オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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第96話 シン・メルエム VS ゴンさん

 

 

 ゴン(ファン)の目指す最強(ゴンさん)は、まず間違いなく作中最強の肉体を持っていた。

 

 超えることを最終目標にするのならば、たとえ短時間とはいえ強化する能力が必要だった。

 

 

貯筋解約(筋肉こそパワー) ――」

 

 

 どれだけ優れた身体能力だろうと使いこなせなければ意味はなく、肉体とオーラの完全なシンクロは肉弾戦において最低条件となる。

 

 

筋肉対話(マッスルコントロール) ――」

 

 

 そして生来の系統が操作系のゴンがゴンさん(強化系)に打ち勝つには、系統別習得率という前提条件を崩さなくてはいけなかった。

 

 

脳筋万歳(力こそパワー)!」

 

 

 ゴンが習得した3つの発、当初の思惑から多少変化したことは否めない。

 しかし度重なる激戦と修練の結果、ゴン(ファン)の頭の中にあった朧気な構想は形となり、最高の結果として実現した。

 

 

 

合成能力(ユニオン)発動、“オレが目指した最強のゴンさん”!!」

 

 

 ゴンの肉体が作り変えられていく。

 

 

 貯筋振替(身体は筋肉で出来ている)により、身体は100%筋組織という生物の括りから逸脱した存在となる。

 

 100%筋組織は全身もれなく操作の対象となり、筋肉が先かオーラが先か(パーフェクトコミュニケーション)により表面は金属すら超える硬度に固められ、内部は水のような液状筋肉に解される。

 

 既に大概頭のおかしなことになっているにも関わらず、2つの発を脳筋万歳(力こそパワー)の限界突破した強化率がさらなる高みへと押し上げる。

 

 肉体のサイズは変わらずに、限界を超えてなお筋肉が充填されていく。

 

 ゴンのオーラが触れて間接的に強化されている大地にすら沈む重量となりながらも、もはや黒光りするほどに押し固められた外骨格筋肉は破裂することなく人の形を保つ。

 

 どんな金属すら霞む密度となった体内の液状筋肉は、全ての動きに対し0から100の加速なしトップスピードを実現する。

 

 唯一の難点、高密度過ぎるが故の超高温化が筋肉のパフォーマンスを落とすことは避けられない。

 

 

 ゴンの髪状筋肉が急激に伸長し、細さと表面積の多さによる排熱機関として機能を発揮した。

 

 

 高すぎる体温が上昇気流を生み、正に怒髪天を体現したその姿。

 

 100%筋組織故に光を失った目は凄みを生み、その一挙手一投足は同じ生物か疑問に感じさせるパワーをありありと感じさせる。

 

「メルエム、オレが先客だろ?」

 

 ファンが目指した最強の姿は、奇しくも原作と見た目だけは瓜二つ。

 

「ネテロ会長を巻き込みたくない。こっちだ、付いて来い」

 

 原作最強(ゴンさん)に代わり、ファンの考えたゴンさん(最強)が降臨した。

 

「っ!?」

 

 愕然としていたメルエムの視線の先、ゴンさんはあっさりと踵を返して背中を向けた。

 

 明らかに隙だらけのメルエムを舐めきったとしか言えないその行為は、自分が完全強者であることを欠片も疑わない威風堂々とした姿。

 

「こっ、の、貴様王である余を…っ!」

 

 様々な想いが渦巻いていたメルエムの胸中を、屈辱と怒りが満たし応えるように太陽炉(メルエム)が臨界点を突破した。

 

 出力の跳ね上がった疑似太陽により全身を赤く染めながら、腰を落としたメルエムが全力の踏み込みでゴンさんの背中に突撃する。

 

 人知を超えた祈りにより速さに慣れているネテロですら、気付けばメルエムの拳が当たる寸前だった。

 

 コマ送りですらなく瞬間移動と変わらないその速度は正に時を止めたかのようで、メルエムに踏み砕かれた大地がその形のまま停止している。

 

 万物が停止した世界の中、動けぬネテロとメルエムは信じられないものを見た。

 

 

 全てが止まった時の中で、ゴンさんがいっそ気持ち悪いほど滑らかに動いてメルエムの側面に移動する。

 

 

 振り抜かれたメルエムの拳は当然空を切り、余波と風圧だけで前方が吹き飛ばされ更地と化した。

 

 攻撃が空振り死に体になったメルエムを光のない目が見下ろし、ゴンさんの左脚が倍近くに膨れ上がって予備動作なしに跳ね上がる。

 

 

 王盾(キングシールド)王の武具(モントゥトゥユピー)も、全て粉砕した蹴り上げがメルエムの腹部に着弾した。

 

 

「っッ!! あがァ!!?」

 

