オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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第93話 ネフェルピトー VS ヒソカ

 

 

 草木は眠り小動物達が逃げ出した静かな森の中、時間制限有りながらメルエムを超えたネフェルピトーはその全霊をかけてヒソカを攻めたてる。

 

「ジャアッ!!」

 

 黒死夢想(テレプシコーラ)により命を弾けさせながら疾駆するネフェルピトーは、ネコ科のしなやかさと瞬発力で常軌を逸した機動で縦横無尽に攻めたてる。

 

「カァッ!!」

 

 神速(カンムル)を発動した状態のキルアですら追従不可能の速度に至ったネフェルピトーは、ただただ目の前の敵とメルエムの敵を粉砕するためだけに攻めたてる。

 

「アァアッ!!!」

 

「くくっ、はやいはやい♦」

 

 それでもネフェルピトーの猛攻は、紙一重の差でヒソカに届かない。

 

 日々ゴンの超パワーにキルアの超スピード、そしてネテロとビスケの練り上げられた技術に完璧な対処をするヒソカにとって、ゴン以下のパワーにキルア以上のスピードの技術無しはむしろやりやすいまであった。

 

(ちょっとだけキレちゃった♣発はゴンに似てたけどやってることはキルアの方が近いね♦)

 

 もっとも紙一重なのは狙っているのではなくネフェルピトーが実際強いからであり、普通なら集中力が音を立てて削れていくほどの猛攻が続いている。

 

(これ以上がないならもう終わらせようかな、早く終わらせればゴンの勇姿が見れるかもだし♥)

 

 それでも普通じゃないヒソカの精神は欠片も疲弊することなく、紙一重を越えさせない絶対の自信があるからこそ呑気に思考する余裕すらあった。

 ネフェルピトーの情報を得るための観察も十分と判断したヒソカの意識が攻撃に傾いた瞬間、それまで続いていた猛攻がピタリと止まって間合いが空く。

 

「ん? もうやめちゃうの? これからが愉しいのに♠」

 

 ネフェルピトーに確かな恐れがあるのを見て取りテンションが下がるヒソカだったが、これで終わるなら所詮そこまでと開き直り先の攻防で貼り付けていた伸縮自在の愛(バンジーガム)を発動させる。

 

「ッァ!?」

 

「逃げられないよ、足搔いてごらん♦」

 

 突然引き寄せられ体勢を崩したネフェルピトーにトランプを振るうも、空中で身を捩り人間には不可能な動きで躱される。

 しかも首を刎ねるつもりが頬を掠るに留まったばかりか、伸びた爪の一閃が紙一重を越えてヒソカの頬にも赫い線を引いた。

 

「フㇱーッ!!」

 

「へぇ、やればできるじゃないか♥」

 

 ヒソカが攻撃に意識を割いたこと、カウンターを取られた形になったことで伸びたコンマ数ミリ。

 微かに届いた己の牙に方針を固めたネフェルピトーは、命が弾け続けるのも構わず全身全霊で身構えた。

 

(しょせん獣だから自分で攻める時は最速最大の一撃しかないけど、相手に合わせてのカウンターなら問題ないわけか♦このまま見てれば勝手に潰れる気もするけど、それはちょっとつまらないなぁ♠)

 

 今の動きから効果が薄いと判断したバンジーガムを回収し、ネフェルピトーではなく周囲の木々に巣のように張り巡らせる。

 

「テンション上げていくから付いてきてね♥」

 

「シャァッ!!」

 

 バンジーガムを罠と移動手段に使うことでクロロすら完敗したハントが実行され、超一級とはいえ獣であるネフェルピトーの命運は早々に尽きるかと思われた。

 

(……これはビックリ、想像以上の学習能力だ♦)

 

 緩急やフェイント、近接から遠距離と多種多様でも足りない攻撃を行うヒソカに対し、圧倒的反射神経と身体能力を駆使するネフェルピトーは抗い続ける。

 最初はダメージを受けることも多かったが、攻防が続くに連れて徐々に躱せる攻撃を増やしていく。

 思考の大部分を闘争本能に割り振っていても確かに残る、メルエムとコムギの軍儀を円で感知し続けていた記憶。

 

 相手がいなかった故に蕾のままだった戦闘の天才が、最強のハンターに出会ったことでその才能を爆発的に開花させた。

 

「シィッ!!」

 

「っ♥」

 

 ヒソカの振るったトランプがネフェルピトーの肩を切り裂き、お返しとばかりにネフェルピトーの爪がヒソカの肩を掠める。

 ダメージ量はいまだ圧倒的にヒソカ有利だが、野生ではありえないコラテラルダメージを許容したネフェルピトーの攻撃も確かに届きだしていた。

 間違いなく人生で最強の相手へと成長したネフェルピトーに悪辣な笑みを浮かべたヒソカは、さらなる成長を愉しむかのように奇術師の嫌がらせ(パニックカード)を具現化させる。

 

 

