オレが目指した最強のゴンさん   作:pin

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第97話 後始末と続く未来

 

 

 皆さんこんにちは、とりあえず完成させたゴン・フリークスです。先は長い、まだまだゴンさん道の一歩目を踏み出したにすぎない。

 

 

 

 

 

 もはや数日間隔で集合している、箱庭の守護者を自認するV5の面々。

 近頃の頭や胃が痛い話ばかりだった会議と違い、やっと一段落できる内容になるはずだったキメラアント掃討戦の結果発表。

 

 V5は額に青筋を浮かべながら、見た目50代まで若返り何とか着れたピチピチの心Tシャツと短パンのアイザック・ネテロを糾弾していた。

 

「…つまり何かね? 君達ハンターはもちろんキメラアント側の被害もすこぶる軽微だと?」

 

「何を言うとる、ワシ等はともかくキメラアントは直属護衛軍の3体がいなくなり、王も一命をとりとめたが大幅に弱体化した。これを完全勝利と言わずして何と言うのかの?」

 

「ちっ、たしか勝負が終わってから我々の好きにしろと言っていたな。蟲共が生きているならばそれ相応の対応を取るとするか」

 

「それこそ好きにすればよいが、ハンター協会は一切関わらんからの。ちなみにそこらの国よりよっぽど戦力は充実しとるし弱体化したとはいえ王もまだまだ一騎当千、今の所評判もすこぶるよいからひんしゅくを買うのは間違いないぞい」

 

 暗黒大陸の生物がなんの枷もなく自由にしていることが面白くないV5だが、実際問題としてメンフィスに対して取れる手段はほぼないと言っていい。

 数世代は先の機器で雑兵キメラアントとネテロの戦いを見ていたが、その戦闘シーンはまったく理解出来ない超常のものだった。

 メンフィス建国までの流れもクーデター一歩手前ながら失脚した元指導者が付き従っているし、そこまでに不当な犠牲になった存在はどれだけ探しても見つからない。

 唯一非難できる材料のNGLにて行われた大量のマンハントだが、それもNGL自体が問題としていない以上外野がとやかく言うのはそれはそれで醜聞となる。

 

 そして何より、ハンターが勝利したことで最悪何かあれば対処可能と周囲に見なされたのが一番の問題だった。

 

「確かに暗黒大陸の脅威はとてつもなく大きい、しかしそれを言うならお主達も暗黒大陸産の厄災を所持しているではないか。しかも問題が起きた際の危険度で言えば比べるまでもなくキメラアントより上、それで強権を振りかざすのは流石にどうかと思うぞい」

 

「随分偉そうではないか、たかだか数百人規模でしかない組織の長程度が。こちらは何百万を超える人命を暗黒大陸の脅威から守るべく…」

 

「暗黒大陸に行ったこともないガキ共がデカい口叩くんじゃねぇよ」

 

 それはハンター協会そのものを引き合いに出し、持ち帰られた厄災しか知らないで暗黒大陸を知ったように語るV5への警告。

 ネテロから吹き出したオーラの圧は海千山千のV5ですら押し黙らせ、若返り覇気の増したネテロの風貌は更に単純な畏怖を与える。

 

「てめぇ等は厄災を御してると思ってるのかもしれんが、何一つとして有効活用も解決策も出来てないのをちゃんと理解しな。そもそもの話、ワシがその気になれば厄災を守ることも破棄することも出来ない時点で手に余っとるわ」

 

 ネテロの指摘は威圧されていなかったとしても押し黙るしかない内容であり、実際問題毒性が極めて強いだけの爆弾で対処可能なキメラアントは既にある五大厄災に比べて格段に御し易い。

 結局の所、V5以外が暗黒大陸の恩恵を手にする可能性が気に食わない以外の確たる理由がない限り、ハンター協会を動かすことはもちろん他国の納得も得ることも出来ない。

 

