「・・・・・・」
「・・・・・・」
「オグリよ貴様、かなりの量を食べるのだな」
「オーガこそ、ウマ娘なみに食べるのだな」
カフェテリアでは異様な空気に包まれながら、テーブルにおかれた異常なほどの料理を食らい続けている二人がいた。片や葦毛の怪物、片や鬼、誰も近くで食事をしようとはせず遠巻きに眺めているという光景だ。いつも一緒にいるタマモクロスやスーパークリークもオグリと一緒に食べることはなく離れた場所で食べている。
「なんや、あれ、えらい恐ろしいのとおるやんか、オグリ」
「ええ、タマちゃん、私もさすがに怖くて近づけませんねー」
「クリークあんたふざけててもいい子とかしたらあかんで、殺されてまう」
「わかってますよ、その分タマちゃんを思う存分甘やかしますから」
「そうか、ならええ・・・ってあほか、なんでウチをしれっと甘やかす気なんや」
遠くから意気揚々なツッコミが披露される中、二人は無言で料理を食らい続けていた。
そんな中でオグリはいつもなら楽しく食べているこの食事の時間に、何をこの男と話せばいいのか、どうすればいいのか考えながら食べていた。普段のペースより遅く食べながら気が付けば一部の皿が空っぽなことに気が付かなくて虚空をつかんでもいた。
「・・なっちゃいない」
「え!?」
オグリは小さな声を漏らした。
「漫然と口に物を運ぶな」
「日常生活でとやかくを言うつもりはない、友人と楽しく食卓を囲むのもいい、談笑をしながら食べるのもいい」
「あ、ああ」
「そういった事がないのであれば、何を前にし、何を食べているのかを意識しろ」
「何を食べているのかを」
「それが命食らう者に課せられた責任、義務としれ」
「・・・義務」
オグリは言葉が出なかった、普段ならばタマなどと一緒に食事をすることもあれば一人であっても、美味しいと感じながら食べていた。しかし今はどうだ、オーガに言われたこと、意識をしたことのなかったこと、生まれてから今日まで、このようなことを言われたことがなかった。
「・・あいつ、えらいマトモなこというやんけ」
「そうですね~反論の余地もないですね、博識というか、なんというか」
「あいつのいうとおり、意識したことは確かになかったな」
「これは、委託所の子どもたちの勉強にも使えそうですね~」
関心をしながら見守る二人、なるほど~といった声がちらほら聞こえる
「運動をする分、エネルギーが必要なのだろうが、人間とウマ娘ではエネルギー量が圧倒的に違う、オグリよ、貴様は強いと聞いた、ならばたくさん食べ、練習し、結果を出せるようにしなければな」
「!、ああ、もちろんだ、それにトレーナーに健康を考えてもらって、体にいいものなども食べているからな、本番でも負けるつもりはない」
「・・体に良いものか」
「・・駄目なのか?」
耳が少し垂れるオグリ、オーガは違うとジェスチャーで反応し、説明する。
「多くの食品には、防腐剤、着色料、保存料、様々な化学物質・・身体によかろうハズもない」
「そうなのか?」
「ああ、しかし、だからといって健康にいいものだけを採る、これも健全とは言い難い」
「・・どういうことだ?」
「毒も喰らう、栄養も喰らう、両方をともに美味いと感じ、血肉に変える度量こそが食には肝要だ」
「血肉に変える」
「・・・簡単に言えばなんでも美味く感じ血肉に変えていくことが大事だ」
「!!、なるほど、ならばたくさん食べねばな」
感心したオグリはすぐに気が付けば止めていた食事を再開させた。食事が終わったオーガはいなくなり、残された生徒たちは先ほどの言葉を思い出し、普段道理の食事をするなか、食事をする際に意識をしながら食べるようになった。
「いやー、なんというか、えらい賢い人というか、なんというか」
「とてもいいひとなんですかねー?」
「まあ、見た目とのギャップがありすぎてまだ信じられへんは」
「ふふ、そうですねタマちゃん」
「血肉か~勝つためにはそれくらいできんとな」
「ええ、いっぱい食べましょうね~」
「おう、ってなんでウチにあーんをしようとすんねん!」
「あらあら、駄目ですよ、しっかり食べなきゃ」
「かんにんや~!!」
知らぬところでクリークの甘やかしが始まったことをオーガは知らなかった。
あ~難しいもんですね、どうしよう