オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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 今更あけましておめでとうございます。



第90話 モントゥトゥユピー VS 師弟トリオ

 

 

紫煙魔人(スモーキータイタン)!!」

 

「うがぁーーっ!! うざってぇんだよぉーーーっ!!」

 

 平原で行われている師弟トリオとモントゥトゥユピーの戦闘は、変幻自在にして大質量のスモーキータイタンが優勢に事を運んでいた。

 元々本能が強く圧倒的フィジカルによる戦闘スタイルが売りのモントゥトゥユピーは、己より巨大な存在に好き勝手殴られ自分の攻撃は透かされるという事態にすっかり頭に血が上っていた。

 

「ドラァッ!!」

 

「せいやぁっ!!」

 

 更に巨大化したモントゥトゥユピーの足元ではナックルとシュートが懸命に攻撃を繰り返し、ダメージは見られなくとも着々と準備を勧めている。

 

「ナックル! まだ足りないのか!?」

 

「シュートはもう少し続けてくれ! 師匠はもう足りてる!!」

 

 視野狭窄のモントゥトゥユピーは気付いていないが、横に浮かぶポットクリンは着実に利息を増やしている。

 オーラの貸し借りによりダメージを無効化できるナックルの天上不知唯我独損(ハコワレ)がこの戦いの鍵であり、誰も犠牲にならずに決着を付けられる可能性が一番高い手段だった。

 

「お前等一旦下がれ!! 紫煙幕(スモーキーカーテン)!」

 

「ぶはぁ!? くっせぇーーっ!!」

 

「からの、タイタンプレス!!」

 

 モラウが展開した大量の煙幕は、ナックルとシュートを下がらせ大技を決めるための隙を生み、両手を組んだ紫煙魔人の一撃がモントゥトゥユピーを地面にめり込ませる。

 そのまま拘束して少しでもポットクリンの利息を貯めようとしたモラウだったが、急激に膨れ上がったモントゥトゥユピーの身体とオーラを感じ慌てて紫煙魔人を普通の紫煙に戻す。

 

『ガァァォァーーーッ!!!』

 

 モントゥトゥユピーの膨らんだ身体とオーラが爆発し、紫煙魔人の大半を吹き飛ばして巨大なクレーターを作り上げる。

 下がっていたことが幸いしたナックルとシュートも無傷でやり過ごすことに成功したが、その無差別な大規模破壊に冷や汗を流して小さくなったモントゥトゥユピーを見やる。

 

「……ふぅ~、スッとしたぜぇ~。なるほどなぁ、カッとしたらこうすればいいのか」

 

 そこに先程までの激昂して無闇矢鱈と暴れていたモントゥトゥユピーはおらず、感情を爆発させたことで冷静さを取り戻した戦士が佇んでいる。

 

「この変な人形も直接影響があるわけじゃねえのか、ならとりあえず本体をぶちのめしゃ解決だな」

 

 モントゥトゥユピーがクレーターの底からモラウ達を見上げると、今までの考えなしではなく明確な意志を持って身体を変化させていく。

 これまでの攻防で相手の攻撃力がそこまでではないと判断し、防御力は最小限に攻撃力と速度を追求していく。

 

「侮って悪かったな羽虫野郎共、こっからは本気で潰しにいくぜ」

 

 クレーターから飛び上がりモラウ達の前に着地したモントゥトゥユピーの姿は、一言で言うなら六眼六臂のケンタウロス。

 無駄に増やしていた目は死角がない程度に顔に並べ、腕は刃と鈍器と銃口をそれぞれ2本、そして腰から下は六本足の馬となって地面を掴む。

 

「こりゃ強烈だな、間に合ったかナックル?」

 

「さっきのでこいつはかなりオーラを消費しました、グレートですよ、これならいける! ポットクリン、連帯保証契約(ミチヅレ)発動!!」

 

 ナックルが突然モラウとシュートを殴り付けると、二人の横に色違いのポットクリンが出現する。

 それは相手を一ヶ月間強制的に絶状態にするハコワレを無駄に期間が長くないかと指摘したゴンのアドバイスにより生まれた、絶の期間を減らすことでポットクリンによるオーラのやり取りを第三者にも適用させる新たなハコワレ。

 単純に利息を貯める手段が3倍になることは早期決着につながる上、オーラの貸し借りにより多少なりともダメージの軽減まで見込める。

 

「師匠もシュートも破産したら10日間の絶になる。しかもあいつの攻撃をくらったら一発破産もありえる、過信だけはしないでくれ!」

 

「んなことわかってんよ。ここからは目眩ましもなしだ」

 

「何気に初めてですよね、俺達と師匠が本気でするスリーマンセルは」

 

 油断も驕りもなくなったモントゥトゥユピーにスモーキータイタンはむしろ悪手と判断したモラウは紫煙を回収し、自分達に纏わせることで動きを補助する鎧となる紫煙鎧(スモーキーアーマー)を発動する。