「前の報告書にあったと思うが、キメラアントはこれから先減ることはあっても増えることはない。であればお主等の一番お得意な政争で決着を付ければよかろう。それともまさか世界の守り手とか言うとるV5が、産まれて一年経っとらん亜人に勝つ自信がないのかの?」

 

 あからさまな挑発、しかしこう言われてしまえば見栄と権威こそが力となる権力者にとって肯定する訳にはいかない。

 怒りと羞恥に唸ることしかできないV5から言葉が出ないことを確認すると、改めてハンター協会はキメラアントの建国を支持することを告げ会議室から出ていく。

 

 

「無様なもんだねぇ、意気消沈してるとこ悪いが今度はこっちのターンだ」

 

 誰も何も言えず静かになった会議室に、観測者ことサイユウの声が響いた。

 

「キメラアントを持ち込んだのは俺等だが、もう手出しはしねえよ。他の厄災にも何もしない、ただこれからはもっと大々的に動くぜ。そっちの都合は知らんが報告だけな、じゃあ頑張ってくれや世界の守り手さん」

 

 再び静まり返る会議室に、物が壊れる音がいくつも響き渡った。

 

 

 

 

 

『ってことで、V5は大人しくなると思いますぜ。けどこれから動くって言っちまってよかったんで?』

 

「いいに決まってるだろ、オレはしっかり約束を守ってたのに余計なことをしたのは向こうだ。一応断りだけ入れるつもりだが何を言われても聞く義理はねえよ」

 

 機能性を重視した大して広くもなければ豪華なわけでもない一室、そこの主たる漆黒の長髪と長い髭を蓄えた顔にバツ印の傷を持つ男。

 

『本当に大丈夫なんですかい? 報告した通りアイザック・ネテロとんでもないことになってますぜ、そもそも一回負けてるボスじゃやばくないですか?』

 

「んなもん分かってる、元々オレはハンターで親父は武人だったんだ。今更実力で負けてようが関係ねえさ」

 

 若返ったアイザック・ネテロを一回り大きくしてよりワイルドにした見た目、血のつながる実の息子ビヨンド・ネテロが獰猛に笑った。

 

「しかしよ、正直親父が勝ったらお前は鞍替えすると見てたんだがな。ぶっちゃけ親父のことも好きだろ、何でまだオレの側につく?」

 

『あー、確かに俺は面白いものや見たことないものが見たいですよ? けど、生身で深海や宇宙を見たいかって言われたら別問題でしょ』

 

 サイユウはビヨンドの疑問にキメラアントとアイザック・ネテロ、そしてゴンさんを思い返して苦笑した。

 観測者と呼ばれるほど観ることに特化した能力を持っているとはいえ、サイユウ自身はそのまま深海に潜れば潰れるし宇宙に出れば破裂する。

 それすら克服するのではないかと思わせた天上の戦いは、間違いなく今までで最高のショーでありながら決して踏み入ってはいけない絶望の喜劇だった。

 

 サイユウの翼は蝋でできているし、太陽どころかブラックホールに飛び込むほど頭のネジは外れていないのだ。

 

『俺はボスの側が一番いいんすよ。これからも俺に面白いもん見せてください』

 

「ふん、暗黒大陸がその程度に見られてちゃおしまいだな。ま、思う存分舐るつもりのオレに言えたことじゃないか」

 

 その後いくらか世間話に花を咲かせ通話を切り、ビヨンドはサイユウが深海や宇宙に例えた面々に思いを馳せる。

 ビヨンドが目論む暗黒大陸遠征に無理矢理組み込むかを検討しながら、疼く顔の傷と直感が最悪の悪手であると警鐘を鳴らしていた。

 

「親子喧嘩って歳でもねえし、不確定要素はなるべく排除するのが安牌か」

 

