天皇賞春
王者メジロマックイーンの三連覇を阻止するか
極限までそぎ落とした身体に鬼が宿る。漆黒のステイヤー ヒールかヒーロか、悪夢か奇跡か
そのウマ娘の名は
ライスシャワー、ミホノブルボンの三冠を阻止、続いて春の天皇賞でマックイーンと一騎打ちになるだろうと予測される。漆黒のステイヤー、祝福の名を関するが、ミホノブルボンの三冠を阻止という形でヒールと呼ばれ嫌悪された。偉業をまた阻むものとして報道、それ故に彼女は走ることをやめた。
だが、偉業を阻まれ、敗北したミホノブルボンの説得により天皇賞春に出場することに決めた。
「…………」
「オーガさん、お願いします」
天皇賞春は3200メートル、並の体力や精神力ではマックイーンに勝てないだろう。それ故に力をつけるためオーガに練習を手伝うように頼みに来た。
「…………どう言うつもりだ」
「…………勝ちたいんです。マックイーンさんに」
「………はぁ、貴様のトレーナーにもしつこく頼まれたからには地獄を見てもらうぞ」
「はい、勝つためになんでもします」
意思は固いようだ、ならば地獄を見てもらい、耐え抜けば勝てるだろう。
ライスを連れ山にやってきた。道なき道を進むとそこは渓谷であった。岩が露出し尖ってもいる。かなりの高さであり、川はとても深い、落ちれば間違いなく上がってこれないだろう。
「飛べ」
「え?」
聞き間違いだろうか、飛べと言われた気がした。
「あの、なんて」
「飛べ」
「ひい!!!!」
聞き間違いではなかった。飛べ=死ねと言われているものだろう。
「貴様は弱い、主に精神面が、精神力は肉体を超越すると言うが、あながち間違いではない、だが、それ以上に大事なものがある。」
「大事なもの?」
「飽くなきまでの闘争本能だ!!!!」
拳を握りニヤリと笑いながら訴えてくるオーガ
「勝利への欲求が己に力を与える、それ故にハードなトレーニングになる。ここから飛び降りれなければ教えることはこの先ないと思え」
無茶苦茶だ、ここで死んでしまえばすべてが無駄、関係が全くない。というか、なんで飛び降りるかが理解できない
「極限までの集中力を身に付けるのならば死にかけるのが手っ取り早い、走馬灯を見て、極限にまで集中され、スローになった世界を見てこい」
そして無慈悲にライスを突き落とした。聞いたことのない悲鳴と絶望した顔が重力に逆らえず落ちていく。心なし優しかったのは川へと落としたので障害物にぶつかることはなかったことぐらいである。命の安全はあるので、その後はしっかりとオーガが回収しました。
「ひっく、ひっく、グス、ああ、怖がった、うう」
「次行くぞ」
「あ、ああ」
泣いていようが、言葉が出なかろうが関係ない、首根っこを掴み連れていくオーガ、連れてこられた場所は大きな洞窟であった。
「ここから、そうだな、あの山の頂上まで来い、先に待っている。」
「ええ、物凄い遠いよ、無理だよ、オーガさん」
「無理なら死ぬだけだ、その前にまず己の身を守れるように死ぬ気で走るんだな」
「え?、死ぬ気?、な、何を言っているの?」
「追いつかれたら喰われる。シンプルだ、死ぬ気で上がってこい」
訳の分からないことを言うオーガ、テイオーなら、ワケワカンナイヨーと言っているだろう。だがすでに頂上へと向かったオーガの姿は見えない。いったい何に喰われるのか、熊だろうか?