 蹴り上げられた力と重力が釣り合った時、メルエムの眼下には遠く離れたメンフィスの宮殿すら視界に入っていた。

 

 飛びそうになる意識を必死に繋ぎ止め、追い打ちをかけるでもなく呑気にこちらを見上げるゴンさんを視認し、傍らにそびえる高熱の(筋肉)を尻目に王盾を足場にして急降下する。

 

「太陽に潰されるがいい!!」

 

 王の武具(モントゥトゥユピー)太陽の支配者(シャウアプフ)の全力展開により、その手に掌大の疑似太陽を形成する。

 

 その正しく太陽そのもののエネルギーを見て眉を顰めたゴンさんは、巻き込まれる位置にいるネテロを見やって構えた。

 

「最初は、グー。ジャン、ケン…」

 

 あまりのことに走馬灯の如くスローモーションとなったネテロの視界に、墜ちてくる太陽とそれを受け止めるゴンさんが映る。

 

「天墜!!」

 

「パーー!!」

 

 

 メルエムの疑似太陽が受け止められ、ゴンさんのパーによりそのエネルギーが反転して空に打ち上がる。

 

 雲も大気も吹き飛ばして宇宙が剥き出しになり、メルエムも巻き込まれて吹き飛んだかに見えた。

 

「はあーっ、かはぁっ」

 

 跳ね返されたエネルギーに片腕を焼かれながらも、何とか回避したメルエムが必死で呼吸を整える。

 

「もう終わりにしない?」

 

 変わらぬ表情で視線を送るゴンさんの哀れみを含んだ言葉に、メルエムはそれでも負けられぬと、帰るのだと改めて心の中で絶叫した。

 

 己の脚が自壊するほどの踏み込み、キメラアント達の、国民となった人間達の想いを背負ったメルエムの突撃。

 

「っ!?」

 

 赤く光り輝いていたメルエムの色が碧色へと変わり、その身体が形を無くして消えた。

 

「カアッ!!」

 

 ゴンさんの背後に現れたメルエムの一撃が命中し、その瞬間にはまたその場から消えていなくなる。

 

 太陽の支配者(シャウアプフ)による身体の粒子化の更に先、身体の量子化によるテレポートを実現していた。

 

 残像ではない一瞬の移動により消えては現れ消えては現れ、究極のヒットアンドアウェイによりダメージを蓄積させていこうという戦術。

 

「ふぅん!!」

 

 量子化も攻撃の瞬間は解除されることを見越した、両腕を広げて回転したゴンさんの雑な全方位迎撃にメルエムは吹き飛ばされた。

 

「このっ、っ!!?」

 

 刹那視線が途切れたメルエムの目の前で、ゴンさんが再び構えを取って拳を握りしめる。

 

「最初は、グー…」

 

 馬鹿げたオーラが拳に集まり、圧縮に圧縮を重ねて光り輝き、

 

 

 やがてその光すら飲み込む、ブラックホールの如き闇を纏った。

 

 

「……」

 

 どこから来ても迎え撃つ構えのゴンさんに対し、メルエムもまた自身の全力全壊を振り絞る覚悟を決める。

 

 

 焼け焦げていた左腕を引き千切り、それを媒体として疑似太陽以上の威力を実現させる。

 

 

 呼吸も忘れ目を血走らせたネテロの先、箱庭最強を決める最後の一合が放たれた。

 

 

「神滅火葬!!!」

 

 

「グーーッ!!!」

 

 

 神をも焼き尽くす劫火の拳が、漆黒のオーラの拳とかち合う。

 

 

 とんでもないエネルギー同士のせめぎ合いにも関わらず不思議なほど周囲に被害が出ない中、片方が闘う以上避けられぬ敗北の未来を噛み締めた。

 

 

「すまぬコムギ、約束は守れん…」

 

 

 劫火の拳を打ち砕いた漆黒の拳がメルエムの胸部に命中し、太陽炉(メルエム)ごとその大半を消し飛ばした。

 

 

 

 

 

「ハンターの長よ、戦後処理の話がしたい」

 

 横たわるメルエムは自分の残り火が少ないことを正しく理解し、王として国にできる最後の言葉を紡ぐ。

 

「余が亡き後は、ディーゴが再び国政を引き継ぐ。人同士の国として、できるだけ寛大な対応を願う。生き残ったキメラアント達は余が負けたらそちらに従うよう指示してある故、NGLに残った者達共々面倒をかける」

 

 敗戦国としては虫のいい話、しかし戦争ではなくあくまで決闘として行われた戦闘である。

 メルエムの脇に胡座をかいたネテロは大きく頷くと、背後でやっちまったと気まずそうなゴンさんの脚を引っ叩いた。

 

「強き者よ、余を打ち破ったお主に頼みたいことがある」

 

