

 10年以上現実世界に戻っていない彼等は平静を装いながらも、隠しきれない喜びと若干の不安を抱きながら身を寄せ合っていた。

 

「よし、それではこれからソウフラビに向かおう。同行(アカンパニー)は誰が使う?」

 

「俺達が出そう、話を持ってきた以上そっちにあまり負担はかけたくない」

 

 音頭を取るツェズゲラとカードを取り出したゴレイヌを見てその場の全員が範囲内に入り、同行によって決戦の地ソウフラビへと飛び立つ。

 ゲームクリアを左右する最後のカードを獲りに行くその姿を、4対の目が離れた場所から監視している。

 

 

 

 

 この日も筋トレに励んでいたレイザーは、15人のプレイヤーが同行(アカンパニー)でソウフラビに到着したことをゲームシステムから感じ取った。

 クールダウンしながら栄養補給も行い、万全のコンディションで待ち構えているとつい最近見た顔ぶれが新たな仲間と共にやってくる。

 

(ほぉ、なかなかの手練が加わったな。後ろの5人は数合わせだろうが、俺はどのタイミングでいくかな?)

 

 小柄な初老の男ややたら猫背な男などよくわからないプレイヤーは早々に意識から除外し、ツェズゲラすらほとんど無視してゴンのことを注視する。

 同じGM(ゲームマスター)のエレナから間違いなくゴンだと聞き出したこともあり、前回の邂逅以上にジンの面影を見て柔らかい表情がさらに緩みそうになる。

 傍目には変わらぬ表情のまま、前回同様ルール説明を行えば淀みなく挑戦者が海賊に挑んでいく。

 

 一人目はツェズゲラ組から短髪でそばかすの目立つバリーがボクシングで勝利。

 

 二人目もツェズゲラ組から鼻筋の通ったドップルがフリースローで勝利。

 

 三人目はゴン達からレオリオがボウリングに挑戦して勝利。

 

 四人目はツェズゲラ組の肌黒く筋肉質なロドリオットが相撲で勝利。

 

 相撲の時はギンがどうしてもやりたがったが、ゴンと一緒にグリードアイランドに入った以上あくまでゴンとセットと言われて泣く泣く諦め不貞寝した。

 

 そしてクラピカがリフティングで5勝目を上げ、ついに折り返しを迎えた挑戦者達に対してレイザーがその重い腰を上げた。

 

「茶番はここまでだな。いいだろう、俺が直々に相手をしてやろう」

 

 プレイヤーにゲームを楽しませる立場のGMとして、そしてジンの期待を背負う者として、レイザーにとって最初にして最大の見せ場が満を持して訪れる。

 

 

 

「種目は8対8のドッジボール、もちろん8勝分をかけて勝負する。こっちのメンバーはコイツ等だ」

 

 レイザーの足元に広がったオーラが揺らぎ、せり上がるようにして8体の念獣が出現する。

 様々な体格の念獣達は海賊と似たような格好をしているが、帽子が覆面のようになっているのと、それぞれが帽子と腹部に0から7までの数字が刻まれているという違いがあった。

 

『ドウモ、私審判を務めさせていただきますNo.0デス。レイザーチーム8人に対し、挑戦者チームから8人の選手登録をお願いしマス』

 

 ゴン達は想定内とはいえあからさまなちゃぶ台返しに、既に勝利しているクラピカが手を上げて質問する。

 

「一つ、こちらも8人でないといけないのか。二つ、既に勝利しているメンバーの再出場は可能か」

 

「もちろん8人出ないと不戦敗になるぜ、そしてもう挑戦したプレイヤーは当然参加できない。そっちも頭数はいるんだから問題ないだろ? 命の保証はないがな」

 

 凄みのある笑顔を浮かべたレイザーから大量のオーラと殺気が吹き出し、最底辺とはいえ念能力者である数合わせ達がその身を震わせ後ずさる。

 

「い、嫌だ! 危険はないって言ったから参加したんだ! 死んだら離脱もなにもないだろ!?」

 

「そーだそーだ! 俺達は絶対に参加しないぞ!」

 

