Crown trick “ice”   作:Ninailce

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※本日よりタイトル表記が変わります。


氷のように冷たくて

マリアとの一件から数日。

お互い顔を合わせられずにいた。

 

「なんて声をかければいいんだろ…」

 

そればっかり考えていて業務も

まともに出来なかった。

 

気分転換にチームルームのBARで一息いれよう。

混乱した頭を癒しにチームルームへ向かった。

 

「あっ…」

 

「あっ、アイスさん」

 

BARに着くとノエルが一服していた。

私を見るとペンダントらしき物を

胸にしまう。

 

「どうしたのかしら?

 疲れでも溜まった?」

 

心配そうな顔をして覗いてくる。

大人びた…何か秘めてる瞳で。

 

「ええ…まぁちょっと…」

 

曇らせて喋る私の言葉には淀みがあり、

意味深にきこえてしまったのかも知れない。

 

「ふーん…」

 

ノエルは軽く頷き珈琲を啜った。

私も出来立ての珈琲をゆっくり味わう。

 

その時不意にノエルが口を開く

 

「もしかして彼氏でも出来た?」

 

「ブフォゥwwwwwwwwwww」

 

熱い珈琲を吹き出す私。

 

「あーごめん。違うか。」

 

「なっなんてこと言うんですかっ!?」

 

多分…いや、あながち間違ってはいないから

驚いてしまった。

 

「違うならいいよ。

 最近1人で居るときニヤニヤ

 してたからさ、てっきり。」

 

「わっわたしそんな顔してました!?////」

 

めっちゃ恥ずかしい。

自分の頬を触るとめっちゃ熱い。

多分真っ赤なんだろうなぁ…

 

「してたよ。

 …可愛いからいいのよ?」

 

なにいってんだこのマスターは

…少し照れながら返す。

 

「ど、…どうも。」

 

そのまま無言の時間が過ぎ

互いに何も喋らなくなる。

 

恥ずかしさが限界に達し

冷めた珈琲を一気に飲み

その場を後にしようとした。

 

「先戻ります!」

 

席を立ったとき不意に腕を捕まれる。

ノエルがゆっくりと立ち上がり、

 

「…気を付けてね」

 

それだけ言って手を離すと

ログアウト(オラクル系から帝都へ帰還)した。

 

 

一体何の事なんだろうか?

疑問だが聞き返すことは出来なかった。

 

「私も帰るか…、もう集中出来ないし。」

 

私は片付けを済ませ、

チームルームのロックをかけようとした。

 

コツンと足に何かが当たる。

 

「…お?」

 

拾い上げるとそれは

 

「懐中時計…?」

 

綺麗な薔薇の紋章が入った時計。

 

「…?」

 

裏に何か掘ってある。

 

「C.」

 

C…イニシャルだろうか?

 

「でもまぁ、チームルームにあるんだし

 誰かのだろ、預かっておこ。」

 

そう独りで呟くと

ポーチにその時計をしまった。

 

~♪♪

不意に発信タグの通知音が鳴り響く。

 

「マリアから…?」

 

先日あんなことがあったのに…

普通なら恥ずかしくて話せないよ。

…やっぱ年上なだけあるな…

 

感心しつつ電話に出ると

 

「もしもし…アイス?」

 

今にも潰れそうな声

 

「ど、どうしたのマリア

 …ってそうじゃないね。

 この前はごめん…」

 

本心を素直に伝える。悪いのは私だ。

 

「あ、いや、あのね…

 その事で伝えたい事があるの…」

 

いつものマリアとは別人のように

真剣に話してるのが伝わる。

 

「ん、わかった。

 じゃあ明日チームルームで。」

 

「……」

 

突然マリアが黙りこむ。

 

「どうしたの?」

 

すると何でもなかったかのように

 

「…わかった!待ってるね!」

 

そう交わして電話を切った。

 

「…なんか言いたげだったような。」

 

そう感じたがあまり気に止めなかった。

 

 

 

 

 

 

 

次の日の事だった。

アークス船団に全てのアークスが立ち入り禁止

のニュースが流れる。

情報は未開示…らしい

…とまぁおかしな通達が届いたのだ。

 

その内容を受け

マリアとチームルームで集まる予定だったが

急遽、私の家に来ることになった。

 

「お邪魔…します…」

 

遠慮して上がるマリア。

 

「いやいや、遠慮しなくていいから…」

 

二人共々気まずい空気が流れる。

 

「それにしても辺な命令だね。

 アークス船団に立ち入り禁止なんて」

 

マリアが怪訝そうな顔をする。

 

「そうだね…なんかあったのかな…」

 

私は珈琲を淹れる。

…あの日のように。

 

ピンポーン

 

 

家のチャイムがなる。

 

「誰だろ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この数時間後の事だった。

クラウンドロップは事実上

 

その"機能"を停止した。

 

 

アークス全体の避難警告が出され

全てのアークスと市民が第4帝都に避難した。

 

無論、私も。

 

 

 

さらにだ、ノエルが行方不明となったのだ。

メアとしえるも行方不明になった。

 

 

 

私の周りで歯車が少しずつ崩れ

そして凍っていく。

溶けることない結晶となって。

 

 

そして今、私は自分の家で大粒の涙を溢している。

 

目の前で大事な友人が血飛沫を撒き散らし

 

ゆっくり倒れていく。

 

「あ…そんな…」

 

まだ話してないのに

 

「あ…い……す…」

 

まだ…

 

「マリアっ!!!!」

 

 

目の前に煌めくのは赤い瞳をした…

 

私のよく知る、女の子。

 

 

 

 

 

            続く

 

 

 

 

 

 

 

 




次回

Crown trick "if" 編 突入

今まで見てきたアイスの世界を
アイス自身で変えていく。
解けることのない難題の鍵は…

次回
前編 悲しみと後悔
後編 血の涙


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