 飛び出したヒソカの身体が空中に固定され、隙だらけの姿に向かってネフェルピトー最速の貫手が突き刺さった。

 

 

「…なるほど、後ろの髑髏は自分の強化だけが能力じゃなかったんだね♣」

 

 凝を強めたヒソカの目に映ったのは、黒死夢想(テレプシコーラ)から伸びる隠により見えなかった念の糸。

 見えないばかりか触れたことにも気付けないマチをも上回る念糸による拘束は、ヒソカに確かな出血を強いる傷を与えた。

 

「けど残念、攻撃の瞬間が一番無警戒ってね♥」

 

 ネフェルピトーの攻撃はバンジーガムで僅かに逸らされ、貫通するはずの一撃は脇腹を抉るにとどまっていた。

 

「アッ…」

 

 そしてヒソカの放ったパニックカード♢のJがネフェルピトーの首を半ばまで切り裂き、念糸は消滅し大量の出血と共にその身を跪かせた。

 

「なかなか楽しかったよ♥バイバイ♠」

 

 ヒソカは♢のJで落としきれなかった首に狙いを定め、極限まで研ぎ澄ませたオーラを纏うトランプを振るう。

 

 

 外すはずのないトランプが空を切り、異変を察知したヒソカはネフェルピトーから距離を取った。

 

 

「アァ、アァあ…」

 

「……?」

 

 更に強めた凝ですら何もわからないことを訝しむヒソカの前で、ネフェルピトーの背後に浮かぶ髑髏の姿がグロテスクなナースに変わる。

 

 未だに出血の止まらない首を雑に縫合して治療すると、怪しく輝く謎の液体を注入した。

 

「ふーん、まだ上があったんだね♥」

 

 ナースが再び髑髏のプリマドンナに変わると、声帯のない口を大きく開けながら踊りだす。

 

 弾けさせていた命を優に超える出血は、より死に近付いたことでさらなる強化をその身体にもたらす。

 

 わずかに残っていた理性も薬物で消し飛ばし、もはや蟲とは呼べぬ怪物へと至ったネフェルピトーは目の前の敵を殺すために立ち上がる。

 

「アあァぁア―――ッ!!!」

 

「ふふ、仮想ゴンのいい獲物だ♥」

 

 ネフェルピトーの速度はもはや、百式観音に追随するのではというレベルに達していた。

 

 力もゴンの借筋地獄(ありったけのパワー)の領域に迫り、キレや速度に見合わぬ静けさは正にキルアの上位互換である。

 

 修羅3人の良いとこ取りを成し遂げた怪物に狙われるヒソカは、その全能力を駆使して抗い反撃を行う。

 

 オーラをバンジーガムに変化させるだけでなくアメーバのように形も変え、既に森に張り巡らせたバンジーガムも使いながら予測不可能な動きを実現する。

 

 避けきれない攻撃は受け流し絡め取り、ゴンすら切り裂くオーラの刃でネフェルピトーの防御を抜く。

 

 キメラアントと人間の最強同士による死闘は拮抗していたが、徐々にヒソカの動きが精彩を欠きダメージに差が広がり出した。

 

(厄介だね、どうやってか能力の影響を受けてる♣)

 

 ゴン達との鍛錬による底上げにより、ヒソカ自身はまだまだ体力的にもオーラ的にも余裕を持って戦いを続けられる。

 しかしネフェルピトーという圧倒的身体能力に対抗するために必要な圧倒的技術を狂わされている現状、さすがのヒソカでも分が悪いと言わざるを得ない。

 そもそも今のネフェルピトーと戦闘が成立している時点で大分頭のおかしいことをしているにも関わらず、それでも愛しのゴンの最大値はこれ以上と確信しているヒソカは勝てるということを欠片も疑わない。

 

 身に纏うバンジーガムの弾性を高めわざと大きく吹き飛ばされたヒソカは、パニックカードを広げその中から任意で5枚のトランプを抜き取る。

 

 本来完全ランダムのパニックカードだが、次のデッキから全てのトランプが最弱の数字になるという誓約を付けることでその縛りを外す。

 

 この先5回分の最弱デッキを許容してヒソカが選んだトランプは、♠のJQKAとJOKERの5枚。

 

「ロイヤルストレートフラッシュ、しかもJOKER入りの特別製だよ♥」

 

 選ばれなかったパニックカードが使用扱いになり消滅すると、五芒星の形に配置されたトランプが胴体の前面に張り付いた。

 

「見た目はちょっとアレだけど、これこそボクの切り札さ♠」

 

 明らかにオーラの質と量が向上したヒソカに対し、ネフェルピトーはその命だけでなく身体すら傷つける渾身の力で突撃する。

 

 背後の髑髏が人間の可聴域では聞こえない歌によるデバフを仕掛けながら、百式観音の速度でゴンのパワーをキルアのキレを持って放つ。

 

 