 その後も口々に拒絶の言葉を吐く数合わせ達に対し、ツェズゲラは完全に侮蔑する視線を、キルアは非常に冷めた視線を向ける。

 人数が足りないことには勝負も出来ないとあって、ゴンがギンを数に入れてもいいか聞くもあくまでゴンとギンは一人分だと言われてしまう。

 

「どうする? できればもう一人欲しいが、一応何とかならなくもない」

 

 ゴレイヌの言葉に皆がそれしかないかと諦めかけるが、数合わせの中の一人が全身を震わせ冷や汗をかきながらも前に進み出る。

 

「どど、ドッジボールなら外野もあるだろ!? 外野でいいなら俺が出てやるよ!」

 

「モタリケ!? 馬鹿なこと言ってないで戻れ! あんな化け物相手じゃマジで死ぬぞ!!」

 

 進み出たのは、グリードアイランド内にNPCの妻子を持つ男モタリケ。

 今にも卒倒しそうなほど顔色は悪いが、その目には確かな意志と家族を想う愛があった。

 

「もちろん報酬は上乗せしろよ! あとマジで足手まといだから期待しないでください!!」

 

 ゲームクリアも現実への帰還も諦めながら、それでも大事なものを守ろうとするその姿に漢を見たゴン達とツェズゲラは一度視線を交わすと頷きあう。

 

「助かるよモタリケ君、報酬はしっかり払うし危険な目には遭わせないと誓おう」

 

「安心しな、流れ弾くらっても生きてさえいれば治してやるからよ!」

 

 ツェズゲラにレオリオという大柄な二人に囲まれたモタリケがさらに顔色を悪くするも、ドッジボールに参加する8人目が決まった。

 

『出場メンバーが決まりましタ。レイザーチームはレイザーとNo.1から7。対して挑戦者はゴンとギン、キルア、ビスケ、ツェズゲラ、ゴレイヌ、ゴレイヌの念獣2体、モタリケ。これよりルールを説明しマス』

 

 基本的には普通のドッジボールと同じだが、顔面含めて体のどこに当ててもよい。

 外野がボールを当てても内野には戻れず、試合中一度だけ『バック』の宣言で一人内野に戻れる。

 念獣は破壊されてもまた具現化すれば復帰可能だが、8人を超えた場合は反則とする。

 ゴンとギンはセットであり、どちらかがアウトになれば両方アウトとなる。

 

『とりあえず大まかなルールは以上デスが、なにか質問はございますか? ないようでしたら試合を始めさせていただきマス』

 

 そして外野というより見学者の中にモタリケが退避し、内野から白の賢人(ホワイトゴレイヌ)を追加で外野に配置する。

 

『ではジャンプボールから試合をスタートしマス。代表者は中心へドウゾ』

 

 ゴンチームからはキルアが、レイザーチームからはNo.1がそれぞれ進み出て、腰を落とすと審判の合図を待つ。

 

『準備はよろしいデスね、それでは試合開始しマス!』

 

 No.0がボールを投げ上げ、“一坪の海岸線”をめぐる最後の勝負が開始した。

 

 

 

 

 投げ上げられたボール目掛けて飛び上がったキルアだったが、相手がジャンプすらせず自陣に引き返していくのを視界に捉えて訝しげな表情を浮かべた。

 

「先攻はサービスでくれてやる、一人少ないようなもんだからハンデだ」

 

 平然と告げるレイザーにゴン達が顔を歪めると、キルアがゲットしたボールをツェズゲラが受け取り肩を回す。

 

「実に強気だな、私も舐められたものだ。一つ星(シングル)が伊達ではないことを見せてやろう!」

 

 ツェズゲラは実にきれいなフォームとオーラ運用でボールを投げ放ち、狙ったNo.2に寸分違わず命中させたばかりか弾かれたボールは外野のホワイトゴレイヌの下へ転がる。

 ホワイトゴレイヌに返球を要求したツェズゲラへとボールが渡り、再び投げ放たれたボールはNo.1をアウトにしてまた外野へと転がる。

 

「なんだ、言うほど大したことはないな。これでは私一人で全て終わってしまう」

 

「そうか? こっちはシングル様の予想外な弱さに驚いちまってね、そろそろちゃんと試合をしたいから少しは本気を出してくれないか」

 

