オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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 更新が遅くて申し訳ありません、しばらくは遅いので気長に待っていただけると幸いです。


第76話 誕生を待つ者と誕生スルモノ

 

 

 皆さんこんにちは、NGL突入班になったゴン・フリークスです。人員選定で一悶着有りましたが、諸々考えたら妥当な形になったと思います。

 

 

 

 

 

 時間をかけた話し合いの末、ネテロはNGL突入班としてイカれたメンバーを決定した。

 

 戦闘力特化のゴン、キルア、ヒソカの3人。

 

 様々な状況で高い対応力と柔軟性を持つモラウ、ナックル、シュートの師弟トリオ。

 

 雑兵や兵隊長などの露払いを担当する、心源流から戦闘力の高い者を5名。

 

 キャンプと四次元マンション(ハイドアンドシーク)で行き来することのできる、補給や退路の確保を一手に担うノヴ。

 

 最後に蟻塚までの案内人として、隻腕ながら十分な戦闘力を保有するカイト。

 

 これにネテロを加えて突入班のメンバーとし、残りはキャンプで待機するグループと第二陣に合流するグループに分かれることとなる。

 

 この決定に一人、クラピカが沈痛な面持ちでゴン達に謝罪していた。

 

「ゴン、キルア、ギン、すまない。私が足手まといになったばかりに…」

 

「別に誰が悪いとかねぇだろ、単にタイミングが悪かっただけだ」

 

「ぐまっ!」

 

「むしろ良いことなんだから気を落とさないでよ、ノヴさんがいるからレオリオとクラピカが一緒じゃなくてもすぐに治療してもらえるんだしさ」

 

 今回は距離を無視できる規格外のノヴがいるおかげで、レオリオやクラピカといった医療班はキャンプで待機しながらもすぐに治療を行うことができる。

 それにともないキャンプの護衛としてギンが残ることになったのだが、クラピカは自分のせいで戦力を分散したと解釈していた。

 

「クラピカ、キルアが言う通りタイミングが悪かったんだ。それにキメラアントがキャンプに来る可能性だって十分にある、変に気にしすぎるとまたホルモンバランス崩れるから程々にしろ。それにどちらかといえば悪いのはオレだしな」

 

 レオリオはクラピカを慰めるように頭を撫でたあと、お腹に視線を向けてへにゃりとだらしない笑みを浮かべる。

 その締まらなさにゴン達は苦笑いを浮かべ、クラピカもまだ影があるものの幸せそうに微笑みながら腹部に触れる。

 レオリオとしては医師免許を手に入れてからと考えていたが、チードルやサンビカ等若い女性が思いの外多かったことに焦ったクラピカの行動力が起こした事態。

 

 まだ見た目に変化のないクラピカのお腹の中では、新たな命が懸命に誕生を目指して育っている真っ最中だった。

 

 まだ本部道場にいた頃発覚した妊娠はクラピカの瞳が紅紫色から一向に変わらない程の多幸感を与えていたが、キメラアントの発覚以降は申し訳無さから元の鳶色に戻ってしまっている。

 レオリオとしては初産な上にまだ十代のクラピカには危険のあるキャンプに居てほしくなかったのだが、離れるほうが精神衛生上良くないと判断して共にあることを選択した。

 

「しかしギンを連れて行かないで本当にいいのか? キャンプの護衛には心源流やハンターもいるのだ、突入班の戦力を削るわけにはいくまい」

 

「うーん、それなんだけど本当にクラピカのためじゃなくて、オレのワガママとギンの希望なんだ」

 

 ギンを突入班から外したゴンのワガママとは、人間とキメラアントの争いに巻き込みたくないというもの。

 今回キメラアントを有害獣として駆除対象としたが、彼等は種としては当たり前のことをしているだけで自然界として考えた場合何ら悪いことをしていない。

 人間とキメラアントの生存競争に、キツネグマのギンを関わらせたくなかったのだ。

 

「そんでギンの希望ってのは、全盛期を過ぎたからってことでいいのか?」

 

「きゅーん…」

 

 そしてキルアが予想を言えば、ギンは少し項垂れながら小さく鳴き声を上げる。

 

「そうなのか? オレから見たら全然弱くなったように見えないんだが」

 

「まだそこまでじゃないね♦要は頭打ち、これ以上強くなれなくなったっていうのが正しいかな♣」

 