「とにかく、頑張ろう、えいえいおー、頑張れライス!」
可愛らしく一人で鼓舞するライスの後ろの洞窟の洞穴から、足音が聞こえてきた。
本能で何かがいると、振り向いてはいけないと感じとったライス。しかし、ほんの些細な出来心であった。、ちらりと後ろを向いてしまったのである。
「ひぃ!!!!」
「ホギャァァ!!!!」
そこには馬鹿でかい大猿がいた。片手には何かの動物の頭蓋骨が握られており、先ほどの言葉の意味を理解した。捕まれば喰われる。あれは捕食者だ。
恐怖で足が震えることはなく、それ以上に逃げなければという判断が勝った。全力で逃げ始めるライスを餌と認識した猿が追いかけてくる。
ライスは走った。追いつかれまいと必死に走った。ウマ娘の脚力には勝てない猿は距離が徐々に空いていき気が付けば完全に巻いていた。だが、ライスは走った。死にたくないと、そしてたどり着いた。オーガのいる場所にと
「はぁ、ふぁ、ああ、は、はは、生きてる……ライス生きてるよ」
「……今から学園まで走って戻れ」
「え……今走った……ばっかり」
「行け」
「は、はい」
逆らうなと言わんばかりに圧をかけ走らせる。そもそも学園から物凄くかけ離れているので数十時間かけてたどり着いたときにはライスは疲労も含めて限界に達していた。寮に帰ると泥のように眠りについた。
目が覚め全身の筋肉痛と戦いながらもハードトレーニングをおこなう。
ライスはトレーナーの指導の下勝つための最適で効率的なメニューをこなしていく、たとえ体力の限界が訪れても根性で走り続ける。勿論トレーニングをこなしつつオーガによる命を懸けた特訓を受けさせられる。
何度も何度も死にかけた。レースに関係のないトレーニング、渓谷に落ちるのも慣れてしまい、大猿から逃げきるのも楽々とこなせるようにもなった。最初の頃のようにただ恐怖に負けるのではなく次第に順応し、身体が徐々に絞られていった。恐ろしくも彼女は変わっていった。
「ライス天皇賞春は3200、マックイーンに勝つためには仕掛けるギリギリまで喰らいついていく方針で行く」
「はい、お兄様」
「併走トレーニングでなるべくスリップストリームも意識しつつ仕掛けポイントで一気にぶっちぎる」
「…………」
「いいか、時間が限られている中でどこまで強くなれるかはライス次第だ」
「はい!」
そこからもハードなトレーニングが続きトレーナーによるアフターケアもバッチリ限界を超えた身体は次第に引き締まっていき痩せているように見えるが最高の身体が出来上がりつつあった。そして本番当日前夜、ライスはオーガに呼び出されすでに真っ暗であるターフで二人きりとなった。唯一の明かりは月明かりのみ
「ライスシャワーよ、今の貴様は精神面も含め十分に強くなったと言えるだろう」
「えっと、は、はい、ありがとうごじゃ・・・かんじゃった~」
「…………」
「す、すみません!」
頭を下げて謝るライス、そんなことはどうでもいいとオーガは話を続ける。
「貴様と併走した奴は鬼のように怖いなど言葉を並べるが序の口程度、置いてきたのか、あるいはもって生まれなかったのか、貴様の中に流れる血が今、開花し勝利への渇望が明日完全に覚醒するのか、否か、今ここで確かさせてもらおう」
何を言っているのか、前半はまだわかる、けれど後半が意味が分からない、覚醒?開花?血?オーガは服を脱ぎ鍛え抜かれた身体をあらわにする。
一体どのように鍛えればそのようなファイティングマッスルが出来上がるのか、そしてライスは今までで一番驚き生涯忘れることはないだろうモノを目の当たりにした。
「お、鬼」
背中を見せたオーガの背中には鬼が宿っていた。これがオーガと呼ばれる所以、目が奪われる中ほんの僅か、自分の顔に拳が迫ってきているのを察知した。けれどなぜかとても遅く感じ、ひらりとかわす。かわすと同時に蹴り、突き、アッパー、回し蹴り、すべてがスローモーションの世界で躱す。
「ほう、すべて避けるか」
「ひ、、どどど、どうして」
「自覚がないのか、それともあるいは」
手加減をしたとはいえ躱せるライスに考えるオーガ、怯えているライスは何が目的なのか混乱していた。
「ライスよ、今の感覚を、スローモーションになった世界を忘れるな」
「え?、スローモーション?」
「…………」
オーガはそこからは何も話さず暗闇の中帰っていく。
「あの猿ほどのプレッシャーなんぞ小娘共が出せるはずもあるまい、勝利は確実だろう」
そして迎えた本番当日、控室からゲートまで続く長い通路、意気揚々と進むマックイーンの後ろを、コツコツと静かな足音を立てながら極限にまで集中しており、今にも喰い殺さんと言わんばかりのオーラを放ちながら歩くライスシャワー、極限にまでそぎ落とした身体に鬼が宿っていた。
ファンファーレが鳴り響く、これから戦う彼女たちは極限にまでそぎ落とした身体に宿る鬼、ライスシャワーと戦わなければいけない。敗北か勝利か、結果は分からずとも異様な雰囲気は感じ取っていた。
G1天皇賞春各ウマ娘、ゲートイン完了しました。いよいよスタートであります。
ゲートが開いて15のウマ娘がゆっくりと飛び出しました。ゆっくりと飛び出しました。早くも9番メジロパーマーが行きます。メジロパーマーが行く
ああ、外からゆっくりとメジロマックイーン、メジロマックイーンが2番手に上がる勢いであります。ライスシャワーもマチカネタンホイザもあんまり行きません。
「いいわね、マックイーン」
「いや、まだスタートしたばかりだぞ、逃げるパーマーなんて気にしてたら駄目だ」
「そうだ、気にしてたら駄目だ!」
ここで違和感に気づくスピカのトレーナー、気にしているのはパーマーじゃない
現在マックイーンは四番手その後ろ、漆黒の髪をなびかせているのはライスシャワーです。
「ライスずーっとマックイーンにピッタリだ」
「完璧にマークしてるね」
「けどなんで背後に入んないんだろう?」
もしやあえて自分の姿をマックイーンに見せているのか?