 どんな金属だろうと紙切れのように破壊するネフェルピトーの貫手が、ヒソカのオーラに触れた瞬間見るも無惨なボロ雑巾と化した。

 

 

「♤は切ることに特化したトランプ♠最強役でブーストさせたなら、ボクのオーラは触れたモノ全てを問答無用で切り刻む♥」

 

 ネフェルピトーは手を変え品を変え、何とか攻撃をヒソカに届かせようと全力を尽くす。

 

 しかしヒソカに近付くにつれて密度と威力の増す斬撃効果が、届く前にその全てを粉微塵に切り刻んで止める。

 

 念糸も念歌も自動的に切り裂かれて効果がなく、先程まで優勢だったネフェルピトーに対しその場から動くことなく完全に完封していた。

 

「“斬々舞”、この状態だとオーラをバンジーガムにできないけど、この手だけは別♦」

 

 ヒソカを始末することにのみ注力し手足が傷だらけのネフェルピトーは、擬態していたバンジーガムが伸びて貼り付き引き寄せられるのを回避できなかった。

 

「シャァ―――ッ!!!」

 

「バイバイ♥」

 

 バランスを崩されデバフも切り裂かれたネフェルピトーは、今度こそヒソカの一閃によりその首を刎ねられる。

 

「…チェックメイトかな?」

 

 蟲の中には頭を落としても動く種がいることから、ヒソカは油断なく死体となったネフェルピトーを見下ろす。

 

 

 頭が落ち倒れ伏した身体が激しく痙攣し、ヒビ割れながらも更に禍々しさを増した髑髏のプリマドンナが音のない雄叫びを上げた。

 

 

「だよね♪まだまだ遊ぼうよ♥」

 

 操り人形のように起き上がったネフェルピトーは落ちた頭を抱え、死んだことで完成した黒死夢想(テレプシコーラ)が死者の念を動力に最後の足掻きを見せる。

 

 爆裂したオーラが大地を抉り土煙を巻き上げ、ヒソカをもってしても感知できない精度で気配が掻き消えた。

 

「どこからでもおいで、バラバラにしたら流石に止まるでしょ♠」

 

 斬々舞を発動しているヒソカに触れられるのは、単純に効果が及ばない程硬い相手だけ。

 原型を留めないほど微塵にされても届かせるのか、別の方法で届かせにくるのか期待して待つヒソカ。

 

 

 舞い上がった土煙が風に散らされて消えた時、ネフェルピトーの姿は何処にも見当たらなかった。

 

 

「……?」

 

 珍しく虚を突かれて目を丸くしたヒソカは、森の奥へと続く僅かな血痕と移動の痕跡を発見する。

 

 

 その向かった先は、間違いなくゴンとメルエムがいる方角だった。

 

 

「…なんだい、これだけ虐めてあげたのに♣」

 

 戦闘は終了したと判断したことで斬々舞が解除され、俯くヒソカは声と身体を震わせ呟く。

 

「置いてけぼりにするなんて寂しいよ、けど、そういうことなんだね♠」

 

 ヒソカを無視してゴンとメルエムの所へ向かったということは、死んでも死にきれないほどの未練を向ける相手がヒソカではなかったということ。

 

「ボクは本気の全力だった、それでも、ゴンの方がやばい…ってコト!?」

 

 間違いなく生涯最強だった怪物が生涯最高の想い人に執着したという事実は、筋肉の成長を誰より確信している変態にとってとてつもなく大きな意味を持つ。

 

「こうしちゃいられない、待っててゴン!! 君の勇姿を今見に行くからね♥」

 

 足裏に展開したバンジーガムで走るというより跳ねながら高速移動を開始したヒソカは、先を走るネフェルピトーを追い越すつもりで全力疾走を開始する。

 

「ボクが行くまで持ちこたえてよ王様、今度こそ、ゴンの進化をこの目に焼き付けるんだから♥」

 

 ネフェルピトーとヒソカの第2回戦、互いに譲れぬタイムアタックがスタートした。

 

 





後書きに失礼します作者です。各ロイヤルストレートフラッシュの名前と効果

♠斬々舞…オーラそのものに斬撃効果が付与される。バンジーガムとの併用不可

♥愛の揺り籠…オーラ総量が激増してバンジーガムも強化される。抱きついて包めば借筋地獄も拘束可能

♣透明人間…凝でも判別不能な隠が行える。全力の練や硬をしてもバレない

♦線香花火…全身いたるところからオーラを射出できる。ぶっちゃけフランクリンの上位互換


 そしてパニックカードで任意にカードを引いた時のデメリットですが、その後の“戦闘”で“数字の2しかないデッキ”を“使い切る”ことが必要。
 パニックカードの具現化はヒソカが万全でも2デッキが限界のため、戦闘に使うとなると普通に1デッキしか使えない。
 パニックカードがなくても普通に戦えるヒソカだからこそ特別弱くはならないが、要はデメリットを消化するまでゴンとガチのガチでやりあえないことこそ真のデメリット。
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