 ギンの年齢はゴンより上で20歳近いと思われ、キツネグマとしてはすでに老齢と言っても差し支えないものとなっている。

 念に目覚めたことやしっかりと栄養を取っていることもあってまだまだ長生きするし戦えるが、強さという点では上限に到達してしまっていた。

 最近の組手ではキルアにほとんど勝てなくなっていたこともあり、足手まといの可能性を考えてキャンプに残ることを選んだのだ。

 

「オレ達もギンが残るならより安心して戦えるし、今回はカイトが案内してくれるおかげで索敵はそこまで重要じゃないのも大きいかな」

 

「…そうか、それなら甘えさせてもらおう。頼んだぞギン、頼りにしているからな」

 

「ぐまっ!」

 

 そしてやっと表情が柔らかくなったクラピカに周りが安堵し、何気ない会話を始めてしばらくすると見覚えのある二人組が近付いてくる。

 

「久しぶり、ヒソカもいるのはめちゃくちゃ予想外だが相変わらずそうで何よりだ。頼みたいことがある、俺の話を聞いて欲しい」

 

 会議中からゴン達を気にしていたポックルが、ポンズを連れ覚悟の決まった顔でゴン達と再会した。

 

 

 

 

 

 キメラアント対策部隊第二陣の責任者となったビスケは、思った以上に難航するメンバー召集に頭を悩ませていた。

 

(欲しい人員はかなりの数が別の任務に就いてるわね、受けた時期的に見たらキメラアントは関係なさそうだけど、あの陰険ネズミなら狙ってやったと言われても納得するわさ)

 

 戦闘要員は心源流師範でもあるビスケならば余裕を持って調達できるが、索敵等の裏方やサポート要員となると話は変わってくる。

 ネテロというハンターが頂点の所為かハンター全体の問題か、使える者ほど戦闘力に特化していくことが多いのだ。

 必然的にサポートタイプで残るのはごくごく一部の一流と、使い物になるか微妙な練度の低い者が大半となってしまう。

 そんな中多くのハンターが手を離せない案件を抱えていたせいで、顔の広いビスケでも人員集めに非常に苦慮していた。

 

(グリードアイランドが落ち着いてたおかげでツェズゲラ達を引っ張れたのは助かったわさ。彼等は戦闘力以上に裏方としてかなり頼りになる)

 

 幸先悪いスタートとなったが不幸中の幸いというべきか、グリードアイランド2の第一回選考会が落ち着いたツェズゲラ達がメンバーとして加わることとなる。

 完全に索敵タイプの発を持つドッブルを筆頭に、サポートタイプが豊富な彼等の参加は極薄だった戦力を一気に厚くした。

 それでも広い範囲の監視並びに溢れたキメラアントの対策をするにはまるで手が足りておらず、第一陣から回された人員を使っても予定の半分を超えた程度にしかならない。

 

(これはいよいよ十二支んから何人か借りないと無理だわさ。被害を食い止めるためとはいえ風呂敷を広げすぎよ)

 

 もちろんネテロも無謀だというのは重々承知していたが、自分が楽しんでいたことも理由の一端とあって対外的に全力を尽くすことをアピールする必要があった。

 それこそこの事態が収束したらしっかりと責任を取ることも視野に入れており、何なら完璧に対応できたとしてもハンター協会会長を辞める気になっている。

 ネテロは自分の心が若返ったことで、パリストンとの相性の悪さが致命的になったことを実感したからだ。

 

(最低でも監視要員として(とり)のクルック、実働部隊に(ひつじ)のギンタは欲しいわね。これはビーンズに頑張って働いてもらうしかないわさ)

 

 ビスケは膨大な仕事を一部の精鋭でこなすというできれば避けたかった決断を下し、それによって最も割を食うことになるであろうビーンズに心の中で謝罪する。

 現時点で誰よりも働き心労を溜め込むビスケは、報酬としてネテロの資産を誰よりも毮り取ることを決意した。

 

 

 

 

 

 カイト達がNGLを脱出したちょうどその頃、キメラアントの蟻塚最奥に護衛軍が揃って跪いていた。

 新たな拠点に目処と仕込みを終えたシャウアプフが戻ってきてから数日後の今日、ついに女王が満を持して王の出産に着手するのだ。

 

