夕方のターフ、練習が終わり帰宅するものが増えてきた時間帯、まだちらほらと練習している生徒もいるがある場所を除いて誰も近づかないようにしている。
そこにいるのはオーガとナリタブライアン、対峙する二人、まるでそこだけ別空間のような扱い、まるで龍と虎が対峙している幻覚も見える。
「………………」
「………………」
「……………何の用だ」
「……………聞いたぞ」
「何をだ」
「あんたが教えた生徒が急激に強くなっていると」
「それで」
「私も鍛えろ」
あのオーガに対しての命令口調、だがオーガはニヤリと笑う、ブライアンの目は本気の目、この学園に来てから初めてみる飢えの目である。
「いいだろうナリタブライアン、貴様がついてこれるか楽しみだ」
「望むところだ」
怪物と鬼、誰もが想像したことのないコンビが誕生した。怪物コンビが誕生してから毎日毎日常識を逸脱したトレーニングがおこなわれていた。
山に出向き大猿から死ぬ気で逃げる。
「ホキャキャーー!!!!!!!!」
「ついてこれるか化け物!!!!!!」
「キャキャ~~!!!!」
「・・・・あの夜叉猿から余裕で逃げるか」
毎日毎日大きな丸太に斧を振り下ろし一振りで切断できるように繰り返す。
「ふー・・・・・・・・はぁぁぁぁぁぁ!!!!」
丸太に勢いよく刺さる斧、残念ながら切断することはできなかった。次の日も、次の日も、毎日毎日斧を早朝に振り下ろす。
「くそっ!」
「まだ力が足りねぇな~」
「ふん、見てろそのうちたたき割ってやる!」
「せいぜい頑張んな」
ある日の晩飯、イノシシやシカの内臓の塩漬け、いわゆる保存食が鍋いっぱいに入っていた。
「これは?」
「喰え」
「喰って大丈夫なのか?」
「ああ」
「…………わかった」
取り分ける用の器にたっぷりと入れ、かきこんでいく。
「野生の、自然で生きる者のパワーを身体に詰め込め、そして己の血肉に変え、力に変えろ」
ブライアンは喰った。喰って、喰って、喰って、強くなってやる!その思いで限界まで詰め込んだブライアンは苦しい表情だったが食べてすぐに寝た、朝起きると昨日の苦しかった感じはなく身体から力が溢れてくる感覚だった。
「………よし!」
そして、そこには・・・・・・・・・丸太を切断したブライアンがいた。
野生の熊に拳を打ち込み一撃で仕留める。
「よく見ていろ、ブライアン」
「ガアアアア!」
「!!!!」
熊の心臓に向け拳をふるう、厚みのある脂肪を打ち抜くだけでなくはっきりと残るほどの打撃痕、断末魔を上げ倒れる熊、ズシンと音を立て生命活動を停止した熊を見下ろしたオーガはこちらに振り向いた。
「今日の飯だ、鍛えればいずれここまでできる」
「いや、無理だろ」
流石に熊を一撃で倒せるようになるのは難しく、確かにウマ娘が鍛えれば可能かもしれないがよくてコンクリの壁を破壊できるとこまでだろう。仕留めた熊を背負いブライアンとともに帰るオーガであった。
宿泊用の小屋の外で焚火をしながら毎日毎日たらふく肉を喰らう、ブライアンは肉を食べる時が一番幸せそうであった。勿論栄養バランスも考え嫌々ではあったが野菜も食べていた。野草や山菜はあるが明らかに山で手に入ることのない野菜が毎日小屋に置かれていた。
オーガはなぜか毎晩白くてフワフワの大きい生き物が野菜を置いて姿を消していると伝えるとブライアンは苦虫をかみつぶした顔をした。おそらく誰か分かっているのだろう。
巨大な岩を身体に括り付け坂を何本も往復した。
「ハアアアアアア!!!!」
「ふむ、大岩程度ではまだまだ余裕か」
岩と言うにはあまりにも大きすぎる岩石をブライアンに背負わせ走らせる。慣れてきたらさらに大きな岩を背負わせるを繰り返していた。
腰を落とし肩幅より足を開き両こぶしを前で構えるの体制で何時間も耐え続けた。