 長い間裏に潜伏し準備に準備を重ねてきたビヨンドは、やっと回ってきたチャンスを逃すつもりはない。

 顔の傷の原因になった何十年も前の親子喧嘩には負けたが、もはや勝負するつもりすらなかった。

 

「落とし前はつけてもらうぜ。もう誰にもオレの邪魔はさせない!」

 

 信念も実力も超一流で生粋のハンターが、己の野望を叶えるべく行動を開始した。

 

 

 

 

 

 太陽国家メンフィス宮殿の広大な中庭。

 キメラアントと人間の隔てなく、宮殿に勤めるほぼ全てが集まりメルエムの登場を待っていた。

 皆が不安そうな表情を浮かべ、これからのメンフィスについて話しているところにメルエムがバルコニーへと現れる。

 

「ふむ、手を離せぬもの以外粗方集まっているな」

 

 その姿は外殻を砕かれたほぼ人間に近い見た目で、外殻を纏っていたときと似た服装に身を包んでいる。

 そしてベストの間から見える胸元には特大の傷跡が残り、ゴンさんとの最後の一合で触媒に使った左腕は戻らず上腕から先を失っていた。

 

「皆も知っているだろうが改めて言おう、余はハンターに敗北した」

 

 王からの敗北宣言に多くの者が沈痛な表情となり、同じく敗北したキメラアントは己の力の無さにやり場のない怒りを抱く。

 僅かなざわめきが波紋のように広がり、静まるのを待ったメルエムはこれからについて話し出す。

 

「結論から言おう、太陽国家メンフィスはこのまま余の統治の下存続する。むろんハンターやいくらかの監視が付くがな」

 

 それは予想だにしなかった朗報であり、驚き固まった後多くの者達が今までの鬱屈を吐き出すように大歓声を上げた。

 

『太陽国家メンフィス万歳! 太陽王メルエム万歳!!』

 

 東ゴルトー時代からはありえないほど住みやすくなり、今なお成長し続ける国を実感する人間達はメルエムへの賛辞を惜しまない。

 キメラアントも強者でありながら慈悲も持ち合わせるメルエムの配下であることを誇りに思い、隣の人間と手を取り声を合わせて喉を枯らす。

 止まらない歓声を止めるべく手を上げたメルエムは、敗北した己に変わらぬ忠誠を誓う臣民に大きく頷いた。

 

「我が国民に誓おう。強さでは負けたが、それ以外では勝ち続けると、この国を誰もが羨む箱庭、最高の理想郷とすることを! 余に続き余の助けとなれ! 我等の力でこの世の楽園を実現するのだ!!」

 

 爆発する歓声と熱気に背を向け宮殿内へと歩み出すメルエムは、改めて己の王としての覚悟を決め二度と負けないことを心に誓った。

 

 

 

 宮殿最上階にある対局の間と呼ばれだした一室、演説とこの日の業務を終えたメルエムは随分久しぶりに感じるコムギとの軍儀を楽しんでいた。

 

「……ない、詰みだ」

 

「今の対局も良い展開だったスね! それで、その、そろそろお許しいただけると集中出来るのですが…」

 

「打ち始めれば何事もないくせによく言う、余が満足するまで休ませろ」

 

「うぅ〜」

 

 相変わらず勝てないながら心躍る対局を続けているが、この日は駒を打つ音は鳴らずにただ二人の声だけが響いている。

 

「国王さ、メルエム様はお疲れなのにワダすの貧相な脚で休まるんすか?」

 

「あぁ、正直自分でも驚くほどやすらぐ。次を打つぞ」

 

「負けないっすよ!」

 

 座るコムギと膝枕をされたメルエムは再び脳内軍儀を始め、穏やかに、しかし苛烈とも言える対局を行う。

 

「…詰みだ。いかんな、やすらぎすぎるのも手を悪くするか」

 

「そんなことないす! 読みから外れてて、色々考えられる良い一手ですた!! ……何かお悩みがあるみたいすが、ワダすでよければ聞きますよ?」

 