『これより王を産みます。後のことはまかせましたよ』

 

 女王は返事も待たずにオーラを高めると、王の誕生に合わせて最初で最後の能力行使を行う。

 

 生まれ昇る太陽(ワタシガウムサイキョウノオウ)――

 

 女王の肥大した腹部の中心に揺蕩う影から、直視困難な暴虐的光が発せられる。

 下を向き目を閉じる護衛軍達ですら目が眩む光に晒され、女王の輪郭が溶けて影へと吸い込まれていく。

 己の全てのオーラ、血肉の一滴まで賭して完成する王に、女王は最後に残った一欠片の意識で告げた。

 

『貴方の名はメルエム。全てを照らす光、太陽の子。世界を、その威光で…』

 

 そして何もなかったかのように光は消え失せ、護衛軍達は霞む目で女王のいた場所を伺う。

 

 そこには特段巨大ではないが、正しく凝縮の果てにあるダイヤモンドの如き存在が佇んでいた。

 

 ほぼ人間の身体にまるで筋肉のように見える外骨格、鋭い視線と端正な顔立ちは威厳に満ち溢れ、先端に針のついた身長と変わらない長さの尾が特徴的だった。

 

 護衛軍達はメルエムの存在そのものの眩さに目眩を起こし、感動と興奮で身じろぎ一つ取ることができない。

 

「…発言を許す、名を名乗れ」

 

 威厳ある立ち振舞から威厳ある言葉が発せられ、視線で指名されたネフェルピトーが涙ぐみながら答える。

 

「王直属護衛軍所属、女王より“親愛”の任を預かったネフェルピトーでございます」

 

 続けて視線を向けられたモントゥトゥユピーが感動に打ち震え、ネフェルピトーに倣って簡素に名乗る。

 

「同じく護衛軍、“武具”のモントゥトゥユピーでございます」

 

 最後に視線を向けられたシャウアプフは、頬を紅潮させ褒められるのを待つ子供のように発言を始める。

 

「麗しき我が王よ、直属護衛軍“盲信”のシャウアプフでございます。早速ですが、王に相応しい新たな拠点を見繕ってあります。場所は…」

 

 言葉を続けようとしたシャウアプフに対し、メルエムは手を上げて遮ると指を曲げ近付くよう促す。

 喜色満面でメルエムの眼前に跪いたシャウアプフだったが、次の瞬間振るわれた尾で顔面を殴られ壁の中に埋まった。

 

「許したのは名乗りのみ。余の時を無駄に浪費させるな、不敬であるぞ」

 

「っ! 大変申し訳ありませんでした。新たな拠点の情報を開示次第、速やかに自害させていただきます」

 

 痣を作り血を流しながらもしっかりとした足取りで戻ったシャウアプフを一瞥したメルエムは、女王が座していた位置に片膝を立てて座ると視線を外して告げる。

 

「よい、許す。殺すつもりで打った故、生きていようとも刑は執行済み。その命は余の所有物、お前に決定権はないと知れ」

 

「おぉ…、なんと慈悲深き御心…」

 

 滂沱の涙を流すシャウアプフはそれ以上余計なことは言わず、元の位置に戻ると跪き控える。

 揃った護衛軍を今一度確かめるように眺めたメルエムは、その強さの大凡を見極めた後に命令を下す。

 

「巣にいる他の者を集めよ。新たな拠点に付いてくるか、独立するかを選ばせる。それと食事をもってこい、空腹ではない故量より質を優先してな」

 

『かしこまりました!!』

 

 王からの命令に護衛軍は嬉々として行動を開始し、シャウアプフは他のキメラアントを呼びに、モントゥトゥユピーは食事を取りに全速力で向かう。

 そして他の要望にも応えられるように残って傅くネフェルピトーは、王の話し相手になれればと思い許可を取って提案する。

 

「王よ、他の者達に選ばせるまでもなく命じてはいかがですか? 王に逆らう者は全て我等が燼滅いたしますが」

 

 物騒な空気を漂わせるネフェルピトーだったが、威厳がありながら何処か清廉さを感じさせるメルエムのオーラに思わず目を伏せ、出過ぎたことをすぐさま謝罪する。

 それに対し少しの間沈黙していたメルエムは、暇潰しも兼ねてかネフェルピトーへと問いを投げかけた。

 

