創造神の生存報告を喜びつつ初投稿する作者です。
皆さんこんにちは、強くなり続ける変態と観音に追い付くためさらなる進化を目論むゴン・フリークスです。キルアの進化も凄まじく、時間制限ありだと負けないけど勝てなくなりました。
早いものでゴン一行が心源流総本山を訪れてから数ヶ月の時が経ち、各々が日々成長を続ける中今日も道場は変わらず賑やかだった。
「やめろォ!! 死にたくない! 死にたくない! 死にたくなぁい!!!」
ネテロが到着する前の心源流本部道場に、ナックルの悲痛な叫びが響き渡る。
再びゴンのオーラ測定を名目に打ち込まれた
「ポットクリンがここまで溜め込めば間違いなくダメージは無いだろ、ゴンがジャンケンで使うオーラ量を知りたくないか?」
「こえーんだよ! ハコワレは信じてるけどそれとこれとは別問題だろうが!? 師匠も悪ふざけしてないでタスケテ!!」
「俺も知りたいんだ、悪いなナックル」
「嫌ァーっ!!」
シュートの浮遊する3つの左手とモラウの煙人形に囚われるナックルは、必死に脱出しようとするもハコワレへの信頼とゴンへの恐怖の板挟みで本来の力が出ない。
このままでは埒が明かないと判断したゴンはオーラを高め、体を捻るとナックルの腹部へと狙いを定める。
「ジャン、ケン…」
「俺が死んでも第二、第三のポットクリンが…」
「グー!!」
「アッーー!?」
誰もが目を逸らす重低音が響き渡り、拘束されたナックルはそのまま数メートル後退して停止する。
「…シュート? 俺の腹ちゃんとある? 下半身付いてる!?」
「安心しろ、見るからに無傷だ。お前のハコワレは役目を果たしたぞ!」
はらはらと涙を流すナックルを男泣きでいたわるシュートだったが、他の人でなし達はポットクリンに表示された数値を見て顔をしかめていた。
「ジャンケン一発で15000か、ナックルの査定なら殆ど中堅能力者一人分ってことか?」
「全然少ねえよ、明らかに手加減してたしそもそも
「しかも硬の圧縮をしたら数値以上の威力になるしね♥これ以上は過剰威力だしゴンがこの先をどう考えてるのか気になるよ♦」
「本当に呆れた子だわさ」
キルアや心源流高弟達はもちろん、師匠組のモラウやビスケにヒソカですら込められたオーラに驚きを通り越して呆れしか出てこない。
オーラを数値化したナックルによると中堅能力者がおよそ20000前後であり、一流かつオーラ総量が多めのモラウでも約70000という数値である。
ゴンのジャンケンは、一流念能力者ですら5回と打てないオーラ量であり、中堅能力者が一瞬で干涸びるとんでもない出力による一撃だった。
「実際ゴンは考えてるわけ? ヒソカの言うとおり、これ以上は威力上げても活きる場面が少ないわさ。オーラ切れの心配がないのは強みだけど、そこまで多いとただの不良在庫よ?」
注目を集めるゴンが子供の姿に戻って少し考えると、詳細は秘密としながらも自信を持って答える。
「発の応用に挑戦中だから多分大丈夫だと思う。最悪は練で全部絞り出せるようにするから無駄にはしないよ!」
「あんたならいつかできそうで末恐ろしいわさ」
数十万の練をしながら突っ込んでくる存在など悪夢でしかなく、そこまでいくともはやオーラの暴力で全てを薙ぎ払えてしまうだろう。
そんなフィジカルの化け物がいよいよ人類の枠組みから逸脱しようとパンプアップする中、ついに平和な鍛錬の終わりを告げる連絡が入る。
クラピカが預かっていたゴンの携帯電話が、カイトからのSOS着信を高らかに奏でた。
NGL自治国の奥深く、東ゴルドー共和国に程近い平原にそれはそびえ立っていた。
数十メートルにもなる高さとそれに見合った太さを有するその蟻塚は、そう言われなければ自然にできたものと勘違いしそうなほどの規模となっている。
周囲には遮蔽物がなく近付くことも困難な要塞と化していたが、そんなこと関係なく潜入不可能な要因がカイト達にありありと見えていた。
「師匠、何なんですかあれは、あれが、あれが円なんですか!?」
「範囲が広すぎる、しかも形がきれいな円じゃない、まるで四方八方に触手を伸ばす巨大な生き物みたい」
ポックルとポンズはその圧倒的なオーラに恐れ慄き、周囲を探るように伸び縮みするオーラが此方を向くたびに体をはねさせ後退る。
