学園は今再び危機に陥ろうとしていた。悲鳴・恐怖・亡者の群れ、予想だのしないことが起きていた。
「逃げろ!」
「このままじゃあやられる」
「何としてでも食い止めろ!これ以上犠牲者を増やすな!」
「駄目、バリケードを完全に作る前にやってくる数が多すぎる!!!!」
「く、会長、いかがいたしますか!!!!」
「……私がここに残ろう、その隙きにみんなは逃げてくれ」
「………なりません!それでしたら私が!!!!」
「ならん、一刻を争う、すぐに生き残っている生徒の避難を!!!!」
エアグルーヴの静止を振り払い残っている学生と一緒に行動することなく一人残る。後ろから会長との声が聞こえるが次第に声が遠くなっていく。
「これでいいんだ、学園の皆はこの私が守る」
逃げなんてレースでもすることがないが、今日だけ、今だけは逃げウマになろう
そしてバリケードが崩れぞろぞろと無残な姿になったウマ娘が仲間を増やそうとやってくる。
たとえどのような相手でも私を捕まえることはできない、逃げ切ってみせる!!!!
「あまり私を舐めるなよ!!!!!」
そしてついにルドルフに襲い掛かるウマ娘達、両手にはおしゃぶりと哺乳瓶、中には園児服を持っているものもいる。そう、彼女たちは発作を起こしたクリークの被害者たちだ、中にはトレーナーもおり、大の大人がとんでもない恰好をしているため、見るだけで精神がやられる。これでは完全にゾンビゲームと同じ状況、捕まれば仲間入りだ。
最初から全開で飛ばして逃げるルドルフ、追いかける化け物達、悲しい戦いが始まってしまった。
「はぁぁぁぁぁ~~~~」
盛大な溜息、学園の屋上からこの惨状を見下ろす漢、オーガ、彼も巻き込まれたものである。
「たった一人の雌の母性にやられ傀儡と化す、下手な軍隊よりよっぽど厄介だ」
「…………それでどうする」
「ふん、どうでもいい、寝る」
「…………そうか……ん?あれは会長か?」
「ほう、あの数から逃げるか」
「時間の問題だ、いずれスタミナは切れる」
「………」
「……」
「いや、助けないんですか?」
無言になる二人に対していつからいたのか沈黙に耐え切れずセイウンスカイが問う。あいにく助ける気はなく、助けに行ったとしても飲み込まれるのがオチとして目に見えている。
「いや~セイちゃんは助けに行った方がいいと思うんですけど~~」
「だったら貴様が行け!!!!」
「すいません、無理です」
「仕方ない、私が行く」
「流石ブライアンさん、そこに痺れる憧れる~」
「何言ってる。お前も一緒だぞ」
「え?無理無理無理、流石に捕まって園児服は~にゃはは」
関係ない行くぞと首根っこを掴まれ連れていかれるセイウンスカイ、騒がしいのが消え一人となったオーガ、そんなオーガの下にまた一人の者が現れた。
「ほう、まさか貴様もそちら側と言うわけか」
「………………」
「言葉を発することもできないか」
「………………」
「ふん、まぁいい、おとなしくしておけば何もせん」
静寂が包み込む中何処から汚い声がこだました。
「ぎゃああああああああ!!!!!!!!」
「タマ落ち着くんだ」
「そないなこと言われても無理や、あいつらなんでウチだけ以上に追い回してくるねん!」
「………タマだから?」
「いや、理由になっとらんは」
走りながらツッコミをかますタマモクロスと天然ボケを発揮するオグリキャップ、必死に廊下を走り逃げる2人、逃げ切り撒いた2人はそのまま外へ出る。そして2人の逃げた先はエアグルーヴ率いる残された組が集まっていたターフであった。下手に体育館や教室だと逃げ場がなくなるため少なくとも広く逃げるのに時間が稼げる場所を安全地帯として選び集まっていた。
「な、何とか逃げ切れた」
「恐ろしいものだな、あれは」
「ああ、もうでちゅねは嫌や」
「…………お腹すいた」
「って、緊張感ゼロか!!」
「2人ともよく無事でいた」
2人を安堵するエアグルーヴ、ルドルフがいない今頼れるのは自分だけであると気を引き締めこの状況を打破する方法を考える。しかし先ほどの大きなツッコミの影響か声を聴いた犠牲者たちがまさかの集団でやってきた。
「な、なんでこんなに!」
「あ、あそこにいるのカイチョーだ!」
「な、か 会長!」
悲しいことにルドルフは見るも無残な姿となってその場に現れてしまった。おしゃぶりを加え園児服、片手にはガラガラを持っている。
「くっ、そのようなお姿になられてもカリスマ性はご存命なのですね」
「いや、そこはどうでもいいやろ!」
「待ってクリークさんもいる」
「おい、クリーク馬鹿な真似はよせ!」
目を覚ませと多くの言葉が飛び交うが聞く耳持たず。聖母のような優しい表情で悪魔のような決断を下す。
「み~んな私がお世話してあげますね~、じゃあみんな~あそこにいるお姉ちゃん達を捕まえようね~」
「バブ、アダ~~」