「ネフェルピトーよ、王とはどのような者を指すと考える?」

 

「王の誕生までは色々考えておりましたが、一目見た瞬間から確信しました。貴方こそが王であり、他は全て紛い物です」

 

「聞いたのはそこではない。よいか、王とは全てにおいて強き頂点に立つ者を指す。そして、与えることのできる者のことよ」

 

 首を傾げるネフェルピトーに向けて、メルエムは己の考える王という存在について話す。

 

「肉体的強さ、頭脳的強さ、どちらも備えていなければ真の王とは言えん。他の優れた者に任せるだけならまだしも、他より劣ることを是としたならば謀反に対して無力である」

 

 国のトップが武力的にも知力的にも国内最高など本来ありえず、良く言ってまとめ役であり悪く言えば親などから与えられたただの天下りでしかない。

 彼等は己の力でその立場に留まれているわけではなく、あくまでも周囲が許しているからこその現状維持でしかないのだ。

 

「なればこそ真の王は、誰より強く誰より賢くなくてはならん。しかしそこで止まった者は、王ではなく優れただけの超越者よ」

 

 ただ頂点に立ったところで王とは言えず、群がる者達が国を造ったとしてもそれではただの神輿としか言えない。

 多くの慕い従う者がいて初めて神輿ではなくなり、誰もが認める王として存在できるのだ。

 

「そして与えられるだけの存在など、王ではなくただの物乞いと変わらん。与えられて当然と、与えなくとも良いは別の問題なのだからな」

 

 王であるなら相手の意志はどうであれ与えられて当然と言えるが、だからといって与えてはいけないということはない。

 それこそ相手が望もうが望まなかろうが、働きや忠義に対して相応の褒美を与えられるからこそ富と器の大きさが証明できるのだ。

 

「だからこそ余は報いよう。身命を賭して余を産んだ女王を、これまで守り続けるという任を全うした者達にな。選択肢を与え、ついてくる者を受け入れるのはそれが理由よ。理解したか?」

 

 話を聞き終えたネフェルピトーは、己が王を見誤っていたことを深く深く恥じた。

 たった今生まれたばかりの生涯尽くすべき王は、すでに武力と知力に留まらず器においても規格外と言っていい領域に達していたのだから。

 

「王の考え、この身にしかと刻ませていただきました。今一度このネフェルピトー、王に絶対の忠誠を誓います」

 

 最高の王に仕えられる喜び、そして王の満足する働きができるかという不安。

 多くの想いが渦巻く胸中を察したのか、メルエムは己を絶対に裏切ることがない忠臣の一角に報いる。

 

「ネフェルピトー、これよりピトーと呼ぶ。シャウアプフはプフ、モントゥトゥユピーはユピーと呼ぼう。お前達にのみ余の名を口にすることを許す。励むが良い」

 

「あぁ…、これ以上ない名誉でございます。プフとユピーもさぞ喜ぶことでしょう」

 

 その後すぐに食事を持ってきたモントゥトゥユピーが、そして他のキメラアントを呼びに行ったシャウアプフが戻り名を許されたことに感涙する。

 師団長クラスが全員揃うまで少し時間がかかるということで、護衛軍が自分にできることをメルエムに我先にと説明して時間を潰した。

 

 王の生まれたキメラアントはついに組織として完成し、その繋がりの強固さと実力は人間国家を軽く凌駕する。

 

 世界で最も若い集団と世界でも有数の歴史を持つ集団の衝突が刻一刻と迫り、上位者同士の決戦が今まさに始まらんとしていた。

 

 箱庭の中の頂上決戦、人と蟻の生存競争が勃発する。

 

 





 後書きに失礼します作者です。すでに慢心王じゃないメルエムについて補足説明、独自解釈語ります。

 原作だと女王にまだ早いと言われながら無理矢理産まれたということは早産だったと思われ、今作では女王が万全を期して産んだことで今現在の最高値で誕生しました。
 それにより作者の考える最高の王になってもらうべく、精神的にしっかりと落ち着いてもらいます。

 後原作での転生カイトですが、あれはカイトの発によって生まれた存在と仮定して、本来女王は一人の王を産むだろうと考えて端から存在しておりません。

 読者の皆さんもきっと最高にかっこいい我等がメルエムを見たいはずだと信じてます。
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