無言で様子を窺っているカイトの心境も二人と似たようなものであり、その異様なオーラから触れずとも自分を凌駕する何かがいると確信していた。
「……撤退だ。俺達に出来るのはここまで、今すぐNGLから出て直接ハンター協会に報告を入れる」
蟻塚がある平原付近にある森はおろか、その森からも離れた丘の影から偵察していたカイトはこれ以上の調査を断念した。
日々餌として運び込まれているNGLの住民達には申し訳なかったが、いくらカイトでも未熟な弟子達がいる状態でこれ以上の調査はただの自殺行為である。
「全速力で退避、これまでのように隠密ではなく兵隊を殺してでも最短経路だ。遅れるなよ、助けられる保証はない」
『はい!!』
その後カイト達は慎重に行動した今までとは打って変わり、稀に遭遇する兵隊アリを始末しながらスピード重視でNGL脱出を目指し走り出す。
三人が撤退を決めたちょうどその時、蟻塚では一匹のキメラアントが丘を見ながらくすりと嗤った。
強行軍ながらなんとか3人揃ってNGLを脱出したカイトは自分の手に余る案件だとゴンに助力を求め、念能力者を喰らったキメラアントの危険性を具体的に語った。
ポックルとポンズを守りながらとはいえ、おそらくは上位個体に片腕を奪われた事実と、それを遥かに上回る個体がいることを。
そんなカイトからゴンに伝えられたSOSを聞いたビスケは、まだ道場に来ていなかったネテロに事の次第を直接報告するためにチードルと共にハンター協会へと向かった。
『危なかったぜ、あと少し欲をかいてたら全滅だった。ハンター協会に聞いたら他の念能力者がけっこう犠牲になってる可能性もある、奴等の勢力は下手すりゃ一国の軍事力に匹敵するかもな』
「ちなみにどんな相手にやられたの? もし見つけたらしっかり落とし前つけさせておくから」
『あー、見た目はかなり人間に近いカマキリのキメラアントでな、鎌で攻撃してきたと思ったら隠し腕があって不意をつかれた。それでもきっちり仕留めたから落とし前をつける相手はいないぜ』
その後は最も経験のあるモラウがさらに細かくキメラアントや地理情報を確認し、ハンター協会にいるノヴ経由で発足したばかりの対策本部に情報を渡した。
そしてネテロやビスケが不在なこと、場合によっては迅速にキメラアント相手に対応することを踏まえてこの日の鍛錬は終了となる。
ゴンにとって運命の相手とも言える、
ハンター協会の一室に設けられた、キメラアント対策本部。
「一つ提案というか、要望があるのですがよろしいですか?」
短時間で集めたとは思えない多くの専門家やハンターが議論を進める中、大まかな対応が決まったのを見計らって厳しい表情のチードルが今回の責任について言及する。
「ここまで大事になったのはひとえに初期対応を誤ったパリストン、そしてそれを見過ごした私に責任があります。多くの犠牲者も出ている以上、私達に厳重な処分を求めます」
「そんな!? 僕はまだしもチードルさんに責任なんてありませんよ! 僕がしっかり責任を負いますので安心してください!」
あたかもチードルを庇うような発言をするパリストンに対し、苛立つチードルを横目に小さく首を振ったネテロが初期対応について見解を述べる。
「未知の生物の調査として探索系のハンター、広い範囲を補うために集めやすい新人や実力の低いハンターに依頼を出したのは決して間違った判断ではない。悪かったとしたら運が、責任を負うとしたら最高責任者のワシじゃろうな」
「そんな!? ネテロ会長に責任なんて、「そうですか! ネテロ会長がそうおっしゃるなら、今回は運が悪かったということで!」…このクソネズミ!」
いけしゃあしゃあと前言を撤回するパリストンに歯を剥き出して唸るチードルだったが、たしなめるように咳払いをするネテロを見て悔しそうに席へ座る。
そして他に何か意見等がないか集まった面々を見渡すと、責任者としてキメラアントへの対処を改めて告げる。
最初の一手はキメラアントの王及び上位個体の撃滅を目的とした、戦闘職中心の第一陣を可及的速やかにNGLへと派遣する。
メンバーはネテロを筆頭として現在心源流本部道場にいる面々と、治療班の護送と後方支援としてノヴが随行する。