「まるで鬼気迫るグラスちゃんに、いえ、それ以上」
数万の歓声に応援される、正面スタンド前を通過するウマ娘、ライスはただただマックイーンについて行っている。ただ一つ他のウマ娘と違うのは完全にZONEに入っていることだ。今のライスには歓声も何も聞こえてはいない、ただ目の前の獲物を捕食するかの如くマックイーンにプレッシャーを与えていく
「2分4?」
「おい、それって」
「2000メートルのタイム前回の天皇賞より2秒以上早い」
驚くスピカのメンバー、ただ一人テイオーはマックイーンを信じていた。
先頭はメジロパーマー、リードは5バ身ほど、2回目の第三コーナーの坂に入ります。さぁ、第三コーナーの坂を上って天皇賞春はスタミナ勝負
なぜだろう、脚が軽い、声が聞こえない、どうして走っている音、みんなの心臓の音、自分の心臓の音だけが聞こえるのだろう。
ライスは自身がZONEに入っていることには気が付いていない、嫌、その先のFLOWと呼ばれる先に脚を踏み込んでいることはオーガのみが知っていた。
しかしそれは彼が求めている力ではなかった。
ただ勝つ、負けたくない、それだけで走り続けるライス、圧倒的なプレシャーをその身に受け走っているマックイーンは次第に恐怖を感じ取っていた。
「この恐怖、怖さはまるで…………鬼!?」
鬼と言うが、最初に思いついたのはあの男、しかし、そんなことはどうでもいい、マックイーンはパーマーを抜かすために仕掛けた。そしてライスシャワーもマックイーンの外から仕掛けてきた。鬼気迫るような表情、勝利を望み、積み上げてきた今までをここで発揮するため全力超えた全力を解放した。
第四コーナーカーブ、マックイーンの独走になるか、外から、外からライスシャワーだ!マックイーンかライスシャワーか、僅かにマックイーン先頭か!ライスシャワー並んだ-!!
外から外から、ライスシャワーか、あ、マックイーンか、ライスシャワー躱した、ライスシャワー躱した、もう一度マックイーン、頑張れマックイーン
しかしライスシャワーだ!
「菊花賞、ミホノブルボンの三冠阻んだライスシャワーだ!」
「マックイーン頑張れ!」
「負けるな!」
「ライスシャワーまたヒールになるつもりか!!!!」
勝つ、勝つ、負けたくない、極限以上に研ぎ澄まされた感覚はあの時、無意識とはいえ体感したあのスローモーションの世界を味わった。ほんの一瞬ではあるが驚き、けれど関係ないとゴールまであと少し、脚を止めない、隣にいるマックイーンの鼓動、息、足音、自身のも含めてすべてが聞こえ、ゴールまでがとても長く感じた。
ああ、これがあの時言っていた事か、この感覚、走馬灯を見た時と似ている。
並んでいる状態でマックイーンはライスを見た。その眼には絶対に負けないという眼とそれ以上の何かを感じた。
「ライスは……」
ライスを見るマックイーン、そしてライスの瞳に、オーラに鬼の姿がマックイーンには見えた。
「ヒールじゃない!」
マックイーンは息を飲んだ。
ライスシャワーだ!、ライスシャワーだ!菊花賞でもミホノブルボンの三冠を阻んだライスシャワーだ!!! ライスシャワー完全に先頭!!!
2バ身から3バ身と開いた。
追い抜かされていくマックイーンはライスの背中にオーガの姿が重なって見えた。
まるで鬼が走っているような気がした。
……いったいどんな練習をしたのか
ライスシャワーだ、ライスシャワー1着!!!、マックイーンは2着!!!
ライスシャワー、天皇賞でも圧倒的な人気のメジロマックイーンを破りました!!!
昨年の菊花賞でも、ミホノブルボンの三冠を阻んだライスシャワー!!!
春の天皇賞ではメジロマックイーンの大記録を打ち砕きました!!!
レコードタイム3分17秒1、メジロマックイーンの野望を砕きました。
「…………駄目だ」
きっかけを与え、モノにしたと思いきやまぐれに過ぎなかった。もう興味はないと言わんばかりにオーガは会場から姿を消した。
「ああ、退屈だ」
命を脅かすような存在、そのレベルになれるのか、彼女はなることができなかった。所詮スポーツ、やはり走ることでしか進化することしか出来ない。
後半レース部分、実際のレースの実況とアニメのも混ぜたのでかなりしんどかったです
ライスのレースはこれにて終了!、とりあえず引き続きよろしくお願い致します。
はやく競馬場工事終わってほしいな~(笑)
ちょっとオーガが暴走しそうです