 返球を受けたツェズゲラが見下したようにレイザーを挑発するも、逆に煽り返されたことで手に持つボールを強く握りしめる。

 ゴレイヌやビスケが冷静になれと忠告するも、ツェズゲラは冷静な頭と熱くなった頭で同じ結論に至る。

 

「数の面では優位に立った、ならば早い内に本丸の戦力を確かめるべきではないか? これでアウトにすれば問題ないしな!!」

 

 ツェズゲラは先の2投と違い本気の全力、レイザーを殺すつもりでボールを投げ放つ。

 しかもただ投げるのではなく、ボールにオーラを纏わせて放出することで中堅能力者でも大怪我を負いかねない威力を持たせている。

 

「まぁこんなもんか」

 

 そんなツェズゲラ渾身の一球は、レイザーに片手で呆気なく受け止められた。

 

「なん、だと?」

 

「ぼさっとするなよ。そら、返すぜ」

 

 唖然とするツェズゲラに対しレイザーは、受け止めたボールをそのままゆったりとしたフォームで投げ返す。

 

 そのボールはツェズゲラの投げたボールよりはるかに速く、圧倒的なオーラを纏ってツェズゲラに迫る。

 

(強っ……! 速…避…、無理! 受け止め、否、死!!)

 

 圧縮された思考の中ツェズゲラは己の死を確信し、しかし最後まで足掻こうとボールの迫る顔面へオーラを集中する。

 死なないにしてももはや現役は続けられないだろうと、20年以上の付き合いになる仲間に心の中で謝罪した。

 

 黒い賢人(ブラックゴレイヌ)!!──

 

 メキリと、骨が軋む音を立ててボールが命中する。

 身体は吹き飛ばされ一瞬で外野まで吹き飛び、ボールも勢いをほとんど落とすことなくレイザーチームの外野へと転がる。

 

 外野に転がるボールとブラックゴレイヌを、ツェズゲラがコート内から唖然と見つめていた。

 

『ゴレイヌの念獣アウトデス! ルーズボールはレイザーチームへ』

 

「…一体何が?」

 

「すまんな、流石に危なそうだったから勝手に手を出させてもらった。見せ場を潰してたら謝るよ」

 

「…いや、心から感謝させてもらおう、今のは死ぬ公算のほうが高かったからな。そしてすまない、安い挑発に乗ってこのざまだ」

 

 ツェズゲラはゴレイヌの言葉と己の代わりにボールを受けたブラックゴレイヌを見て何が起こったかを正しく理解し、とてつもなく強力な手札が自分のミスでなくなったことを強く後悔した。

 この能力をタイミングよく使っていれば、それこそレイザーすら楽にアウトに出来たはずなのだ。

 

「気にすんなよ、この札はバレても相手に選択を迫れる。ブラックゴレイヌもなんとか無事だからまた発動できるしな」

 

 外野に転がったブラックゴレイヌは顔面がひしゃげ悲惨な姿となっていたが、ゆっくりと起き上がるとややふらつきながらもホワイトゴレイヌと共に外野へと陣取る。

 ツェズゲラは油断していたとはいえ自分が死を覚悟した攻撃を受けて無事な念獣を見て、ゴレイヌの実力が選考会の時とは比べ物にならないほど上昇していることを確信する。

 

(まだあれから半年ほどだぞ? 彼に一体何が、いや、彼等に何があったと言うんだ!?)

 

 ゴンのオーラに触れてから鍛え直したツェズゲラは、間違いなく選考会の頃より強くなっていると確信している。

 全盛期を超えたとは流石に言えなかったが、それでも今のメンバーの中なら上位だと自負していたのだ。

 

(とんだ思い上がりだったか、ここから無様は晒さん。集中しろツェズゲラ! 私は挑戦者なのだ!!)

 

 

 

「っぐぅ!?」

 

 決意を新たに気を引き締めたツェズゲラはレイザーからボールを受けた外野の高速パス回しに対応できず、脇腹に受けたボールで肋を盛大に粉砕されアウトになると外野でレオリオからの治療を受けるのだった。

 

 

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