次の一手は討ち漏らしたキメラアントの捜索と駆除を目的とした、ビスケを筆頭とする索敵班を含めた第二陣を人足が集まり次第NGLに派遣する。
メンバーは一定以上の数を揃え、キメラアントがNGLから溢れないかの警戒にも当たる。
最後にキメラアントにより発生した被害の確認と対応を目的とした、チードルを筆頭とする治療班や工作班が第三陣としてNGLに派遣される。
第三陣は第一陣と第二陣が任務を遂行してある程度の安全が確保された後に入国するため、それまでは裏方として第一、第二陣のサポートに回る。
そしてネテロ不在のハンター協会の通常業務はパリストンを中心に十二支んとビーンズが対応し、場合によってはノヴ経由でネテロに連絡を取ることに決まった。
「ワシ、ビスケ、チードルをそれぞれ責任者とし、ある程度独自の裁量で行動する。その代わり各陣一人は副長を置き、副長同士で進捗状況を把握するようにせよ」
そして第一陣のNGL入国を3日後に定め、ネテロが行動開始を宣言すると各々が自分の仕事をするべく部屋を出ていく。
ネテロはビーンズにパリストンをよく見ておくように言いつけると、もう深夜ながらノヴに本部道場へ送るよう指示する。
勢力を伸ばし続ける蟻に対抗し、世界を股にかけるハンター協会がその牙をむく。
ハンター協会で対策会議が行われていた頃、心源流本部道場の廊下を火のついていないタバコを咥えるレオリオがふらついていた。
クラピカのいる室内での喫煙を嫌いベランダを目指していたレオリオは、目的の場所に先客がいたことに気付いて目を丸くする。
「なにしてんだヒソカ、お前がそんなことしてても似合わねえぞ?」
そこにはセンチメンタルに夜空を見上げるという、バカみたいに似合わないことをするヒソカが一人佇んでいた。
「やあレオリオ、なにって記憶の中で煌めくゴンを思い返してたに決まってるじゃないか♥」
「いや分かんねえよ」
レオリオはタバコに火をつけて一度大きく煙を吐くと、隣で基本的にいやらしい笑みを浮かべるヒソカに以前から気になっていることを質問する。
「お楽しみのとこ悪いけどよ、聞きたいことがあるんだがいいか?」
「んー? レオリオには治療で世話になってるからね、答えられることなら答えるよ♦」
本来なんのことはない世間話のやり取りだが、レオリオはここまで気楽な会話ができることにヒソカの変化を再確認する。
もはや遥か過去にも感じるハンター試験や天空闘技場の頃のヒソカからは、常に殺気に近い油断ならぬ気配が漂っていたのだから。
「ぶっちゃけた話よ、なんでそこまでゴンに執着してるんだ?」
今更聞かれるとは思っていなかった質問に珍しく呆けた表情を浮かべるヒソカに、レオリオは疑問に感じたことを詳しく説明するべく口を開く。
「お前が殺し合い、それも自分すらギリギリの死闘を求めてるってのはわかる。けどよ、それなら今はゴンより強い奴がいるじゃねえか」
一世紀以上の研鑽を積み、武神の名に一切恥じぬ強さを誇るハンター協会会長アイザック・ネテロ。
アイザック・ネテロの直弟子にして高すぎる技術を持ち、ゴンを除けば最強の身体能力を誇るビスケット・クルーガー。
間違いなく今のゴンより格上の実力を持ち、素人のレオリオから見てもヒソカの実力に近いのはこの二人なのだ。
それにも関わらずヒソカが夢中になるのはゴンだけであり、何ならネテロとビスケもヒソカよりゴンを意識している。
ゴンの年齢を考えれば異常な強さでこれからも間違いなく強くなっていくのはわかるが、それでもレオリオは不思議に思うのだ。
快楽殺人鬼で見てわかるほどの狂気に呑まれていたヒソカが、ゴン狂いの変態ピエロに変わるほどのものは何だったのかと。
「なるほど、つまりゴンの強さ以外でどこに惹かれたのかってことだね♦改めて考えると実に興味深いテーマだ、少しだけ時間をもらうよ♥」
そう言って欄干に寄りかかったヒソカと、タバコを吹かすレオリオの間にいくらかの沈黙が流れる。
やがて短くなったタバコが携帯灰皿の中に消え、次の一本を悩むレオリオにヒソカの声が届いた。
「ゴンのことで惹かれないところはないって結論になったんだけどね、一番のきっかけはこれかなってのはわかったよ♥」