「…オレにできることなら」

 

「宮殿にコムギという人間がいる、其奴に余がどう戦ったかを伝えてくれ。余は、…オレは満足していたと伝えてくれないか」

 

 メルエムを待つコムギへの伝言役に仕留めたゴンさんを指名する嫌がらせにも取られかねない願いだが、それこそが最善と判断していることをその表情から察して了承した。

 言いたいことを言い終えたメルエムは空を見上げながら、短いながら怒涛の生に悔いはあれど納得して幕を下ろそうと目を閉じかけ、

 

 

 頭を抱え四肢がボロボロに擦り減ったネフェルピトーが、音もなくメルエムの傍らに到着した。

 

 

「むぅ!?」

 

「ピトー!?」

 

「っ!?」

 

 驚愕するネテロとメルエムに身構えたゴンさんの前で、死者の念を発する髑髏のプリマドンナがヒビ割れていく。

 ネフェルピトーを間に合わせるという願いを叶えた黒死夢想(テレプシコーラ)が砕けると、その中からネフェルピトーによく似た清廉なナースが姿を現した。

 

 

 玩具改修者(マッドドクター) ――

 

 

 ナースの背後の医療機器がネフェルピトーとメルエムに突き刺さり、ネフェルピトーの身体を分解してメルエムの身体の修復に使っていく。

 死者の念特有の悍ましさはあるものの、己を犠牲に他者を助けるその行為は愛に満ち溢れていた。

 

「…ハンターよ、恥を忍んで頼む。余の忠臣達の献身のため、そして余の未練のため、オレを救けてくれ…!」

 

 メルエムはネフェルピトーの治療が間に合わないことを万面掌握(遍く照らす王)により理解し、恥も外聞も捨ててネテロとゴンさんに命乞いをした。

 

「頼まれた!」

 

 ネテロはゼノをアッシーにしたことで残しておいたノヴの一夜のあやまち(スペアキー)で扉を開くと、四次元マンション(ハイドアンドシーク)で待機していたレオリオとクラピカを無理矢理引きずり出す。

 

「急患じゃ! 詳細は省くがとにかく救けろ!!」

 

「はぁ!? なんで設備あるとこから外に出すんだよって何じゃこの状況はってゴンお前何その、何お前!?」

 

「いいから早く治療するぞレオリオ! 恐らくこのままだとゴンがやりすぎた結果死人が出る!?」

 

「だぁ~畜生わかってんよ! ドケチの手術室(ワンマンドクター)痛いの痛いの飛んでいけ(ダメージコンバート)!!」

 

「限界を超えて強化しろ、鼓舞する者の鎖(インスパイアチェーン)!!」

 

 わざわざ最新設備を持ち込んだ四次元マンションから何もない荒野に放り出されたレオリオだが、何もないところでも治療出来ることこそ最大の強み。

 死者の念で動くネフェルピトーを移動させられないとみたネテロの迅速な行動により、空の下で致命傷を超えたメルエムの命を全力で繋ぎ止める死闘が幕を開ける。

 

「…何とか間に合ってくれるといいんだけど」

 

「まぁやりすぎたとは言えん壮絶な勝負じゃった。何より勝ってくれたことにハンター協会会長として感謝するぞぃ」

 

 気が抜けてゴンさん形態から元に戻ったゴンとネテロはやることがないため少し離れて治療を見守り、そろそろキルア達を回収したノヴが来る頃かと予想していた。

 

「ゴ〜〜ン♥」

 

 ノヴよりも先に擦り傷だらけで腕の曲がったピエロが、盛大なヘッドスライディングで到着した。

 

「あぁ、ほんの一部しか見えなかったけどそれだけでわかった!! 君は、ゴンはついに到達したんだね♥」

 

 外傷か興奮か分からぬ愛を鼻と言わず口と言わず噴出するヒソカは、遠目ながら何とか間に合い目にした(ゴンさん)から迸っていたパワーに人生最高にブチ上がっていた。

 

「戦いを見れなかったのは悔しいけど新しい愉しみができたよ♥ネテロ会長は見たんだよね? どうだった!?」

 

「………間違いなく最強じゃろうな。どうやっても勝ちの目が見えん」

 

「あぁ、ああぁあたまらない♥っう、ふぅっ!」

 

 さらなる愛を吐き出したピエロは恍惚の表情で地に沈み、主治医は気付くことなく必死の治療を続ける。

 

 ハンターとキメラアントの決戦は、人類が暗黒大陸に勝利するという歴史的快挙で幕を閉じた。

 

 





 個人的に苦戦したキメラアント戦も一段落してホッとする作者です。
 厨ニと妄想の塊だった決戦も終わりましたが、もうちっと、しばらく?続くんでよろしくお願いします。
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