 もはや軍儀で会話以上の意思疎通が可能となった二人。

 

 コムギはメルエムの心中にある悩みや不安を察知し、気付かぬうちにその髪を梳きながら問いかける。

 

「…お主も知っている余の最高の忠臣達を失った。心情的にも辛いが、それ以上に替えの利かない手足だったと痛感している」

 

 メルエムの失ったネフェルピトー、シャウアプフ、モントゥトゥユピーはどんなことがあっても変わらぬ味方であり、力という点でも比類なき最高の忠臣だった。

 それをごっそりと失ってしまったメルエムの負担は決戦前に比べて跳ね上がっており、それこそコムギとの軍儀の時間を削らざるを得ない状況となっている。

 

「すまぬコムギ、しばらくあまり時間を作ってやれぬ」

 

「……、」

 

「コムギ? っ!」

 

 変わらぬ手付きで撫でられながらも返事のないことを訝しんだメルエムは、脇にある盤と駒にオーラが宿ったことを知覚した。

 

「これは?」

 

 オーラの宿った駒が勝手に盤面を駆け回り、詰軍儀の形が出来上がる。

 メルエムですら解くのに時間が掛かるであろう難解な盤面だが、コムギのオーラが揺らめくと瞬く間に一つの解へと到達した。

 

「メルエム様、貴方は何も失ってないす」

 

「何?」

 

「全ては貴方の中に…」

 

「っ!!」

 

 目を見開いたコムギが突然屈み、メルエムの額と自分の額を触れさせる。

 

 コムギとメルエムのオーラが混じり合い、心の奥の底、魂の中からそれは響いた。

 

メルエム様(ニャ~ン)!!』

 

 一瞬の空白、旅立った意識がもとに戻ると身を起こしたメルエムの前に3つの影が傅いていた。

 

「メルエム様、このシャウアプフ、恐れ多くも今一度お仕えさせていただきたく」

 

「メルエム様、俺は壊れない貴方の武具としてこれからも使われとうございます!」

 

「ニャ~ン」

 

 体長約30センチの二頭身マスコットキャラと化したシャウアプフにモントゥトゥユピー、そしてネフェルピトーによく似た猫が喜色満面に告げる。

 

「……そうか、余は、何も失ってはいなかったか」

 

 メルエムの目から一滴の雨が降り、しかし太陽は陰ることなく燦々と輝く。

 

 太陽国家メンフィス、昇ったばかりのこの国は、これから遍く全てを照らす箱庭の楽園へと突き進んでいく。

 

 強さを失った太陽王は、それ以上のモノを手に入れ真の王へと至った。

 

 

 

 

 

『だははははは!!!』

 

「何と愛くるしい、子供達と変わらぬサイズではないか」

 

「ぐんま?」

 

「それだけの反動、マジでやばかったんでしょうね。ジジイが意気消沈するわけだわさ」

 

「可愛いねゴン♥ボクがしっかり護るから安心していいよ♥」

 

「こうなっちゃったかぁ」

 

 無理をした代償、二頭身マスコットキャラとなったゴン・フリークスが頭を抱えた。

 

 





 後書きに失礼します作者です。いくつか補足説明します。

 ビヨンド・ネテロの顔の傷はアイザック・ネテロとの親子喧嘩が原因説。これはネテロ会長が死ぬまで律儀に我慢したのはそれなりの理由があるだろうと予想、お互い条件を付けて決闘したのではと妄想しました。

 コムギの念能力…森羅万象之軍儀也
 様々な問題や計算等を詰軍儀に変換し、それを解けたら問題や計算の答えになるという馬鹿みたいな能力。答えのない問題やおよそ不可能な問題の答えは流石に無理。

 ネフェルピトーの猫化
 一度死んでること、ヒソカとの戦闘で理性を吹き飛ばしたせいで野生化した。それでもそこらの念能力者より圧倒的に強い。
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