「テイオー、貴方、本当に治ったのですか?」
「うん、治ったといっても過言じゃないよ」
「そう」
「うん」
昼休み、カフェテリアで食事するメジロマックイーンとトウカイテイオー、あの日から完全に杖無しで歩けるようになり医者に診てもらったところ
「……ありえない……こんな短期間で……治るとは」
と、驚愕していた。
「それでは、完全に走れるようになったという事ですの?」
「どうだろう、まだわかんないや」
「私としては、治ったのは喜ばしい限りですが、無茶しすぎでは?」
「うん、だけど本気でほしいんだ、最後の冠が、カイチョーと同じ三冠ウマ娘の称号が!」
骨折前と同じいつもの表情、だがメジロマックイーンはトウカイテイオーが別の何かに見えていた。そう、それは普段の能天気な感じではなく、まるで自分と同じ、メジロの悲願を叶える為、それに全力で挑むときのような、言葉に表せない何かが
「それで今日からターフでのトレーニングですが、しばらくあの方は来られないのですか?」
「そうなんだ、なんでも息子との用事があるとかなんとか、仕方ないけど代わりにオーガがトレーニングを見るらしいんだ!」
「あら、家族思いの方なんですね、それにしてもオーガですか」
「どうしたの?」
「いえ、噂なんですが、オーガのトレーニングを受けたものはごく僅か、けれどトレーニングを受けることができたものは才能を開花させ、まるで鬼が宿ったと呼ばれるほどの成長を遂げたと」
そう、オーガのトレーニングを受けたものは片手で数えるくらいの者だろう。頼んでも鍛えてくれることはなく、気まぐれにオーガが見定め、声を掛けられた者がオーガに鍛えてもらえる。トレセン学園の生徒たちの間ではこう呼ばれている。
まるで生贄を選んでいるように聞こえるが、オーガに与えられる鍛錬は厳しく、それをクリアしたものは勝利を手にすることができるとの噂もある。
「え~なにそれ」
「ま、あくまで噂ですわ」
優雅に紅茶とデザートを嗜むマックイーン、テイオーの中で不安は膨らむが同時に噂が本当なら強くなる可能性がある。期待も膨らんでいった。そして迎えた放課後
「………………」
「………………」
「……………はぁ」
「え?なに、どうしたの?」
「これから教えようとしてる技、こいつは本来、俺の流儀じゃねぇ」
少し嫌そうに語るオーガ、いったい何を教えるのか、トウカイテイオーは緊張してきた。
「……………及第点」
「え?」
「なんとか骨折を治したようだがまだまだ、どのみちもう一度本気で走れば折れるだろう」
「え?」
「だが、折れないようにする技術、技をお前に叩き込むんだが、トウカイテイオー、貴様は体は柔らかい方か?」
「え、うん、柔軟には結構自身があるよ?」
「ならいい、これから教える術、名をシャオリーという」
「シャオリー?」
「中国拳法の一つ、極意と呼ばれるもの」
「極意」
「が、シャオリーそのものを修得するには積み重ねた鍛錬の先、貴様が習得することはほぼ無理だろう」
「え、じゃあなんでそれを教えるの?」
「シャオリーの特徴は脱力、いわゆるリラックスだ」
「リラックス?」
「ああ」
「力を抜けってこと?」
「百閒は一見にしかず、百見は一触にしかず。ゴールドシップ来い!」
「あいよ~呼ばれてジャジャジャジャーン!!!!!!」
「え?なんでゴルシ?」
「ま、あたしも良くわかんねーけど呼ばれた」
「え~」
「ゴールドシップ貴様の錨で俺の顔面を攻撃しろ」
「了解~」
「え~~~~!!!!!!」
「面白くなってきたぜ~!!!!!!」
驚いているテイオーを置き去りにノリノリでオーガの顔面に錨をフルスイングで叩きつける。ウマ娘のパワーで関係なく錨で殴られれば最悪死に至る。錨を叩きつけられたオーガは勢いよく後ろに飛んだ。
「え~~~オーガ!!!!!!」
「お~飛んだな~」
「ちょっとゴルシ!オーガ死んじゃったよ絶対!」
「いや、よく見てみろテイオー」
「見てみろって!……あれ?」
2人の見つめる先には何事もないように平然と立っているオーガの姿。顔には傷どころか叩きつけられた後すら残っていない、というか死んですらいない。
「これがシャオリーだ」
「いやいや、なに、どうなってるの?」
「簡単な話、受け流したそれだけだ」
「説明になってないよー!」
「脱力によって肉体へのダメージを限りなくゼロにする。薄っぺらい紙に剃刀を勢いよく振り下ろし切り裂かないようにする。握った卵を握り潰さないようにする。さらに分かりやすく言うならば合気の稽古のようなもの」
「いや、ごめん、全然ワカンナイや」
「………………」
「なるほど、攻撃を受けるときに脱力で最小限にダメージを抑えるってことか」
「ナンデワカルノ!?」
「……風呂に入っているときに身体の力が抜けるだろう。それと一緒だ」
「あ、なるほど」
「ようやくわかったかクソガキ」
とにかくリラックスしている状態で最小限に抑える。そういった技術を叩き込む。
「そしてこの技は受けと攻めの両方がある」
近くの壁に向かってゆっくりと拳を近づける。そして拳が触れると同時に破壊音と壁にクレーターができた。
「えええええええ!!!!!!」
「お~すげー」
「リラックスした状態から瞬時に緊張へと転ずる。格闘技・アスリートほどこういったことはよくできる。いずれにしても強調されるのはインパクト、優れたアスリートほど柔らかいのはそのためだ」
「リラックスとインパクト」
「ま、所詮お遊びの中国拳法、俺は二度と使う事はねぇ、だがそこに使われる技術をトウカイテイオー、貴様に叩き込む!」
「あ、うん」
「なんだよテイオー、反応悪いな」
「いやだって、現実味がないというかワケガワカラナイんだもん」
「ま、考えても仕方ねーからさ、やるだけやってみろよ」
「う~ん、そうだね!」
「安心しな、リラックス、つまり脱力を身に付けている者はすでにいる。これからはそいつと一緒に練習だ」
「え、誰と?」
「……サイレンススズカ」
「え、スズカ!」
「そいつと共に脱力におけるダメージの最小限とインパクトによる加速力の向上を図る」
「うん!」
「地味な練習だが内容はアライに伝えて置く」
「おいおい、オーガが教えるんじゃねーのかよ」
「見るのはあいつだ、どうするかは貴様次第、な~に心配いらねぇ、どうにかなるさ」
「なんか不安だけどボクやってみるよ」
「そっか~頑張れよテイオー、ゴルシちゃんはこれから岩塩層を掘って恐竜を見つけてくるから、それじゃあな~」
こうして奇妙にも始まることになった練習、最後の冠、菊花賞に間に合うのか
シャオリーは難しいです特に説明が、流石に簡単に身につけれるようにしてしまうと安く見えてしまうのであくまでもその技術のみということで進めていこうと思います。そこにアライのステップを組み合わせていこうと思います。あれ、あんまり変わらないのかな?