「くっ……なかなかキツイな」
「これだけでも下半身は強化されるあと2時間耐えろ」
「……………上等だ!」
渓谷のような崖に身を放り投げる。
「おい待て、いくらなんでもここから飛び降りるのは死ぬだろう」
「死んだらその程度と言うわけだ」
「……………限度と言うものがあるだろう」
「ライスシャワーは飛び込んだがお前は飛び込めないほど弱いのか?」
「なに?」
安い挑発、ニヤニヤとしながらブライアンを見つめるオーガ、正確には飛び込んだのではなく落とされたが正しいがそこはどうでもいい
「………………」
「………………」
「いいだろう、強くなるためだ飛び込んでやろうじゃないか」
「ほう」
覚悟を決め崖から飛び込むブライアン、飛び込んでから少しして離れたところから白い生き物がブライアンの名前を呼びながら飛び込んでいった。こればっかりはさすがのオーガも驚きを隠せなかった。
その後無事に帰ってきたブライアンとどこかに姿を消した者がいた。ブライアンいわく飛び込んでる落下の最中に「姉貴に名前を呼ばれた気がした」と語っていた。
命を懸けた修行と言う名のトレーニング、極限まで鍛えこんだパワートレーニングで気が付けばブライアンの身体は一層引き締まり筋肉が肥大化していた。
「ほう、やり遂げるとは」
「力が、溢れてくる」
「今の貴様なら大抵は敵なしと言えるだろう」
「ああ、早速姉貴と勝負するか」
学園に帰ってきた2人、さっそくトレーニングの成果を試すため姉であるビワハヤヒデと模擬レースを行う事となった。
「ブライアン、相当鍛えてきたようだな」
「ああ、負ける気はない、姉貴、本気で掛かってこい!」
「ふっ……いいだろう、来いブライアン」
オーガの立会いの下、早速レースが開始した。距離2000、これまでの成果を見せつけるかの如く、鍛えるに鍛えられたブライアンの成果が発揮される。
「どうした姉貴、こんなものか」
「やるなブライアン、だがここからだ」
両者接戦の模様、お互い前は譲らず熱いレースが繰り広げられている。だが力のブライアンと理論のハヤヒデ、どちらが勝つかによって改善すべき点が見つかる。それよりも気になるのはあれだけ鍛えてブライアンに平然と追いついているハヤヒデだ、毎晩のおそらく白い生き物の正体は彼女であっただろう。そうなると毎晩学園から山までかなりの距離があるが毎日荷物を届けに走りに来ていると考えると相手も相当鍛えられている。
悲鳴を上げるほど鍛えられた身体、力に変えた栄養の数々、それを発揮するように最終コーナーで仕掛けた。
「蓄えてきた力を開放できるか?」
「はあああああああ!!!!!!」
ブライアンの踏み込む脚に途轍もない力が注ぎ込まれ、地面は抉られたようになり、抉られたというにはクレーターができるほどだった。負けじとハヤヒデも仕掛けラストの直線、デットヒートが始まる。
力みなくして解放のカタルシスは語れねぇ、いつぞやの大会で言い放った言葉、まさに目の前で行われている光景にふさわしい言葉だろう。鍛えに鍛えた身体、蓄えたパワーを全て解放するがごとく、足下がえぐれていく、そこからは圧倒的であった。解放されたパワーはスピードに変わってビワハヤヒデを追い越し、差をどんどん広げていく
距離が縮まらない、差が徐々に開いていき最終的には何バ身なのか、決着はついていた。全てを出し切ったブライアンは気がつけばゴールしていたという感覚であった。これが解放、力みなくして解放のカタルシスは語れない、より強くなれた事への喜びとより強者と戦うことが出来るようになったと、大きく成長した。
ためて、ためて解放~、気がつけば40話、持ちベ維持のために感想と評価お願いします。後何かネタ提供お願いします、結構厳しいです。