 シュートは操作している浮遊する手に乗って浮き上がると、修行によって増えた手を衛星のように加速させていく。

 モントゥトゥユピーは遙かに身体もオーラも小さい3人が、知恵と技術で自分に脅威と確信させていることを冷静になった頭で認識した。

 

「来いよ人間共! 俺はメルエム様の武具モントゥトゥユピー、王の邪魔をする奴等は皆殺しだ!!」

 

 戦いは一見すればモントゥトゥユピーの独擅場だった。

 巨体からは信じられない速度で駆けながら、伸縮自在の武器腕が一つ一つ致命傷となる威力で振るわれる。

 点の威力を突き詰めた鈍器腕に線による防御困難な斬撃腕が近接で猛威をふるい、離れても銃口腕からオーラ弾が湯水の如く乱射される。

 

 それでもモントゥトゥユピーのポットクリンは、徐々に利息を増加させていた。

 

 モラウ達の連携は完璧と言える練度を誇り、正に三位一体となった彼等は互いを高めあって何倍もの実力を発揮している。

 恐れを知らないかのように勇猛果敢に攻めたてるナックルに、それを補助しながら高速で飛び回るシュート、そして二人が何も気にせず戦うことができるように紫煙拳(ディープパープル)を駆使するモラウ。

 モントゥトゥユピーの戦闘スタイルがオーラ消費を気にしないことも功を奏し、刻一刻と決着の時が近付いている。

 それを本能で感じ取ったモントゥトゥユピーは激怒し、それでも残った冷静さが現状の悪さを理解した。

 

(これが、これが人間、これが念能力者同士の戦い!)

 

 攻撃力に防御力はもちろんオーラ総量にオーラ出力全てが足元にも及ばない、本来敵になり得ないはずの相手を仕留めきれない不甲斐なさ。

 それと同時に胸中に生まれた、弱いのに強いという矛盾を成し遂げていることへの敬意。

 

 

 そしてモントゥトゥユピーの脳内に発生した、全てがどうでもいいと思えるほどの恐怖。

 

 

「ああぁーーーっ!!!」

 

 メルエムの武具としての役目を果たせず敗北する未来を幻視し、爆発した感情がオーラと身体を弾けさせようと膨張を始める。

 

「バカヤロー! んな隙だらけの技はいい的だぜ!!」

 

「一気に決めるぞナックル!!」

 

 一度見たことで爆発のタイミングや範囲を把握していたナックルとシュートは、決着を付けるために全力で攻撃すべく突撃する。

 

 実力と経験の差、そしてやや引いていたモラウはモントゥトゥユピーの目から冷静さが失われていないことに気付いた。

 

「お前等下がれ!!」

 

 攻撃が当たる直前にモントゥトゥユピーの身体がしぼみ、空振って死に体の二人に向けて腹部に出現した大口が照準を合わせる。

 

「俺の前から消え失せろーーー!!!」

 

 全方位に向かっていた破壊力に指向性をもたせたレーザーのような一撃が撃ち放たれ、射線上の数百メートルを文字通り消し飛ばして破壊の限りを尽くした。

 

「はぁ、はぁ、…なんでだ、本体を消したのになんでこいつがまだいやがる!?」

 

 モントゥトゥユピーはナックルを消し飛ばしたにも関わらずカウントを続けるポットクリンに顔を青褪めさせ、今の一撃を何とか回避して構えているモラウには目もくれず身体を変化させていく。

 

 それは攻撃力も防御力も捨てて速度にのみ特化した、まるでジェット機のようなフォルムの猛禽類の姿。

 

「俺は、メルエム様のお役に立つんだよぉーーーっ!!!」

 

 キメラアントの本能か、正確にメルエムのいる方角を見極めたモントゥトゥユピーがオーラの噴出をエネルギーにして超速飛行を開始する。

 追うのはもちろん妨害する暇すらなく一瞬で姿が見えなくなったのを確認したモラウは、張り詰めていた集中の糸がプッツリと切れたのを自覚し大量の汗を流しながら座り込んだ。

 

「くそ、あの速度じゃもう追い付けねえ。…情けないぜ、三人がかりでこの程度の足止めが精一杯かよ」

 

 重傷は避けながらも全身にある傷を紫煙で止血しながら、隣でカウントを続ける色違いポットクリンに視線を向ける。

 そして今の位置から離れた所へと向かい歩き出すと、戦闘の余波が及ばない位置にシュートの暗い宿(ホテルラフレシア)が所在なく漂っているのを発見した。

 

「ナックルもシュートも、俺なんかにゃ出来すぎた弟子だよ」

 

 中身が見えない鳥籠の扉を開けると、そこから勢いよくナックルとシュートが飛び出してきて地面に転がる。

 