ガラガラを構えて振り下ろし号令をかけるルドルフ、それをきっかけに一斉に進軍してきた。
「くそ、皆散れ!」
「副会長、すでに囲まれています!」
「何?どういうことだ」
「わかりません」
「まるでアイ○ニオン○タイ○イだな」
「いや、どっちかというと死の河」
「ガラガラとおしゃぶりばっかだしもう王の○宝に近いんじゃ」
「あれスピカのトレーナーじゃない?」
「ああ、子どもになっても脚は触るんだね」
「ブルボンのトレーナー、あのいかつさでおしゃぶりとかチョー受けるんですけど」
「いや、あんたら実は余裕やろ!」
状況に似つかわしくないことを目が死にながら話すものもいれば捕まり園児服を着せられ亡者の仲間入りするものもいる。しれっと捕まりあちら側にいるブライアンとセイウンスカイもいた。もう犠牲者も増え始め皆クリークのプレイの餌食になると思われたその時救世主が現れた。両ポッケに手を入れ堂々と歩くオーガ、オーガの迫力に圧倒され逃げていく者たち、まるで近くのコンビニに行くように自然な流れでクリークの前に立つ。
「あら~オーガさん、貴方のところには刺客を放っておいたのですが」
「あの程度造作もない」
「もう、せっかくたづなさんを差し向けたのに」
「「「「「!!??」」」」」
驚愕、あの緑の悪魔と恐れられしガチャ爆死の鬼がやられていたこと、衝撃の事実に驚きを隠せない一同、あの人を平然とあしらったのだろう。オーガ、いったいどのような手であの人を抑えたのか
「頭に猫を乗っけている小さいやつを投げ付けた」
「いや、それ理事長!オーガあんた何してくれとんねん!!」
まさかの答えが返ってきたがオーガがいればこの地獄から解放されるのではないかとの期待の目が向けられる。正面から対峙する2人、2人の周りの空間だけ揺らいで見える。固唾をのんで見守る。何故か目を離せないが瞬きをした瞬間、オーガの口にはおしゃぶりが加えられていた。
「え?」
「は?」
「!!?」
いつの間にか口に入れられていたおしゃぶり、それを吐き出したオーガ、いったい何が起こったのか誰もが分からなかった。
「ちっ、よもや貴様が持っているとはな」
「あらあら~」
「古の剣豪レベルならば当然持っていたとされる知覚、トール・ノーレントランダーシュが著作、ユーザーイリュージョン、意識のという幻想で述べた言葉」
「………………」
「脳の命令0.5秒前の意識の引き金」
「はい」
「不用意に発した俺の信号、脳が命じるまでの0.5秒をお前は手にした」
「な、なんや、どうなっとる」
「おそらくだが、我々の理解できない範疇での攻防が繰り広げられているのでは」
「いや、攻防って、一方的やったやんか」
会話の内容も分からない、動きも見えない、気が付けば二回目のおしゃぶりを咥え涎掛けを付けられ上から園児服を着たオーガがいた。
「ってまたかいな、しかも気持ち悪!!」
「何故か吐き気が」
「ふふ、オーガちゃん、ママでちゅよ~」
「……………バブ」
その時全員に電流が走った。被害にあったものと同じ姿を見て、見たことない姿、普段とのギャップ、ダメだ。今笑ったら殺されると
「はい、オーガちゃんいいこでちゅね~笑顔笑顔~」
まるで最高のおもちゃを見つけたように、獲物を見つけたようにニタ~~と笑顔になるオーガ、それを見てしまったものはあまりの気持ち悪さに吐き気を催すもの、吐くもの、意識が飛ぶもの、そしてクリークの被害にあったものたちは気絶した。
「あかん、最悪や」
「あれを見なければまだ笑った方がマシだった」
「ひどい顔だ」
ゆっくりとクリークのところに近づくオーガ、そしてほぼゼロ距離になった。
「は~い、ママでちゅよ~」
「アホウが」
「え?」
口にくわえていたおしゃぶりを吐き出し、見えない攻撃で意識を刈り取るオーガ、気絶するクリーク、先ほどまでの姿を見ていた者たちは混乱した。
「あ、あんた正気に戻ったんか?」
「ハナから正気だ」
「ならなんで?」
「敵をだますならまず味方からと言うだろう」
「お、おう、そうか、でも助かった~・・・・・・・・・あかんまだ助かってないんや」
そう、この悲惨な状況、どうやって片付けるのかであった。幸い気絶してくれているものが多いので、楽に片づけられるが、もし、記憶が残っていたらと考えると恐ろしい、エアグルーヴ筆頭に後片付けがおこなわれ、悪夢は終了した。
翌日、覚えていない者もいたが、覚えている者の顔は死んでいた。特に生徒会長であるシンボリルドルフは涙を流しながら暗い顔をしていたそうだ。
特に重傷だったのはたづなさんであり、理事長も同じく重症だったのでしばらく学園を休んでいた。
一方元凶であるクリークは多少満足したのか、変わりない生活を送り、相変わらず犠牲に合うタマモクロスがいたとか
色んな意味で最強はクリークだと思います。