雰囲気的にすぐ終わらなそうだと新しい一本に火をつけたレオリオは、驚くほど穏やかな表情を浮かべるヒソカの話に耳を傾ける。
「ゴンはね、ボクが最強に抱いていた固定観念を木っ端微塵に粉砕してくれたんだ♥」
ヒソカは語る、何をしても満たされなかった過去の自分を。
ギリギリの殺し合いでのみ僅かに実感する生と、強すぎたゆえの孤独感を。
「今思い返すと酷く滑稽な話だけどね、ハンター試験の頃はボク自身が最強だと思ってたんだ♣けど結果はまだ遥か格下だったゴンに完敗♥…あの時は笑ってたけど、実はすぐにでも殺そうかと思った」
最強のはずの自分が油断からとはいえ、負けるはずのない相手に真っ向から完封される。
初めから強者だったせいで敗北感とは無縁だったヒソカは、生まれて初めて身を焦がすような屈辱とともにそれを知ったのだ。
「それでも思いとどまってゴンを見てたら気付いちゃったんだ、ゴンが見ている最強ってやつが♦ねぇレオリオ、“最強”って何だと思う?」
「文字通り最も強い奴だろ? 天空闘技場の頃はネテロ会長がオレの中の最強だったんだが、今の最強はお前だよヒソカ」
「嬉しいこと言ってくれるね♦けど残念、今のボクは自分が最強なんて思ってないよ♠」
「そうなのか? ハンター試験からこっちでお前より強そうな奴なんて思い浮かばないんだが」
レオリオはヒソカの言う最強に心当たりがなく、怪訝な顔で誰なのか聞くがとうのヒソカは愉快そうに答える。
「もしいたら是非お目にかかりたいね♦今のボクが考える最強はね、どんな相手でも絶対に負けないってことさ♥」
それは果てしなく実現困難な、妄想の中にしかないレベルの理想論。
確実に実力が上でもその日の調子や相性で勝敗が変わるのはよくあることであり、万全を尽くしても運だけで勝敗が決することすらあり得る。
100回やって100回勝つなど、余程隔絶した実力差がなければありえないことなのだ。
「バカバカしすぎて意識すらしたことなかったんだけどね、ボクが見た限りゴンの目指してる最強はそれなんだよね♥しかも最近は決して不可能じゃない領域に辿り着きつつある♠」
「いや、真っ向勝負ならそうだとしてもよ、それこそ完全に対策した発を持った能力者相手じゃ無理だろ? 実際相性の悪いお前相手だと勝率悪いんだしよ」
「違うね、相性が圧倒的に悪いくせにボクに対する勝率がビスケやネテロ会長より高い時点でヤバいんだよ♠しかも今の段階でボクの10倍前後のオーラ総量だ、搦手で縛られるところが想像できない♣」
オーラが生命エネルギーである以上、人類であるかぎり個人差はあっても逸脱することは本来ありえない。
しかしゴンは成長期の10代前半ですでに一流の約10倍のオーラ総量を保有しているため、ナックルの
普通に考えたら、人類はゴリラを相手に勝ち目などないのだ。
「だからこそボクはゴンに夢中だし、ゴンより強ければそれだけで最強に一番近くなれるから必死なのさ♦小手先の技術や余計な策を弄してる暇なんてない、実力はボクが上でも追いかけてるのはこっちってことかな、本当に最高だよ♥」
「…余計な策ってのはオレやクラピカ辺りに何かするってことでいいのか?」
「少なくともゴンの成長が止まるまでは何もしないから安心していいよ♦困ったことに100年後も成長してそうで怖いけど♠」
言いたいことはすべて語ったのか、ヒソカは二本目のタバコを吸い終わったレオリオを置いて室内へと向かう。
お休みと言いながら手を振るその姿に狂気は見えず、本人の言う通りひたすら前を向いていることがわかった。
「なるほどねぇ、目指してるスケールの違いか。ビスケやネテロ会長もそこんとこを評価してんのかもな」
三本目のタバコに火をつけ、夜空に大きく煙を吐きながら苦笑する。
「なんてことねぇな、オレ達も含めて全員同じ穴の狢かよ」
ゴンはまだ実力で及ばない相手がいるにも関わらず、誰よりも先を全速力で走っていた。
眩すぎて常人では目を焼かれる目標に向かいながら、達成の可能性を感じさせるその姿に憧れと羨望を抱かずにはいられないのだ。
かつてイカロスは太陽を目指して墜落したが、蝋の翼ではなく己の筋肉で飛翔するゴンは堕ちようがない。
ゴンが目指す