「あっぶねぇーー!? ありがとうシュート俺死んだと思った!!」

 

「俺も生きてるのが不思議だ。ありがとうございます、師匠の声がなければ飛込宿(カプセルラフレシア)は間に合いませんでした」

 

 与えたダメージに応じて相手の身体を鳥籠に閉じ込めることができるシュートのホテルラフレシアだが、承諾さえあれば浮遊する手に触れている時に限り緊急避難が可能な応用技を開発していた。

 戦闘方面より念能力の向上を目指し始めたノヴに触発されて生み出されたカプセルラフレシアは、第三者から鳥籠を開けてもらえなければ脱出不可能ながら絶望的状況から一瞬で離脱できるという破格の性能を持つ。

 

 今回どれだけギリギリだったかは、焦げて煙を上げるナックルのリーゼントが証明していた。

 

「師匠、モントゥトゥユピーの奴はどうしたんです? 範囲外にいるのはわかりますけど、もしかして痛手を与えたんすか?」

 

「いや、ポットクリンが消えないことに危機感を持ったみたいでな、信じられないスピードで飛んでいった。しかも方角的にメルエムのところに向かったな」

 

「それはまずいですね。戦闘中だろうゴンと連絡なんて取れないですし」

 

「連絡についてはネテロ会長に発信しといた。モントゥトゥユピーを取り逃がしたことしか伝わらないが、あの人ならきっと間に合う」

 

 そして最低限できることがなくなってしまうと、いよいよ気力が底を尽きた三人はその場に座り込む。

 もはやノヴに連絡を取って四次元マンション(ハイドアンドシーク)で他の戦場に行こうにも、激戦後の集中力が切れた状態では足手まといにしかならない。

 

「範囲外でカウントしなくてもポットクリンが横にいたら気が散るでしょうし、二人が破産するギリギリまではミチヅレを維持します。こっちがトリタテンになったらどうせむこうのポットクリンも消えますしね」

 

 ポットクリンの利息カウントはナックルから離れすぎると止まってしまうのだが、ミチヅレによって増えた色違いポットクリンは離れていようが構わずカウントを進めてしまうデメリットがある。

 それでもモントゥトゥユピーのように一撃で破産させられる相手でなければ、文字通りお互い無傷での決着もあり得るナックルとシュートにとって最高の能力だった。

 

「しかしあれで護衛軍の中では一番やりやすい相手ですか、相性的にしょうがなかったとはいえキルアが心配ですね」

 

「そうなんだよ、俺等より強いとはいえまだまだ子供だしな。信頼してても心配しちまうぜ」

 

 同い年のゴンが今まさにメルエムと戦闘中でモントゥトゥユピーまで向かったというのに、ナックルとシュートはシャウアプフと戦闘中であろうキルアの安否を懸念する。

 それだけゴンの強さがシンプルで強烈だということだが、ハンターとして長く活動してきたモラウからするとまた違ったものが見えてくる。

 

「俺としても怖いのはゴンなんだがな、正直信じられないって思うのはキルアだ」

 

 モラウの意見に疑問符を浮かべた弟子達は、煙管を吸い出した師匠に続きを促すように黙って視線を向ける。

 ゆっくりと一呼吸したモラウはゴンがありえない強さと精神力を持っているのは肯定した上で、キルアというゾルディック家の秘宝とも言うべき規格外を語った。

 

「あの年齢で考えられる最上の身体能力と、各種耐性の強さという巨大な基礎があったとはいえ本来は有りえないんだよ。念能力者として2年経ってないガキがネテロ会長に追い縋ってるなんてな」

 

 それはゴンやヒソカという見えすぎる強者に隠れて見過ごされがちな事実、十代前半の念能力新入生が修羅達の輪に加わっているという異常事態。

 ゴンも大概おかしいが一応念能力者としては5年以上のキャリアが有るわけで、最高の修行環境があったとはいえ一年半程度で追い付くには何もかも足りないはずなのだ。

 

「いつもネテロ会長やビスケさんが言ってることだが、才能って観点で言えばキルアに太刀打ちできる奴は存在しねぇのさ」

 

 圧倒的強さを持つ修羅達に対して、まさに雷光の如き速度で迫るキルア。

 今この瞬間も成長している真っ只中なのは間違いなく、モラウにとってももはや滅多なことでは勝てない次元に到達している。

 

「しかもキルアはキメラアントみたいに与えられた強さじゃなく、自らの意志と努力で築き上げた強さだ。もし勝てなかったとしても、絶対に負けることだけはないはずだ」

 

 力強く断言したモラウに幾分安心したナックルとシュートも改めて力を抜き、師弟達は未だ続いているだろう決戦の勝利を願いながら静かに休息を取る。

 

 

 光も音も届かぬ遥か離れた地で、雷皇による特大の閃光が爆発して消えた。

 

 

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